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【四】
5*
心臓が不穏な音を立てる。こめかみがズキズキと痛み、息がはあはあと切れる。血の気が引いた体は指先が氷のように冷たい。
「綾斗」
生ぬるい手にぐいと顎をあげられる。間近ににやりとしたハル君の顔があった。
「同じ男ならできるよな? なにが気持ちいいか分かるだろ」
視界の端に青空の下で飛ぶハル君の写真がちらりと見える。
あの写真を撮ったとき、何日も何時間もハル君を追いかけた。青空の中に立つ高飛びのバー。そこを飛び越える翼の生えたハル君。スポーツドリンクも用意し、首からタオルをかけて、汗を流してひたすらシャッターを切った。あの日々が脳内を駆け巡る。
あの写真は、努力の成果で撮れた写真のはずだ。ハル君とは違うけど、根性がないなんて言われる筋合いはない。
急にこの何ヶ月も鬱屈していた怒りが膨れ上がって爆発した。
見返したい。あの写真はまぐれじゃない。「モデルがいいだけ」なんて評価はもう嫌だ。ハル君にもオレを認めさせる。満足させてやる。
「出せよ」
気づいたらハル君の下着に手をかけていた。涙を拭き、膝立ちで眼前に立つハル君の顔を睨み上げる。
「やってやる」
「そうこなくっちゃ」
ハル君は上機嫌になってTシャツを脱ぎ捨てた。ベッド下に三人分の服が散らばる。まだ繋がったままの理久が後ろから「綾斗さん、無理しなくていいよ」と髪を撫でてきた。背中を繊細になぞられ、その細い指先がオレの怒りをそっと鎮めていく。
理久がこちらの手を取ってきゅっと握ってくる。指の温かさはさっきまでオレを抱きしめてくれていたときと同じだ。後ろから乗り出してきた理久が、耳元へひそひそと囁いてきた。
「僕のだと思ってやって?」
ハル君がジーパンを下着ごと下ろす。途端に男臭い汗のにおいがして、思わず咳き込む。だが、すぐに目線をあげてハル君のそこを手に持った。熱い。自分のものとも理久のものとも違う。肌に焼けた浅黒さとは違う雄を放つような色をしていて、汗のにおいがオレの鼻腔を刺激した。
決心してぐっと眉間に力を入れる。目を背けたくなる凶器にくちびるを横に這わせて軽く皮をつまみ、焦れったくなるように仕向ける。
綾斗、もっと。
そうやって自分を求めさせたくて、雄を見ながら陰嚢を口に含んで舌で転がす。
「綾斗、上手いじゃん。やっぱりこういうことは男がいいのかもな」
思いもかけずハル君のごつごつした手が頭を撫でてきた。今のお前でいい。自分を認められた気がして喜びに顔がかあっと熱くなる。
「お前の撮った俺の写真、すげえ映えるよ」
ハル君の褒め言葉に一瞬違和感を覚える。だが、突然腕を後ろへぐいと引っ張られた。尻がパンッという大きな音を立てて、背骨を快感が駆け抜ける。頭が一瞬真っ白になってぐらりとした。
「綾斗さん、ハルに集中しすぎ。僕のことも感じてよ」
立て続けに尻がパンパンと高い音を打ち鳴らし、体の奥から痺れが押し寄せる。ローションで濡れた後孔が喜びを思い出す。
ところが「おい、口が止まってんだよ」とハル君の低い声が落ちてきた。慌ててハル君のものを握り、くちびるを這わすところからやり直す。
裏筋を舐めあげると、ハル君が「ン……」と声を漏らした。ちらりと上を見るとハル君がとろけるような顔を見せている。
だが、その目線はオレを見ていなかった。ハル君の視線を追いかけた先にあるのは棚だ。棚の上に置いてある、眩しいハル君の写真。
今触れ合ってるオレより大事なのはあの紙切れなんだ。
呆然として口を止めると、ハル君がぎろりと睨んできた。髪をがっと掴まれ、上を向かされる。日焼けした手は空っぽで、冷たい。
「理久と散々やったんだろ? 彼氏にはできねえのかよ?」
すると今度は理久の手がオレの腰を掴んでぐっと力を入れた。がつんと大きく貫かれて、思わず仰け反る。
「ああっ!」
悲鳴をあげたら、それをかき消すような激しい音を立てて理久が腰を打ち付けてくる。パンパンとリズミカルに音が鳴る部屋で、オレの前後で二人が言い合う。
「綾斗」
生ぬるい手にぐいと顎をあげられる。間近ににやりとしたハル君の顔があった。
「同じ男ならできるよな? なにが気持ちいいか分かるだろ」
視界の端に青空の下で飛ぶハル君の写真がちらりと見える。
あの写真を撮ったとき、何日も何時間もハル君を追いかけた。青空の中に立つ高飛びのバー。そこを飛び越える翼の生えたハル君。スポーツドリンクも用意し、首からタオルをかけて、汗を流してひたすらシャッターを切った。あの日々が脳内を駆け巡る。
あの写真は、努力の成果で撮れた写真のはずだ。ハル君とは違うけど、根性がないなんて言われる筋合いはない。
急にこの何ヶ月も鬱屈していた怒りが膨れ上がって爆発した。
見返したい。あの写真はまぐれじゃない。「モデルがいいだけ」なんて評価はもう嫌だ。ハル君にもオレを認めさせる。満足させてやる。
「出せよ」
気づいたらハル君の下着に手をかけていた。涙を拭き、膝立ちで眼前に立つハル君の顔を睨み上げる。
「やってやる」
「そうこなくっちゃ」
ハル君は上機嫌になってTシャツを脱ぎ捨てた。ベッド下に三人分の服が散らばる。まだ繋がったままの理久が後ろから「綾斗さん、無理しなくていいよ」と髪を撫でてきた。背中を繊細になぞられ、その細い指先がオレの怒りをそっと鎮めていく。
理久がこちらの手を取ってきゅっと握ってくる。指の温かさはさっきまでオレを抱きしめてくれていたときと同じだ。後ろから乗り出してきた理久が、耳元へひそひそと囁いてきた。
「僕のだと思ってやって?」
ハル君がジーパンを下着ごと下ろす。途端に男臭い汗のにおいがして、思わず咳き込む。だが、すぐに目線をあげてハル君のそこを手に持った。熱い。自分のものとも理久のものとも違う。肌に焼けた浅黒さとは違う雄を放つような色をしていて、汗のにおいがオレの鼻腔を刺激した。
決心してぐっと眉間に力を入れる。目を背けたくなる凶器にくちびるを横に這わせて軽く皮をつまみ、焦れったくなるように仕向ける。
綾斗、もっと。
そうやって自分を求めさせたくて、雄を見ながら陰嚢を口に含んで舌で転がす。
「綾斗、上手いじゃん。やっぱりこういうことは男がいいのかもな」
思いもかけずハル君のごつごつした手が頭を撫でてきた。今のお前でいい。自分を認められた気がして喜びに顔がかあっと熱くなる。
「お前の撮った俺の写真、すげえ映えるよ」
ハル君の褒め言葉に一瞬違和感を覚える。だが、突然腕を後ろへぐいと引っ張られた。尻がパンッという大きな音を立てて、背骨を快感が駆け抜ける。頭が一瞬真っ白になってぐらりとした。
「綾斗さん、ハルに集中しすぎ。僕のことも感じてよ」
立て続けに尻がパンパンと高い音を打ち鳴らし、体の奥から痺れが押し寄せる。ローションで濡れた後孔が喜びを思い出す。
ところが「おい、口が止まってんだよ」とハル君の低い声が落ちてきた。慌ててハル君のものを握り、くちびるを這わすところからやり直す。
裏筋を舐めあげると、ハル君が「ン……」と声を漏らした。ちらりと上を見るとハル君がとろけるような顔を見せている。
だが、その目線はオレを見ていなかった。ハル君の視線を追いかけた先にあるのは棚だ。棚の上に置いてある、眩しいハル君の写真。
今触れ合ってるオレより大事なのはあの紙切れなんだ。
呆然として口を止めると、ハル君がぎろりと睨んできた。髪をがっと掴まれ、上を向かされる。日焼けした手は空っぽで、冷たい。
「理久と散々やったんだろ? 彼氏にはできねえのかよ?」
すると今度は理久の手がオレの腰を掴んでぐっと力を入れた。がつんと大きく貫かれて、思わず仰け反る。
「ああっ!」
悲鳴をあげたら、それをかき消すような激しい音を立てて理久が腰を打ち付けてくる。パンパンとリズミカルに音が鳴る部屋で、オレの前後で二人が言い合う。
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