バルタゴ戦記

カササギ

文字の大きさ
38 / 68

たのもう

しおりを挟む
教会を出てすぐ、子供を見つける。

怖い魔女の住む場所を聞くとすぐに場所を指し示してくれた。

何でも、悪い事をすると魔女が拐いに来ると親から言われているらしい。

(なんかナマハゲと同じ扱いだな。)

と苦笑がでた。


指を指した方を見ると山の中腹にポツンと洋館らしき物が建っているのが見える。


(いかにもだな…)


村人が騒ぎ出す前にさっさと出て行くことにした。


◼□◼□◼□◼□


歩くこと2時間程度で古びた洋館へと着く。


「たのもう」

と大きな声でどなる。


(出てこないな?)


「たのも~う」


再度大声でどなる。


「?」

(なんだ出てこない?声が小さいか?)


「たのもーーう」

力いっぱいマナを乗せ、精一杯の大声をだして叫ぶ。


ビリビリビリ

窓ガラスが震える。


「バンッ」

と言う音とともにガルダが出てきた。


「なんだ?人が寝ているというのに。」

顔を真っ赤にして出てくる。

かなり怒り狂っているのが遠目にも分かった。


「お前は…この前の馬鹿じゃないか…。

アハハは我が身に膝まづき許しを請いにきたか。」



「いや?」



「ならば古の英雄と同じく、我と試合う為にきたか。正面から堂々と来るとは良い度胸じゃ。せいぜい楽しませてくれよ。」



「それも違うんだが。」



「ええい、じゃあ何だと言うのだ?」



「俺の行為で下の村の者に迷惑をかけたらしいので、代わりに請け負いにきた。」



「ふん何を勘違いしておる。500個はお主への罰じゃ。一個たりとも負けるつもりはないぞ。」



「その事では無く、村人への毎日のノルマだ。1日5個を10個にとか理不尽な要求をしたらしいじゃないか…。俺のした行為で俺に恨みを勝手にもつのは構わんが、村人へ無理難題はおかしいと思うぞ。」



「……命ごいではないと申すのか?」



「ああ。一括で村人分の魔石も合わせて集めてくるから、その分おれに上乗せしろと言っている。ただし毎日は5個のまま据え置け。」



「……………」

訝しげな表情とともに暫くガルダは考えこんでいた。



「何を企んでいる?」



「何も?大体俺の命をお前握っているんだろ?嘘をついて何か俺が得するか考えてみろ」



「ふん。そうだな。だが言い出した以上約束を違えるでないぞ。お前の蛮勇に免じ10日で2000個で手を打ってやろう。

どうだ?今なら妾の生涯奴隷となるのなら、その命助けてやっても良いぞ。」

そう言ってガルダはニタニタ笑った。


「一つ聞いて良いか?」


「交渉はしない。」


「まけろとかは言わない。ただ純粋に知りたいことがあるんだ。」


訝しげにガルダは頷く。

「なんじゃ申してみろ。」


「因みにホーンラビットの魔石2000個というのは、ガイアウルフの魔石何匹分だ?」


「なんじゃそんなことか…。400匹分くらいじゃ。」


「ガイアウルフのボス個体は普通の個体何匹分だ?」


「ふん、5匹分くらいじゃ。まあ、矮小な人の身、そのようなものを狙えばまず間違いなく命を落とすがの。」


「じゃあ、ダンジョンとかに生息する魔物…例えばゴブリンとかは?」


「ガイアウルフ10匹分だ。もうこれで良いだろう。そこまで言い切ったのだから、1日も期限を割ること許さぬと心得ておけ。もう行け。」


「もう少しだけ…聞きたい。」



「なんだ。そろそろ妾の堪忍袋の尾も切れるぞ」


「これを渡すので、もう少しだけ猶予が欲しい。」


そう言って俺はガイアウルフのボス個体の魔石をガルダに見せる。


「これは…」


「課された2000個とは別だ。」


明らかに目付きが柔ぐのが分かった。


「初めから、そのような態度であったなら、もう少しお前への対応も変わったのにな。で、何か聞きたいことがあるのだろう?」


「この魔石何に使うか知りたい。

それと2000個集めたあかつきには先の約束を果たすとの一筆が欲しい。俺に宿した精霊の名にかけてな。」


「妾の名では駄目か?」


「当事者では駄目だ。俺の心臓に巣くっている奴の名前でだ。」


「まあ、お主のような矮小な身で、精霊をどうこうできまい。

よかろう。」


それを聞き、俺はガルダに魔石を渡した。


ガルダはいとおしそうに魔石を撫でる。

「お前に答えると言ったな。これは我ら魔族の飯じゃ。」


そう言って再度撫でた。


「口に入れて、バリバリ食うのかと思ってた。」


「そんな勿体無いことするか。まあ、量があればそうするのも吝(やぶさ)かでは無いが。お前が約束通り、持ってきたらそうするかの。


さて、約束通り盟約を行ってやろう

『お前が妾の望む魔石を期日までに持ってきた場合』…」


「ちょっとまってくれ…」

俺は途中で遮る。


「なんだ?」


「そこは明確にホーンラビット2000匹分の魔力を有した魔石と言ってもらいたい」


ガルダは顔をしかめる。

「ふん、調子に乗りおって…

『お前が妾ガルダの望む魔石ホーンラビット2000個分の魔力を有した魔石を期日までに持ってきた場合、バルバレスの戒めより解き放つことをバルバレスの名により約束する。』」


ガルダがそう唱えると赤黒い光が俺の心臓の位置で光りそして消えていった。


「これで良いだろう。約束を果たした以上お前も約束を果たせよ。さっさと出ていけ。」


(言われなくてもそうするさ。)

そして俺はさっさと出ていった。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...