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第22話 ※ベルク視点
しおりを挟むただでさえ膨大な魔力を持って生まれたにも関わらず、今もなお増加し続ける俺の魔力。
魔力が多ければ多いほど、魔法の幅は広がり、その威力もかなりのものになるが弊害もある。
ーーそれは、俺の身体への影響と魔力の制御だ。
俺という限られた器から溢れた魔力は俺自身を攻撃し、幼い頃は高熱に苦しむことも日常茶飯事だった。そして膨大すぎる魔力は制御が難しく、一般的な魔力量の魔族よりも正確かつ繊細な魔法技術が必要とされる。それが出来なければ、魔法で本来の力を発揮出来なかったり、逆に暴発して初級魔法ですら危険なものに変わってしまうからだ。
俺は常に魔力を抑える魔道具を身につけ、日常的に魔法を使うことで魔力を発散し自分の身体に負担がかからない様にしていた。しかしここ最近の魔力の増え方は尋常ではなく、屋敷に来てから魔法を使う機会が減ったこともあり、常に体がだるいような、重く感じていた。
ーー身体の違和感に気付いたのは、この屋敷に来て4日目だった。
ミシェラが図書室の梯子から落ちて指を怪我した翌日、朝起きた俺の身体は驚く程に軽かったのだ。いつも身体の中で暴れ回っていた魔力がとても落ち着いていた。
『聖女様の血を継ぐお方なのですから…』
ガレスの言葉を思い出しハッとした。ガレスの言うことが本当ならば、これもミシェラの力なのではないか。彼女の血から香るあの甘い香りもなにか関係があるのではないか。
その翌日図書室に行ったが、彼女から甘い香りはしなかった。不思議に思いながらも、警戒して彼女と少し距離を取りながら聖女について書かれた本を読んだ。
何冊もそれらしい本を読んだが、『聖女は300年前に突如現れ、争いに狂った魔族たちを浄化した』『聖女の力で浄化された魔族は理性を取り戻し人間との話し合いに応じた』等とどれも似た様なことばかりで決定的なことは何も書かれていなかった。
引っかかるとすれば『浄化』が何を示しているのか、という事ぐらいか。そもそも聖女がなんなのか、すら分からない。特別な力があるのは分かるが、具体的にそれはどんな能力なのか。
俺は本ばかり読むのはやめて、彼女自身から探ることにした。
それを目的として近づいたはずなのに、いつのまにか彼女の優しさやどこか本音を隠したように笑う顔、普段は落ち着いているのに、たまに子供のように目を輝かせて話すところや、趣味が同じであること、など。共に時間を過ごすことで彼女に強く惹かれていくことになるとは、夢にも思わなかったが。今思えば、最初に会った時から彼女に一目惚れしていたのかもしれない。
あの日以来、彼女から甘い良い香りがすることはない。しかし身体は常に軽く魔力も安定していた。どうやらあの香りは、聖女の能力とはまた別の物と考えた方が良いようだ。
屋敷に来て1週間が経った頃、ミシェラと図書室で別れた後、自室でパチンと指を鳴らして魔法で蝋燭に火をつける。前まで感じていた突っ掛かりの様なものもなく、スムーズに魔法を発動することができた。
屋敷に来る前の、魔王との会話を思い出す。
『貴様の魔力は今もなお増え続けているだろう…?今の貴様のままでは、魔道具でも魔力を抑えきれなくなり身体へ影響が出てくる。…1ヶ月暮らし終わった時答えがわかるだろう。』
ミシェラと暮らし始めてから、魔力は増え続けてはいるが安定し、身体に負担がかかることはなくなった。おそらく、魔王が言おうとしたことはこういう事なのだろう。本の言葉を借りるので有れば、俺は聖女の血を継ぐミシェラによって[浄化]されている状態なのだ。その詳細は分からないままだが。
特に何事もなく日々が過ぎていき、今日。ミシェラが体調を崩した。彼女を抱き上げ部屋まで送っている最中、ふと違和感を感じた。彼女からまた、あの甘い良い香りが漂ってきたのだ。
ーーさっきまでは何ともなかったのに、なぜ
と疑問に思いながらも、彼女を部屋まで送る。
彼女が眠ったあと、また別の違和感を感じていた。彼女の熱の上がり方が普通ではないのだ。
俺は治癒魔法をかける。普通で有れば熱は引いていくはずが、ミシェラの熱はさらに上がり、苦しげに浅い呼吸を繰り返している。そして、甘い香りもどんどんと強くなり、以前感じた突然の喉の渇きに襲われる。
ミシェラの首筋に鼻を寄せると香りを強く感じ喉の渇きは強くなり、理性が飛びそうになる。軽くチュッと首筋に唇を当ててから口を開ける。自分の歯がミシェラの肌に当たった瞬間、ハッと我に帰った。
ーー俺は今、何をしようとした…?
ただでさえ熱が高く苦しんでる彼女を、俺が魔法をかけたせいで余計に苦しませて。その上彼女の首に…。想いが通じ合った仲であっても、こんなこと許されるはずがない。
「すまない…ミシェラ…」
頬に何か熱いものが流れていく。
こんなにも彼女のことを愛おしいと、守りたいと思うのに、今、俺は彼女を傷つけようとした。そんな自分が許せず、罪悪感に苛まれる。
項垂れていた俺は、顔を上げ彼女の寝顔を見つめる。
ーー彼女を守るためにも、聖女について知ることが必要だ。しかし、本には同じことしか書いていない。
と考えていた時、頭に浮かんだのは意地悪く微笑むガレスの顔だった。ミシェラが聖女の末裔だと言ったのはガレスなのだから、本以上の情報を持っていることは確かだ。
「必ず、お前のことは守る。もう2度と、傷つけるような真似はしない。」
ミシェラの頬を撫でながら、決意を固くしたのだった。
ーあとがきー
ここまでお読み頂きありがとうございます!
次回もすこしシリアスな回になる予定です。今回書けなかったベルクがミシェラに恋に落ちる詳しい過程などはまた別の機会に書けたら良いなと思っております。
いつもお読み頂いたり、お気に入り登録などとても励みになっております。ありがとうございます!
次回もよろしくお願い致します。
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