美貌の御曹司は、夜ごとの獣を飼い慣らせない ~現代源氏の溺愛、あるいは規格外の楔(くさび)~

namisan

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第4話 美しき着せ替え人形


 ペントハウスでの生活が始まって一週間。
 藤村紫苑(ふじむら・しおん)の身体は、驚くべき速度で生気を取り戻していた。
 専属シェフが作る栄養管理された食事、極上の睡眠環境、そして何よりも「明日の心配をしなくていい」という安堵感。
 カサついていた肌は内側から発光するような潤いを帯び、げっそりと落ちていた頬にも健康的な赤みが差している。
「……まるで、魔法みたい」
 バスルームの鏡の前で、紫苑は自身の変化に戸惑っていた。
 だが、その変化を誰よりも鋭く観察し、愉しんでいる男がいた。
「悪くない。だが、まだ足りないな」
 リビングへ戻った紫苑に、ソファでくつろいでいた源煌(みなもと・こう)が声をかける。
 今日、彼は仕事を早めに切り上げて帰宅していた。
 その理由はすぐに判明した。
「入りたまえ」
 煌が指を鳴らすと、玄関から数名の男女が入ってきた。
 彼らは大量の衣装ケースやハンガーラックを運び込んでくる。一流ブランドのロゴが入ったカバーがずらりと並び、広かったリビングがあっという間に高級ブティックの試着室へと変貌した。
「あ、あの……これは……?」
「お前の服だ。いつまでもそんな安っぽいスウェットを着せておくわけにはいかないからな」
 煌はグラスを傾けながら、顎で指示を出す。
 スタイリストらしき女性たちが、紫苑を取り囲んだ。
「さあ、お嬢様。こちらへ」
「えっ、あ、ちょっと!」
 抵抗する間もなく、紫苑は次々と服を着せ替えられていく。
 清楚なワンピース、上質なシルクのブラウス、身体のラインが出るニット。
 どれも目が飛び出るような値段のものばかりだ。
 煌はそれをソファから眺め、まるで競走馬の品定めでもするかのように短く評価を下していく。
「却下だ。色が地味すぎる」
「次はもっと背中が開いたものにしろ」
「……いいだろう。それは残しておけ」
 紫苑はただの着せ替え人形だった。
 自分の意思など介在しない。すべては主である煌の美学に叶うかどうか、それだけだ。
 一通りの服が決まった後、男性スタッフたちが退室し、女性スタイリストだけが残った。
 空気が少し変わる。
「次は、下着の採寸をさせていただきます」
「えっ……」
 紫苑が赤面して煌を見ると、彼は当然のようにそこに座ったままだ。
「煌様……あの、見ているのですか?」
「当たり前だ。お前の肌に直接触れるものだぞ。俺が選ばなくてどうする」
 反論は許されなかった。
 紫苑は羞恥に震えながら、ガウンを脱ぎ捨て、下着姿になる。
 スタイリストがメジャーを当てていく中、煌がゆっくりと立ち上がり、近づいてきた。
「……ふむ」
 煌の手が伸びる。
 スタイリストを下がらせ、彼自身の手が、紫苑の腰回りに触れた。
 熱い。
 服の上からでも感じた熱量が、直接肌に触れることで火傷しそうなほど伝わってくる。
「ひゃっ……」
「動くな」
 煌の大きな手が、紫苑のくびれから骨盤のラインをなぞり、そして豊かになりつつある臀部を鷲掴みにした。
 性的な手つきというよりは、果実の熟し具合を確かめる農夫のような、あるいは肉の付き具合を確認する料理人のような手つきだ。
(……やはり、まだ狭いな)
 煌は内心で冷静に分析していた。
 紫苑の骨盤は、女性らしい丸みを帯び始めてはいるが、煌の規格外のイチモツを受け入れるには、あまりにも華奢だ。
 今の状態で強引に貫けば、間違いなく裂傷を負わせる。恐怖心だけを植え付けて終わるだろう。
「もっと肉をつけろ、紫苑」
 煌は耳元で囁く。
「ここはもっと柔らかく、ここはもっと弾力が必要だ。……今のままでは、俺の愛を受け止めきれずに壊れてしまう」
 その言葉に含まれる真の意味を、紫苑はまだ知らない。
 ただ、臀部を揉みしだく指の力が強まり、下腹部に硬い何かが押し当てられる気配を感じて、紫苑の背筋に電流のような戦慄が走った。
「こ、煌様……こわい、です……」
「怖がることはない。俺が丹精込めて作り上げてやる」
 煌は手を離すと、用意されていた中で最も面積の少ない、繊細なレースのランジェリーを指差した。
「これを着けろ。……俺の前では、常に女であることを意識させるんだ」
 そう命じる煌の瞳は、理性の檻の奥で、凶暴な獣が涎を垂らしているかのように昏く濁っていた。
 紫苑は震える手で、その薄い布切れを受け取る。
 逃げ場はない。
 この美しい檻の中で、身も心も、そして身体の奥の奥まで、彼に開発される未来が待っているのだ
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