あなたに伝えたいこと

グラタン

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あなたに伝えたいこと

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私の名前は優花。
アルバイト中の24歳。
まだ彼氏はいません。
そんなを癒してくれるのが、家の愛猫ネム!
ネムという名前の由来はいつも眠そうだから。
ネムはグレーの綺麗な毛並みをしていて、撫でていてこっちまで気持ちよくなっちゃうんです!
今日も1日疲れた~!
家に帰って大きな声で、
「ただいまーー!」
と叫びます!
「おかえりなさい、優花。」
まだ実家暮らしなので、お母さんがいつもお出迎えしてくれます。
「ただいま、お母さん!ネムは?元気にしてる?」
「えぇ、今日もちゃんとご飯食べたわよ。」
「良かった~!」
ネムはもう16歳のおばあちゃん。
歩くのもヨタヨタしてるけど、それがとっても可愛いの!
子猫のときも可愛かったけど、シニア猫や、シニア犬を飼った人しか分からない可愛さっていうのがあるんだなぁ~!
ご飯を食べてくれる日もあるし、全然食べない日もあって、少し工夫をすると食べてくれた時の喜びったら、もう最高なの!
私が部屋に入った途端、ネムが
「ニャーー」
と言って、お出迎えしてくれました!
「あらー!ネムちゃん!ただいまでしゅよ~!」
もう、おばあちゃんなのに、私は未だにネムに赤ちゃん扱いをしてしまいます。
嫌だろうってことは分かってるんだけど…
この癖が治らないんですよね…。(汗)
「ネムちゃん、今日もいい子にしてましたかー?」
「ミャ~」
なんと…ネムが私の腕にスリスリしてきました…!
可愛いぃぃー!!!
私に甘えてきて下さっている…!
たまりませんな~!
おっと、ネムはそっぽを向いて歩いて行ってしまいました。
このツンデレ具合も最高ですね!
「やっぱりネムちゃんは可愛いな~。」
「うふふ、そうね。今日はアルバイトどうだったの?」
「ん~まぁ、いつも通りかな…?」
「そう、なら良かったわ。あ、そうそう!今度、ネムを美容院に連れていこうかと思ってるの。優花も一緒に行ってくれる?」
「え!ほんと!?やったー!これはシャッターチャンスがたっくさん……!!」
これは、次の休日が楽しみですねー!
「あー!楽しみ!楽しみになったらお母さん、お腹すいちゃった!」
「もう、しょうがないわね~。何が食べたいの?」 
私はバイト先で、賄いを食べさせて貰っているのですが、その後も働くとお腹すいちゃうんですよね~。
お母さんは、それも知っている上で作ってくれるから本当に優しい!
「う~ん…。簡単なものでいいよ!」
「あら、そう?じゃあ、簡単に作っちゃうわね。」
「うん!ありがとう!」
とっても楽しみ!
お母さんの作る料理はなんでも美味しいんだよな~。

それじゃ、お母さんが料理を作ってくれている間に、ネムについて、少し紹介したいと思います。
実はネムは保護猫で、もう少しで殺処分されてしまいそうだったんです。
そこを、私たち家族がギリギリ救出!
今日は、仕事でいないお父さんも、ネムにはデレデレなんです!
まぁ、気持ちはよく分かるけどね~♡
それに、ネムは少し病気がちなところがあって、今までもちょっと大変な事が多かったんです。
でも、病院通いだったネムですが、最近はかなり元気になってきました。
安心安心!
未だに薬は飲み続けてるけど…。
でも、病気がちだったこともあって、大切に愛情を注いであげようっていう気持ちが芽生えたんです。
皆さんも、猫ちゃん、わんちゃんを大切にしてあげてくださいね!
って、さっきから私誰に話しかけてるんだろう…?
「優花~!出来たわよー!」
「あ、はーい!」
さすがお母さん!
料理が出来るのはやーい!
「わぁー!おいしそー!いただきまーす!」
「はい、どうぞ~。」
「ん~~!おいしー!」
やっぱりお母さんの料理はさいこー!
いつか、感謝の気持ちを伝えられたらいいな~。

「ごちそうさまでしたー!」
「は~い。」
はぁ~!美味しかった!
それじゃあ私はお風呂に入らなきゃ。
「お母さん、お風呂入ってくるね。」
「分かったわ。」
食後のお風呂も最高!
やっぱりバイトの後の癒しに勝てるものはないですね♡

お風呂にも入って、ネムにおやすみも言って、今日は寝ようかな?
私は自分の部屋のベッドに入ると、たちまち眠っていました。




「ん?う~ん……。え!?ここどこ!?」
目を覚ますと、そこは知らない世界で広がっていました。
まわりには何にもなくて、何の音もしない。
そんな世界でした。
「え?ヤバいよね?ヤバいよね!?」
これは、アニメとかでよくありがちなやつですか??
「あの~!誰かいませんか~!」
叫んでみたものの、誰の声も帰ってこないし、自分の声が返ってくるだけ。
「私もしかして、死んじゃったの…?」
突然不安になってきました。
これ、絶対ヤバいです……!
私は立ち上がり、走り出しました。
「誰かー!助けてー!」
すると…!
「うわっ!何!?」
謎の見えない壁をすり抜け、別の所にテレポーテーション!?
私はびっくりして、腰を抜かしてしまいました。
「そういう事ね…」
頭が悪い方ではない私は、全てを理解しました。
私は走れるだけ走りました。
「うおー!!!」
すると、ビュンビュン!とテレポーテーションをして、光っているところに入ることが出来ました。
私が何を言っているか分からないと思いますが、とにかく、とんでもなく凄いところでした。
光っているところに入ると、家のようなところに出ました。
「ここは……?」
階段があったので、恐る恐る上ってみると、足元に1匹の猫がいました。
「え…?ネムちゃん?」
その猫は、どこかネムにそっくりで、とても可愛いのです。
「こんにちは、優花ちゃん。」
「え~!?ネムちゃんが喋った!?」
「うふふ、びっくりさせてごめんね。私、優花ちゃんに伝えたいことがあるんだ。」
「え…?私に伝えたいこと?」
「うん!」
ネムはしっぽをゆらゆらと揺らし、怖がっていない様子。
自分が喋れることに驚いていないのかな…?
「私ね…もう先があまり長くないの。」
「え……?」
私は衝撃でした。
全身に鳥肌がたち、絶望に陥ったような気持ちでした。
「そんな……。」
「でもね、伝えたいことっていうのは、それだけじゃないんだ。」
「え…。」
「もうあまり生きられない。だから、美容院に行ったら、疲れちゃって、もっと元気が無くなっちゃうの。
だから、お母さんに美容院はやめて欲しいって言ってくれないかな?」
「うん…。うん…!分かったよ!ネムちゃん…!」
私は悲しみのあまり泣き出してしまいました。
私にとっての大切な存在がもういなくなってしまうなんて…。
でも、それ以上に嬉しかったのが、自分でまだまだこの家庭で生きていきたいって思ってくれていたことでした。
「ありがとう!優花ちゃん!」
そうネムが言うと、辺りからとても強い光が放たれ、目が覚めました。
起き上がろうとすると、私のお腹の上にネムが眠っていました。
「ネムちゃん…。教えてくれてありがとう…。」
私が頭を撫でてあげると、ゴロゴロと音を立てて、鳴きました。

それから先は、ネムの事をいつも通り、愛情を込めてお世話しました。
そして、お母さんに
「ねぇ、お母さん。ネムちゃんの美容院、やめない?」
「あら、どうして?毛も伸びてきちゃったし、いいんじゃないかしら?」
「でも、もうおばあちゃんだし…体に負担がかかっちゃうと思うんだ。」
「あら…確かにそうね…。じゃあ、少しお勉強して、家でやってみる?トリミング。」
「わぁー!うんうん!私、頑張って勉強してみる!」
そして、私は1ヶ月間お勉強をしました。
そこまでは頑張って生きてくれていたネム。
トリミング当日、私は思っていたより、上手にトリミングが出来ました!
「良かった~!ネムちゃん、気持ちいい?」
「ニャーー!」
「うふふ!良かった!」
「あら、上手じゃない!すごいわ、優花。」
「えへへ、ありがとう!お母さん!」

そして後日、ネムは静かに綺麗に亡くなりました。
私がトリミングを出来るようになるまで待ってくれていたのでしょうか。
ありがとう……ネムちゃん…!
またいつか会おうね!
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