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【二】
7
理久とプリンを食べたダイニングテーブルで、夕飯のカップ麺にお湯を注ぐ。ずるずるっ。啜る麺が時間を置きすぎて少しふやけている。
自室に戻って理久が設定してくれたゲーム画面を見つめる。だが、やろうという気力が湧かない。途端に体が重力に引っ張られ、押さえつけられる。ひとりでなにかを行うのは億劫だ。
仕方なく別ウィンドウを立ち上げて、理久の動画を探す。理久のチャンネルをスクロールして、先ほど理久がプレイしてくれた動画を見つけた。再生をクリックすると、「みんなこんにちはー!」とハスキーボイスがさざ波のように広がった。
『今日はこちらのゲームをやってみます! このゲーム、なんとあの会社の最新作で』
画面の端でキービジュアルが動く。理久のイメージの黒いピアスをしたイラスト。だが、水色の髪の毛のあどけない少年のような見た目だ。ピアスとの不釣り合いな雰囲気。どこかミステリアスな深みのある空気を醸し出している。
理久の声が生き生きと弾ける。昔一緒にゲームをしたときと同じ。楽しく仕事をしているんだな。安堵と羨望の棘がちくちくと胸を刺す。
SNSをチェックしてみる。低めのハスキーボイス、丁寧な解説、見やすい長さ。理久の動画のよさが語られている。
オレはちらりと棚の上のカメラを見た。相変わらず埃を被っている。新しくSNSのアカウントを作って過去の写真をアップしてみようかなと一瞬思った。だが、やはりそこまでの気力がない。オレのやる気は闇に呑まれてしまった。
動画を停止し、ため息をついてベッドに腰かける。ハル君と電話ができたのはもう二週間近く前。メッセージの返事が来たのも四日前。
ふと思いついてスマホを取り出し、SNSで園田晴臣の名前を検索する。ビデオ通話は一回だけやったことはある。春にハル君が寮に入ってから顔を見たのはその一度きり。その回数を思うだけで心が空虚に襲われる。SNSでハル君の面影を探す。
案の定、名前で検索すると次々に画像が出てくる。助走する筋肉の引き締まった足。バーを越える緩いカーブの体躯。監督の話を聞く真剣な瞳。その表情はオレがカメラを向けていたときから変わってない。
口元が少しだけ緩む。スマホの画面を人差し指でなぞった。
理久は生き生きと仕事をしている。ハル君は真剣にスポーツと向き合っている。幼馴染みと彼氏が眩しすぎる。
ふと、ハル君のオフショットと思わしき写真が目に入った。タップする。記録更新の日の文字の下、大盛りの肉料理とピースサインのハル君の笑顔が出てくる。へえと思ってそのアカウントの他の写真を見る。
すると片っ端からハル君の画像が出てくる。心臓がどくっと波立つ。ユニフォームを着ていない。ラフな格好や背景から寮の外だと分かる。アカウント名がハル君ではない。だが、本人のアカウントとしか考えられない。
オレの心臓がおかしな音を立てた理由。
それは多くが女性と写っていたからだ。化粧の濃いぴったりとした服に身を包んだ女性。爽やかに髪をまとめた快活そうな笑みを浮かべる女性。たくさんの女性とのツーショットが並ぶ。隣のハル君の日に焼けた肌に光る歯がやけに白い。
自室に戻って理久が設定してくれたゲーム画面を見つめる。だが、やろうという気力が湧かない。途端に体が重力に引っ張られ、押さえつけられる。ひとりでなにかを行うのは億劫だ。
仕方なく別ウィンドウを立ち上げて、理久の動画を探す。理久のチャンネルをスクロールして、先ほど理久がプレイしてくれた動画を見つけた。再生をクリックすると、「みんなこんにちはー!」とハスキーボイスがさざ波のように広がった。
『今日はこちらのゲームをやってみます! このゲーム、なんとあの会社の最新作で』
画面の端でキービジュアルが動く。理久のイメージの黒いピアスをしたイラスト。だが、水色の髪の毛のあどけない少年のような見た目だ。ピアスとの不釣り合いな雰囲気。どこかミステリアスな深みのある空気を醸し出している。
理久の声が生き生きと弾ける。昔一緒にゲームをしたときと同じ。楽しく仕事をしているんだな。安堵と羨望の棘がちくちくと胸を刺す。
SNSをチェックしてみる。低めのハスキーボイス、丁寧な解説、見やすい長さ。理久の動画のよさが語られている。
オレはちらりと棚の上のカメラを見た。相変わらず埃を被っている。新しくSNSのアカウントを作って過去の写真をアップしてみようかなと一瞬思った。だが、やはりそこまでの気力がない。オレのやる気は闇に呑まれてしまった。
動画を停止し、ため息をついてベッドに腰かける。ハル君と電話ができたのはもう二週間近く前。メッセージの返事が来たのも四日前。
ふと思いついてスマホを取り出し、SNSで園田晴臣の名前を検索する。ビデオ通話は一回だけやったことはある。春にハル君が寮に入ってから顔を見たのはその一度きり。その回数を思うだけで心が空虚に襲われる。SNSでハル君の面影を探す。
案の定、名前で検索すると次々に画像が出てくる。助走する筋肉の引き締まった足。バーを越える緩いカーブの体躯。監督の話を聞く真剣な瞳。その表情はオレがカメラを向けていたときから変わってない。
口元が少しだけ緩む。スマホの画面を人差し指でなぞった。
理久は生き生きと仕事をしている。ハル君は真剣にスポーツと向き合っている。幼馴染みと彼氏が眩しすぎる。
ふと、ハル君のオフショットと思わしき写真が目に入った。タップする。記録更新の日の文字の下、大盛りの肉料理とピースサインのハル君の笑顔が出てくる。へえと思ってそのアカウントの他の写真を見る。
すると片っ端からハル君の画像が出てくる。心臓がどくっと波立つ。ユニフォームを着ていない。ラフな格好や背景から寮の外だと分かる。アカウント名がハル君ではない。だが、本人のアカウントとしか考えられない。
オレの心臓がおかしな音を立てた理由。
それは多くが女性と写っていたからだ。化粧の濃いぴったりとした服に身を包んだ女性。爽やかに髪をまとめた快活そうな笑みを浮かべる女性。たくさんの女性とのツーショットが並ぶ。隣のハル君の日に焼けた肌に光る歯がやけに白い。
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