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妹が私の婚約者を奪おうとしていますが、大丈夫でしょうか。もっとよく考えて動くべきだと思うのですが……
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「お義兄さまっ!」
「……ルベル嬢、離れて欲しい」
「まあそんなことを言って! いいのです、お姉さまなんてアル様とちっとも仲を深めようとしないじゃないですか。あんなひどい婚約者に気を使うことはないです」
「こんなことはしないのが普通なんだよ」
げんなりしているアルジュ様の声を聞き、急いで私は中庭に向かいました。予想の通り、そこには私の婚約者であるアルジュ様と、その膝に乗ろうとしている妹のルベルがいます。
なんて光景でしょう。
いつものことながら目眩がします。
「ルベル。婚約者でもない男性に、そのようなことをしてはいけません」
「なによっ! 気が利かないお姉さまのかわりにアル様を癒やして差し上げているのよ」
「癒やしになっていません。アルジュ様が迷惑がっているのがわかりませんか」
「そんなことはないわ。お義兄様だって、私と触れ合えて嬉しいでしょ? 嫌がっていないもの」
私はため息をつきます。
確かにアルジュ様は遠い目をして、ルベルを無理に引き離そうとはなさっていません。
「それは押しのけるとあなたが大泣きして、我が家の評判が下がるからです。アルジュ様の心痛を察しなさい」
「ふんっ、そんなこといって、アル様が私に盗られそうで嫌なんでしょ? アル様の喜ぶことをひとつもしないくせに」
「ルベル、そういう話ではありません。すぐに離れないと……」
「離れないと、なに? お姉さまに何ができるっていうの?」
「……」
私は悲しい気持ちで、ルベルの後ろから男性がやってくるのを見ました。
やはり今回もだめなようです。
「ルベル嬢」
「えっ? あっ、ジャスティン様!」
「これで三度目だ。あなたが慎みどころか恥知らずの女性だと確信したよ。あなたとの婚約は破棄させていただく」
「ま、待って! アルジュは兄になる人なの! 家族なの! だから、だから」
ルベルは追いかけますが、ジャスティン様はさっさと離れていきました。
彼と妹の婚約は政略的なものではなく、契約書もありません。ですので家に害はないのですが、私はやはりため息をつきます。
妹が婚約を破棄されるのはこれで五度目です。
それでもなんとかルベルを回収してくれて、かつ、ルベルをそれなりに大事にしてくれそうな男性を探し、奇跡的に見つかったのがジャスティン様でした。
彼は未熟なルベルを可愛いと言い、教育しようとしてくれていたのですが、たった今さじを投げられてしまいました。
「これでだめなら、いよいよご老人の妾かもしれませんわ……」
「それがいいかもしれないよ」
アルジュ様も少し投げやりです。
私もそうしたいです。
「当家の評判が……」
「やむを得ないよ」
「そう……ですわね……」
修道院に押し込むよりは、まあ、いくらか幸せかもしれません。
ルベルの評判はすでに悪いですから、同情してくれる方もいるでしょう。それでも「娘を金持ちに売った」と言う人もいるでしょう。
「リアーナ、もう気にするのはやめたほうがいいと思う。たぶん、あれは、もう無理なんだよ。他人事だと思うかもしれないが」
「……いえ、きっと、そうなのでしょう。なんとか引き取ってくれるところを探します」
「それがいい……」
「どうしてっ、どうしてよぉ! 全部、お姉さまのせいでっ!」
妹が地面にこぶしを叩きつけて嘆いています。ジャスティン様のことはそれなりに気に入っていた妹なのです。
それなのになぜ、と思います。
「なりふり構わず私を目の敵にするのをやめるべきだと思うのですが……」
「お姉さまだけ幸せになるなんてっ! そんなの許せない!」
「わざわざ自分が不幸になっては本末転倒でしょうに」
この妹をどうしましょうか、本当に。
でもそれ以外では、婚約者はおかしな人ではないし、両親も妹にまあ少し甘いかもしれないけれど私へも同じですし、友人は優しいですし、恵まれているのです。望みすぎてはいけないのかもしれません。
前向きに生きていきましょう。
与えられた幸せを放棄して不幸になっている人が、なんだか目の前にいますし。
「……ルベル嬢、離れて欲しい」
「まあそんなことを言って! いいのです、お姉さまなんてアル様とちっとも仲を深めようとしないじゃないですか。あんなひどい婚約者に気を使うことはないです」
「こんなことはしないのが普通なんだよ」
げんなりしているアルジュ様の声を聞き、急いで私は中庭に向かいました。予想の通り、そこには私の婚約者であるアルジュ様と、その膝に乗ろうとしている妹のルベルがいます。
なんて光景でしょう。
いつものことながら目眩がします。
「ルベル。婚約者でもない男性に、そのようなことをしてはいけません」
「なによっ! 気が利かないお姉さまのかわりにアル様を癒やして差し上げているのよ」
「癒やしになっていません。アルジュ様が迷惑がっているのがわかりませんか」
「そんなことはないわ。お義兄様だって、私と触れ合えて嬉しいでしょ? 嫌がっていないもの」
私はため息をつきます。
確かにアルジュ様は遠い目をして、ルベルを無理に引き離そうとはなさっていません。
「それは押しのけるとあなたが大泣きして、我が家の評判が下がるからです。アルジュ様の心痛を察しなさい」
「ふんっ、そんなこといって、アル様が私に盗られそうで嫌なんでしょ? アル様の喜ぶことをひとつもしないくせに」
「ルベル、そういう話ではありません。すぐに離れないと……」
「離れないと、なに? お姉さまに何ができるっていうの?」
「……」
私は悲しい気持ちで、ルベルの後ろから男性がやってくるのを見ました。
やはり今回もだめなようです。
「ルベル嬢」
「えっ? あっ、ジャスティン様!」
「これで三度目だ。あなたが慎みどころか恥知らずの女性だと確信したよ。あなたとの婚約は破棄させていただく」
「ま、待って! アルジュは兄になる人なの! 家族なの! だから、だから」
ルベルは追いかけますが、ジャスティン様はさっさと離れていきました。
彼と妹の婚約は政略的なものではなく、契約書もありません。ですので家に害はないのですが、私はやはりため息をつきます。
妹が婚約を破棄されるのはこれで五度目です。
それでもなんとかルベルを回収してくれて、かつ、ルベルをそれなりに大事にしてくれそうな男性を探し、奇跡的に見つかったのがジャスティン様でした。
彼は未熟なルベルを可愛いと言い、教育しようとしてくれていたのですが、たった今さじを投げられてしまいました。
「これでだめなら、いよいよご老人の妾かもしれませんわ……」
「それがいいかもしれないよ」
アルジュ様も少し投げやりです。
私もそうしたいです。
「当家の評判が……」
「やむを得ないよ」
「そう……ですわね……」
修道院に押し込むよりは、まあ、いくらか幸せかもしれません。
ルベルの評判はすでに悪いですから、同情してくれる方もいるでしょう。それでも「娘を金持ちに売った」と言う人もいるでしょう。
「リアーナ、もう気にするのはやめたほうがいいと思う。たぶん、あれは、もう無理なんだよ。他人事だと思うかもしれないが」
「……いえ、きっと、そうなのでしょう。なんとか引き取ってくれるところを探します」
「それがいい……」
「どうしてっ、どうしてよぉ! 全部、お姉さまのせいでっ!」
妹が地面にこぶしを叩きつけて嘆いています。ジャスティン様のことはそれなりに気に入っていた妹なのです。
それなのになぜ、と思います。
「なりふり構わず私を目の敵にするのをやめるべきだと思うのですが……」
「お姉さまだけ幸せになるなんてっ! そんなの許せない!」
「わざわざ自分が不幸になっては本末転倒でしょうに」
この妹をどうしましょうか、本当に。
でもそれ以外では、婚約者はおかしな人ではないし、両親も妹にまあ少し甘いかもしれないけれど私へも同じですし、友人は優しいですし、恵まれているのです。望みすぎてはいけないのかもしれません。
前向きに生きていきましょう。
与えられた幸せを放棄して不幸になっている人が、なんだか目の前にいますし。
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