64 / 154
第三章 動乱と日常【魔族内乱編】
第11話 ミラとお買い物
しおりを挟む
デミウルゴス神歴八四六年――七月一六日。
夜が明け、スマートフォンのアラーム音がけたたましく鳴り響き、コウヘイは目を覚ました。
遅くまで飲んでいたコウヘイが、寝坊しないように目覚ましをセットしておいたからなのだが、目を覚ますなりコウヘイの口から出たのは文句だった――――
「あー、結局ゆっくり眠れなかったー」
アラームを止めるために腕を伸ばすも、エルサが絡みついておりそれが中々難しかった。
「な、何事ですか!」
「あ、おはよう、ミラ。悪いけどそこの四角いやつ取ってくれないかな」
アラーム音に驚いたのか、ミラがパニック状態で杖を取り出し身構えていた。
「大丈夫だよ。魔道具の一種で、音を出して起こしてくれる物なんだ」
僕は適当に説明し、ミラからスマートフォンを受け取り、アラーム音を止めた。
「エルサっ、朝だよ。起きてー」
昨日は、エルサも大分飲んでいたし、こりゃ無理かな、と考えながらやっとの思いでベッドを抜け出し、僕は身支度を整えた。
その間にミラには、イルマたちを起こしに行ってもらった。
「あのーコウヘイさん」
「ん、どうした?」
「お二人とも起きてくれません」
戻って来たミラが半開きの扉から顔だけを出して困り顔で教えてくれた。
遅くまで飲んでたからなー、それなら仕方がない。
「そっか、それなら二人で先に朝食を済ませちゃおう。幸い今日は晴れているから、先に買い物をするのでもいいしね」
「あ、はい。急ぎ支度します」
宿屋の窓を開けると、雨上がりの翌日らしいじめじめとした湿り気のある風が部屋の中に流れ込んできた。
晴れたといってもこればかりは仕方がないよね。
僕はそう納得しながら太陽の陽の光を浴びて、「ううーん」と伸びをする。
「って、ちょっとミラ!」
「はい、なんでしょうか?」
ミラは本気で気付いていないのか、コテンと小首を傾げた。
ミラのその小さく細い指が、寝間着のボタンに掛かっており、僕が部屋にいるにも拘らず、脱ごうとしていたのである。
「ぼ、僕は先に下に行っているから、着替えたら下りてきて」
「え? ああ、私は別に構わないですよ」
ミラはそう言って、着替えを続行した。
ミラが気にしなくても、僕が気にするんだってえええー! と内心叫びながら、僕はアクセラレータを掛けたの如く猛スピードで駆け出し部屋を出た。
「はあ、エルサじゃないけど、この世界の女の子たちの貞操観念はどうなっているんだよ」
僕は頬が熱くなるのを感じながら一人カウンターに座り、ミラが来るのを待ってから朝食にした。
相変わらず、朝食は、キノコサラダ、キノコステーキとキノコスープといったキノコのフルコースだった。
ミラなんて、それを見て一瞬、顔をしかめて僕の方を見たほどだった。
僕はそれが定番だよと教えてあげたら、納得したのかわからないけど黙々と食べはじめた。
「あ、これ美味しいです」
そう、ただのキノコに見えて素材の味を生かした味付けで、これはこれでいけるのだった。
「そう言えば、買い物は私なんかとで良いんですか?」
「どうしてそう思うの?」
ふと思ったのか、ミラが突然不安そうな顔をした。
「いえ、昨晩の話ではエルサさんがコウヘイさんと洋服を買いに行くと言っていたので……」
「え、僕はそんな話聞いていないけど?」
おかしいな、隣にいたはずなのにその話に全く身に覚えがない。
これが俗にいう、酔って記憶を無くすってやつだろうか……
「みなさん相当酔ってましたからね。それで覚えていないのでしょう」
「そう言えば、ミラは大丈夫なの? ミラも大分飲んでいたと思ったけど」
「ああ、あれはふつうの果実のしぼり汁ですよ。お酒は苦手で……」
「ふーん、そうだったんだ」
メニュー表が無いから、ジュースがあることに気付いていなかった。
「まあ、覚えていないからエルサも怪しいもんだよ。それに起きてこない方が悪い」
「そ、そうでしょうか……」
僕はそう言ったけど、ミラは何か遠慮した風に言ってくる。
ミラとは昨日はじめて話をしただけで、性格を把握している訳じゃないけど、目の前のミラから大分大人しい印象を受けた。
本当にあの謁見の間の出来事は何だったんだろう。
思い出しただけでも背筋が凍るほど、あの殺気は凄まじかった。
まあ、わからないことを考えても今は仕方がない。
「それに、ミラのためでもあるんだよ」
「え、私のためですか?」
「そう、マジックポーションで魔力が回復できるか試したいと思わない?」
僕がそう言うと、満開の花のような笑顔がミラの顔に広がった。
「はい、是非!」
その元気のよい返事を聞いて、後輩ができたみたいで嬉しくなった。
「よし、さっさと朝食を済ませて買い物に行こう」
そうは言ったものの、二人ともキノコステーキとキノコスープをお替りしてしまった。
だって美味しいんだから仕方がない。
――――――
晴れているとは言え、雨が止んだばっかりの舗装がされていない道は、いたるところに水溜りがあり、馬車の轍の跡でデコボコとした道は、非常に歩き辛かった。
足元に気を配りながら、目抜き通りを歩くこと一〇分ほどが経ち、究極のセリフを僕は言った。
「そう言えば、道具屋ってどこにあるんだろう?」
何の気なしに町へ繰り出したけど、その実、道具屋の場所を知らなかった。
適当に歩いていれば見つかるかなと思ったけど、出店の殆どはちょっとした雑貨やアクセサリー類の他に軽食を売っているこぢんまりとしたものだった。
「え? コウヘイさんが知っているのだとばかり思っていましたけど」
だから僕の間抜けな質問に、ミラが少し呆れた様子を見せた。
結局、冒険者ギルドへ行き、アリエッタさんに道具屋の場所を聞いた。
念のため、素材集計の進捗状況確認も兼ねていたけど、いつ終わるのかも含めてもう少し時間が欲しいとのことだった。
残念、エヴァのパーティー登録の際にまた確認することにしよう。
「おっ、ここだね」
看板には、道具屋テッドと書かれていた。
ふつう道具屋といったら、冒険者ギルドと門を結ぶ冒険者の動線沿いにあるものとばかり思っていたけど、アリエッタさんに教えてもらった道具屋は違った。
その道具屋は、目抜き通りや冒険者ギルドから少し離れた場所にあり、どちらかと言うと、領主の館の近くで町の中心部に位置していた。
冒険者が立ち寄るにはちょっと都合の悪い立地だった。
そりゃあ見つからなかった訳だよ。
「マジックポーションはどこかなー」
店の中は、イルマの店とは大違いで整理されていた。
それでも、色々な物が所狭しと陳列されており、目当ての物を探すのに苦労した。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
僕が棚を眺めながらカニ歩きしている様子を見かねたのか、お店の人が声を掛けてくれた。
というか、案の定、僕たち以外のお客がいなかったので暇なのかもしれない。
「あ、はい、マジックポーションを……」
僕は返事をして目当ての物を伝えようとして固まった。
「マッジクポーションですね。それなら……ん、どうなさいました?」
「あ、いえ、知人というか知っているような人に似ている気がして……」
「はい?」
あまりのことで僕が変な言葉遣いとなり、それを不思議そうにしていた。
その女性は、ライトグリーンの髪で髪型がお河童だった。
そう、サーベンの森で出会った少女の面影があったのである。
「あら、もしかしてディビーのお知り合いの方です?」
「でぃ、ディビー?」
「ええ、髪型と髪の色を見て仰っているのでなくて?」
正に僕が気になったポイントを指摘したので、間違いなかった。
それにしても自分の格好が変わっているのを自覚しているんだね、と僕は自然と口角が上がって苦笑してしまった。
「あ、はい、帝都の近くの森で、似ている方に助けられたことがありまして」
「それなら間違いなくディビーだと思いますよ。丁度今年から帝都の魔術学園に通っているのですよ」
この人は、店主であるテッドさんの奥さんで、テレーナさんというらしい。
そこで話を聞いてみると、どうやらあの謎の少女四人組は、ここテレサ出身だということがわかった。
その中の一人に、ここテレサ領主の娘であるローラ嬢もいるらしかった。
テレーナさんの説明で、
「そのゼロは無限大」
だとか、
「魔力を感じなさい。せっかく良いスキルがあるのにもったいないわよ」
などとと言った金髪碧眼の女の子が、そのローラ嬢らしい。
もしかしたら、僕のスキルのことがわかっていての発言だとしたら凄いことだ。
鑑定眼のスキル持ちかもしれないと思ったけど、聖女オフィーリアのことを思い出して頭を振った。
鑑定眼は、少なくとも相手に接触する必要があったからだ。
そう考えると、より謎が深まるばかりだ。
ローラ嬢のことはまたあとで考えることにし、更に話を聞くと、その四人は小さいころからラルフさんに稽古をつけてもらっていたという事実が判明した。
恐らくラルフさんの弟子で、無詠唱のことも知っているのだろう。
どうやら、僕が魔法の三大原則に違和感を感じる要因となった出会いの元は、ラルフさんにあったようだ。
「これは、あとでラルフさんにお礼を言わないといけないな」
それと同時に、ラルフさんがギルドマスターで大丈夫だろうかと不安がってごめんなさい、と心の中で謝るのも忘れない。
それにしても、縁という物は凄いなと思った。
こんな場所で繋がるとは思ってもみなかった。
お目当てのマジックポーション等消耗品を大量に買い込み、道具屋テッドをあとにした。
どうしてこんな立地の悪い場所に店舗を構えているのかと思ったら、冒険者ギルドや今の目抜き通りができる前からここに店舗を構えており、町の発展に伴い必然的にこの立地となったようだった。
つまりは、ここが村のときからのお店で老舗なのだろう。
この出逢いに感謝して、このお店を贔屓にすることを僕は決めた。
――――テレーナに聞いた新事実は、コウヘイを驚かせるものばかりであった。
ただ、ラルフがローラたち少女四人組の訓練を監督していたことに間違いはないのだが、その発想や彼女たちの強さの秘訣は、また別のお話。
夜が明け、スマートフォンのアラーム音がけたたましく鳴り響き、コウヘイは目を覚ました。
遅くまで飲んでいたコウヘイが、寝坊しないように目覚ましをセットしておいたからなのだが、目を覚ますなりコウヘイの口から出たのは文句だった――――
「あー、結局ゆっくり眠れなかったー」
アラームを止めるために腕を伸ばすも、エルサが絡みついておりそれが中々難しかった。
「な、何事ですか!」
「あ、おはよう、ミラ。悪いけどそこの四角いやつ取ってくれないかな」
アラーム音に驚いたのか、ミラがパニック状態で杖を取り出し身構えていた。
「大丈夫だよ。魔道具の一種で、音を出して起こしてくれる物なんだ」
僕は適当に説明し、ミラからスマートフォンを受け取り、アラーム音を止めた。
「エルサっ、朝だよ。起きてー」
昨日は、エルサも大分飲んでいたし、こりゃ無理かな、と考えながらやっとの思いでベッドを抜け出し、僕は身支度を整えた。
その間にミラには、イルマたちを起こしに行ってもらった。
「あのーコウヘイさん」
「ん、どうした?」
「お二人とも起きてくれません」
戻って来たミラが半開きの扉から顔だけを出して困り顔で教えてくれた。
遅くまで飲んでたからなー、それなら仕方がない。
「そっか、それなら二人で先に朝食を済ませちゃおう。幸い今日は晴れているから、先に買い物をするのでもいいしね」
「あ、はい。急ぎ支度します」
宿屋の窓を開けると、雨上がりの翌日らしいじめじめとした湿り気のある風が部屋の中に流れ込んできた。
晴れたといってもこればかりは仕方がないよね。
僕はそう納得しながら太陽の陽の光を浴びて、「ううーん」と伸びをする。
「って、ちょっとミラ!」
「はい、なんでしょうか?」
ミラは本気で気付いていないのか、コテンと小首を傾げた。
ミラのその小さく細い指が、寝間着のボタンに掛かっており、僕が部屋にいるにも拘らず、脱ごうとしていたのである。
「ぼ、僕は先に下に行っているから、着替えたら下りてきて」
「え? ああ、私は別に構わないですよ」
ミラはそう言って、着替えを続行した。
ミラが気にしなくても、僕が気にするんだってえええー! と内心叫びながら、僕はアクセラレータを掛けたの如く猛スピードで駆け出し部屋を出た。
「はあ、エルサじゃないけど、この世界の女の子たちの貞操観念はどうなっているんだよ」
僕は頬が熱くなるのを感じながら一人カウンターに座り、ミラが来るのを待ってから朝食にした。
相変わらず、朝食は、キノコサラダ、キノコステーキとキノコスープといったキノコのフルコースだった。
ミラなんて、それを見て一瞬、顔をしかめて僕の方を見たほどだった。
僕はそれが定番だよと教えてあげたら、納得したのかわからないけど黙々と食べはじめた。
「あ、これ美味しいです」
そう、ただのキノコに見えて素材の味を生かした味付けで、これはこれでいけるのだった。
「そう言えば、買い物は私なんかとで良いんですか?」
「どうしてそう思うの?」
ふと思ったのか、ミラが突然不安そうな顔をした。
「いえ、昨晩の話ではエルサさんがコウヘイさんと洋服を買いに行くと言っていたので……」
「え、僕はそんな話聞いていないけど?」
おかしいな、隣にいたはずなのにその話に全く身に覚えがない。
これが俗にいう、酔って記憶を無くすってやつだろうか……
「みなさん相当酔ってましたからね。それで覚えていないのでしょう」
「そう言えば、ミラは大丈夫なの? ミラも大分飲んでいたと思ったけど」
「ああ、あれはふつうの果実のしぼり汁ですよ。お酒は苦手で……」
「ふーん、そうだったんだ」
メニュー表が無いから、ジュースがあることに気付いていなかった。
「まあ、覚えていないからエルサも怪しいもんだよ。それに起きてこない方が悪い」
「そ、そうでしょうか……」
僕はそう言ったけど、ミラは何か遠慮した風に言ってくる。
ミラとは昨日はじめて話をしただけで、性格を把握している訳じゃないけど、目の前のミラから大分大人しい印象を受けた。
本当にあの謁見の間の出来事は何だったんだろう。
思い出しただけでも背筋が凍るほど、あの殺気は凄まじかった。
まあ、わからないことを考えても今は仕方がない。
「それに、ミラのためでもあるんだよ」
「え、私のためですか?」
「そう、マジックポーションで魔力が回復できるか試したいと思わない?」
僕がそう言うと、満開の花のような笑顔がミラの顔に広がった。
「はい、是非!」
その元気のよい返事を聞いて、後輩ができたみたいで嬉しくなった。
「よし、さっさと朝食を済ませて買い物に行こう」
そうは言ったものの、二人ともキノコステーキとキノコスープをお替りしてしまった。
だって美味しいんだから仕方がない。
――――――
晴れているとは言え、雨が止んだばっかりの舗装がされていない道は、いたるところに水溜りがあり、馬車の轍の跡でデコボコとした道は、非常に歩き辛かった。
足元に気を配りながら、目抜き通りを歩くこと一〇分ほどが経ち、究極のセリフを僕は言った。
「そう言えば、道具屋ってどこにあるんだろう?」
何の気なしに町へ繰り出したけど、その実、道具屋の場所を知らなかった。
適当に歩いていれば見つかるかなと思ったけど、出店の殆どはちょっとした雑貨やアクセサリー類の他に軽食を売っているこぢんまりとしたものだった。
「え? コウヘイさんが知っているのだとばかり思っていましたけど」
だから僕の間抜けな質問に、ミラが少し呆れた様子を見せた。
結局、冒険者ギルドへ行き、アリエッタさんに道具屋の場所を聞いた。
念のため、素材集計の進捗状況確認も兼ねていたけど、いつ終わるのかも含めてもう少し時間が欲しいとのことだった。
残念、エヴァのパーティー登録の際にまた確認することにしよう。
「おっ、ここだね」
看板には、道具屋テッドと書かれていた。
ふつう道具屋といったら、冒険者ギルドと門を結ぶ冒険者の動線沿いにあるものとばかり思っていたけど、アリエッタさんに教えてもらった道具屋は違った。
その道具屋は、目抜き通りや冒険者ギルドから少し離れた場所にあり、どちらかと言うと、領主の館の近くで町の中心部に位置していた。
冒険者が立ち寄るにはちょっと都合の悪い立地だった。
そりゃあ見つからなかった訳だよ。
「マジックポーションはどこかなー」
店の中は、イルマの店とは大違いで整理されていた。
それでも、色々な物が所狭しと陳列されており、目当ての物を探すのに苦労した。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
僕が棚を眺めながらカニ歩きしている様子を見かねたのか、お店の人が声を掛けてくれた。
というか、案の定、僕たち以外のお客がいなかったので暇なのかもしれない。
「あ、はい、マジックポーションを……」
僕は返事をして目当ての物を伝えようとして固まった。
「マッジクポーションですね。それなら……ん、どうなさいました?」
「あ、いえ、知人というか知っているような人に似ている気がして……」
「はい?」
あまりのことで僕が変な言葉遣いとなり、それを不思議そうにしていた。
その女性は、ライトグリーンの髪で髪型がお河童だった。
そう、サーベンの森で出会った少女の面影があったのである。
「あら、もしかしてディビーのお知り合いの方です?」
「でぃ、ディビー?」
「ええ、髪型と髪の色を見て仰っているのでなくて?」
正に僕が気になったポイントを指摘したので、間違いなかった。
それにしても自分の格好が変わっているのを自覚しているんだね、と僕は自然と口角が上がって苦笑してしまった。
「あ、はい、帝都の近くの森で、似ている方に助けられたことがありまして」
「それなら間違いなくディビーだと思いますよ。丁度今年から帝都の魔術学園に通っているのですよ」
この人は、店主であるテッドさんの奥さんで、テレーナさんというらしい。
そこで話を聞いてみると、どうやらあの謎の少女四人組は、ここテレサ出身だということがわかった。
その中の一人に、ここテレサ領主の娘であるローラ嬢もいるらしかった。
テレーナさんの説明で、
「そのゼロは無限大」
だとか、
「魔力を感じなさい。せっかく良いスキルがあるのにもったいないわよ」
などとと言った金髪碧眼の女の子が、そのローラ嬢らしい。
もしかしたら、僕のスキルのことがわかっていての発言だとしたら凄いことだ。
鑑定眼のスキル持ちかもしれないと思ったけど、聖女オフィーリアのことを思い出して頭を振った。
鑑定眼は、少なくとも相手に接触する必要があったからだ。
そう考えると、より謎が深まるばかりだ。
ローラ嬢のことはまたあとで考えることにし、更に話を聞くと、その四人は小さいころからラルフさんに稽古をつけてもらっていたという事実が判明した。
恐らくラルフさんの弟子で、無詠唱のことも知っているのだろう。
どうやら、僕が魔法の三大原則に違和感を感じる要因となった出会いの元は、ラルフさんにあったようだ。
「これは、あとでラルフさんにお礼を言わないといけないな」
それと同時に、ラルフさんがギルドマスターで大丈夫だろうかと不安がってごめんなさい、と心の中で謝るのも忘れない。
それにしても、縁という物は凄いなと思った。
こんな場所で繋がるとは思ってもみなかった。
お目当てのマジックポーション等消耗品を大量に買い込み、道具屋テッドをあとにした。
どうしてこんな立地の悪い場所に店舗を構えているのかと思ったら、冒険者ギルドや今の目抜き通りができる前からここに店舗を構えており、町の発展に伴い必然的にこの立地となったようだった。
つまりは、ここが村のときからのお店で老舗なのだろう。
この出逢いに感謝して、このお店を贔屓にすることを僕は決めた。
――――テレーナに聞いた新事実は、コウヘイを驚かせるものばかりであった。
ただ、ラルフがローラたち少女四人組の訓練を監督していたことに間違いはないのだが、その発想や彼女たちの強さの秘訣は、また別のお話。
0
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる