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気まずい気まずい気まずい
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あの後、お風呂に入らせて貰ったあと、部屋に朝食を運んで貰った。
「何だか世界が違って見えるよ。勿論、ステータスが今までとは段違いに上がってるっていう事もあるんだろうけど、そうだノア」
コーヒーみたいな香ばしい薫りのする飲み物を飲みながら、エルフィードが気遣うように言う。
「体は大丈夫?どこか痛い所はない?もしあったらすぐヒーリングするから言って」
「あっ、ウン、大丈夫。どこも痛くないし、元気ダヨ」
周りに侍女さん達がいるから、小声で返事する。
まあ、みんなは儀式が何かは知らないんだから気にし過ぎかもしれないけど、昨日の今日でこんなにエルフィードの態度が砕けちゃってるの見たら、何かバレそうで気が気じゃない。
実はさっきお風呂に行く時、エルフィードに先に部屋を出て貰って、その隙にプリフィケーション使っちゃった。
だって・・・匂いがさ・・・
侍女さんに傍に来られたら、絶対バレるじゃん。
あ、それと、エルフィードの持っていたスキルも、ちゃんと入って来てた。
その辺りはまた後で一人になった時に、ゆっくり確認するつもり。
それはそれとして、よ。
夜ってほら、そっちの方向に行きやすいっていうか、何となくそんな雰囲気あるじゃん?
お酒の力にも頼っちゃったしさ。
だから何とかなったけど、朝になったらそんな酒の魔力なんか消え去ってるし、侍女さんとか侍従さんとか、また色んな人に囲まれてこう、ご飯食べてると、どんどん現実に戻って来るっていうか。
「だったら良かった。今日は私も少しゆっくりしてノアと一緒に過ごすつもりだよ」
そんなことを言ってエルフィードはにこにこしてたけど、さっきから私は別のことが気になって気になって、完全に上の空になってた。
和やかでほわほわした雰囲気の中で、私だけが切実な問題に対面してる。
―――いや、私、どんな顔してカインに会ったらいいのぉ!?
だって。昨夜何が行われたか、あいつ分かってるんだよ。その上で顔合わせるって、相当ハードル高くない?
ううん、顔合わせるだけならまだしも、カインのステータスもまだ上がり切ってないし、ってことは、まだする必要あるってことで、他の人としちゃった直後にとか、ホントにどう振舞えばいいのっ!?
あああ、もう、考えただけで気まずい気まずい気まずい。
出来れば今日はもう会わないでいたい。
「―――で、聞いてる?ノア?良かったら、着替えた後、王宮内を散策しようか、って言ったんだけど」
「・・・へ?あ、あー!それ、いいかもね!そうしようそうしよう!」
渡りに船と、私はエルフィードの提案に飛びついた。
うんうん、こうやって一日エルフィードに付き合ってれば、カインとは会わずに済むじゃん。
・・・まぁ、問題の先送りってことになるんだろうし、これも私の悪い癖だって分かってるけど。
でも、ごめんカイン、落ち着きたいから一日、時間ちょうだい。
とか思ってた私が甘かった。
エルフィードと王宮内を色々見て回った後、昼食を中庭の東屋で食べることになった。
綺麗な花がたくさん咲いてるし、風も気持ちいいし、ピクニックみたいで割と楽しい。
だけどエルフィードが侍女さん達がいる中でも、
「ほらノア。これも美味しいよ。食べさせてあげるね」
「い、いいよ、自分で食べられるからっ。皆に見られてるし、私こういうの人前でやるの恥ずかしいし」
まるで付き合いたての恋人同士みたいに、あまーい態度で、変な汗をかきっぱなしだった。
うーん、これはこれで苦行だったかも。
そんなことを思いながら、大きな池にいた鯉と金魚を掛け合わせたみたいな綺麗な魚に餌をやってたら、ふいにざわざわと周りの侍女さん達が騒めいた。
「カイン?どうしたのですか、何か用でも?」
隣にいたエルフィードの声に振り向くと、そこには詰襟のきちっとした騎士服を着たカインが立ってた。
似合ってて正直、ドキッとするほどカッコいい。
「何か用だと?あるに決まってんだろ。おいノア、約束忘れてねぇだろうな」
「約束?ど、どれ?」
ぱっと思い付いたのは一日一回ヤらせろ、ってやつだけど、あれはカインの家に居させてもらう為の約束だったし、それ以外になんかあったっけ?
「とにかく、ノアは連れて行く。いいな」
そう言ってカインが私の腕を掴むと、エルフィードがその手を上から掴んだ。
「待って下さい。今日は一日ノアをゆっくりさせてあげる予定です。昨夜は疲れさせてしまいましたしね」
意味ありげに微笑むエルフィードに、カインの目が鋭くなる。
剣呑な雰囲気に私は慌てた。
「あっ、待って大丈夫!私、元気いっぱいだし、約束してたよね、ゴメンゴメン。行こ、カイン」
そう言うと、エルフィードは渋々手を離した。
「そう・・・?ノアがそう言うなら良いんだけど、カイン、くれぐれもノアに無理強いなどしないで下さいね」
「・・・行くぞ」
エルフィードの言葉には答えないで、カインは私の腕を掴んだまま歩き出した。
*******
後半以降、蚊に刺されまくって気が散りながら書きました( ;∀;)
「何だか世界が違って見えるよ。勿論、ステータスが今までとは段違いに上がってるっていう事もあるんだろうけど、そうだノア」
コーヒーみたいな香ばしい薫りのする飲み物を飲みながら、エルフィードが気遣うように言う。
「体は大丈夫?どこか痛い所はない?もしあったらすぐヒーリングするから言って」
「あっ、ウン、大丈夫。どこも痛くないし、元気ダヨ」
周りに侍女さん達がいるから、小声で返事する。
まあ、みんなは儀式が何かは知らないんだから気にし過ぎかもしれないけど、昨日の今日でこんなにエルフィードの態度が砕けちゃってるの見たら、何かバレそうで気が気じゃない。
実はさっきお風呂に行く時、エルフィードに先に部屋を出て貰って、その隙にプリフィケーション使っちゃった。
だって・・・匂いがさ・・・
侍女さんに傍に来られたら、絶対バレるじゃん。
あ、それと、エルフィードの持っていたスキルも、ちゃんと入って来てた。
その辺りはまた後で一人になった時に、ゆっくり確認するつもり。
それはそれとして、よ。
夜ってほら、そっちの方向に行きやすいっていうか、何となくそんな雰囲気あるじゃん?
お酒の力にも頼っちゃったしさ。
だから何とかなったけど、朝になったらそんな酒の魔力なんか消え去ってるし、侍女さんとか侍従さんとか、また色んな人に囲まれてこう、ご飯食べてると、どんどん現実に戻って来るっていうか。
「だったら良かった。今日は私も少しゆっくりしてノアと一緒に過ごすつもりだよ」
そんなことを言ってエルフィードはにこにこしてたけど、さっきから私は別のことが気になって気になって、完全に上の空になってた。
和やかでほわほわした雰囲気の中で、私だけが切実な問題に対面してる。
―――いや、私、どんな顔してカインに会ったらいいのぉ!?
だって。昨夜何が行われたか、あいつ分かってるんだよ。その上で顔合わせるって、相当ハードル高くない?
ううん、顔合わせるだけならまだしも、カインのステータスもまだ上がり切ってないし、ってことは、まだする必要あるってことで、他の人としちゃった直後にとか、ホントにどう振舞えばいいのっ!?
あああ、もう、考えただけで気まずい気まずい気まずい。
出来れば今日はもう会わないでいたい。
「―――で、聞いてる?ノア?良かったら、着替えた後、王宮内を散策しようか、って言ったんだけど」
「・・・へ?あ、あー!それ、いいかもね!そうしようそうしよう!」
渡りに船と、私はエルフィードの提案に飛びついた。
うんうん、こうやって一日エルフィードに付き合ってれば、カインとは会わずに済むじゃん。
・・・まぁ、問題の先送りってことになるんだろうし、これも私の悪い癖だって分かってるけど。
でも、ごめんカイン、落ち着きたいから一日、時間ちょうだい。
とか思ってた私が甘かった。
エルフィードと王宮内を色々見て回った後、昼食を中庭の東屋で食べることになった。
綺麗な花がたくさん咲いてるし、風も気持ちいいし、ピクニックみたいで割と楽しい。
だけどエルフィードが侍女さん達がいる中でも、
「ほらノア。これも美味しいよ。食べさせてあげるね」
「い、いいよ、自分で食べられるからっ。皆に見られてるし、私こういうの人前でやるの恥ずかしいし」
まるで付き合いたての恋人同士みたいに、あまーい態度で、変な汗をかきっぱなしだった。
うーん、これはこれで苦行だったかも。
そんなことを思いながら、大きな池にいた鯉と金魚を掛け合わせたみたいな綺麗な魚に餌をやってたら、ふいにざわざわと周りの侍女さん達が騒めいた。
「カイン?どうしたのですか、何か用でも?」
隣にいたエルフィードの声に振り向くと、そこには詰襟のきちっとした騎士服を着たカインが立ってた。
似合ってて正直、ドキッとするほどカッコいい。
「何か用だと?あるに決まってんだろ。おいノア、約束忘れてねぇだろうな」
「約束?ど、どれ?」
ぱっと思い付いたのは一日一回ヤらせろ、ってやつだけど、あれはカインの家に居させてもらう為の約束だったし、それ以外になんかあったっけ?
「とにかく、ノアは連れて行く。いいな」
そう言ってカインが私の腕を掴むと、エルフィードがその手を上から掴んだ。
「待って下さい。今日は一日ノアをゆっくりさせてあげる予定です。昨夜は疲れさせてしまいましたしね」
意味ありげに微笑むエルフィードに、カインの目が鋭くなる。
剣呑な雰囲気に私は慌てた。
「あっ、待って大丈夫!私、元気いっぱいだし、約束してたよね、ゴメンゴメン。行こ、カイン」
そう言うと、エルフィードは渋々手を離した。
「そう・・・?ノアがそう言うなら良いんだけど、カイン、くれぐれもノアに無理強いなどしないで下さいね」
「・・・行くぞ」
エルフィードの言葉には答えないで、カインは私の腕を掴んだまま歩き出した。
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後半以降、蚊に刺されまくって気が散りながら書きました( ;∀;)
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