バルタゴ戦記

カササギ

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スレイブニル

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『バルバレス、スレイブ……ニルだっけ?これって一体……』


『簡単に言えば軍馬に使われる馬だ。』


『軍馬か……。もしかして大当たりか?』


『ただし……。魔族のな。』


『魔族の軍馬……。そんな馬が人間ごときに捕まるものか?』


『絡め手に使えば可能だろう。お主達人間でも魔法を使える者もいるだろう?眠りの魔法でも使えば不可能ではあるまい。眠らせ弱るのを待てば捕らえることも可能だろう。』


『なるほどな。』


『今もあやつらはかなり弱っているぞ?』


『今にも蹴殺してやると言った感じでこちらを睨んでいるが…… 本当に弱っているのか?』


『良くみろ。餌が無いだろうが?』


『飼葉は沢山あるように見えるが?』


『問題は食べた形跡があるかじゃろう?』


そう言われて見ると食べた形跡はなさそうである。


『魔界の馬が普通の飼料なぞ食うわけ無いだろうが。』


(なるほどな。魔界産故、食べるものも従う基準も違うと言う訳か。よしっ)


「馬丁はいないか?」

大声で呼ぶと


「はい、ただいま」

そう言って14~5才位の男が出てきた。


「この馬を買ったものだが、側で見たい。この檻を開けてくれ」


この馬達だけは厩舎に置かれた檻の中に飼われていた。

(どんだけ警戒されているか分かるよな?)


「買われた方がいると今しがた店主に聞きましたが本当に大丈夫なんですか?」


「何が大丈夫なのか分からないが、これは売り物だったんだろう?」


「そうなんですが……

今までこいつらを買った方で、

五体満足な体で厩舎より出られた者がいないんんです。悪いことは言わない、

今からでも他の馬にされた方が良いと思います」

心底心配しているように見える。

(この馬丁は信頼できそうだな。)


「名前を聞いて良いか?」


「ブルスです。」


「気持ちは嬉しいし、アドバイスも感謝している。だけど主の為にあの馬を俺は買うとこに決めたんだ。檻の鍵を開けてくれ。万一のことがあるといけないから、開けたらここから出ていった方が良い。」


「でもお客さんに万が一のことがあっとら……」


「ならば、10分ほど経ったら様子を見に来てくれ。俺が倒れていたら足でも掴んで引きずりだしてくれると助かる。」


「分かりました。」

そう言って彼は頷いた。


「じゃあ開けますね」


その一言と共に彼は鍵を開け、俺は檻の中へと滑り込んだ。


ガッガ

と床を蹄で蹴る音がし、


『ブルブルブルブル』と威嚇するように鼻をならす。


メスの馬は雄の後ろにまわる。


(かなりの威圧感だな。普通の人じゃ耐えられないだろう)


俺は左手にオーガの魔石を握りしめ、マナの回転数を上げていき、


『渇!』と言ってスレイブニルに向け放った。


その一言によって一瞬スレイブニルの動きが止まる。


来ていた執事服のジャケットを脱ぎ、スレイブニルの顔を覆うと俺は雄の上に飛び乗った。


ビックリしたのか、俺を振り落とそうとあばれる。

俺は振り落とされまいとオドで強化された腕力で首筋をがっちり掴み込む。


1時間ほどの攻防の後、クレイブニルも諦めたのかとうとう大人しくなった。


俺はクレイブニルから降りて、ジャケットを外した。


(以外と体力を消費するもんだな……)


視力が急に戻ったせいか、クレイブニルは目をしばしばさせていた。


「大丈夫ですか?」


横から声が聞こえた。


「まあ、なんとかな。それより、喉が乾いた水を持ってきてくれ」


「はいっただいま。」

そう言って走り去る気配がした。


俺はクレイブニルの雄に近づき、ゴブリン魔石を口に押し込む。


一瞬驚いた表情を浮かべた後、コリコリコリとかじり始めた。

同じように雌のクレイブニルにも与えると

両馬とも顔を擦り寄せてきた。


(よし、手懐けた。)


俺は檻から二頭とも出し厩舎から出た。


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