冷蔵庫

グラタン

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冷蔵庫

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「おはよう、お母さん。」
「おはよう。彩花。」
私は朝の牛乳を飲もうと、冷蔵庫を開けた。
ガチャ
いつも通りの冷蔵庫だ。
私は牛乳を手に取り、コップへ移すと、ごくごくと飲み干した。


次の日。

「おはよう、お母さん。」
「おはよう…。彩花…。」
今日はお母さんの元気がない。
昨日、お父さんと大喧嘩をしたらしいのだ。
なんでも、私が寝ようと自室に入ったら、怒鳴り声が聞こえて眠れなかった。
まぁ、親の喧嘩に私が入り込まない方がいいだろう。
私は今日も牛乳を飲み干した。


次の日。


「おはよう、お母さん。」
「お、おはよう…」
「お母さん?大丈夫?」
「え…?だ、大丈夫よ…。」
本当だろうか…。
どこからどう見てもお母さんの顔色が悪かった。
後で学校に行く前に少し聞いてみよう。
そう思い、冷蔵庫を開けると、冷蔵庫の中身が、いつもよりも減っていた。
「あ、あの…お母さん。冷蔵庫の中身減っちゃってるよ…。」
「えぇ…そうよね…。買いに行けたら……買ってくるから…。」
「わ、私買ってこようか…?」
「だ、ダメよ!!あ……。その…ありがとね…。でも、気を使わなくていいから…。」
「うん…。ごめんね…。」
私はゆっくりと牛乳を飲み込んだ。


次の日。


「おはよう…。お母さん。」
「…よ…う、……か……」
「え……?」
「…………」
お母さん?
明らかに何かおかしい。
具合でも悪いのだろうか…。
私は冷蔵庫を開ける。
すると、牛乳と瓶詰め以外、何も無かった。
「ね、ねぇ…お母さん…これで大丈夫?夜ご飯とか…」
「…い……ぶ……。…ん…か……る…」
「ねぇ…ホントにどうしたの…?何があったの!?」
私は恐怖のあまり、大きい声を出してしまった。
すると、
「おい!!彩花!!朝から大きい声を出すんじゃない!!」
「ひぃっ!は、はい……。ごめんなさい…。」
お父さんって、あんな人だったっけ?
前はもっと優しい人だったのに…。
「さっさと学校に行け!」
「うん……。」
私は大人しく学校に行こうと思い、牛乳を飲み干し学校へ行った。


次の日。


「お母さん…?おはよう……。」
「ヒヒヒヒヒ……ハヨ………ヒヒヒヒヒ…!」
「お母さん…?ねぇ、どうしちゃったの…?」
「アヒャヒャヒャ…!フフフフフ…!」
私は朝からとても恐ろしい思いをした。
お母さん、明らかにおかしい…。
私が学校に行っている間に何か起こってるのかな…?
すると、お父さんが起きてきた。
「ねぇ…お父さん…。お母さんどうしちゃったの?」
「チッ…お前には関係ない!!さっさと学校に行け!」
「で、でも!」
「うるせぇ!!!!」
ドンッ!!!
私は顔を殴られた。
「痛っ!」
「子供は言うことを聞いてればいいんだよ!」
そう言ったお父さんは、部屋から出ていった。
痛い…痛い…
顔をさすっていると、お母さんがこっちを見て、
「イヤ…イヤ…イヤイヤイヤイヤイヤ…!!!!」
と言いながら、逃げてしまった。
「お母さん…。ねぇ、早く戻って…!」

次の日。

「……おはよう……。」
「ア…ヤカ……!オ…ゥ……ハヨ…」
今日のお母さんも不気味だな…
にしても…。何か変な匂いがするような…。
「お母さん。なんか、変な匂いしない?」
「イヒヒヒヒヒ!!!アヒャヒャヒャ…!」
「はぁ…。もう何言っても無駄か…」
私は昨日飲めなかった牛乳を飲もうと、冷蔵庫を開けた。
すると…
「キャーー!!!何これ!?」
冷蔵庫の中にあったのは、バラバラになった死体だった。
「お母さん!!これなんなの!?」
「イヒヒヒヒヒ!!ォ…トゥサ…ン…。バイバイバイバイバイ……!」
「え……お父さん……?」
冷蔵庫を開けた振動で、死体が動いた。
動いたのは…頭だった。
その頭ゴロリと転がりこっちを見てニヤリと笑っていた。
「お父さん……そんな……いやーーーーーー!!」
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


その後、お母さんは警察に捕まった。
どうやら、私が学校でいない間に、お父さんがお母さんに暴力を振るっていたらしい。
そのせいで、お母さんはおかしくなったんだ…。

でも、その後、私は大人になり、結婚して幸せに暮らした。
そして、子供も産まれた。
そんなある日、私は未だに習慣づいている牛乳を飲もうと、冷蔵庫を開けた。
「キャ!!ちょっとパパ~?やめてよ~!びっくりするじゃない!」
「え?何の話?」
「またまた~!とぼけないで!」
「え?(笑)ホントに何言ってんの?」
「冷蔵庫に頭が入ってるじゃない!」
「え……?頭……?何それ、めっちゃ怖いじゃん…。」
「見てごらん?」
そう言って2人で冷蔵庫を見に行き、冷蔵庫を開けた。
すると、冷蔵庫を開けた振動で頭がこちらを向いた。
「え…ゆきちゃん…?」
冷蔵庫の中に入っていた頭は、私の娘のゆきちゃんの顔をしていた。
その瞬間、私の頭に衝撃が入った。
ゴンッ!
「え」

目が覚めた時、私は冷蔵庫の中にいた。
「ワタシ…アタマダケ…?ァーユキチャンダ」
隣にはゆきちゃんがいた。
そしてその隣には…。
「アヒャヒャヒャ!アヤカダ!イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
「オトーサン…?」
冷蔵庫の中には、ニヤリと笑ったお父さんがいた。
「コレデ…ミンナソロッタネ…。」
冷蔵庫の中にはゆきちゃん、私、お父さん。
そして、1本の牛乳。
外にいる私の旦那は、血まみれだった。
右手には包丁、左手には大きな石。
そうか…私殺されたんだ…。
そして、その瞬間。旦那は頭を引っ張り、ウィッグのようなものを外した。
外した後の後ろ姿は…
「オカーサン…オカーサン…?タスケテー…!」
お母さんそのものだった。

謎に意識があった私は、眠りについた。
そして、こんな夢を見た。
お父さんに殴られ、蹴られ、ナイフで切られているお母さんの姿。
そこには、何も助けず、ただただお母さんを見つめるだけの私がいた。
「もう、お前は買い物にも行くな!外出禁止だ!!」
「でも…ご飯が…!せめて、彩花だけでも食べさせないと…!」
「飯は俺と彩花だけ食べる。知らない男と一緒に出かけていたお前が悪いんだからな。」
「だ、だから…!あれは幼なじみの友達で…」
「うるせぇ!黙ってろ!!」




あ、そっか…
私、お母さんの事、口だけで何も助けてなかったんだ…。
ごめんね…お母さん…。
ゴメンネェ………ゴメン……ゴ………ォ……。
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みんなの感想(1件)

2021.09.05 ユーザー名の登録がありません

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グラタン
2021.09.05 グラタン

ありがとうございます。
たまには、サイコパスな話もいいかなと思い、書いてみました‪‎(◍ᴗ͈ˬᴗ͈)

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