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それぞれの戦い
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「ところでヤル、口を挟んで悪いんだが『地下のミスリル』って何のことだ?」
ミュルガが口を開いた。
一瞬顔をしかめた後、ヤルが答える。
「悪い話じゃねぇ。ここを抜けた後の俺達の活動資金をドワーフの皆様から頂くって話だ。後で詳しく話す。」
ミュルガが肩をすくめた。
「活動資金にってのは反対しねぇ。ただ、俺達への配分はちゃんと考えておいてくれよ。みなお前についてきたが為に苦労したんだからな。」
「ああ。がつがつしないでも、たんまりミスリルはある。」
「そう言うことなら…………当てにして待ってるぜ。ギルマスさんよ。」
ミュルガはニヤリと笑う。
「さ、仕切り直しと行こうか。
気を取り直してゴブリン狩りに向かうぞ、てめぇら。」
ヤルが号令をかけた。
「ちょっと待った。」
「なんだ隼人?」
「水を差すようで悪い。ヤルちょっとだけ時間をくれ。頼みたいことがあるんだ。
皆も悪いがほんの少し出発を待ってくれ」
「ああ。」
皆が頷くのを目の端で確認しつつ
ヤルの腕を引っ張って、部屋の隅に連れて行った。
「なんだ隼人?」
「ちょっと耳を貸せ」
そう言って俺はヤルに耳打ちをした。
「……」
「………?」
「……………」
「!!」
「…………」
「ああ、分かった。その程度のことなら簡単だ。調べておく。」
そう言ってヤルは俺の頼みを快諾してくれた。
「さあ、改めて仕切り直して行くぞてめぇら。」
ヤルが声を上げゼリスとミュルガを見る。
「二人でなんかちょっと感じ悪いぜ……。
隼人も内緒話なら他のところでしろよな。
それと兄貴、
あくまで戦うのはミュルガと俺だけだろ?」
「今回から暫くは俺も戦う。確かに戦闘力じゃミュルガに勝てねぇが、全力でサポートするからな。」
「私も及ばずながらお二人のサポートをしますよ。」
とボロスが続いた。
(二人して感じ悪いか……。
はははは。そりゃそうだ。
でもこういう機会じゃないと…
最近ヤルと話す機会が減ったからな。
まあ、気を取り直して…いくぞ!)
「よしっ、『オーガ討伐隊』も前進。ヤル達シーフがゴブリンの一陣を平らげた後、ゴブリンドームを突っ切るぞ」
「おおおっ!!!!!!」
◼□◼□◼□◼□
ゼリス、ミュルガ間の連携が取れているせいかゴブリンの一陣は瞬く間に殲滅される。
その横を残敵がいないことを確認しつつ、ドワーフと俺は駆け抜けた。
暫し、道なりに進む。
「ここで一旦待機。俺がまず手本を見せる。」
皆一同に頷く。
「袋から魔石5個と一掴みのミスリル屑をくれ。」
「隊長どうぞ」
(隊長?響きが良いなあ)
ウムと頷く。
(先ずはナイフのブレードにマナを通してと…ブンと音がなるイメージだったな。)
『ブン』
うっすらとブレード部分が発光する。
そして、オドを取り込みマナを回す。
『ミシミシミシミシ』
(へっ?)
『パキッ』
ブレード部分がひび割れ砕けた。
(何で……?
まあ借りたソードじゃなくて良かった。
とは言えこいつはヤルと手に入れた最初の刀。残念だ……。今までありがとうな。)
そう心の中で頭を下げ手を合わせた。
(今は感傷に浸る時間ではないな。いくか。)
気を取り直して、ボロスから借りたソードを手に持つ。
再度ブレードにマナを通そうとしかけ、そこで気付いた…
(そうか……。俺はマナ(気)の少なさを補う為にオド(魔素)を体内に取り入れている。
ミスリル(聖銀)で出来ているソードにオド(魔素)が混じっているマナ(気)を通したら…
ある意味当たり前の結果じゃないか。)
自分の迂闊さに今さらながら腹が立った。
◼️□◼️□◼️□◼️□
(『剣に気を通し剣の切れ味を上げる』のを優先するか、『オドの取り込みによる体内力の増加』を優先するかの2択なら……
『オドの取り込み』が優先だな。
借りたソードはナイフと比較して性能は断然上だ。それに前回オーガを倒してから身体能力も上がった。ならば敢えて剣に気を通す必要は薄い。)
そう結論づけると俺は迷わずオドを再度取り込み、マナを回した。
「じゃあ皆行ってくる。この地点まで釣りだして来るから、ちょっと離れた場所で見ていて欲しい。」
「おいっす。」
勢いのまま、オーガ集落手前のかがり火まで駆け抜ける。
一旦そこで息を整え策敵を行った。
(いたいた。しかもお誂え向きに一匹……)
振りかぶって、オーガに向かって石を投げる。
(よっしゃクリーンヒット)
オーガはキョロキョロ辺りを見回している。
(意外とこいつ鈍い?)
もう一回石を投げる。
(クリーンヒット!)
おれの姿をようやく認識したのか、オーガは俺に向かっての突進を開始した。
急いでマナを回し、付かず離れずの距離を保ちながら予定地点まで誘導を始めた。
(釣りだし成功。しかもこいつ俺を舐めているのか仲間を呼びやしない……ラッキーだ。)
追い駆けっこをしばらくして後、ようやく目的地に到着した。
すかさず反転しオーガへと向かう。
敵の攻撃を半身でかわし、予定通り大腿を切りつけ背後に回る。
(アキレス腱はと……)
『ザクッ』とした手応えと同時に、オーガは自重を支えられなくなり、前に倒れる。
そのタイミングで左手に握りしめていたミスリル屑を相手の顔目掛け放つ。
『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』
補助的に風魔法を使用して空間に拡散させる。
オーガは目を抑え、のたうち回る。
『グッギャアアアアアアアア』
(いまだ……)
ほいっ
ほいっ
魔石を口の中に投げ入れる。
(そしてマナを頭に向け放つと……)
『パンパン』
口の周りが弾ける。
(そしてこれで終わりだ)
残り3発を同時に突っ込み破裂させる。
『バンッ』
凄い音と共に頭が完全に吹き飛んだ。
(よしっ)
心臓より魔石を取り出し掲げる
『採ったど~~~~~~~』
『わぁーアアアアアアア』
割れんばかりの声援が辺りに響いた。
「さあ、お前らの番だ。さっきの順調でいくぞ。」
「おおっ」
「じゃあ、行ってくる。」
そう言って俺はオーガ集落へと向かった。
先程と同じようにかがり火前で身を隠し、オーガが単体で現れるのを待つ。
(よし、ちょうど良い感じで一匹だけ来る)
石を握りしめ待つ。
(今だ!!!)
ピュン
ゴキッ
ズドン
(げっ、まさか。気絶させてしまった…。
ここで仕留めるか……。
だが魔石を使うとなると、音で他のオーガが出てくるかもな…)
安全策を取って、オーガが目覚めるのを待つことにする。
待つこと20分くらい経っただろうか、オーガが頭を振りつつ立ち上がった。
(よしっ、今度は少し力を抜いて…)
ひゅん
ポコ
ギロリ
(ヤバい。怒ってる?)
目が合う。
俺は一目散に逃げだすことにする。
あまり距離を開けないよう気をつけて
走る。示し合わせた地点まで来て手を上げた。
「今だ!!」
俺の一声でドワーフの第一陣が作戦を開始した。
『ヤデルポロピティル』
ボコン
オーガのいる場所が陥没した。
セヤッ
「目潰し!!」
間髪入れずミスリル屑が飛ぶ
(少し狙いが甘いか?)
『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』
風魔法でぞっとサポートする。
『グゴォォォガ』
予想通りオーガは目をかきむしり悶える
「よし!!放り込み役」
『おおっ!!!!!』
バンバンバン
(一丁上がり)
「隊長俺…………は?」
ミスリルソードにマナを通しスタンバイをしていたドワーフが呟く。
「まあ、オーガが万一暴れた時のサポートだから……な。
出番がない方が良いって言えば良いんだ…………?」
彼は非常に微妙な顔をした。
「そうだそうだ……
魔石を取り出すと言う大事な役もある。
こう見えてまだ生きているかも知れないし。最後に一刺ししてから魔石を抜いてくれな。そして次の組と交代だ。」
まだ納得がいかない顔をしている彼を下がらせ、次の組と交代させた。
◼️□◼️□◼️□◼️□
結局のところ2陣、3陣とも戦闘役の活躍の場はなかった。
気勢を上げるサポート班と対象的に戦闘班のモチベーションが明らかに下がっているのが分かる。
サポート班で階位が上がった者が出たこともそれに拍車をかけた。
(あまり良い雰囲気じゃあないな。戦闘役の役割そのものを考え直すか。
例えば、いっそのこと全てサポート役に回す……とか?)
そう思った矢先それは起こった。
開けた穴の深さが足りず、オーガが穴の縁に手をかけ抜け出しにかかったのである。
「よっしゃ任せておけ」
そう言うと同時に戦闘役はオーガの腕にソードを振り下ろした。
ザッ
スパン
見事に腕は切断され、オーガの断末魔が響く……
「今だ、放り込め」
そう俺が号令をかけるまでもなく
ポイポイポイ
と魔石が口に放り込まれる。
そして…………
バーンと言う音と共にオーガの頭は破裂した。
(何だ………………
場合によっちゃミスリル屑……
いらないじゃないか……。
攻撃役がいる場合、落とし穴に落として単純にボコれば良いんだな。
ドワーフは素早さは無いが腕力はある。
足さえ止めれば戦いようはあると言う訳か。
サポート役だけの戦術と攻撃役も含めた戦術、二つのバリエーションを組み合わせれば面白いな~。
非力なサポート役が即戦力になるってある意味凄いことだな……)
その後残りの2ローテーも特に問題なく、オーガを倒せていった。
(さて、サポート役の能力ランクをつけるか……)
一通り思い返しサポート役担当の各役割におけるランクを付けていく。
(こいつは命中率は高いが、上手く拡散させて放ることが苦手だな。目潰し役としてはBランクか……。
投げ役としては……うーん。悪くは無いんだが、力任せに当てる感じだな。どっちかと言えば、口の中に置きにいく感じなんだが……。それを考えるとこれもB か……
こいつは、たまたまかもしれないがフワッとした感じでミスリル屑をばら蒔いていたな……Aランクと……)
思った以上ランク分けに時間を有したものの、何とか割り振りを終えた。
(考えてみれば、最初に各役割(ロール)毎のポイントを説明しておけば良かったな。
『俺のやり方を見て真似ろ』
だけだとちょっと乱暴だったな……。)
と少し反省する。
(さてと……)
「これからサポートチームは二つに分ける
A チームはボッタ、ボロ、ボン B チームはボンツ、ポイ、ポメリだ。分かったな?」
皆一様に頷いた。
「ボッタ、ボンツは目潰し役メインで頼む。ボロ、ポイは投げ役メインでいく。」
「俺達は?」
ボン、ポメリが訊ねる。
「各チームとも穴堀役をローテーで回す。
穴堀役についていない時は、メインがある者はメインに就いてくれ。それ以外の役にボン、ボメリの二人は入って欲しい。」
「???」
「A チームを例に取ると
1回目:
目潰し ボッタ 投げ役 ボロ 穴堀り ボン
2回目:
目潰し ボン 投げ役 ボロ 穴堀り ボッタ
3回目:
目潰し ボッタ 投げ役 ボン 穴堀 ボロ
となる。
これだと
目潰しメインのボッタが目潰し2回 穴堀1回となり、投げ役メインのボロは投げ役2回 穴堀1回となるな
そしてボンは全ての役が1回ずつ回ってくる計算だ。分かるか?
取り敢えずこのローテーをそれぞれ2セット頼む。」
「分かった。ちょっと分かりずらいが、とりあえず隊長の言う通りにやって見よう。」
ボンが話を纏めた。
「で、俺達はどうすれば良い?」
次に攻撃役達が聞いてきた。
「次の役割(ロール)をローテーで回して欲しい。
Aチーム(武力サポート)
Bチーム(武力サポート)
その遊撃手(武力サポート)
この3役と
攻撃役だけでオーガ狩りをするチーム、
チームC とするか……
穴堀役
ボコリ役
投げ役
この3役
合わせて6役を一回ずつ交代で回してくれ。
遊撃手は手薄なチームのカバーを頼む。」
「おう、分かった。
◼️□◼️□◼️□◼️□
結局その後、特に大きなトラブルはなく狩りは終わった。
「みなお疲れ様。オーガの魔石は……」
「隊長の分を入れ合計25個です。」
(討伐数25匹か……。まっ、安全率を考えて狩ったからこんなもんだろう。
今日はあくまで『オーガとの闘いの練習』が目的だったしな。)
しかし俺の感想とは別に
「すげぇ」
感嘆の声があちこちから上がった。
「ん?」
「まさか我々がオーガをこんなにも簡単に狩れるなんて……」
「凄い、凄すぎる…………」
「しかもオーガ魔石がこんなに……夢のようだ」
(こんなに……って?
たった25個だぞ?
少なくないか……?
ああっそうか……。
そういえばオーガ魔石1個の価値はゴブリン魔石180個分だったな。
180個×25から使用したゴブリン魔石5個×25を引くと……
ゴブリン魔石……4375個分???
エエエエエエエエエエ
今日半日でノルマの約半分……?
そりゃ凄い……。)
「早く帰って、族長に報告しないと」
ボンが上ずった声でそう言った。
戻る途中については特記することはなかった。
ただ淡々と歩き、ゴブリンドーム口に着く。
(もっともドワーフ達は戦果が戦果だったので興奮はしていたが。)
ドーム手前からドーム内を覗くと、ヤル達はまだゴブリン狩りをしていた。
(ゴブリンの数から察するに第3陣か……)
周りを見回すと同行の戦闘役がウズウズしているのが分かる。
熱い目で俺をじっと見てくるのだ。
(ああ、分かったよ……)
「闘いに参戦したいやつはとっとと行ってこい。それ以外は終わるまでここで待機」
そう俺が発するやいなや、数名がゴブリンドームへと消えていった。
(血の気の多いやつはこれだから困る。
良く見ると……戦闘役全員じゃないか……)
ドワーフ達の参戦で決着はあっと言う間につき、程無く俺達は小部屋へと引き上げることにした。
◼️□◼️□◼️□◼️□
「結果、どうだったんだ?オーガはしっかり狩れたのか?」
部屋に戻ると早速ミュルガが聞いてくる。
俺は大きく頷き、そして皆の前に戦果を広げた。
「………………」
「マジかよ…………」
「オーガに対する戦闘教育は無事終わった。誰一人欠けることなく……な。
後は自分たちの中で波及を考えてくれ。」
「ああ。そうする。」
ボロスが頷いた。
「ケガ人は?まさか出なかったのか?」
と更にミュルガが聞く。
「この中に怪我人がいるように見えるか?」
「いや……見えない。
本当にオーガだったんだよな?
疑っている訳じゃあないんが……
25匹……しかも無傷で……
戦闘体験の乏しいドワーフとお前だけで倒したなんてちょっと信じられなくてな。」
「ああ、間違いない。そして皆元気だ。」
そこまで話たところでボロスが間に入ってきた。
「隼人、氏族を代表して礼を言わせてくれ。
正直俺自身、誰一人として欠けることなく、オーガ討伐から帰って来られるとは予想すらしていなかった。
しかもまさか1日で予想を越える成果を上げるなんぞな……。
本当に感謝してもしきれん。
また改めて氏族長から礼があると思うが、まずは俺から礼を言わしてくれ」
そう言って彼は頭を下げた。
「ボロス頭を上げてくれ。
実際に狩ったのは彼らだ。
彼らをまず称えてやってくれ。」
そう俺が言うと、
総勢12名のドワーフは
皆少し誇らしげで、少し照れくさい顔を浮かべた。
「で、こいつらはお前がいなくとも使い物になるレベルには達したのか?」
「あと数回ぐらいは練習すべきと思うが、
実戦に使えるレベルになったと思う。
ああ、そうそう……一つ聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「どうしてこいつらの得物はそいつなんだ?」
そう言って彼らが腰に下げているソードを指す。
「何か問題か?」
「俺が元いた世界だと、ドワーフの得物はバトルアックスと決まっているんでな。
何故ソードを使うのか不思議に思ったんだ。」
「なるほど戦斧か……」
「ドワーフの筋力は凄い、だが敏捷性には劣る。ソードによる闘いよりアックスを使った闘いの方がその筋力を生かせると思うぞ。」
「斧はその分重いから、取り回しに苦労するんじゃないか?」
「俺は、敏捷性には多少目を瞑っても破壊力をアップした方が良いと思う。
そもそもドワーフには大きな武器『土魔法』がある。
それを使って今回のオーガ戦のように敵の機動力を殺せば良い。
自ら動き回る必要性が無いなら、一撃必殺のアックスの方が良いと思うぞ?」
「なるほどな。」
そう言ってボロスは少し考えこんだ。
「他に気付いた点は?」
「穴を再利用するのも手だな。
一回使った穴の上にうっすら膜を張って再利用するなんてどうだ?
膜程度ならば魔力をそれほど使わずに済むだろう?」
「再利用か……
なるほど……。一から掘るより圧倒的に魔力は少なくて済む……か。
ボン、今聞いた隼人の策と
今日実戦でお前が培ったノウハウを組合わせて我々ドワーフにあった戦術を練るぞ」
「おおせのままに、若。」
今後ここで話した雑談が
ドワーフ千年王国の戦い方の礎になろうとは
この時点の俺に知るよしも無かった。
ミュルガが口を開いた。
一瞬顔をしかめた後、ヤルが答える。
「悪い話じゃねぇ。ここを抜けた後の俺達の活動資金をドワーフの皆様から頂くって話だ。後で詳しく話す。」
ミュルガが肩をすくめた。
「活動資金にってのは反対しねぇ。ただ、俺達への配分はちゃんと考えておいてくれよ。みなお前についてきたが為に苦労したんだからな。」
「ああ。がつがつしないでも、たんまりミスリルはある。」
「そう言うことなら…………当てにして待ってるぜ。ギルマスさんよ。」
ミュルガはニヤリと笑う。
「さ、仕切り直しと行こうか。
気を取り直してゴブリン狩りに向かうぞ、てめぇら。」
ヤルが号令をかけた。
「ちょっと待った。」
「なんだ隼人?」
「水を差すようで悪い。ヤルちょっとだけ時間をくれ。頼みたいことがあるんだ。
皆も悪いがほんの少し出発を待ってくれ」
「ああ。」
皆が頷くのを目の端で確認しつつ
ヤルの腕を引っ張って、部屋の隅に連れて行った。
「なんだ隼人?」
「ちょっと耳を貸せ」
そう言って俺はヤルに耳打ちをした。
「……」
「………?」
「……………」
「!!」
「…………」
「ああ、分かった。その程度のことなら簡単だ。調べておく。」
そう言ってヤルは俺の頼みを快諾してくれた。
「さあ、改めて仕切り直して行くぞてめぇら。」
ヤルが声を上げゼリスとミュルガを見る。
「二人でなんかちょっと感じ悪いぜ……。
隼人も内緒話なら他のところでしろよな。
それと兄貴、
あくまで戦うのはミュルガと俺だけだろ?」
「今回から暫くは俺も戦う。確かに戦闘力じゃミュルガに勝てねぇが、全力でサポートするからな。」
「私も及ばずながらお二人のサポートをしますよ。」
とボロスが続いた。
(二人して感じ悪いか……。
はははは。そりゃそうだ。
でもこういう機会じゃないと…
最近ヤルと話す機会が減ったからな。
まあ、気を取り直して…いくぞ!)
「よしっ、『オーガ討伐隊』も前進。ヤル達シーフがゴブリンの一陣を平らげた後、ゴブリンドームを突っ切るぞ」
「おおおっ!!!!!!」
◼□◼□◼□◼□
ゼリス、ミュルガ間の連携が取れているせいかゴブリンの一陣は瞬く間に殲滅される。
その横を残敵がいないことを確認しつつ、ドワーフと俺は駆け抜けた。
暫し、道なりに進む。
「ここで一旦待機。俺がまず手本を見せる。」
皆一同に頷く。
「袋から魔石5個と一掴みのミスリル屑をくれ。」
「隊長どうぞ」
(隊長?響きが良いなあ)
ウムと頷く。
(先ずはナイフのブレードにマナを通してと…ブンと音がなるイメージだったな。)
『ブン』
うっすらとブレード部分が発光する。
そして、オドを取り込みマナを回す。
『ミシミシミシミシ』
(へっ?)
『パキッ』
ブレード部分がひび割れ砕けた。
(何で……?
まあ借りたソードじゃなくて良かった。
とは言えこいつはヤルと手に入れた最初の刀。残念だ……。今までありがとうな。)
そう心の中で頭を下げ手を合わせた。
(今は感傷に浸る時間ではないな。いくか。)
気を取り直して、ボロスから借りたソードを手に持つ。
再度ブレードにマナを通そうとしかけ、そこで気付いた…
(そうか……。俺はマナ(気)の少なさを補う為にオド(魔素)を体内に取り入れている。
ミスリル(聖銀)で出来ているソードにオド(魔素)が混じっているマナ(気)を通したら…
ある意味当たり前の結果じゃないか。)
自分の迂闊さに今さらながら腹が立った。
◼️□◼️□◼️□◼️□
(『剣に気を通し剣の切れ味を上げる』のを優先するか、『オドの取り込みによる体内力の増加』を優先するかの2択なら……
『オドの取り込み』が優先だな。
借りたソードはナイフと比較して性能は断然上だ。それに前回オーガを倒してから身体能力も上がった。ならば敢えて剣に気を通す必要は薄い。)
そう結論づけると俺は迷わずオドを再度取り込み、マナを回した。
「じゃあ皆行ってくる。この地点まで釣りだして来るから、ちょっと離れた場所で見ていて欲しい。」
「おいっす。」
勢いのまま、オーガ集落手前のかがり火まで駆け抜ける。
一旦そこで息を整え策敵を行った。
(いたいた。しかもお誂え向きに一匹……)
振りかぶって、オーガに向かって石を投げる。
(よっしゃクリーンヒット)
オーガはキョロキョロ辺りを見回している。
(意外とこいつ鈍い?)
もう一回石を投げる。
(クリーンヒット!)
おれの姿をようやく認識したのか、オーガは俺に向かっての突進を開始した。
急いでマナを回し、付かず離れずの距離を保ちながら予定地点まで誘導を始めた。
(釣りだし成功。しかもこいつ俺を舐めているのか仲間を呼びやしない……ラッキーだ。)
追い駆けっこをしばらくして後、ようやく目的地に到着した。
すかさず反転しオーガへと向かう。
敵の攻撃を半身でかわし、予定通り大腿を切りつけ背後に回る。
(アキレス腱はと……)
『ザクッ』とした手応えと同時に、オーガは自重を支えられなくなり、前に倒れる。
そのタイミングで左手に握りしめていたミスリル屑を相手の顔目掛け放つ。
『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』
補助的に風魔法を使用して空間に拡散させる。
オーガは目を抑え、のたうち回る。
『グッギャアアアアアアアア』
(いまだ……)
ほいっ
ほいっ
魔石を口の中に投げ入れる。
(そしてマナを頭に向け放つと……)
『パンパン』
口の周りが弾ける。
(そしてこれで終わりだ)
残り3発を同時に突っ込み破裂させる。
『バンッ』
凄い音と共に頭が完全に吹き飛んだ。
(よしっ)
心臓より魔石を取り出し掲げる
『採ったど~~~~~~~』
『わぁーアアアアアアア』
割れんばかりの声援が辺りに響いた。
「さあ、お前らの番だ。さっきの順調でいくぞ。」
「おおっ」
「じゃあ、行ってくる。」
そう言って俺はオーガ集落へと向かった。
先程と同じようにかがり火前で身を隠し、オーガが単体で現れるのを待つ。
(よし、ちょうど良い感じで一匹だけ来る)
石を握りしめ待つ。
(今だ!!!)
ピュン
ゴキッ
ズドン
(げっ、まさか。気絶させてしまった…。
ここで仕留めるか……。
だが魔石を使うとなると、音で他のオーガが出てくるかもな…)
安全策を取って、オーガが目覚めるのを待つことにする。
待つこと20分くらい経っただろうか、オーガが頭を振りつつ立ち上がった。
(よしっ、今度は少し力を抜いて…)
ひゅん
ポコ
ギロリ
(ヤバい。怒ってる?)
目が合う。
俺は一目散に逃げだすことにする。
あまり距離を開けないよう気をつけて
走る。示し合わせた地点まで来て手を上げた。
「今だ!!」
俺の一声でドワーフの第一陣が作戦を開始した。
『ヤデルポロピティル』
ボコン
オーガのいる場所が陥没した。
セヤッ
「目潰し!!」
間髪入れずミスリル屑が飛ぶ
(少し狙いが甘いか?)
『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』
風魔法でぞっとサポートする。
『グゴォォォガ』
予想通りオーガは目をかきむしり悶える
「よし!!放り込み役」
『おおっ!!!!!』
バンバンバン
(一丁上がり)
「隊長俺…………は?」
ミスリルソードにマナを通しスタンバイをしていたドワーフが呟く。
「まあ、オーガが万一暴れた時のサポートだから……な。
出番がない方が良いって言えば良いんだ…………?」
彼は非常に微妙な顔をした。
「そうだそうだ……
魔石を取り出すと言う大事な役もある。
こう見えてまだ生きているかも知れないし。最後に一刺ししてから魔石を抜いてくれな。そして次の組と交代だ。」
まだ納得がいかない顔をしている彼を下がらせ、次の組と交代させた。
◼️□◼️□◼️□◼️□
結局のところ2陣、3陣とも戦闘役の活躍の場はなかった。
気勢を上げるサポート班と対象的に戦闘班のモチベーションが明らかに下がっているのが分かる。
サポート班で階位が上がった者が出たこともそれに拍車をかけた。
(あまり良い雰囲気じゃあないな。戦闘役の役割そのものを考え直すか。
例えば、いっそのこと全てサポート役に回す……とか?)
そう思った矢先それは起こった。
開けた穴の深さが足りず、オーガが穴の縁に手をかけ抜け出しにかかったのである。
「よっしゃ任せておけ」
そう言うと同時に戦闘役はオーガの腕にソードを振り下ろした。
ザッ
スパン
見事に腕は切断され、オーガの断末魔が響く……
「今だ、放り込め」
そう俺が号令をかけるまでもなく
ポイポイポイ
と魔石が口に放り込まれる。
そして…………
バーンと言う音と共にオーガの頭は破裂した。
(何だ………………
場合によっちゃミスリル屑……
いらないじゃないか……。
攻撃役がいる場合、落とし穴に落として単純にボコれば良いんだな。
ドワーフは素早さは無いが腕力はある。
足さえ止めれば戦いようはあると言う訳か。
サポート役だけの戦術と攻撃役も含めた戦術、二つのバリエーションを組み合わせれば面白いな~。
非力なサポート役が即戦力になるってある意味凄いことだな……)
その後残りの2ローテーも特に問題なく、オーガを倒せていった。
(さて、サポート役の能力ランクをつけるか……)
一通り思い返しサポート役担当の各役割におけるランクを付けていく。
(こいつは命中率は高いが、上手く拡散させて放ることが苦手だな。目潰し役としてはBランクか……。
投げ役としては……うーん。悪くは無いんだが、力任せに当てる感じだな。どっちかと言えば、口の中に置きにいく感じなんだが……。それを考えるとこれもB か……
こいつは、たまたまかもしれないがフワッとした感じでミスリル屑をばら蒔いていたな……Aランクと……)
思った以上ランク分けに時間を有したものの、何とか割り振りを終えた。
(考えてみれば、最初に各役割(ロール)毎のポイントを説明しておけば良かったな。
『俺のやり方を見て真似ろ』
だけだとちょっと乱暴だったな……。)
と少し反省する。
(さてと……)
「これからサポートチームは二つに分ける
A チームはボッタ、ボロ、ボン B チームはボンツ、ポイ、ポメリだ。分かったな?」
皆一様に頷いた。
「ボッタ、ボンツは目潰し役メインで頼む。ボロ、ポイは投げ役メインでいく。」
「俺達は?」
ボン、ポメリが訊ねる。
「各チームとも穴堀役をローテーで回す。
穴堀役についていない時は、メインがある者はメインに就いてくれ。それ以外の役にボン、ボメリの二人は入って欲しい。」
「???」
「A チームを例に取ると
1回目:
目潰し ボッタ 投げ役 ボロ 穴堀り ボン
2回目:
目潰し ボン 投げ役 ボロ 穴堀り ボッタ
3回目:
目潰し ボッタ 投げ役 ボン 穴堀 ボロ
となる。
これだと
目潰しメインのボッタが目潰し2回 穴堀1回となり、投げ役メインのボロは投げ役2回 穴堀1回となるな
そしてボンは全ての役が1回ずつ回ってくる計算だ。分かるか?
取り敢えずこのローテーをそれぞれ2セット頼む。」
「分かった。ちょっと分かりずらいが、とりあえず隊長の言う通りにやって見よう。」
ボンが話を纏めた。
「で、俺達はどうすれば良い?」
次に攻撃役達が聞いてきた。
「次の役割(ロール)をローテーで回して欲しい。
Aチーム(武力サポート)
Bチーム(武力サポート)
その遊撃手(武力サポート)
この3役と
攻撃役だけでオーガ狩りをするチーム、
チームC とするか……
穴堀役
ボコリ役
投げ役
この3役
合わせて6役を一回ずつ交代で回してくれ。
遊撃手は手薄なチームのカバーを頼む。」
「おう、分かった。
◼️□◼️□◼️□◼️□
結局その後、特に大きなトラブルはなく狩りは終わった。
「みなお疲れ様。オーガの魔石は……」
「隊長の分を入れ合計25個です。」
(討伐数25匹か……。まっ、安全率を考えて狩ったからこんなもんだろう。
今日はあくまで『オーガとの闘いの練習』が目的だったしな。)
しかし俺の感想とは別に
「すげぇ」
感嘆の声があちこちから上がった。
「ん?」
「まさか我々がオーガをこんなにも簡単に狩れるなんて……」
「凄い、凄すぎる…………」
「しかもオーガ魔石がこんなに……夢のようだ」
(こんなに……って?
たった25個だぞ?
少なくないか……?
ああっそうか……。
そういえばオーガ魔石1個の価値はゴブリン魔石180個分だったな。
180個×25から使用したゴブリン魔石5個×25を引くと……
ゴブリン魔石……4375個分???
エエエエエエエエエエ
今日半日でノルマの約半分……?
そりゃ凄い……。)
「早く帰って、族長に報告しないと」
ボンが上ずった声でそう言った。
戻る途中については特記することはなかった。
ただ淡々と歩き、ゴブリンドーム口に着く。
(もっともドワーフ達は戦果が戦果だったので興奮はしていたが。)
ドーム手前からドーム内を覗くと、ヤル達はまだゴブリン狩りをしていた。
(ゴブリンの数から察するに第3陣か……)
周りを見回すと同行の戦闘役がウズウズしているのが分かる。
熱い目で俺をじっと見てくるのだ。
(ああ、分かったよ……)
「闘いに参戦したいやつはとっとと行ってこい。それ以外は終わるまでここで待機」
そう俺が発するやいなや、数名がゴブリンドームへと消えていった。
(血の気の多いやつはこれだから困る。
良く見ると……戦闘役全員じゃないか……)
ドワーフ達の参戦で決着はあっと言う間につき、程無く俺達は小部屋へと引き上げることにした。
◼️□◼️□◼️□◼️□
「結果、どうだったんだ?オーガはしっかり狩れたのか?」
部屋に戻ると早速ミュルガが聞いてくる。
俺は大きく頷き、そして皆の前に戦果を広げた。
「………………」
「マジかよ…………」
「オーガに対する戦闘教育は無事終わった。誰一人欠けることなく……な。
後は自分たちの中で波及を考えてくれ。」
「ああ。そうする。」
ボロスが頷いた。
「ケガ人は?まさか出なかったのか?」
と更にミュルガが聞く。
「この中に怪我人がいるように見えるか?」
「いや……見えない。
本当にオーガだったんだよな?
疑っている訳じゃあないんが……
25匹……しかも無傷で……
戦闘体験の乏しいドワーフとお前だけで倒したなんてちょっと信じられなくてな。」
「ああ、間違いない。そして皆元気だ。」
そこまで話たところでボロスが間に入ってきた。
「隼人、氏族を代表して礼を言わせてくれ。
正直俺自身、誰一人として欠けることなく、オーガ討伐から帰って来られるとは予想すらしていなかった。
しかもまさか1日で予想を越える成果を上げるなんぞな……。
本当に感謝してもしきれん。
また改めて氏族長から礼があると思うが、まずは俺から礼を言わしてくれ」
そう言って彼は頭を下げた。
「ボロス頭を上げてくれ。
実際に狩ったのは彼らだ。
彼らをまず称えてやってくれ。」
そう俺が言うと、
総勢12名のドワーフは
皆少し誇らしげで、少し照れくさい顔を浮かべた。
「で、こいつらはお前がいなくとも使い物になるレベルには達したのか?」
「あと数回ぐらいは練習すべきと思うが、
実戦に使えるレベルになったと思う。
ああ、そうそう……一つ聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「どうしてこいつらの得物はそいつなんだ?」
そう言って彼らが腰に下げているソードを指す。
「何か問題か?」
「俺が元いた世界だと、ドワーフの得物はバトルアックスと決まっているんでな。
何故ソードを使うのか不思議に思ったんだ。」
「なるほど戦斧か……」
「ドワーフの筋力は凄い、だが敏捷性には劣る。ソードによる闘いよりアックスを使った闘いの方がその筋力を生かせると思うぞ。」
「斧はその分重いから、取り回しに苦労するんじゃないか?」
「俺は、敏捷性には多少目を瞑っても破壊力をアップした方が良いと思う。
そもそもドワーフには大きな武器『土魔法』がある。
それを使って今回のオーガ戦のように敵の機動力を殺せば良い。
自ら動き回る必要性が無いなら、一撃必殺のアックスの方が良いと思うぞ?」
「なるほどな。」
そう言ってボロスは少し考えこんだ。
「他に気付いた点は?」
「穴を再利用するのも手だな。
一回使った穴の上にうっすら膜を張って再利用するなんてどうだ?
膜程度ならば魔力をそれほど使わずに済むだろう?」
「再利用か……
なるほど……。一から掘るより圧倒的に魔力は少なくて済む……か。
ボン、今聞いた隼人の策と
今日実戦でお前が培ったノウハウを組合わせて我々ドワーフにあった戦術を練るぞ」
「おおせのままに、若。」
今後ここで話した雑談が
ドワーフ千年王国の戦い方の礎になろうとは
この時点の俺に知るよしも無かった。
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