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第53話 舞い上がる守護者! 魔導ドローン防除部隊
しおりを挟む種まきから数週間。
アリアの黒かった大地は、鮮やかな緑の絨毯へと変わっていた。
小麦が一斉に芽吹き、太陽の光を浴びてすくすくと育っている。
だが、その美しい光景の裏で、見過ごせない報告が上がってきていた。
「市長! C区画で『喰い荒らし』が発生しました!」
「D区画の葉に、白い斑点が! 病気かもしれません!」
組合の事務所に、農民たちが血相を変えて飛び込んでくる。
大規模農業の最大の弱点。それは「単一栽培(モノカルチャー)」ゆえに、一度発生した病害虫が爆発的に広がりやすいことだ。
「手作業で虫を取り除け! 病気の葉を焼け!」
「無理です! 広すぎて追いつきません!」
悲鳴を上げる農民たち。
だが、俺は慌てず騒がず、執務机から立ち上がった。
「想定内だ。……セバス、アリア空軍の出番だ」
「御意。……『蜂(ハチ)』たちの準備は整っております」
***
俺たちは農民たちを引き連れ、被害が出ているC区画へと向かった。
そこには、俺がドワーフのガランに極秘で作らせていた、奇妙な機体が並んでいた。
大きさは座布団ほど。
軽量な木材とミスリルで組まれた十字型のフレーム。
その四隅には、風属性の魔石を動力とする「プロペラ」が取り付けられている。
「な、なんです? このおもちゃみたいなのは」
「空飛ぶゴーレムか?」
俺は機体のスイッチを入れた。
「こいつの名は『魔導ドローン・スプレーヤー』。空から畑を守る守護者だ」
ブゥゥゥゥゥン……!!
四つのプロペラが一斉に高速回転を始め、機体がふわりと浮き上がった。
まるで巨大な羽虫のような羽音だ。
「タンクには、領内の錬金術師に調合させた『特製防除液(ニームオイルと木酢液の混合)』が入っている。人体には無害だが、虫は大嫌いな匂いだ」
俺は手元のコントローラー(魔石通信機)を操作した。
ドローンは地上3メートルの高さを維持したまま、畑の上空へと滑るように移動する。
「散布(スプレー)開始!」
プシューーーーーッ!!
機体の下部から、白い霧が勢いよく噴射された。
プロペラの風が霧を地面に叩きつけ(ダウンウォッシュ)、作物の葉の裏側まで薬剤を行き渡らせる。
「は、速い……!」
「俺たちがジョウロで撒くより、ずっと広範囲だ!」
ドローンは人間が歩く何倍もの速度で畑を縦横無尽に飛び回り、あっという間に一区画の消毒を終えてしまった。
人力なら数日かかる作業が、わずか15分だ。
***
「いいか、これからは『早期発見・即時爆撃』だ」
俺は着陸したドローンのタンクを交換しながら言った。
「農民が見回りで異常を見つけたら、すぐに組合へ連絡する。そうすれば、このドローン部隊が急行し、被害が広がる前にピンポイントで叩く」
さらに、このドローンにはもう一つの役割がある。
「肥料の追加(追肥)もこいつでやる。葉っぱに直接栄養剤を吹きかける『葉面散布』だ。これで小麦の成長速度をさらにブーストさせる」
農民たちは、空を見上げて呆然としていた。
土を耕す「鉄の馬(トラクター)」。
水を送る「鉄の心臓(ポンプ)」。
そして今、空を舞う「鉄の蜂(ドローン)」。
「市長……あんた、本当に人間か?」
「農業ってのは、もっとこう……泥臭いもんじゃなかったのか?」
そんな呟きが聞こえてくるが、俺は笑って流した。
「泥臭い苦労は過去のものだ。これからは『スマート農業』の時代だ」
空からの防除体制は確立した。
作物は守られ、順調に育つだろう。
だが、収穫までの間、ただ待っているわけにはいかない。
俺は次なる計画――収穫した膨大な作物を「どう加工し、価値を高めるか」という、六次産業化への布石を打ち始めた。
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