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【一】
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三ヶ月後、部活を引退したオレに、ハル君の写真で奨励賞を受賞したという知らせが飛び込んできた。コンテスト結果がネット上で発表されると、奨励賞の文字の下に宙を飛ぶハル君の横顔がある。
羽が生えたように空へ飛ぶ姿は軽やかで鳥のようだ。ハル君の美しい姿を自分が一番知っている。そう思うと涙を止めることができない。視界がぼやけて、ハル君の写真も涙に沈む。
何日も何時間もハル君だけを追い続け、美しい姿を画像に収め続けた。ずっとハル君だけを思い、ハル君の顔を見つめ、ハル君の記録更新を見守った。レンズを通してオレの心はハル君を見ていた。
――恋。オレはその意味を知った。ハル君に結果を伝える。
「よっしゃあ!」
高飛びのときと同じ答えが返ってくる。胸がぽっと熱くなった。
嬉しかった。クラスメイトにとって、いるかどうか分からないような平凡なオレ。それでも、人に認められたのだ。もうオレは平凡じゃない。ハル君のそばにいるとそれを実感できる。
理久に自信を与えたのはオレだったかもしれない。でもオレに自信をくれたのは太陽のようなハル君だった。
「綾斗さん、写真を見せてよ」
夕方、ハル君が部屋に遊びに来た。スポーツバッグを横に置く。ハル君がカーペットにあぐらをかき、二人で並んで座る。タブレットをスクロールしながら撮った写真を見せる。ハル君はぽつりと呟いた。
「すげえな」
ハル君は目を真っ赤にさせて笑った。
「すっげえ。俺、こんなふうに飛んでるんだ? 綾斗さんが撮らなかったら知らなかった」
ハル君は練習風景について情熱的に語った。高いところにあるバーがすごく遠くに見える日がある。バーを越えた瞬間の空の青さと雲の白さが眩しい。ぼすっ。マットの音がいい姿勢で飛んだときは違った音を立てる。
ハル君の情熱が自分の写真に表れている。胸がどきどきと音を立てる。心臓の音を気取られないよう、笑って写真のハル君の目を指さした。
「この瞳にその光景が映ってるんだね」
オレはハル君に笑いかけた。
「オレのレンズじゃ捉えられない光景をハル君は知ってるんだ。最高だね」
ハル君がこちらを覗き込んでくる。自然とくちびるが重なる。すぐさまはっとしたハル君が「あの、ごめん」と顔を真っ赤にさせる。オレは思い切って自分からもキスを返した。レンズ越しではない隣に座るハル君。実物からは伝わる熱波に胸が高鳴る。
「俺、陸上だけが取り柄の赤点ギリギリのバカだからさ」
恥ずかしそうに頭を掻いて、ハル君は頬を染めた。
「そんな俺の写る写真が賞を取ったなんて、夢みてえ。綾斗、サンキュ」
もう一度ゆっくりキスをする。ハル君の胸に頭を預ける。温かい。ハル君の温かさが平凡なオレの心を揺さぶる。
秘密の関係が始まった。
羽が生えたように空へ飛ぶ姿は軽やかで鳥のようだ。ハル君の美しい姿を自分が一番知っている。そう思うと涙を止めることができない。視界がぼやけて、ハル君の写真も涙に沈む。
何日も何時間もハル君だけを追い続け、美しい姿を画像に収め続けた。ずっとハル君だけを思い、ハル君の顔を見つめ、ハル君の記録更新を見守った。レンズを通してオレの心はハル君を見ていた。
――恋。オレはその意味を知った。ハル君に結果を伝える。
「よっしゃあ!」
高飛びのときと同じ答えが返ってくる。胸がぽっと熱くなった。
嬉しかった。クラスメイトにとって、いるかどうか分からないような平凡なオレ。それでも、人に認められたのだ。もうオレは平凡じゃない。ハル君のそばにいるとそれを実感できる。
理久に自信を与えたのはオレだったかもしれない。でもオレに自信をくれたのは太陽のようなハル君だった。
「綾斗さん、写真を見せてよ」
夕方、ハル君が部屋に遊びに来た。スポーツバッグを横に置く。ハル君がカーペットにあぐらをかき、二人で並んで座る。タブレットをスクロールしながら撮った写真を見せる。ハル君はぽつりと呟いた。
「すげえな」
ハル君は目を真っ赤にさせて笑った。
「すっげえ。俺、こんなふうに飛んでるんだ? 綾斗さんが撮らなかったら知らなかった」
ハル君は練習風景について情熱的に語った。高いところにあるバーがすごく遠くに見える日がある。バーを越えた瞬間の空の青さと雲の白さが眩しい。ぼすっ。マットの音がいい姿勢で飛んだときは違った音を立てる。
ハル君の情熱が自分の写真に表れている。胸がどきどきと音を立てる。心臓の音を気取られないよう、笑って写真のハル君の目を指さした。
「この瞳にその光景が映ってるんだね」
オレはハル君に笑いかけた。
「オレのレンズじゃ捉えられない光景をハル君は知ってるんだ。最高だね」
ハル君がこちらを覗き込んでくる。自然とくちびるが重なる。すぐさまはっとしたハル君が「あの、ごめん」と顔を真っ赤にさせる。オレは思い切って自分からもキスを返した。レンズ越しではない隣に座るハル君。実物からは伝わる熱波に胸が高鳴る。
「俺、陸上だけが取り柄の赤点ギリギリのバカだからさ」
恥ずかしそうに頭を掻いて、ハル君は頬を染めた。
「そんな俺の写る写真が賞を取ったなんて、夢みてえ。綾斗、サンキュ」
もう一度ゆっくりキスをする。ハル君の胸に頭を預ける。温かい。ハル君の温かさが平凡なオレの心を揺さぶる。
秘密の関係が始まった。
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