どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた

布施鉱平

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第三章

彼女たちと少年(ルナ)

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 ルナは、自分が優秀であることを知っている。

 昔からやってできないことなど何一つなく、やり始めればどんなことでも、誰より上手くこなすことができた。

 隠れんぼでも、駆けっこでも、弓の的当てでも。
 彫刻を彫ったり、絵を描いたりすることですらも、ルナは周りより頭一つ飛び出た才能を示した。

 好奇心が旺盛な分、ひとつのことにのめり込むことはなかったが、興味本位で手を出したものの中で、上達せずに諦めたものなど一つもなかった。

 そのルナがいま、かつてない熱意を持って、ひとつのことに真剣に取り組もうとしている。

「……わたしは、できる子」

 ふんすと一度鼻息を吐くと、ルナはその小さな拳を握り締めた。
 
 今回の挑戦は、間違いなくこれまでの人生で最も難しいものになるだろう。

 それでも、やり遂げなければならない理由が、ルナにはあった。
 
 彼女が挑もうとしているもの、それは────────



 ◇


 ────朝。

 朝日とともに目を覚ましたルナは、まず自分の体調を確認した。

「……大丈夫」
 
 どこにも異常はなく、心身ともに健康そのものだ。

 普段から体調など崩したことのないルナだが、今日という大事な日に、万が一のことがあってはいけない。

 今日は、ルナの番なのだ。

 そして同時に、挑戦の日でもある。

「……がんばる」

 そうポツリと呟くと、ルナは身軽にぴょんとベッドから飛び降り、風のような速さで風呂場に向かった。

 そのまま湯船に飛び込むと(ルナは寝るとき服を着ないので、翌朝風呂に入るまでは基本全裸である)、念入りに全身を洗い、歯を磨き、髪をかし、鏡で自分の姿を確認した。

「……合格」

 痩せすぎていて、色も白く、未だに自分では美しいとも色っぽいとも思えない体だが、少年が受け入れてくれている以上、ルナにとってはそれが全てだ。

 少年の判断基準に沿って自らの容姿に合格判定を出したルナは、自分の部屋に戻ると、部屋着である薄手のチュニックに着替えた。
 
 下着は身につけない。

 それがルナクオリティである。

 もともとは邪魔だからつけていなかっただけなのだが、今は少年の視線がチラチラと胸元や尻や太ももに注がれるのが心地よくて、あえてつけていなかった。

 もう一度鏡で自分の姿を確認し、うんうんと頷くと、今度はそのまま鏡の前で色々なポーズをとり始めた。

 それは、胸元から乳首が見える角度の確認であったり。

 床に落ちているものを拾う振りをして、ずり上がったチュニックから、いい感じにお尻が飛び出す体の角度の確認であったりした。

 これは、いわゆる『ラッキースケベ』によって、自然に夜までの間に少年の性欲が高まるようにする為の練習なのだ。

 ルナは自分が優秀であることを知っているが、決して傲慢ごうまんではなく、怠惰たいだでもない。

 成功し、勝利するためには、入念な準備が必要不可欠であることを理解しているのだ。

「……よし」

 一通りポーズの確認を終えたルナは、もう一度手櫛てぐしでサッと髪を整えると、普段よりも軽やかな足取りでリビングに向かった。

 そろそろ、少年が前日の担当者であるミゼルと風呂から上がってくる時間だ。

 

 ◇


「×○&~♪ $%△#~♪」
「~~~♪  ~~~~♪」

 リビングに、少年の歌声とルナのハミングが流れていた。

 時折少年が歌っている、曲名も歌詞も分からない曲だ。

 だが、ルナはその旋律を一度聞くだけで完璧に覚え、透き通るようなハミングで少年の歌声に合わせていた。

 普段は無口なルナだが、実は歌や楽器などの音楽関係も得意としているのである。

「なんというか……心が癒されるな、この時間は」
「そうですね、いずれはこの曲を聖歌として広めたいくらいです。きっと、聴いた者の魂が浄化されるに違いありません」
「すぴ~……ふにゃふにゃ……」
「アレックスは寝ちゃったわね。幸せそうな顔だわ……」

 小さな二人の合唱に耳を傾けながら、残りのメンバーは思い思いにくつろいでいた。

 ルナが教育係であるときは、このような感じになることが多い。

 教えているのは、音楽────という訳ではない。

 ルナが少年に教えることは、その時々で違うのだ。

 草笛を教えたり、裁縫や編み物を教えたり、風呂場で泳ぎを教えたり、時には陶芸を教えたりすることもある。
 
 ほかのメンバーと内容が被らない範囲で、とにかく少年が楽しめそうな色々なことを、その日の気分で教えるのだ。

 多彩な才能を持つルナだからこそ、できることだった。

 いま二人がやっているのは、向かい合って互いの絵を描くことだ。

 歌を歌っているのは、言ってしまえばついでである。

 ただ、食器を洗うときもそうだが、絵を描いたり編み物をしたりと、あまりものを考えずにできる作業のときは少年が歌を歌い出すことが多いので、必然的にルナが教育係の時には、こうした癒し空間が発生する確率が高くなっているのだ。

「&×△#!」
「……わたしもできた」

 少年が絵を描き終えると同時に、ルナもまた最後の仕上げをして絵を完成させた。

「どれどれ……ほう、さすがにルナは上手いな」
「ほんとねぇ。なんていうか、あの子の優しさがにじみでているような、とても暖かい絵だわ」
「教会の所蔵する『天使ファナカ』の肖像画にも、ここまで素晴らしいものは見たことがありません」
「すかー……にゃふっ……にゃむにゃむ……」

 ルナの後ろ側にいたリディアたちが、まずルナの絵を見てそれぞれに感想を述べた。(アレックスは寝ているが)

 ルナの描いた絵は、さすがの出来栄えだった。

 写実的でありながらも、少年の外見だけでなく内面までえがき出すような表現力は、対象を深く理解する観察力と、頭にイメージしたものをそのまま筆にのせる描画力を、ともに高いレベルで習得していなければ不可能だろう。

 ルナ自身も納得の出来栄えだったらしく、仲間たちからの賛辞を「……むふん」と小鼻を膨らませて受け入れていた。

 そして、次にルナを含めた四人は少年の後ろに回ると、彼の描いた絵をその目にした。

「ほう……これは、うむ」
「うふふ、いい絵ね。素敵だわ」
「このかたには、ルナさんがこのように見えているのでしょうね」
「…………」

 少年の描いたルナの似顔絵。

 それは、お世辞にも出来のいいものではなかった。
 
 線はガタガタしているし、輪郭も崩れている。
 目や鼻の位置もややずれているし、耳の長さも長すぎる。

 しかし、描かれている間中も、ずっといつものように無表情だったはずのルナの顔が────少年の絵の中では、にっこりと笑っているのだ。

「……わたし、この絵、大事にする。……ありがとう、素敵に描いてくれて」

 ルナは少年を抱きしめ、その柔らかい頬にキスをした。

 ルナは少年といるときは、たとえ表情には出なくても、彼の絵に描かれているように、いつだって幸せそうに笑っているのだ。

 それを少年が分かってくれていることが、ルナにはとても嬉しかった。

「……にゃぁん♡ ……あぉぅ♡ ……くるるるるっ♡」

 ……そして、いまだソファーで熟睡しているアレックスも、とても幸せな夢を見ているようだった。



 ◇


 ────とうとう、この時がやってきた。

 夜である。

 少年と二人で過ごす夢のような時間が、これから始まろうとしている。

 しかし、ルナの目には、いつもとは違う熱い炎のようなものが宿っていた。

「……がんばる」

 決意を口にし、ルナは少年をベッドに横たえると、その上に覆いかぶさって唇を奪った。

「……んっ、ちゅっ」

 唇を離すと、透明な唾液が糸を引いて、ルナと少年を繋ぐ。

「○□$×……」

 キスを終えた少年が、いつものようにルナにクンニをしようと、体を起こそうとするが…… 

「……まって、今日は、そのまま」
「?」

 ルナはそれを押しとどめると、少年の上に跨っていった。

 そしてすでに屹立きつりつしている少年のチンポに、自らの割れ目をぬるぬるとこすりつけていく。

「□$%&……」 

 少年はいつもと違う展開に若干戸惑っているようだったが、素直にそれを受け入れ、小さく快感に呻いた。

 ルナはやや強く股間を押し付け、そのまま少年の竿や裏スジやカリを刺激していく。

 今日ルナは、少年を先にイカせるつもりなのだ。

「……がん、ばるっ」

 これが、ルナの挑戦だった。

 もともと感じやすいルナだったが、少年とのセックスを重ねるうちに開発されていき、さらに敏感な体になってしまっていた。

 今ではちょっとクンニされたり、ほんの数回中を擦られただけで、あっけなく達してしまう。

 これはいくらなんでも、女として情けなかった。

 ルナの狭い膣から与えられる快楽に耐え切れず、少年もすぐに射精してくれるのだが、一度として少年を先に絶頂させたことはない。

 だからこそ、今日は女としての、そしてはぐれ者たちマーヴェリックス最年長としての威厳を取り戻すべく、無謀とも言える戦いにいどもうとしているのだった。

「……ん♡ ……んっ♡ ……んっく♡ ……じゃあ、入れる、ね」

 そしてもう一つ、今日やるべき事として、ルナが自分に課していることがあった。

 それが、騎乗位でのセックスだ。

 すでに何度も少年とセックスをしているルナだが、騎乗位だけは、いまだに一度も成し遂げていない体位なのだ。
 
 試したことは、ある。

 少年の上にまたがり、体重をかけ、その逞しいチンポを自らの小さな割れ目に飲み込んだことはある。
 
 だが、そこまでだった。

 感じすぎてしまう体質が災いし、気持ちよすぎて自分では動けなくなってしまったのだ。

 結局その時は、下から少年に突き上げてもらって、二桁にけたくらい絶頂した。

 少年に動いてもらうと、嬉しくて、幸せで、脳が溶けるほど気持ちいい。
 だが、同時に申し訳ない気持ちも、少しだけあったのだ。

 女らしく、そして年上らしく、自分がリードして少年を気持ちよくしてあげたい。
 
 その思いが、今日、不可能とも思える二重作戦ダブルミッションへの挑戦に、彼女を駆り立てたのだった。

「……だ、いじょうぶっ♡ わたし、は、できる子っ♡ 」

 自らに言い聞かせながら、ルナは少年のチンポをゆっくりと飲み込んでいく。

 そして────
 









「ふぐっ!!♡♡」

 ダメだった。

 少年に跨り、その狭い膣内にチンポの先をを飲み込むまでは我慢できた。 

 だが、チンポの先端が子宮を突き上げた瞬間、ルナはあっけなく達してしまったのだ。

 耐えられなかった。

 耐えられるわけがなかった。

 気持ちいいだけではなく、幸せなのだ。

 体だけでなく、心までが満たされるのだ。

 しかし、自分が満たされるだけで、終わるわけにはいかない。

「ひっ、ぎっ……ん、んっ!♡」

 ルナは痙攣し続ける足腰に喝を入れ、その小さな尻をゆっくりと持ち上げていく。

「○&◇$#?」

 必死の形相を浮かべるルナに、少年が心配そうに声をかける。

「だっ、だい、じょぶ……♡」 

 少年に、震える声で応えながら、ルナは少しずつ抽挿ちゅうそうを開始した。
 
 快楽の余韻で未だガクガクと震える足腰には力が入らず、その動きはぎこちない。

 それでも、なんとかしてもう一つの挑戦────『自分で動いて、騎乗位で少年を絶頂させる』だけでも成功させたかった。
 
 だから、ルナは頑張った。
 









 頑張った。










 頑張りすぎた。

「あ゛ぁ゛ぁ゛っ♡♡ あ゛ひぃ゛♡♡ ふぎぃ゛♡♡」

 快楽の限界を超えて動き続けた結果、ルナの敏感になりすぎた膣壁や子宮口は、少年のチンポが一往復するだけで何度も簡単に達してしまい、騎乗位開始から十分ほどで、すでに絶頂回数は三桁さんけたに到達してしまっている。

 そして────




 ────ちょろっ

 ぷしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ

「はにゃ……♡ はひ……♡ ふひぃ……♡」

 ルナは、少年に跨ったまま失禁し、そして失神してしまうのだった。




 その後、意識を取り戻したが体の自由が利かないルナを、少年がまた何度もイカせまくったのは、言うまでもない。

 ルナが年上の威厳を見せ付けられるのは、どうやらまだ先のことになるようだ。
 
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