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◆向日葵の騎士◆
1
「どうか、貴女の足にキスすることを許して欲しい……」
ローザはたじろいだ。
生徒会の執務室。まだ窓の外は明るいが、みんな寮に帰っている時間帯なので校内は静まりかえっている。
足元に、オレンジの髪の男がひざまずいている。片膝立ちで、まるで騎士のように。
いや、確かに彼は騎士の資格は持っていた。毛先が赤味がった明るいオレンジの長い癖っ毛は肩口で束ねられ、片耳には大きめのピアス、手は指輪だらけのチャラ男キャラではあるけれど。
いつものふざけた冗談めいた様子もなく、真剣にこちらを見上げている。夜の森のような瞳にドキリとしてしまう。
彼がこんな表情を見せるなんて、ヒロインに対してだけのはずなのに……。
狼狽えながら顔を上げると、腕を組んで立っていたエドアルドもまた、こちらを真剣に見つめていた。
本棚に囲まれたこの室内にいるのは、学園の制服姿の三人きりだった。
「どうだ、ローザ。チェリオの気持ちを受け入れられるだろうか?」
「……あの、何の冗談ですの?」
無意識に後ずさったようで、執務机に尻が当たった。いつも生徒会長であるエドアルドが書類に向き合っているテーブルだ。
「チェリオが君の第二婚約者になれるかどうかという話だ。公爵にはもう話を通してあって、あとは君の気持ちしだいだ」
この国では、貴族の女性は婚約者を五人まで持てる。
それがゲームのハーレムエンドだ。
ゲームの中ではリリィにあまり語られていなかったが、結婚する時にはその中からひとり選んでもいいし、五人全員と結婚することも出来る。誰かと結婚した時点でほかの婚約は破棄されるので、結婚式はいちどに挙げられることが多い。
新たに婚約者を増やすには、すでに婚約している者たちの半数以上の許可が必要だ。女性が求めていても多数決によっては却下することもできる。
その第二婚約者に、第一婚約者エドアルドの幼なじみでもある親友が名乗り出たというのだ。
チェリオは片膝のままうなずいた。
「俺はーー昔からずっと貴女を愛していました。ですが、貴女はエディの婚約者だ。こいつは嫉妬深くて他の婚約者の存在を許さなかったから、気持ちを殺して堪え忍ぶしかなかった。だが……」
「ああ。事情が……いや、気が変わった。みんなに愛される君を閉じ込めても仕方ない。みんなに愛されてるままの君を丸ごと受け入れることにしたんだ」
エドアルドが真面目にうなずいた。
「……愛されてる……と、おっしゃってもそんな……」
戸惑いのほうが大きかった。
みんなに良くしてもらっているけれど、そんな熱い単語が合うのかよく分からない。
チェリオはいつも以上に色香が溢れる声で、狂おしそうに告白する。
「どうか、俺の気持ちを受け入れてください、ローザ様。貴女が好きで好きすぎて、このままじゃ気が狂ってしまいそうだ。それとも……俺のことは嫌いですか?」
「そんなわけ、ありませんわ!」
反射的に叫んでしまう。
「嫌いなわけありませんわ。町へ忍んで行った時に、わたくしとリリィを暴漢から助けてくださったのは、どなたですか? いつもふざけたふりをしながらもさりげなく手助けしてくれたり、安全を気にして寮まで送ってくださるのは、どなたですか?」
彼だって、エドアルド王子に負けず劣らず魅力的な、素敵な男性なのだ。この世界で彼の優しさやさりげない気遣いに接してからは、ゲームの中の彼よりもさらに好きになっていた。
ずっとやりとりを見守っていたエドアルドは、複雑な表情で腕組みをほどいた。
「なら、成立だね、ローザ」
ローザはたじろいだ。
生徒会の執務室。まだ窓の外は明るいが、みんな寮に帰っている時間帯なので校内は静まりかえっている。
足元に、オレンジの髪の男がひざまずいている。片膝立ちで、まるで騎士のように。
いや、確かに彼は騎士の資格は持っていた。毛先が赤味がった明るいオレンジの長い癖っ毛は肩口で束ねられ、片耳には大きめのピアス、手は指輪だらけのチャラ男キャラではあるけれど。
いつものふざけた冗談めいた様子もなく、真剣にこちらを見上げている。夜の森のような瞳にドキリとしてしまう。
彼がこんな表情を見せるなんて、ヒロインに対してだけのはずなのに……。
狼狽えながら顔を上げると、腕を組んで立っていたエドアルドもまた、こちらを真剣に見つめていた。
本棚に囲まれたこの室内にいるのは、学園の制服姿の三人きりだった。
「どうだ、ローザ。チェリオの気持ちを受け入れられるだろうか?」
「……あの、何の冗談ですの?」
無意識に後ずさったようで、執務机に尻が当たった。いつも生徒会長であるエドアルドが書類に向き合っているテーブルだ。
「チェリオが君の第二婚約者になれるかどうかという話だ。公爵にはもう話を通してあって、あとは君の気持ちしだいだ」
この国では、貴族の女性は婚約者を五人まで持てる。
それがゲームのハーレムエンドだ。
ゲームの中ではリリィにあまり語られていなかったが、結婚する時にはその中からひとり選んでもいいし、五人全員と結婚することも出来る。誰かと結婚した時点でほかの婚約は破棄されるので、結婚式はいちどに挙げられることが多い。
新たに婚約者を増やすには、すでに婚約している者たちの半数以上の許可が必要だ。女性が求めていても多数決によっては却下することもできる。
その第二婚約者に、第一婚約者エドアルドの幼なじみでもある親友が名乗り出たというのだ。
チェリオは片膝のままうなずいた。
「俺はーー昔からずっと貴女を愛していました。ですが、貴女はエディの婚約者だ。こいつは嫉妬深くて他の婚約者の存在を許さなかったから、気持ちを殺して堪え忍ぶしかなかった。だが……」
「ああ。事情が……いや、気が変わった。みんなに愛される君を閉じ込めても仕方ない。みんなに愛されてるままの君を丸ごと受け入れることにしたんだ」
エドアルドが真面目にうなずいた。
「……愛されてる……と、おっしゃってもそんな……」
戸惑いのほうが大きかった。
みんなに良くしてもらっているけれど、そんな熱い単語が合うのかよく分からない。
チェリオはいつも以上に色香が溢れる声で、狂おしそうに告白する。
「どうか、俺の気持ちを受け入れてください、ローザ様。貴女が好きで好きすぎて、このままじゃ気が狂ってしまいそうだ。それとも……俺のことは嫌いですか?」
「そんなわけ、ありませんわ!」
反射的に叫んでしまう。
「嫌いなわけありませんわ。町へ忍んで行った時に、わたくしとリリィを暴漢から助けてくださったのは、どなたですか? いつもふざけたふりをしながらもさりげなく手助けしてくれたり、安全を気にして寮まで送ってくださるのは、どなたですか?」
彼だって、エドアルド王子に負けず劣らず魅力的な、素敵な男性なのだ。この世界で彼の優しさやさりげない気遣いに接してからは、ゲームの中の彼よりもさらに好きになっていた。
ずっとやりとりを見守っていたエドアルドは、複雑な表情で腕組みをほどいた。
「なら、成立だね、ローザ」
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