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【二】
6
「でも、サークルの中では認められなかったから……」
思わず小声になる。理久がきょとんと見下ろしてくる。
「そのサークル、何人? 僕なんてSNSじゃたくさんの人が批判してると思う。でも僕の配信が楽しいって言ってくれる人がひとりでもいるうちは続けようって。綾斗さんは? 僕は綾斗さんの写真のファンのひとりだよ」
楽しい思い出を思い返そうとする。それでも脳裏に浮かぶのは、冷たい視線とプロジェクターの電子音。そして「平凡」と切り捨てられた言葉だ。
俯いて指先をこする。爪が伸びてしまっている。
「また、外に出られたら、写真、撮りたいと、思うけど」
ぽつりぽつりと言う。理久の声が「そっか」と優しい音色になる。
「目の前でいろいろ言われたら、人数に関係なくつらいよね。僕のほうが大変だよなんて、なんの慰めにもならないのにごめん」
自分に寄り添ってくれる言葉と思いやり。それに少し息をつく。
「写真一つ認められなかったくらいで落ち込むオレが変なんだ」
「そんなことないよ。誰だって好きなものを否定されたらつらいし」
去年の暮れから腹に溜まっていた黒い気持ちを吐き出す。
「平凡だってばっさり切り捨てられて。写真しか取り柄のないオレから写真をとったらなにも残らない。だから、全部否定されたような気持ちになって……。賞を取れたのはハル君のおかげだって言われたよ。理久もハル君もオレと違ってすごいよな」
すると理久の手が伸びてきた。オレの肩に優しさが染みこむ。その温かさに顔をあげると、理久が真剣な表情で見下ろしている。
「綾斗さんのいいところの一つは、素敵な写真を撮れること。でも、それは綾斗さんが周りにきれいなものを見つけられるからできることだよ。綾斗さんの一番いいところは、目だ。綾斗さんの目がきれいなものを映してる」
理久の骨張った手がぽんぽんと肩を優しく叩く。
「だから、綾斗さんはまた素敵な写真を撮れるよ。きれいなものを見つける才能があるんだから」
「でも……オレ、まだ、外に行く自信はなくて。外に行けば、きれいなものも、あるのかもしれないけど」
「じゃあ今は家でゆっくり元気をチャージしよ? 綾斗さんの目は今日も明日も一年後も変わらない。外に出るのはいつだっていいじゃん」
理久の細い指がオレの両肩にさする。オレを押さえつける蔦が少しだけ解ける。理久が口に弧を描いて微笑する。
「今は家の中でできる楽しいことがあったらもっといいね。僕だって家の中で仕事してるし。そうだ、ゲームをやる元気はある? 案外大人になってからはまっちゃうなんて人もいるんだよ」
微笑む理久が髪をハーフアップに結び直すと、オレの部屋に向かった。部屋にはノートパソコンがある。それでできるゲームの探し方を教えてもらい、試しに一つプレイしてもらう。
さすがに理久は上手い。昔一緒にゲームをしたとき、理久が横であれこれアドバイスをくれたことを思い出す。
「理久、ここで実況してみて。どんな感じ?」
すると理久は笑って頭を掻いた。「やだな」と照れ笑いに眉尻を下げる。
「端から見たら絶対変だよ。パソコンに向かってこんにちはって挨拶して。すごく恥ずかしいからダメ」
そこでいたずらっぽく付け加えた。
「このゲーム、三ヶ月前に実況してる動画がある。興味があったら見てみて」
二日後に料理する約束を残し、理久の背が家に帰っていく。カーテンの隙間から見ていると、ぽつり、二階の部屋に明かりが灯る。オレの孤独が照らされる。
思わず小声になる。理久がきょとんと見下ろしてくる。
「そのサークル、何人? 僕なんてSNSじゃたくさんの人が批判してると思う。でも僕の配信が楽しいって言ってくれる人がひとりでもいるうちは続けようって。綾斗さんは? 僕は綾斗さんの写真のファンのひとりだよ」
楽しい思い出を思い返そうとする。それでも脳裏に浮かぶのは、冷たい視線とプロジェクターの電子音。そして「平凡」と切り捨てられた言葉だ。
俯いて指先をこする。爪が伸びてしまっている。
「また、外に出られたら、写真、撮りたいと、思うけど」
ぽつりぽつりと言う。理久の声が「そっか」と優しい音色になる。
「目の前でいろいろ言われたら、人数に関係なくつらいよね。僕のほうが大変だよなんて、なんの慰めにもならないのにごめん」
自分に寄り添ってくれる言葉と思いやり。それに少し息をつく。
「写真一つ認められなかったくらいで落ち込むオレが変なんだ」
「そんなことないよ。誰だって好きなものを否定されたらつらいし」
去年の暮れから腹に溜まっていた黒い気持ちを吐き出す。
「平凡だってばっさり切り捨てられて。写真しか取り柄のないオレから写真をとったらなにも残らない。だから、全部否定されたような気持ちになって……。賞を取れたのはハル君のおかげだって言われたよ。理久もハル君もオレと違ってすごいよな」
すると理久の手が伸びてきた。オレの肩に優しさが染みこむ。その温かさに顔をあげると、理久が真剣な表情で見下ろしている。
「綾斗さんのいいところの一つは、素敵な写真を撮れること。でも、それは綾斗さんが周りにきれいなものを見つけられるからできることだよ。綾斗さんの一番いいところは、目だ。綾斗さんの目がきれいなものを映してる」
理久の骨張った手がぽんぽんと肩を優しく叩く。
「だから、綾斗さんはまた素敵な写真を撮れるよ。きれいなものを見つける才能があるんだから」
「でも……オレ、まだ、外に行く自信はなくて。外に行けば、きれいなものも、あるのかもしれないけど」
「じゃあ今は家でゆっくり元気をチャージしよ? 綾斗さんの目は今日も明日も一年後も変わらない。外に出るのはいつだっていいじゃん」
理久の細い指がオレの両肩にさする。オレを押さえつける蔦が少しだけ解ける。理久が口に弧を描いて微笑する。
「今は家の中でできる楽しいことがあったらもっといいね。僕だって家の中で仕事してるし。そうだ、ゲームをやる元気はある? 案外大人になってからはまっちゃうなんて人もいるんだよ」
微笑む理久が髪をハーフアップに結び直すと、オレの部屋に向かった。部屋にはノートパソコンがある。それでできるゲームの探し方を教えてもらい、試しに一つプレイしてもらう。
さすがに理久は上手い。昔一緒にゲームをしたとき、理久が横であれこれアドバイスをくれたことを思い出す。
「理久、ここで実況してみて。どんな感じ?」
すると理久は笑って頭を掻いた。「やだな」と照れ笑いに眉尻を下げる。
「端から見たら絶対変だよ。パソコンに向かってこんにちはって挨拶して。すごく恥ずかしいからダメ」
そこでいたずらっぽく付け加えた。
「このゲーム、三ヶ月前に実況してる動画がある。興味があったら見てみて」
二日後に料理する約束を残し、理久の背が家に帰っていく。カーテンの隙間から見ていると、ぽつり、二階の部屋に明かりが灯る。オレの孤独が照らされる。
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