聖女召喚した聖女がやる気がないので、俺が聖女になるしかない

しののめ あき

文字の大きさ
9 / 12

聖女召喚と思い出す俺。

しおりを挟む

薬学に励んだ俺は、今では王宮一番の薬師に登り詰めていた。
そんな俺も十五歳。
成人しました。
自他共に認めるイケメンに育ちましたよっと。
婚約者候補も数人居て、モテまくってますよっと。
待ちに待った十五歳なのに魔王復活どうこのせいで、隣国に行けてないのだけが不満だか、それ以外は充実した毎日である。

兄上も、今は十七歳で勇者でもあるとされた事から、十五歳の時に立太子をして、婚約者もしっかり決まっている。
公爵家の娘で、この国一番の美女である、セシリア・ファレル嬢だ。
ぶっちゃけ羨ましい。
めちゃくちゃ可愛いんだよ。
黒髪、黒目で前世の記憶がある俺としては、安心感のある色だしな。
王宮内で会うと、柔らかな笑顔で話し掛けてくれるんだが、聖女召喚の準備や訓練で忙しい兄上の代わりに、たまにお茶にも付き合っている。

横恋慕?
そういうドロドロ展開は勘弁して欲しいからちゃんと弁えてはいるぞ。

俺の婚約者候補の相談にも乗って貰っているしな。
セシリア嬢の推しは、侯爵家のリリアム・ソルナーデ嬢か伯爵家のアイシャ・ソルバーグ嬢らしい。
なんでも、見目が良いだけでは無く、控えめながらに聡明であるとの事。
参考にさせていただこう。

ちなみに、本日は聖女召喚を行う為兄上の婚約者であるセシリア嬢と共に、準備が整うまで待機をしている時間だ。

「カイル殿下がお望みでしたら、どの家も喜んで婚約を結ぶと思われますよ」

「そうだろうか…セシリア嬢は手に入らなかったがな」

「お戯を。カイル殿下からはお声が掛からなかったと聞いておりますわ」

軽い冗談のつもりが顔を赤らめるセシリア嬢を見て、失敗したと内心焦る。
可愛すぎるだろ!
落ち着け俺。
彼女は、兄上の婚約者だ!
それに、声を掛けなかった訳じゃなく、兄上の婚約者として内定していたから声を掛けられなかったが正解だ。

そこでタイミング良く、聖女召喚の儀の準備が整ったと通達が入り、セシリア嬢をエスコートしつつ、儀式が行われる場所へと向かう事になった。
助かった。

「聖女様はどのような方なのでしょうね」

「聖女というからには、優しい女性なんじゃないだろうか?」

これ、日本から召喚されたりすんのかな?
だとしたら、誘拐だよな普通に。
それとも、また別の異世界から?
まぁ、兄上と世界を救ってくれるならなんでもOKではある。
すまんな聖女。
兄上を頼んだ。

儀式の間に入ると、煌びやかな正装で兄上が中央に立ち、その周りを父上を中心に貴族の当主達が座っていた。
俺と、セシリア嬢は父上の隣りの席へと向かい腰を下ろす。

「では、聖女召喚を始める。アーティア、しっかりな」

「はい」

父上の言葉に兄上が返事を返すと、兄上は古びた杖を持ち、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
あの杖が媒体になるそうだ。
呪文が終わったのか、杖を祭壇のような場所に置き、兄上が最後の一言。

「聖女よ。今、この地に降り立て。我と共に世界を救いたまえ」

ビガーッと目が眩むような眩しい光が杖から発せられたと共に、杖は消え去り代わりに兄上と同じ年頃の少女が立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい

しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

処理中です...