【完結】妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜

五月ふう

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1.正妃様と国王様

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 ここは北の海沿いに位置し、200年の歴史を持つスウェルド王国。この国は美しい宮殿と壮麗な建築物で知られており、その風景はまるで絵画のような美しさを誇る。

 スウェルド王国の中央区域では、貴族や王族たちが、優雅な暮らしを楽しんでいる。しかし、その一方でスウェルド王国は深刻な財政難に悩まされていた。

 ‐―――全部、売ってしまえばいいのに。

 正妃アリスは城に並ぶ大量の装飾品や工芸品を見て、ため息をつく。

 無実の罪で、謹慎を命じられているにも関わらず、アリスの心は街の人々にあった。
 
 ――――あの宝石を1つ売るだけで、街の子供たちに山ほどご飯を食べさせてあげられるのにな。
 
 アリスはもうすでに、自身が保有するほとんどの宝石を売り払っている。いま彼女が着ているドレスは、装飾品が付いていないひどく質素なものだ。

 スウェルド王国では身分が明確に分かれており、平民と貴族という階級制度が存在している。この格差は深刻であり、平民たちと貴族や王族との暮らしには大きな差があった。

 貴族や王族は贅沢な生活を送り、豪奢な宴会や娯楽に浸る。その一方で、平民たちは、一日の食事も満足に食べられないほど困窮している。

 その事実は、長い間アリスを苦しめてきた。だが、多くの貴族たちは、平民の生活に関心がない。アリスには、街の人々を助ける力がなかった。

 ――――なんで私は正妃なのに、皆を助けられないのかしら?

 スウェルド国の女性は、慎ましく夫を支えることが善とされる。それは、国王の妻であるアリスも同様だ。

『女は国の政に口をはさむな!!』

 何かを変えようと努力するアリスを、レオナルドは決して受け入れようとはしなかった。アリスとレオナルドが結婚して、8年。二人の間には、埋められない心の溝が生まれている。

 三年ほど前から、レオナルドは次から次へと愛人を作り始めた。レオナルドの愛人たちは湯水のようにお金を使うため、財政難に拍車をかける。

 ある日、アリスは見かねてレオナルドに言った。

 『ねぇ、レオナルド!これ以上愛人を増やすのはやめて!!貴方の愛人達を養うのに、どれだけお金が必要だと思っているの!!あの子達に好き勝手に王家のお金を使わせるのはやめて頂戴!』

 レオナルドはアリスに構う事なく、愛人を囲っていた。スウェルド国では正妃の許可なく、側妃を持つことは禁じられている。だが、世継ぎがいないアリスには、レオナルドが愛人を持つことを止められない。それでも、愛人の数が10人を超えると、ついにアリスにも限界が来た。

『なぜ僕が……金を気にする必要がある?僕は王だ。』

『王だからこそ……国民の為にできることがあるでしょう!!今は贅沢をする時じゃないわ!!』

『アリス……君と話していると頭が痛くなる。何を言っているのか、全く理解できないんだ……。』

『ねえ、一度私と街に出ましょう?そうしたらレオナルドにも分かるはずよ。』

 レオナルドは生まれてから一度も、城の外に出たことがない。彼にとって、綺羅びやかなスウェルド城が世界の全てだった。ある事情から、レオナルドは外の世界に出ることを拒否している。

『城の外は汚れている……。僕が行くべき場所ではない………。』

『いいえ。私は城の外こそ、大切なものがあるって知ったの。』

 アリスは幼少期、一度城から抜け出して、街の人々と数日間暮らしたことがある。その時、アリスは城の外を初めて知った。彼らが苦しんでいることも、その優しさも。

『城の外にあるのは、恐ろしい世界だ!なぜそれが分からない?』

『お城の外は恐ろしい場所じゃないわ。もちろん恐ろしい人達もいるけれど……素敵な人達が沢山いるって、私は知ってる!』
 
 レオナルドは、アリスに背を向ける。

『アリス……君は変わってしまったよ。毎日愚かで恐ろしい事ばかりを言う……。君の傍にはいたくない……。』

 レオナルドはもう、アリスと話をしようとはしなかった。それからも愛人を増やし続け、贅沢の限りを尽くす。レオナルドはアリスに冷遇をするようになり、次第にはレオナルドの愛人たちすら、アリスを馬鹿にし始めた。

 そしてついに一週間前、愛人のロゼッタの妊娠が発覚する。内心のショック隠しながら、気丈にふるまっていたアリスだったが、ついに事件が起きてしまった。

 ”嫉妬に狂った正妃は、王の子を孕んだ愛人を殺そうとした”

 皆、レオナルドの思い込みを信じてしまうのだろうか。本当にアリスが犯人だったとしたら、自分の作った料理に毒を仕込むなんて、真っ先に疑われる真似をするはずがない。

 そもそも、アリスはレオナルドの愛人ロゼッタを、誕生日パーティに招いていない。レオナルドはロゼッタを予告なくアリスの誕生日パーティに連れてきたのだ。なぜアリスが、ロゼッタに毒を与えたと思うのだろう?



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