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57. 公爵と動揺
その頃、国王レオナルドがいなくなったスウェルド城では、フィリップス公爵が権力を握り、贅沢にふけっていた。
「くははっははっ!」
フィリップス公爵は笑いが止まらない。
スウェルド城王の間。本来、王しか座ることのできないはず場所に、フィリップス公爵は腰を下ろしている。だが、それを咎めるものはもはや誰もいない。アリスの父親であるタラ-レン公爵は、すでにフィリップス公爵に逆らった罪で、投獄されている。誰もがフィリップス公爵を恐れ、彼に従っていた。フィリップス公爵は自らを”国王代理”と名乗り、好き放題ふるまっていた。
ーーーー全てが儂の思い通りだ!
そこに、レオナルドに同行したスパイからの伝言を受けた兵士が、王の間に入ってきた。
「フィリップス様!国王陛下に関して報告がございます!」
フィリップス公爵は目を細めて、兵士に尋ねる。
「陛下は生きているのか?」
「は、はい。生きておられます。」
兵士が戸惑いながら答えるのを聞いて、フィリップス公爵は舌打ちをする。
ーーーーさっさと野垂れ死んでくれればいいのだが。
すでにロゼッタは妊娠がレオナルドの子供ではないことを白状している。レオナルドが帰ってくれば、厄介なことになるのは明白だった。フィリップス公爵はロゼッタの後見をしており、全てが公爵の企みであったと露呈する危険性があるからだ。
「陛下はコトリ村に到達しました。これは前正妃アリスが姿を消した場所です!」
「ぬうう。」
「陛下は城から持ち出した大量の食料を村の人々に配っています。村人たちはかつて正妃アリスを尊敬していたように、今度は陛下に感謝の意を示し始めているとのことです!」
「はぁ?!」
フィリップス公爵は顔をしかめた。陛下は外の世界に全く興味を持っていなかったはずだ。一体何が起こっているのだろう。少なくとも、フィリップス公爵にとって好ましくない報告であるのは確かだ。
「陛下はこれまでの行動を反省し、後悔の念を抱いているとのこと……。前王妃アリスに似た銀髪で緑の瞳を持つ少女を自分の側に置き、大切にされているとのことです!」
「そんな愚かなっ!」
フィリップス公爵は、兵士の報告を聞いて、怒りで体を震わせる。
ーーーーせっかく目障りだったアリスを追い払ったのに、レオナルドが面倒な存在になるだと?
スウェルド国では、国王や貴族は神聖で特別な存在でなければならないはず。それをレオナルドが壊そうとしているなんて、フィリップス公爵にとって容認できないことだ。
ーーーーお飾りの王でいれば生かしてやったのに!
フィリップス公爵がレオナルドを消し去ろうかと考えていると、王の間にもう一人の従者が入ってきた。
「フィリップス様!元正妃アリス様についての報告です!」
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