【完結】妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜

五月ふう

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54.国王様と危機

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「よくいらっしゃいました!レオナルド様!」

 次の村にたどりついた時、レオナルドは熱烈な歓迎を受けた。食事を配る国王の噂は次の村にもとどいていたらしい。

「レオナルド様!」

「陛下!」

「お恵みを下さりに来たのですね!」

 村人たちの呼びかけに答えることなくレオナルドは馬車から降りた。スウェルド城を出発してから、すでに2日が経過している。なれない旅に、体中が悲鳴を上げている。

 ーーーーちっ、この村もか。
 
 レオナルドはぼんやりと村人を眺める。

 彼らはやせ細っていて、皆ぼろぼろの服を着ている。建物は今にもとんでいきそうで、寒さを防げないだろう。城下町以外の村はどこもすたれていた。

 「皆、レオナルドにありがとうって言ってるよ?」

 黙りこくっているレオナルドの顔をリュカが覗き込む。

 「だからどうした。僕には関係ない!」

 リュカはきょとんとした顔でレオナルドを見つめる。

 「そんなわけないじゃん。だってレオナルドが、みんなにご飯を配るって決めたんだから。」

 「だがっ。」

 レオナルドは言葉の続きを言わなかった。

 「ん?」

 「何でもない。」

 俯くレオナルドを、リュカは心配そうに見つめる。

 ーーーー僕は何も悪くないっ。僕は王で、あいつらは平民だっ。

 レオナルドの頭はまたずきりと痛む。

 レオナルドは初め、村人たちにありがとうと言われるのが嬉しくてたまらなかった。生まれてからずっと城に閉じこもってきたレオナルドは、誰かのために何かをしたことがほとんどない。

 見知らぬ誰かから”ありがとう”と言ってもらえることがこんなにも心に幸せをもたらすなんて知らなかった。だが、少しずつレオナルドの心に罪悪感がうまれてくる。

 レオナルドは毎日大量の食事を捨て、贅沢の限りを尽くしていた。他の貴族たちもそうだ。だけど、外の世界の人たちは皆、いっぱいのスープを本当に大切に飲む。

『贅沢をするのはやめて!レオナルド!』

 そう言ってレオナルドを責めたアリスの顔が頭をよぎる。

「レオナルド!大丈夫?」

 リュカの声ではっとした。気が付くと頭を抑えたままレオナルドは蹲っていたようだ。リュカは優しく、レオナルドの背中をさする。

 「なあ、リュカ。なぜお前は、僕の傍にいる?」

 「理由なんてないよ。レオナルドの傍にいたいと思うからいるだけ。」

 「だが、お前は平民だろう?」

 「うん?」

 「僕は王だ。それなのに、なぜリュカは僕への恨みを捨てた……?」

 「だってあたしにとってレオナルドは王である前に、レオナルドだから。」

 リュカがにっこりと笑う。

「リュカは馬鹿だ。」

 そう言うとレオナルドはリュカの手を引いて、強く抱きしめた。
 
 ーーーーだが僕が王であることに変わりはない。

   ◇◇◇

ーーーーフィリップス様に報告しなくては。

 抱きしめ合うレオナルドとリュカの様子を、フィリップス公爵の部下は慎重に眺めた。

『もしも陛下が……フィリップス家に処罰を考えるようなことがあれば……誰にも気づかれぬよう、道中で陛下を亡き者にしろ。』

 男はフィリップス公爵の忠実な部下である。来るべき時が来たら、的確に役割を遂行する必要がある。

 ーーーーレオナルドの変化をフィリップス様はどうお考えになるだろうか?

   ◇◇◇
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