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第三章 動乱と日常【魔族内乱編】
第16話 エヴァの二つ名
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魔獣討伐報酬の集計結果とエヴァのパーティー登録のために向かった冒険者ギルドに到着した途端、コウヘイは面を食らうことになった――――
「デビルスレイヤーズのコウヘイさんですよね。僕たちをパーティーに入れてくれませんか?」
「何だおまえら! カッパーランクが出てくるんじゃねーよ。コウヘイさん、どうだい? 俺たちは同じくシルバーランクパーティーの『荒ぶる剣』だ。一緒にペア組んでダンジョン探索しないかい?」
「すみません、コウヘイさん。私たちは女子しかいなくて困っているんです。カッパーランクですが、ご一緒できませんか?」
冒険者ギルドに入るなり僕は、冒険者パーティーやパーティー加入希望者たちに囲まれてしまった。
その数、ざっと見渡しただけで三〇人はおり、僕を中心に人だかりができた。
「おいおい、ちょっと道を開けてくれ」
突然の出来事に僕が慌てふためいていると、聞き覚えのある声が聞こえ、たちまちその人だかりを割ってファビオさんが僕の前に進み出た。
さっきまで、僕が声を張っても鳴りやまなかった希望者たちの声が、ファビオさんが現れた途端に静かになった。
やっぱり、ガーディアンズがこの町切っての冒険者パーティーだとアリエッタさんが言っていたのは、どうやら本当のようだと、僕は認識を改めた。
「よう、コウヘイさん。元気そうでなによりだな」
「これはファビオさん、どうも」
声を掛けてきた内容とは裏腹に、そのファビオさんの表情は非常に疲れていた。
「おお、覚えていてくれたか」
「ええ、まあ……」
僕は苦笑いをせずにはいられなかった。
僕たちがテレサに来た初日に絡んできたのだから忘れようがない。
ただ、あのときは、ラルフさん仲裁のもと事なきを得て、それっきり話をしていなかったため、ファビオさんは忘れられていないか心配になったのだろう。
「それで、どうしたんですか?」
「いや、いきなりのことで戸惑っているようだったからな」
「あはは、ま、まあ、正直面食らいました」
「まあ何と言ってもゴブリンジェネラルを倒したくらいだからな」
僕が精霊の樹海から戻って来たとき、ファビオさんたちはダンジョン探索中だったはずだから、誰かから聞いたのだろう。
やっぱり、冒険者の噂は回るのが早くて怖いな。
「そういうことでしたか」
「そういうことだ。それでなんだが……俺たちと一緒に組まないか?」
「「「「「「「「「「えええええええええええええー!」」」」」」」」」」
まさかの申し出に僕だけではなく、周りの冒険者たちからも驚きの声が響いた。
そして、それが非難の声に変わるのに大した時間は掛からなかった。
「ファビオさんっ、それはズルいぞ!」
「「「そうだそうだ!」」」
何がズルいのか僕にはわからないけど、一度は命の取り合いまでに発展しそうだったのだがら、僕としては気まずい。
「そんなことは無いだろっ。トップ同士が組んだ方が、最悪の事態に備えられるだろうが!」
トップ同士?
僕たちの立ち位置が、いつの間にかテレサの冒険者の中で上がっていた。
「それにだな。あまり実力に差がありすぎると、かえってコウヘイさんたちの迷惑になるぞ。仮にだが、コウヘイさんたちが一〇階層まで降りると言ったら、お前らはそれに付いて行けるのか?」
「「「確かに……」」」
尚も理由を述べるファビオさんの話に、周りの冒険者が納得しはじめる。
僕たちは五階層までしか行ったことないけど、周りの反応から一〇階層ともなると、尻込みするほど強い魔獣が出現するようだった。
ゲームであれば、階層を進めば進むほど敵が強くなるのは当たり前だけど、この世界もそれが常識なのかと考えると、不思議な気分になる。
そもそも魔獣の生態自体、僕はよく理解していない。
現在、最下層といわれている一五階層を目指しているけど、そうとなると一番最初に一五階層に到達した冒険者が相当な手練れといえるだろう。
一体誰なんだろう?
やっぱり、ダンジョンを発見したラルフさんかな?
僕がそんな考察をしていると、またもや聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「オーガ相手に逃げ出したくせに、よくそんなことが言えるわね」
声がする方へ僕が視線を向けると、ギルド備え付けの酒場の方からエヴァが近付いてきた。
さっきまで白猫亭で飲んでいたのに、また飲んでいたのか、と僕は内心呆れた。
確かに、お酒を飲むと気分が高まったり気持ちが良いけど、飲み過ぎると気持ち悪くなるから、僕は嗜む程度に普段は抑えている。
ファビオさんや周りの冒険者たちも僕と同様にエヴァに視線を向けて注目した。
しかし、その視線に僕は何ともいえない違和感を覚えた。
エヴァは、そんな視線など気にした様子もなく、ずんずん人だかりの中を進んで僕の前までやってきた。
「な、何だと! 逃げ出した訳じゃないぞ。前回を教訓にしっかり準備をして一頭は倒した。ただ、そのあとに五体も出てくれば引くしかないだろっ!」
「エヴァ、どういうこと?」
会話の内容についていけない僕は、目の前にいるエヴァに尋ねた。
「ああ、どうやらコウヘイたちが帰って来ないから、ガーディアンズの叔父様たちが心配して八階層まで探しに行ったみたいなのよ。そこで、またオーガから逃げて、今日戻って来たらしいわよ」
「だから逃げてないと言っているだろうが!」
僕に事情を説明してくれたエヴァの内容が気に入らないのか、ファビオさんはエヴァに言い返した。
それにしても僕たちを探していたとは……
なんか悪いことしちゃったかも。
「しかし、コウヘイさん。エヴァと知り合いなのか?」
僕がファビオさんたちに少しばかし罪悪感を感じていたら、僕とエヴァが知り合いであることに、ファビオさんは意外そうにしていた。
「はい、知っていますよ。というか、これから僕たちのパーティーに登録するところですよ」
僕がそう説明すると、辺りが騒然となった。
「そうよ。あたしは、今日からデビルスレイヤーズの一員なのよ」
エヴァは僕の腕を取り、しな垂れ掛かるように身をぴったりと寄せてきた。
「おい、それだけはやめておけ、年長者からのアドバイスだ。こいつとだけはやめておいた方が良い。あの、『狡猾のエヴァ様』とだけはな」
「狡猾のエヴァ様?」
ファビオさんが言った気になる言葉に、僕は反応した。
「ちょっと、本人が居る前でその言い方は失礼しちゃうわ」
「ふん、本当のことを言って何が悪い」
ファビオさんの顔は険しい。
過去にエヴァと何かあったのか知らないけど、かなり警戒している様子だ。
「コウヘイさん、同じことを言うようだが、本当にこいつとだけはやめておいた方がいい」
「ありがとうございます、ファビオさん」
「じゃ、じゃあ――」
「でも、僕たちはエヴァとパーティーを組むことを決めました。それに僕たちに近付いてきた理由もちゃんと聞いています」
ファビオさんの表情が真剣だったことから、本当に心配してくれていることが窺い知れたけど、色々考慮して決定したため覆すつもりはない。
確かに気になる二つ名ではあるけど、僕はエヴァと話したときに感じた僕の、「感」を信じたかった。
裏がありそうだけど、人を貶めるようなことはしない人――
それが僕のエヴァに対する評価だった。
「そうか……それなら後悔しても知らないからな。俺は言ったからな! 悪いがダンジョン探索で組むっつー話は無かったことにしてくれ。それじゃあな」
僕は一度も承諾していないのに、ファビオさんはそう断りを入れて、僕たちから離れて酒場の方に去ってしまった。
それと同様に、さっきまでの人だかりが蜘蛛の子を散らすように僕たちの前から去って行った。
「一体何をしたのさ……」
この現象の原因は、明らかにエヴァだった。
「あら、あたしの悪評に怖くなったのかしら?」
エヴァは、平然とした態度で、断りたいならそれでも構わないと言ってきた。
「いや、そうじゃないよ。僕のパーティーはどうしてこうも特徴的な面子ばかりなんだろうと思っただけだよ」
先日の使者たちの話で、エルサが名の知れた氏族だということを知った。
それに、イルマはエルフの女王様で、ミラは記憶を無くし謎の行動を取る。
そして、エヴァはテレサの冒険者から大分嫌われているようだった。
まあ、リーダーが、「ゼロの騎士」と呼ばれていた僕だから仕方ない。
「あら、そう。それなら良かったわ。さっさと登録を済ませちゃいましょう」
「あ、うん、そうだね」
僕が内心で卑下していると、エヴァが僕の腕を引っ張ってきた。
「あの、アリエッタさんはいますか?」
今は、夕方で報告がメインの時間帯であるため、受付カウンターに並んでいる冒険者はおらず、受付嬢は一人しかいなかった。
「アリエッタならまだ魔獣討伐の集計作業中だと思いますよ」
「そうですか……」
パーティー登録をするのにアリエッタさんである必要は無いけど、やっぱり知っている人の方が気が楽なため、それを聞いて僕は残念に思った。
「あ、そしたら……アンネさん。エヴァを僕たちのパーティーに登録したいので、お願いできますか?」
受付嬢のネームプレートを確認してから、お願いした。
「え、宜しいんですか?」
アンネさんの心配そうな反応に僕はエヴァの方を見た。
「コウヘイたちのことを心配しているのよ」
「あ、いえいえそういう訳では無いです……はい……」
エヴァの言ったことを否定したアンネさんだったけど、エヴァに睨まれて声が段々小さくなってしまった。
うーん、想像以上に何かやらかしているんだろうな。
既に決めたことでもあるし、それに今更引けないと思った僕は手続きを進めてもらうことにした。
「エヴァは既に仲間ですから。エヴァのパーティー登録をお願いします」
僕とエヴァが冒険者カードをそれぞれアンネさんに手渡して、待つこと数分。
「はい、これでデビルスレイヤーズへエヴァさんの登録が完了しました」
「ありがとうございます」
エヴァのパーティー登録ができたし、今日の予定は、一応クリアかな。
「ねえ、エヴァ」
「ん、何かしら?」
「このあとはどうするの? 僕は折角だからアリエッタさんを待って討伐報酬の結果を聞こうかと思っているんだけど」
「ああ、あたしはちょっと寄るところがあるから先に行くわ」
エヴァが冒険者ギルドを出て行くのを見送り、僕はアリエッタさんが戻ってくるのを待つことにした。
「よう、ちょっといいか?」
入り口脇の長椅子に腰を下ろして、アリエッタさんを待っていた僕にそう声を掛けてきたのは、ファビオさんだった。
――――無事エヴァのパーティー登録が完了し、晴れて、「デビルスレイヤーズ」は、五人となった。
果たしてエヴァの加入が吉と出るか、凶と出るかは、奇しくもコウヘイの覚悟次第だった。
「デビルスレイヤーズのコウヘイさんですよね。僕たちをパーティーに入れてくれませんか?」
「何だおまえら! カッパーランクが出てくるんじゃねーよ。コウヘイさん、どうだい? 俺たちは同じくシルバーランクパーティーの『荒ぶる剣』だ。一緒にペア組んでダンジョン探索しないかい?」
「すみません、コウヘイさん。私たちは女子しかいなくて困っているんです。カッパーランクですが、ご一緒できませんか?」
冒険者ギルドに入るなり僕は、冒険者パーティーやパーティー加入希望者たちに囲まれてしまった。
その数、ざっと見渡しただけで三〇人はおり、僕を中心に人だかりができた。
「おいおい、ちょっと道を開けてくれ」
突然の出来事に僕が慌てふためいていると、聞き覚えのある声が聞こえ、たちまちその人だかりを割ってファビオさんが僕の前に進み出た。
さっきまで、僕が声を張っても鳴りやまなかった希望者たちの声が、ファビオさんが現れた途端に静かになった。
やっぱり、ガーディアンズがこの町切っての冒険者パーティーだとアリエッタさんが言っていたのは、どうやら本当のようだと、僕は認識を改めた。
「よう、コウヘイさん。元気そうでなによりだな」
「これはファビオさん、どうも」
声を掛けてきた内容とは裏腹に、そのファビオさんの表情は非常に疲れていた。
「おお、覚えていてくれたか」
「ええ、まあ……」
僕は苦笑いをせずにはいられなかった。
僕たちがテレサに来た初日に絡んできたのだから忘れようがない。
ただ、あのときは、ラルフさん仲裁のもと事なきを得て、それっきり話をしていなかったため、ファビオさんは忘れられていないか心配になったのだろう。
「それで、どうしたんですか?」
「いや、いきなりのことで戸惑っているようだったからな」
「あはは、ま、まあ、正直面食らいました」
「まあ何と言ってもゴブリンジェネラルを倒したくらいだからな」
僕が精霊の樹海から戻って来たとき、ファビオさんたちはダンジョン探索中だったはずだから、誰かから聞いたのだろう。
やっぱり、冒険者の噂は回るのが早くて怖いな。
「そういうことでしたか」
「そういうことだ。それでなんだが……俺たちと一緒に組まないか?」
「「「「「「「「「「えええええええええええええー!」」」」」」」」」」
まさかの申し出に僕だけではなく、周りの冒険者たちからも驚きの声が響いた。
そして、それが非難の声に変わるのに大した時間は掛からなかった。
「ファビオさんっ、それはズルいぞ!」
「「「そうだそうだ!」」」
何がズルいのか僕にはわからないけど、一度は命の取り合いまでに発展しそうだったのだがら、僕としては気まずい。
「そんなことは無いだろっ。トップ同士が組んだ方が、最悪の事態に備えられるだろうが!」
トップ同士?
僕たちの立ち位置が、いつの間にかテレサの冒険者の中で上がっていた。
「それにだな。あまり実力に差がありすぎると、かえってコウヘイさんたちの迷惑になるぞ。仮にだが、コウヘイさんたちが一〇階層まで降りると言ったら、お前らはそれに付いて行けるのか?」
「「「確かに……」」」
尚も理由を述べるファビオさんの話に、周りの冒険者が納得しはじめる。
僕たちは五階層までしか行ったことないけど、周りの反応から一〇階層ともなると、尻込みするほど強い魔獣が出現するようだった。
ゲームであれば、階層を進めば進むほど敵が強くなるのは当たり前だけど、この世界もそれが常識なのかと考えると、不思議な気分になる。
そもそも魔獣の生態自体、僕はよく理解していない。
現在、最下層といわれている一五階層を目指しているけど、そうとなると一番最初に一五階層に到達した冒険者が相当な手練れといえるだろう。
一体誰なんだろう?
やっぱり、ダンジョンを発見したラルフさんかな?
僕がそんな考察をしていると、またもや聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「オーガ相手に逃げ出したくせに、よくそんなことが言えるわね」
声がする方へ僕が視線を向けると、ギルド備え付けの酒場の方からエヴァが近付いてきた。
さっきまで白猫亭で飲んでいたのに、また飲んでいたのか、と僕は内心呆れた。
確かに、お酒を飲むと気分が高まったり気持ちが良いけど、飲み過ぎると気持ち悪くなるから、僕は嗜む程度に普段は抑えている。
ファビオさんや周りの冒険者たちも僕と同様にエヴァに視線を向けて注目した。
しかし、その視線に僕は何ともいえない違和感を覚えた。
エヴァは、そんな視線など気にした様子もなく、ずんずん人だかりの中を進んで僕の前までやってきた。
「な、何だと! 逃げ出した訳じゃないぞ。前回を教訓にしっかり準備をして一頭は倒した。ただ、そのあとに五体も出てくれば引くしかないだろっ!」
「エヴァ、どういうこと?」
会話の内容についていけない僕は、目の前にいるエヴァに尋ねた。
「ああ、どうやらコウヘイたちが帰って来ないから、ガーディアンズの叔父様たちが心配して八階層まで探しに行ったみたいなのよ。そこで、またオーガから逃げて、今日戻って来たらしいわよ」
「だから逃げてないと言っているだろうが!」
僕に事情を説明してくれたエヴァの内容が気に入らないのか、ファビオさんはエヴァに言い返した。
それにしても僕たちを探していたとは……
なんか悪いことしちゃったかも。
「しかし、コウヘイさん。エヴァと知り合いなのか?」
僕がファビオさんたちに少しばかし罪悪感を感じていたら、僕とエヴァが知り合いであることに、ファビオさんは意外そうにしていた。
「はい、知っていますよ。というか、これから僕たちのパーティーに登録するところですよ」
僕がそう説明すると、辺りが騒然となった。
「そうよ。あたしは、今日からデビルスレイヤーズの一員なのよ」
エヴァは僕の腕を取り、しな垂れ掛かるように身をぴったりと寄せてきた。
「おい、それだけはやめておけ、年長者からのアドバイスだ。こいつとだけはやめておいた方が良い。あの、『狡猾のエヴァ様』とだけはな」
「狡猾のエヴァ様?」
ファビオさんが言った気になる言葉に、僕は反応した。
「ちょっと、本人が居る前でその言い方は失礼しちゃうわ」
「ふん、本当のことを言って何が悪い」
ファビオさんの顔は険しい。
過去にエヴァと何かあったのか知らないけど、かなり警戒している様子だ。
「コウヘイさん、同じことを言うようだが、本当にこいつとだけはやめておいた方がいい」
「ありがとうございます、ファビオさん」
「じゃ、じゃあ――」
「でも、僕たちはエヴァとパーティーを組むことを決めました。それに僕たちに近付いてきた理由もちゃんと聞いています」
ファビオさんの表情が真剣だったことから、本当に心配してくれていることが窺い知れたけど、色々考慮して決定したため覆すつもりはない。
確かに気になる二つ名ではあるけど、僕はエヴァと話したときに感じた僕の、「感」を信じたかった。
裏がありそうだけど、人を貶めるようなことはしない人――
それが僕のエヴァに対する評価だった。
「そうか……それなら後悔しても知らないからな。俺は言ったからな! 悪いがダンジョン探索で組むっつー話は無かったことにしてくれ。それじゃあな」
僕は一度も承諾していないのに、ファビオさんはそう断りを入れて、僕たちから離れて酒場の方に去ってしまった。
それと同様に、さっきまでの人だかりが蜘蛛の子を散らすように僕たちの前から去って行った。
「一体何をしたのさ……」
この現象の原因は、明らかにエヴァだった。
「あら、あたしの悪評に怖くなったのかしら?」
エヴァは、平然とした態度で、断りたいならそれでも構わないと言ってきた。
「いや、そうじゃないよ。僕のパーティーはどうしてこうも特徴的な面子ばかりなんだろうと思っただけだよ」
先日の使者たちの話で、エルサが名の知れた氏族だということを知った。
それに、イルマはエルフの女王様で、ミラは記憶を無くし謎の行動を取る。
そして、エヴァはテレサの冒険者から大分嫌われているようだった。
まあ、リーダーが、「ゼロの騎士」と呼ばれていた僕だから仕方ない。
「あら、そう。それなら良かったわ。さっさと登録を済ませちゃいましょう」
「あ、うん、そうだね」
僕が内心で卑下していると、エヴァが僕の腕を引っ張ってきた。
「あの、アリエッタさんはいますか?」
今は、夕方で報告がメインの時間帯であるため、受付カウンターに並んでいる冒険者はおらず、受付嬢は一人しかいなかった。
「アリエッタならまだ魔獣討伐の集計作業中だと思いますよ」
「そうですか……」
パーティー登録をするのにアリエッタさんである必要は無いけど、やっぱり知っている人の方が気が楽なため、それを聞いて僕は残念に思った。
「あ、そしたら……アンネさん。エヴァを僕たちのパーティーに登録したいので、お願いできますか?」
受付嬢のネームプレートを確認してから、お願いした。
「え、宜しいんですか?」
アンネさんの心配そうな反応に僕はエヴァの方を見た。
「コウヘイたちのことを心配しているのよ」
「あ、いえいえそういう訳では無いです……はい……」
エヴァの言ったことを否定したアンネさんだったけど、エヴァに睨まれて声が段々小さくなってしまった。
うーん、想像以上に何かやらかしているんだろうな。
既に決めたことでもあるし、それに今更引けないと思った僕は手続きを進めてもらうことにした。
「エヴァは既に仲間ですから。エヴァのパーティー登録をお願いします」
僕とエヴァが冒険者カードをそれぞれアンネさんに手渡して、待つこと数分。
「はい、これでデビルスレイヤーズへエヴァさんの登録が完了しました」
「ありがとうございます」
エヴァのパーティー登録ができたし、今日の予定は、一応クリアかな。
「ねえ、エヴァ」
「ん、何かしら?」
「このあとはどうするの? 僕は折角だからアリエッタさんを待って討伐報酬の結果を聞こうかと思っているんだけど」
「ああ、あたしはちょっと寄るところがあるから先に行くわ」
エヴァが冒険者ギルドを出て行くのを見送り、僕はアリエッタさんが戻ってくるのを待つことにした。
「よう、ちょっといいか?」
入り口脇の長椅子に腰を下ろして、アリエッタさんを待っていた僕にそう声を掛けてきたのは、ファビオさんだった。
――――無事エヴァのパーティー登録が完了し、晴れて、「デビルスレイヤーズ」は、五人となった。
果たしてエヴァの加入が吉と出るか、凶と出るかは、奇しくもコウヘイの覚悟次第だった。
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