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◆弟の提案◆
1
とろけるような甘い四日間だった。
初日は、婚約者たちとのお披露目。
二日目は、第一婚約者との一日。
三日目は、第二婚約者との一日。
四日目は、第三婚約者との一日。
と、それぞれと過ごすのがこの国の風習なのだ。
そしてこれからは結婚への準備がはじまる。最終的にどの婚約者と結婚(全員と結ばれるのでもいい)するのか考えて、式への準備を整えていかなくてはならない。
「……よく考えたら、ゲームより一年も早いんですわね……」
帰宅の馬車の中で、ローザはため息をついた。
ゲームのリリィは卒業式で王族であることの発覚と婚約発表があり、悪役令嬢=ローザの断罪がはじまった。
婚約から結婚までの期間は人による。ローザだってエドアルドひとりと婚約していた期間が長いのだ。
しかしこのぶんでは、来年に最高学年となったら、卒業とともに結婚となるのではないだろうか……。
「疲れた?」
そのエドアルドが耳元でささやく。並んだ彼の腕はずっと自分の腰を支えている。その腕はたくましい。
また、正面には心配そうな顔をしたチェリオとカルミネがいた。
「だ、大丈夫ですわ」
「僕たちには嘘をつかないで、可愛いローザ」
三人に見つめられて、微笑みながらうなずく。
「……さすがに、ちょっと疲れましたわ。準備も大変でしたし」
しかも四日間ずっと、昼間はあちこちでデートをし、夜ごとに交代で彼らに抱かれていたのだ。楽しく、甘く、気持ち良い日々だったとはいえ、すこし疲れても仕方ない。
そもそも彼らは騎士として鍛えてもいる。商人であるカルミネは毛色が違うが、買い付けのために徒歩や馬車で旅をしてきたのだとも聞いている。体力が違いすぎる。
「明日からまた寮ですが、あまり俺たちと遊べなくなります。大丈夫ですかね?」
チェリオが手を伸ばして、頬に触れてきた。
「さみしくなったら、すぐ私どもに教えてくださいね。姫はすぐ我慢なさるから……」
カルミネはローザの手をとって、レースの手袋越しに甲に口付ける。
「だ、大丈夫ですわ」
「いや、ローザの大丈夫はあてにはできない。君はちゃんと不満や悲しさを言うべきだ」
エドアルドはうなずくと、ローザを両腕で抱き込んで肩口にキスを落とす。それぞれの愛情をうけて、頬が熱くなる。
「もうじき先輩たちの卒業式だね。僕たちが最終学年になれば実習が中心になる。君はもう進路を決めたのかい?」
「……迷っておりますわ。ずっと殿下の支えとなるべく育てられてきましたけれど、それだけではチェリオさまやカルミネさまを助けるのに充分ではございませんもの。これから何を学んでいけば良いのか、考えているところです」
「もう充分ではないのか?」
あきれたようにエドアルドが言うけれど、ローザはまだ不安だった。
悪役令嬢である自分の断罪は、ゲームとは異なった形で行われた。ヒロインであるリリィと仲はよく、自分と婚約破棄するはずのエドアルドとも良好な関係を築けている。
また、本来は自分には存在しなかった二番目三番目の婚約者までいる。
しかし、本当に断罪されるのは卒業式の日なのだ。そのときまで、自分が大好きな人たちを大切にし続けなくては、ゲームの本来のルートに戻ってしまいそうな怖さがある。
それに……。
大好きな婚約者たちを見つめる。愛する人たちにこんなに幸せにしてもらったのだ。何かを返してあげたい。
鞭を打たれて国外追放されるはずのローザがここにいられるのは、差し出した手を握り返してくれたみんなのおかげなのだから。
◆ ◆ ◆
馬車は屋敷の車止めに滑り込む。
今日だけは久しぶりに実家で過ごして、明日にふたたび寮へと向かうのだ。
「姉上、お帰りなさい」
玄関ホールに入るやいなや駆けつけてきたのは、可愛らしい顔立ちの義弟だった。嬉しそうに出迎えながらも、唇をとがらせる。
「遅すぎますよ」
「すまなかったな、ロジィ」
ずいっと進み出たのはエドアルドだった。
王族らしい笑顔で、ふわふわ髪のロジィを見下ろす。
「予定通りだ。そなたの姉上が魅力的なのが悪い。僕たちが別れがたくても仕方ないであろう?」
ロジィもまた、少女のような顔立ちに満面の笑顔を浮かべる。
「明日にはまた寮で会えるじゃないですか。婚約者が増えたというのに、あいかわらずの独占欲でらっしゃいますね」
「明日には会えるのはそなたもであろう? シスコンもそろそろ卒業しないと、公爵家のあととりとして、いかがかな?」
ロジィはニヤッと笑顔を深めた。
「御心配なく。ぼくは姉上に四番目の婚約者を推薦いたします」
「えっ、ロジィっ!?」
ローザがつい叫んだが、そこまで驚いているのは彼女だけだった。
エドアルドは片眉を跳ね上げただけで、義弟を見つめた。
「なるほど、やはりそなたの入れ知恵か……。まあ確かにローザの身の安全としては悪くない選択ではあるが……」
ふたりはさぐり合うような笑みを交わした。
初日は、婚約者たちとのお披露目。
二日目は、第一婚約者との一日。
三日目は、第二婚約者との一日。
四日目は、第三婚約者との一日。
と、それぞれと過ごすのがこの国の風習なのだ。
そしてこれからは結婚への準備がはじまる。最終的にどの婚約者と結婚(全員と結ばれるのでもいい)するのか考えて、式への準備を整えていかなくてはならない。
「……よく考えたら、ゲームより一年も早いんですわね……」
帰宅の馬車の中で、ローザはため息をついた。
ゲームのリリィは卒業式で王族であることの発覚と婚約発表があり、悪役令嬢=ローザの断罪がはじまった。
婚約から結婚までの期間は人による。ローザだってエドアルドひとりと婚約していた期間が長いのだ。
しかしこのぶんでは、来年に最高学年となったら、卒業とともに結婚となるのではないだろうか……。
「疲れた?」
そのエドアルドが耳元でささやく。並んだ彼の腕はずっと自分の腰を支えている。その腕はたくましい。
また、正面には心配そうな顔をしたチェリオとカルミネがいた。
「だ、大丈夫ですわ」
「僕たちには嘘をつかないで、可愛いローザ」
三人に見つめられて、微笑みながらうなずく。
「……さすがに、ちょっと疲れましたわ。準備も大変でしたし」
しかも四日間ずっと、昼間はあちこちでデートをし、夜ごとに交代で彼らに抱かれていたのだ。楽しく、甘く、気持ち良い日々だったとはいえ、すこし疲れても仕方ない。
そもそも彼らは騎士として鍛えてもいる。商人であるカルミネは毛色が違うが、買い付けのために徒歩や馬車で旅をしてきたのだとも聞いている。体力が違いすぎる。
「明日からまた寮ですが、あまり俺たちと遊べなくなります。大丈夫ですかね?」
チェリオが手を伸ばして、頬に触れてきた。
「さみしくなったら、すぐ私どもに教えてくださいね。姫はすぐ我慢なさるから……」
カルミネはローザの手をとって、レースの手袋越しに甲に口付ける。
「だ、大丈夫ですわ」
「いや、ローザの大丈夫はあてにはできない。君はちゃんと不満や悲しさを言うべきだ」
エドアルドはうなずくと、ローザを両腕で抱き込んで肩口にキスを落とす。それぞれの愛情をうけて、頬が熱くなる。
「もうじき先輩たちの卒業式だね。僕たちが最終学年になれば実習が中心になる。君はもう進路を決めたのかい?」
「……迷っておりますわ。ずっと殿下の支えとなるべく育てられてきましたけれど、それだけではチェリオさまやカルミネさまを助けるのに充分ではございませんもの。これから何を学んでいけば良いのか、考えているところです」
「もう充分ではないのか?」
あきれたようにエドアルドが言うけれど、ローザはまだ不安だった。
悪役令嬢である自分の断罪は、ゲームとは異なった形で行われた。ヒロインであるリリィと仲はよく、自分と婚約破棄するはずのエドアルドとも良好な関係を築けている。
また、本来は自分には存在しなかった二番目三番目の婚約者までいる。
しかし、本当に断罪されるのは卒業式の日なのだ。そのときまで、自分が大好きな人たちを大切にし続けなくては、ゲームの本来のルートに戻ってしまいそうな怖さがある。
それに……。
大好きな婚約者たちを見つめる。愛する人たちにこんなに幸せにしてもらったのだ。何かを返してあげたい。
鞭を打たれて国外追放されるはずのローザがここにいられるのは、差し出した手を握り返してくれたみんなのおかげなのだから。
◆ ◆ ◆
馬車は屋敷の車止めに滑り込む。
今日だけは久しぶりに実家で過ごして、明日にふたたび寮へと向かうのだ。
「姉上、お帰りなさい」
玄関ホールに入るやいなや駆けつけてきたのは、可愛らしい顔立ちの義弟だった。嬉しそうに出迎えながらも、唇をとがらせる。
「遅すぎますよ」
「すまなかったな、ロジィ」
ずいっと進み出たのはエドアルドだった。
王族らしい笑顔で、ふわふわ髪のロジィを見下ろす。
「予定通りだ。そなたの姉上が魅力的なのが悪い。僕たちが別れがたくても仕方ないであろう?」
ロジィもまた、少女のような顔立ちに満面の笑顔を浮かべる。
「明日にはまた寮で会えるじゃないですか。婚約者が増えたというのに、あいかわらずの独占欲でらっしゃいますね」
「明日には会えるのはそなたもであろう? シスコンもそろそろ卒業しないと、公爵家のあととりとして、いかがかな?」
ロジィはニヤッと笑顔を深めた。
「御心配なく。ぼくは姉上に四番目の婚約者を推薦いたします」
「えっ、ロジィっ!?」
ローザがつい叫んだが、そこまで驚いているのは彼女だけだった。
エドアルドは片眉を跳ね上げただけで、義弟を見つめた。
「なるほど、やはりそなたの入れ知恵か……。まあ確かにローザの身の安全としては悪くない選択ではあるが……」
ふたりはさぐり合うような笑みを交わした。
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