75 / 80
75.国王様と投獄
しおりを挟むゴアル国に向かう馬車はゆっくりと森の小道を進んでいく。馬車の中ではリュカがいつも通り,楽しそうに外を眺めている。
「リュカ。」
意味もなく,レオナルドはリュカの名前を呼ぶ。ずっと読んでいたいし,彼女に触れていたい。そう思うのは,彼女に惹かれているからだろうか。
レオナルドに名前を呼ばれて,リュカが振り返った。
「だいじょうぶ。アリス様は絶対に目を覚ますよ!」
力強く言い切り,レオナルドの手を強く握る。昨晩から,ずっとそばに寄り添っていてくれたのは,リュカだった。リュカがいなければ,レオナルドはおかしくなっていたと思う。
「当然だ。あんな図太い女が,このまま死ぬわけがない。」
「ふふ,きっとそうだよ。」
「……。」
「ん?なーに?」
「見ていたかっただけだ。」
「ええ?!」
リュカの顔が赤くなった。そんな彼女を自分のものに独り占めしたくなる。だけど,そんな資格は無いとレオナルドはわかっていた。
「なあ,リュカ。僕が王じゃなくなったら,どうする?」
リュカはにっこりと笑った。
「変わらないよ。あたしはレオナルドと一緒にいたいよ!」
「……馬鹿か。」
レオナルドは小さく笑った。
「馬鹿じゃないよ!」
「ふん。」
-----お前に出会えてよかった。
レオナルドは心の中でつぶやく。リュカがいたから,レオナルドは独りぼっちじゃなくなった。独りぼっちじゃなくなったから,自分が何をしなくちゃいけないのか気づけたのだった。
◇◇◇
それから。ゴアル国王都に無事たどりついたレオナルド。
彼はゴアル国の国会で,スウェルド国王を退位すると宣言した。そして,スウェルド国におけるレオナルドの権利をすべて破棄すると宣言した。スウェルド国は王家独裁制であり,全ての権利がレオナルドに集約されてた。
「それでいいのか?スウェルド国王レオナルドよ?」
「‥‥…スウェルド国は腐っている。この国を救ってくれるなら,俺はもうなんでもいい。」
長い話し合いの末,ゴアル国政府はスウェルド国をゴアル国の一部にすることを決めた。
そしてもう一つ。
「元スウェルド国レオナルド。あなたを国民に圧政を敷いた罪で投獄を決定する!」
レオナルドはスウェルド国の元国王として,国民を苦しめてきた罪に問われることとなった。そしてそれはレオナルド自身が望んだことだった。
スウェルド国は崩壊し,新しい国になる。だが,人々の憎しみはなくならないとレオナルドは考えていた。だからこそ,レオナルドは罪を負わなくてはならない。
126
あなたにおすすめの小説
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。
藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。
学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。
そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。
それなら、婚約を解消いたしましょう。
そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。
【1月18日完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる