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34.国王様の旅立ち
しおりを挟む「悪いのはわたくしではありません……!御慈悲を……陛下…!!」
ヒステリックに叫びながら、兵士に連れて行かれるロゼッタ。
その様子を扉の影から眺めていたフィリップス公爵は、頭を掻きむしった。
「何をしているのだ……!使えぬ女め!!」
秘密を簡単に白状してしまったロゼッタへの怒りがこみあげてくる。
ーーー儂は知らぬっ!あの女が下手をしただけだっ!
だが、そう遠くないうちに、レオナルドはロゼッタから首謀者がフィリップス公爵であったと聞き出すだろう。
ーーーーなぜこうなった……?!全ては計畫通りであったはずだが……?!
全ての決定権を握っているのはレオナルドである。もしもレオナルドがフィリップス公爵を罰すると決めれば、誰も命令に逆らうことはできないだろう。
ーーーーなんとかして‥‥この状況を改善せねばなるまい‥‥…。
フィリップス公爵は、額に深いシワを寄せて部下に命じた。
「アリスを捜すレオナルド様の軍についていけ。」
「はっ。」
「そしてもしも陛下が‥‥フィリップス家に処罰を考えるようなことがあれば……誰にも気づかれぬよう、道中で陛下を亡き者にしろ。」
「………かしこまりました。」
こうして、フィリップス公爵から命を受けた兵士が、アリス探しの一団に加わることとなった。もちろんそのことを、レオナルドは知る由もない。
◇◇◇
スウェルド城正門の前。50人を超える兵が、国王レオナルドを囲んでいた。
ーーーー僕は……もう城の中にはいられない……。
レオナルドは心の中で呟き、大きく息を吸い込んだ。
よく晴れた気持ちのいい昼下がり。雲一つない青空が広がっている。
「陛下、準備が整いました!」
スウェルド城正門の前には橋があり、橋を進んだ先に国王レオナルドを乗せる馬車が待っている。
”できるだけ早く”
その言葉通り兵士やメイドたちは迅速に準備を進め、レオナルドの命令からそれほど時間が経たないうちに出発の準備が整った。
「さあ、陛下。まいりましょう。」
兵士アルバードに促されても、レオナルドは立ちどまったままだった。
ーーーー城の外に…本当に出ていいのか‥‥?
レオナルドの額から冷や汗が出ている。息は荒く、足は震えている。
ーーーー外の世界はアリスを変えてしまった恐ろしい場所だ。僕も‥‥恐ろしい人間に変わってしまうのではないか‥‥。
やはり、城の外に出るのは辞める。レオナルドがそう言いかけたとき。
「行こう、レオナルド。」
レオナルドが顔をあげると、リュカが手を差し出しているのが見えた。太陽の光に照らされて、彼女の緑色の目がきらきらと光っている。
ーーーーリュカには嘘がない。
太陽の光が眩しくて、レオナルドは目を細めた。最初はただ、リュカのことを屈伏させたいだけだった。だが今は、それとは違う感情をリュカに抱いている。
「大丈夫。大きく息を吸って。」
リュカの声は、柔らかかった。アリスに会いたいと泣いてから、リュカがレオナルドに接する態度は変わった。それがどういう理由か彼にはわからない。ただ、リュカの優しさに触れるたび、レオナルドは泣きたいくらい嬉しくなる。
「僕は………行くんだ。」
レオナルドはリュカの手をとった。
”いつか一緒に外の世界を歩きたいわ。”
昔、アリスがレオナルドに言った言葉だ。その時は聞き耳すら持たなかった。だが彼は今、城を出て外の世界に足を踏み出そうとしている。
「待ってください!陛下!外の世界はけがれています!」
城の中から、貴族の誰かが叫んでいる。国王レオナルドが城から出ることを反対しているのだろう。
その声をきいて、レオナルドの足は再び固まってしまう。リュカはレオナルドをまっすぐに見つめ、彼を励ました。
「アリスに会うんでしょ?」
「……ああ。」
「だいじょうぶ。前を向いて。」
リュカはレオナルドの手を強く握り、にっこりと大きく笑った。その笑顔につられるように、レオナルドは一歩足を踏み出した。ゆっくりと歩みを進め、橋を渡りきる。
馬車の前まで来ると、青空を見上げて、レオナルドは大きく息を吸った。
「なんだ、何も起こらないではないか。」
その言葉を聞いて、リュカは深く頷いた。
「リュカ、僕は……城の外にでたんだ!」
太陽の光に目を細め、レオナルドは少し微笑んだ。
◇◇◇
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