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3章 旅はいいよね。平和だよね?
第33話 旅の始まりは災難と共にですね
しおりを挟む「旦那様、私たちがこの船の操縦を手取り足取りお教えいたします」
「まずはここを握って・・・」
ぷにっ。
お、おぉ。
「こちらの棒を引いて船内に魔力を供給し・・・」
ふにふに。
おぉぉぉ!
両腕に、二つのたわわな果実が!
「ちょっと貴女たち! 私のソウスイ様に何をしているの!」
「メティーナ様。私たちはただ、ソウスイ様に船の操縦方法をお教えしているだけでこざいます」
プンプン怒りながら、侍女に注意するメティーナ。
今は両腕がハッピーな状況だから、できれば邪魔をしないでいただきたい!
「ソウスイさんの顔が赤くなってますっ!」
「あ、あのようにして男性を誘惑するのですね。勉強しないと」
「師匠、デレてる」
「んー、アレは何をやっているんだ?」
「あの侍女たち、中々強敵ですね。私も本腰を入れてソウスイ様を・・・」
「ミルガッドさん? 先にご主人様を奪うのは私ですから。負けませんよ?」
ミルガッドさんとロレナの目の間に、バチバチと勢いの良い火花が燃え始めてしまったので、名残惜しいが腕の感触からおさらばしよう。
「お二人とも、やめてくださいね。ただ操縦を教わりたいだけなので」
「旦那様に言われてしまっては、私たちも離れざるを得ません」
「失礼いたしました。それではメティーナ様、続きをして差しあげてください」
「えっ!? 私がするんですの!?」
え!? メティーナのあの魔乳を腕に!?
そ、それは理性が危ない。じっくり味わいたい気持ちもあるが、非常に危険なのでやめてもらわなくては。
「ふざけてないで、操縦方法を教えてもらえませんか?」
「旦那様。メティーナ様のあの胸の感触を、体験したくはないのですか?」
「旦那様。チャンスを逃してはなりません。ここぞという時に、味わっておくべきです」
俺だって味わいたいが、いやしかし、こんな機会は・・・。
「ロレナさん。ソウスイ様は葛藤されているようですよ」
「ミルガッドさん。協力して止めに入りましょう。このままでは、先に姫様に奪われてしまいます」
「ライバル同士、協力ということですね。その提案、乗りました」
俺が悩んでいる間に、どこかで女性同士の協定が結ばれたらしく、危うい場面は何とか回避することができた。
操縦を覚えるのにも一苦労だね。
「我が息子よ。据え膳食わぬは男の恥だぞ? 食べ頃の娘を美味しくいただいてはどうかね?」
「国王陛下、まだいたんですか? それと、俺は息子になった覚えはないですからね」
「そうか。旅から戻って来た暁には、娘が身籠もっていることを祈ろう。では、そろそろ失礼する。公務が山のように待っているのでな」
少し悲しそうな表情を浮かべつつ、王は城へと帰っていった。
ようやく落ち着いてきたので、やっと普通に操縦を教われるね。
「あ、旦那様。船の操縦は私たちが交代でいたしますので、覚えていただかなくて結構ですよ」
「私たちにお任せください」
え?
今までの時間は何だったの?
◇
というわけで無事に飛空船は出発し、マフリュンの案内の元、魔王が犇めく地へと進んでいく。
とりあえず何も起こらないことを祈るばかりだが、何も起きないわけがないよね。
「そこの空に浮いてる船、止まれぇぇい! ここは魔王エシュテリカ様の治める国、エシュテリカ様最強国の領空と知っての愚行なのか!」
早速変な少女に目をつけられたらしい。
澄んだ声を精一杯張り上げて、こちらに向かって叫んでいる。
国の名前がダサ過ぎる件については保留にしておき、これからどういった対策を取るのかを考えよう。
「旦那様、爆弾でも投下いたしましょうか?」
「砲撃の照準は合わせております。いつでも撃てます」
「二人とも、平和に頼むよ。とりあえず降りて説得してみよう」
「ふっふっふ。この私を説得するだと? 無理なことを言ってくれるわ!」
うわっ、びっくりした。
さっきまで下で叫んでた少女が、俺の隣にまで来ていたのだ。驚かないはずはない。
「えっと、君は誰なのかな? この国の兵士さん?」
「この私を兵士呼ばわりだと? ふっふっふ。面白い、面白いぞ青年! 聞かれたからには答えてやろう! この私こそ、魔王エシュテリカ様最強国で最も優雅で、最も強い可憐な美少女・・・魔王エシュテリカ様本人なのだ! どうだ? 恐れ入ったか? 握手してあげようか?」
え、このちっこい女の子が魔王?
まだこの前戦った魔王レグッドの方が、魔王っぽかった気がしてしまう。
「この私に会えたことで感激して声も出ないのだな? ふっふっふ、私に見惚れることを許可してあげようじゃないか! 私は優しいことで有名なエシュテリカ様だからな!」
「あ、はい。そうですか。優しいなら、ちょっとこの飛空船が上空を通り過ぎるのを許可してくれませんかね? 魔王エシュテリカ様?」
魔王エシュテリカを名乗る少女は、うーんと顎を手で覆う仕草をした後、キラキラ輝いた目をし始めた。
「ダメだ! こんな船見たことないから城に持って帰るんだ! だから大人しく私に差し出すといいぞ。これをくれたら領空を通ったことを許してあげよう!」
なんだ、ただのわがまま少女か。
魔王って聞いたから少し身構えてしまったけど、こういう子の扱いなら何とかなるかな。
「そっか。それなら俺が、この船の中を案内するよ。この空飛ぶ船の中身、見てみたくないかな?」
「み、見たい。ごくり。そ、そこまでお前が言うなら、特別に案内させてやってもいいぞ! そう言えば、名前を聞いてなかったな。私は魔王エシュテリカ様だ。さあ、お前も名乗れ!」
「ソウスイだよ。よろしくね、エシュテリカちゃん」
「ちゃんではない! エシュテリカ様だ! 次は気をつけるんだぞ」
「分かったよ。エシュテリカちゃん」
「分かってないではないかぁぁぁ!」
側から見ると少女がポコスカと可愛く殴ってくるだけに見えるのだが、彼女の攻撃は普通の人なら一瞬にしてスクラップになりそうな威力は出ていた。
ダメージを受けなくて良かったと本気で思う。
エシュテリカは、俺が殴られても平気な顔をしているため、つまらなさそうに顔を膨らませた。
「うー、ソウスイ! 早く案内するんだ!」
「かしこまりました。エシュテリカちゃん」
「ぬぅ、もうちゃん付けでも良い。早く船内を見せるんだ!」
こうしている間にも、エシュテリカの国をどんどん進んでいく飛空船。
ソウスイは別の国の領空に入るまで、どうやって時間稼ぎをしようか考えているのであった・・・。
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