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第二章
エロの化身
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────天界。
そこは、地上を管理する七柱の神と、全ての創造主である父なる神が座す、神聖なる領域。
自然も、建築物も、生物すらも存在しない、白一色の広大な世界。
そんな場所で、一柱の神が正座をさせられていた。
性愛を司る女神────正確には、『愛と性欲』を司る女神であるエロースだ。
そして正座をするエロースの対面には、彼女を見下ろすかのような位置に、一つの光り輝く球体が浮かんでいた。
その球体こそ、『秩序と混沌』を司る神にして、この世界の全てと他の神々を作り出した絶対神。
父なる神『エルゴ』の神体であった。
【──ברצינות, מה אתה עושה】
エルゴが、エロースに向けて言葉を発した。
人には決して聞き取れず、意味も理解できないその言葉は、音として空気を震わせながら伝わるのではなく、魂を直接繋げるという方法でエロースに語りかけていた。
ちなみにその言葉を人間にも理解できる言語に訳すと、「なにやってんの、マジで」である。
【──את אידיוטית, דפניה, האלה הרעה הזאת】(訳:バカなの? ミジンコなの? この駄女神が)
正座したまま頭を垂れるエロースに対して、容赦ない罵倒が降り注ぐ。
【──ברגע שאתה צריך לאתחל את המוח הזה, אתה צריך לאתחל אותו】(訳:いっぺん、その蕩けた脳みそを初期化してやろうか、おおん?)
エルゴは激怒していた。
いや、かの偉大なる絶対神は、そう言った感情を全て自分から切り離し、そこから他の神々を創造しているので、怒りの感情など残ってはいないはず。
それにも関わらずこうしてエロースを言葉責めしているのは、それだけの事をエロースがしでかしてしまったからに他ならない。
……そう、異世界からエロースが召喚した勇者『正男』に対する、手加減抜きの行き過ぎた能力付与の件である。
ちなみに、フィリア王家の初代巫女が召喚した勇者に与えられた力が100であるとするならば、正男に与えられた力はなんと5000。
数値だけで言うならば、実に基準値の50倍だ。
これには思わずエルゴもにっこり(怒)。
切り離した感情がまた新たに芽生えるほどの昂ぶりを覚え、即座にエロースを呼びつけて説教を開始した、という訳である。
【──אנחה...... זו אשמתי שבראתי אתכם כדי להיות קרובים לבני אדם, להיות מושפעים מהרגשות שלהם, אבל עונש חייב להינתן כעונש】(訳:はぁ……人間に寄り添えるよう、彼らの感情に影響を受けるようにお前たちを創った私の責任もあるけど、それはそれとして罰は与えるかんね)
その言葉を受けると同時に、エロースの体が形を失い、エルゴと同じような光の塊へと変化していった。
【──לעת עתה, לפקוח עין על הגיבור כדי שלא יגזים. כשאסיים עם התפקיד הזה, אחזיר אתכם לשמיים, ועד אז אתאים אותו כך שלא יושפע יותר מדי מרגשות אנושיים】(訳:とりあえず、勇者がやり過ぎないように監視してこい。終わったらこっちに戻してやっから。あと、人間の感情に影響されすぎないように調整もしとっから)
そして光の球となったエロースは、父なる神エルゴによって地上へと堕とされたのだった。
地上に降り立ったエロースは、自分が白い犬の姿になっていることに気がついた。
そしてそのことに、強い不満を抱いた。
天界にいたときの美しい姿を失ったから────ではない。
この姿では、犬としかセックス出来ないからだ。
別にエロースは獣姦が嫌いではない。
むしろ大好きだ。
エロに貴賤はなく、どのエロも至高のものだと思っている。
しかし、犬と犬がセックスしている姿にエロを感じるか?
否!
断じて否である!
それはただの交尾にすぎず、人間が獣に犯される時に付随する背徳感や嫌悪感、でも感じちゃう、というスパイスが全く存在しないからだ。
自分が雄犬だったらまだ良かった。
人間を犯すことで、強制的に獣姦を成立させることが出来るからだ。
だがしかし、今のエロースの肉体は雌犬である。
これではどれだけエロースがエロかろうとも、ただの盛りのついた雌犬にすぎない。
相手がよほどの特殊性癖の持ち主でないかぎり、人間との背徳的な獣姦セックスは難しいだろう。
……この時点ですでにお分かりであろうかと思うが、エロースは父なる神エルゴに言い渡された正男の監視のことなど、全く覚えていなかった。
というよりも、説教されているときから一切その話を聞いていなかった。
なぜなら彼女の脳は常にエロい欲求とエロい妄想で満たされており、それ以外のものが入ってくる容量など残されていないからだ。
────しかし、ここで奇跡は起こった。
どうすればエロを行えるか、というエロースの思考が、ある答えを導き出したのだ。
それは、エロースが異世界から拉致した勇者、正男を利用する方法だった。
正男の中には、エロースが与えたエロース由来のエロいエネルギーが大量に注ぎ込まれている。
現在のエロースは、その神としての力のほとんどをエルゴによって封じられてしまっている状態にあるのだが、すでに渡してあった正男の中にある力は別だ。
もともとが自分の力である以上、神としての権能を失っている状態のエロースであっても、正男の中の力に干渉するくらいは出来るのである。
故にエロースは走った。
自らの力を感知し、その方向に目掛けて一直線に走った。
そしてたどり着いた泉の傍で、可愛らしい金髪の幼女を発見し、足を止めた。
直感的に、その幼女が処女である事を見極めたからだ。
……エロースはエロが大好きだ。
エロとはエロース自身であり、彼女という存在の根幹を成していた。
だからこそ、エロース自身が快楽を得るのはもちろん大事だが、それと同じくらいエロを伝導することも大事だった。
故に、目の前のまだエロに染められていない無垢な少女は、エロースにとって導かなければならない哀れな子羊であったのだ。
とりあえずペッティングでもしてやろうかと、エロースは尻尾を振りながら幼女に近づいていく。
幼女は枝を振り回して抵抗するが、そんなものは巨大な犬の肉体を持つエロースには意味のない行為だ。
さあ、この幼女は無垢な性器を犬の舌で蹂躙されたとき、どんな反応を示すのか……
内心でも現実でも舌なめずりしながら、エロースがロリーナの隙を伺っていると────木々の間から正男が姿を現した。
そして正男を目にした瞬間、エロースの蕩けた脳は素晴らしいことを思いついた。
ロリーナは処女、正男も童貞だ。
ならば、この二人を同時に導いて、二人同時に『卒業』させればいいではないか、と思ったのである。
エロースはロリーナをいったん放置すると、自分に近づいてきた正男と目を合わせた。
そして、正男との間に魂の繋がりを作りだした。
これで限定的ではあるが、エロースは正男の中にある自分の力を使えるようになったのだ。
そこからエロースは精力的に行動を開始した。
まずは正男とロリーナの夢を繋げ、自分は性的に無垢なロリーナに憑依することでその行動を操り、正男に対しては肉体を犬に変化させ獣性を高めることで、強引な性行為に対する抵抗を薄める。
そして二人を、夢の中でとはいえ強制的に交わらせた。
これを毎晩繰り返すことでロリーナに快楽の味を覚えさせ、同時に正男の性に対する消極性を失わせていき、最終的には現実の世界で二人を合体させる、というのが目的であった。
だが、三日経っても、五日経っても、七日経っても、正男とロリーナはセックスしなかった。
夢の中では二人とも積極的に励んでいるというのに、現実のロリーナは正男を誘おうとはせず、正男がロリーナを襲うこともなかった。
性の迷い子を導くことを己が使命の一つと見定めているエロースにとって、これは由々しき事態である。
そして十日目。
森を抜け出た所で遭遇した女騎士に、正男が催眠をかけたにも関わらず、何もせずに狼狽えている姿を見たエロースは、我慢の限界に達した。
正男とロリーナをセックスさせようと躍起になるあまり、自分の性欲を解消していなかったこともその原因の一つだろう。
エロースは魂の繋がりを利用して正男の意識を自分の中に呼び込むと、淫らな笑みを浮かべながら、こう言った。
────マサオよ。いまからお手本を見せてあげるから、よく見ていなさい。
……と。
そこは、地上を管理する七柱の神と、全ての創造主である父なる神が座す、神聖なる領域。
自然も、建築物も、生物すらも存在しない、白一色の広大な世界。
そんな場所で、一柱の神が正座をさせられていた。
性愛を司る女神────正確には、『愛と性欲』を司る女神であるエロースだ。
そして正座をするエロースの対面には、彼女を見下ろすかのような位置に、一つの光り輝く球体が浮かんでいた。
その球体こそ、『秩序と混沌』を司る神にして、この世界の全てと他の神々を作り出した絶対神。
父なる神『エルゴ』の神体であった。
【──ברצינות, מה אתה עושה】
エルゴが、エロースに向けて言葉を発した。
人には決して聞き取れず、意味も理解できないその言葉は、音として空気を震わせながら伝わるのではなく、魂を直接繋げるという方法でエロースに語りかけていた。
ちなみにその言葉を人間にも理解できる言語に訳すと、「なにやってんの、マジで」である。
【──את אידיוטית, דפניה, האלה הרעה הזאת】(訳:バカなの? ミジンコなの? この駄女神が)
正座したまま頭を垂れるエロースに対して、容赦ない罵倒が降り注ぐ。
【──ברגע שאתה צריך לאתחל את המוח הזה, אתה צריך לאתחל אותו】(訳:いっぺん、その蕩けた脳みそを初期化してやろうか、おおん?)
エルゴは激怒していた。
いや、かの偉大なる絶対神は、そう言った感情を全て自分から切り離し、そこから他の神々を創造しているので、怒りの感情など残ってはいないはず。
それにも関わらずこうしてエロースを言葉責めしているのは、それだけの事をエロースがしでかしてしまったからに他ならない。
……そう、異世界からエロースが召喚した勇者『正男』に対する、手加減抜きの行き過ぎた能力付与の件である。
ちなみに、フィリア王家の初代巫女が召喚した勇者に与えられた力が100であるとするならば、正男に与えられた力はなんと5000。
数値だけで言うならば、実に基準値の50倍だ。
これには思わずエルゴもにっこり(怒)。
切り離した感情がまた新たに芽生えるほどの昂ぶりを覚え、即座にエロースを呼びつけて説教を開始した、という訳である。
【──אנחה...... זו אשמתי שבראתי אתכם כדי להיות קרובים לבני אדם, להיות מושפעים מהרגשות שלהם, אבל עונש חייב להינתן כעונש】(訳:はぁ……人間に寄り添えるよう、彼らの感情に影響を受けるようにお前たちを創った私の責任もあるけど、それはそれとして罰は与えるかんね)
その言葉を受けると同時に、エロースの体が形を失い、エルゴと同じような光の塊へと変化していった。
【──לעת עתה, לפקוח עין על הגיבור כדי שלא יגזים. כשאסיים עם התפקיד הזה, אחזיר אתכם לשמיים, ועד אז אתאים אותו כך שלא יושפע יותר מדי מרגשות אנושיים】(訳:とりあえず、勇者がやり過ぎないように監視してこい。終わったらこっちに戻してやっから。あと、人間の感情に影響されすぎないように調整もしとっから)
そして光の球となったエロースは、父なる神エルゴによって地上へと堕とされたのだった。
地上に降り立ったエロースは、自分が白い犬の姿になっていることに気がついた。
そしてそのことに、強い不満を抱いた。
天界にいたときの美しい姿を失ったから────ではない。
この姿では、犬としかセックス出来ないからだ。
別にエロースは獣姦が嫌いではない。
むしろ大好きだ。
エロに貴賤はなく、どのエロも至高のものだと思っている。
しかし、犬と犬がセックスしている姿にエロを感じるか?
否!
断じて否である!
それはただの交尾にすぎず、人間が獣に犯される時に付随する背徳感や嫌悪感、でも感じちゃう、というスパイスが全く存在しないからだ。
自分が雄犬だったらまだ良かった。
人間を犯すことで、強制的に獣姦を成立させることが出来るからだ。
だがしかし、今のエロースの肉体は雌犬である。
これではどれだけエロースがエロかろうとも、ただの盛りのついた雌犬にすぎない。
相手がよほどの特殊性癖の持ち主でないかぎり、人間との背徳的な獣姦セックスは難しいだろう。
……この時点ですでにお分かりであろうかと思うが、エロースは父なる神エルゴに言い渡された正男の監視のことなど、全く覚えていなかった。
というよりも、説教されているときから一切その話を聞いていなかった。
なぜなら彼女の脳は常にエロい欲求とエロい妄想で満たされており、それ以外のものが入ってくる容量など残されていないからだ。
────しかし、ここで奇跡は起こった。
どうすればエロを行えるか、というエロースの思考が、ある答えを導き出したのだ。
それは、エロースが異世界から拉致した勇者、正男を利用する方法だった。
正男の中には、エロースが与えたエロース由来のエロいエネルギーが大量に注ぎ込まれている。
現在のエロースは、その神としての力のほとんどをエルゴによって封じられてしまっている状態にあるのだが、すでに渡してあった正男の中にある力は別だ。
もともとが自分の力である以上、神としての権能を失っている状態のエロースであっても、正男の中の力に干渉するくらいは出来るのである。
故にエロースは走った。
自らの力を感知し、その方向に目掛けて一直線に走った。
そしてたどり着いた泉の傍で、可愛らしい金髪の幼女を発見し、足を止めた。
直感的に、その幼女が処女である事を見極めたからだ。
……エロースはエロが大好きだ。
エロとはエロース自身であり、彼女という存在の根幹を成していた。
だからこそ、エロース自身が快楽を得るのはもちろん大事だが、それと同じくらいエロを伝導することも大事だった。
故に、目の前のまだエロに染められていない無垢な少女は、エロースにとって導かなければならない哀れな子羊であったのだ。
とりあえずペッティングでもしてやろうかと、エロースは尻尾を振りながら幼女に近づいていく。
幼女は枝を振り回して抵抗するが、そんなものは巨大な犬の肉体を持つエロースには意味のない行為だ。
さあ、この幼女は無垢な性器を犬の舌で蹂躙されたとき、どんな反応を示すのか……
内心でも現実でも舌なめずりしながら、エロースがロリーナの隙を伺っていると────木々の間から正男が姿を現した。
そして正男を目にした瞬間、エロースの蕩けた脳は素晴らしいことを思いついた。
ロリーナは処女、正男も童貞だ。
ならば、この二人を同時に導いて、二人同時に『卒業』させればいいではないか、と思ったのである。
エロースはロリーナをいったん放置すると、自分に近づいてきた正男と目を合わせた。
そして、正男との間に魂の繋がりを作りだした。
これで限定的ではあるが、エロースは正男の中にある自分の力を使えるようになったのだ。
そこからエロースは精力的に行動を開始した。
まずは正男とロリーナの夢を繋げ、自分は性的に無垢なロリーナに憑依することでその行動を操り、正男に対しては肉体を犬に変化させ獣性を高めることで、強引な性行為に対する抵抗を薄める。
そして二人を、夢の中でとはいえ強制的に交わらせた。
これを毎晩繰り返すことでロリーナに快楽の味を覚えさせ、同時に正男の性に対する消極性を失わせていき、最終的には現実の世界で二人を合体させる、というのが目的であった。
だが、三日経っても、五日経っても、七日経っても、正男とロリーナはセックスしなかった。
夢の中では二人とも積極的に励んでいるというのに、現実のロリーナは正男を誘おうとはせず、正男がロリーナを襲うこともなかった。
性の迷い子を導くことを己が使命の一つと見定めているエロースにとって、これは由々しき事態である。
そして十日目。
森を抜け出た所で遭遇した女騎士に、正男が催眠をかけたにも関わらず、何もせずに狼狽えている姿を見たエロースは、我慢の限界に達した。
正男とロリーナをセックスさせようと躍起になるあまり、自分の性欲を解消していなかったこともその原因の一つだろう。
エロースは魂の繋がりを利用して正男の意識を自分の中に呼び込むと、淫らな笑みを浮かべながら、こう言った。
────マサオよ。いまからお手本を見せてあげるから、よく見ていなさい。
……と。
応援ありがとうございます!
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