軽犯罪法

麦野夕陽

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ケース2 傷害罪

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【ケース2】

被告人 今藤久司
性別  男
年齢  21歳
職業  大学生
罪状  傷害罪
犯行日 2065年9月28日

〈聴取記録〉被告人は県内の大学に在籍。生育歴に大きな問題はなし。被告人はこれまでを「フツーに楽しかった」と語る。
 事件発生は2065年9月28日深夜1時頃。「飲み会をしていたら先輩が女子を殴り出した。止められない」と通報あり。警察官が駆けつけると被告人はいまだ興奮状態で女性に殴りかかろうとしたため、ただちに警察官が取り押さえた。
 アパートの一室にいたのは被告人および通報者を含む男性3名と女性3名の計6名。殴られていた女性1人が口唇部から流血。顔と腕にも複数の打撲痕をみとめる。
 全員の聴取、および身分証明書の提示から6名は同じ大学のサークル生だと判明。女子の「先輩、そんなに食べると太っちゃいますよ」との発言に今藤が突如怒りだした。全員で止めに入ったが手をつけられず、通報に至る。
 被告人を除く5名は口をそろえて「今藤は普段から意地が悪かった。キレると暴力をふるう。酒を飲んでいなくてもそうだ。常に怒らせないように気をつけていた。今回の飲み会も本当は嫌だったが断れなかった」と言う。「捕まって安心した」と話す者もいた。

〈裁判記録1〉2065年11月1日初公判。被告人は終始不機嫌さをあらわにし、事あるごとに舌を鳴らした。
 裁判中、裁判官の話を遮るように「軽犯罪法の体重減量すればいいんだろ」と発言。裁判官は被告人に注意したが、軽犯罪法の申請を受理した。
 被告人の現在の体重は60.1キログラム。ただちに協議が行われ、指示体重はマイナス12キログラムの「48.1キログラム」となった。
 被告人は「中学の時、気に食わないデブがそれくらいフツーに痩せてたし余裕だわ」と威嚇するように叫んだ。

〈裁判記録2〉初公判から31日経った2065年12月2日。第二回公判。法廷に現れた被告人は痩せ細り頬がこけていた。血色も悪くシワも増え覇気を失っていた。息切れする音が法廷に響くなか体重測定が行われる。「45.3キログラム」を測定。裁判官に無罪を言い渡されるも、視線が定まっていなかった。

 裁判を終え、建物を出たところで倒れた今藤はただちに救急搬送される。救急車に付き添った職員によると、今藤は意識が朦朧とするなかで「アイツが……前田が……できたのに……クソ……」と、うわ言のように繰り返していたという。

 今藤は重度の栄養失調と診断され入院となった。命は取り留めたが、意識が戻らない場合は昏睡状態、意識が戻っても後遺症が残る可能性が高いという。
 
 今藤はすでに無実を言い渡された一般市民であるため、12月2日、本日をもって記録は終了とする。
 
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