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第二章
16.花園
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ザァァァ……と暖かな風が吹き、花の甘い香りを伴って私の身体を通り過ぎて行く。
絵画のような世界が眼前に広がっていた。
色とりどりの鮮やかな花々が溢れんばかりに咲き乱れ、地平線の向こうまで続いている。紫、白、黄色、ピンク色とファンシーな色彩に染まった空間は、さっきまで森だったはずなのに、此処だけ切り取られた別世界になっているかのような。
――そんな楽園の中心に、真っ白な家が鎮座している。
「すごい…………森の中にこんなお花畑が……ちゃんと家もある」
「いつ見ても凄まじいねぇ、花を折らないように着いておいで。花畑荒らすとうるさいから」
花を傷つけないよう慎重に、ゆっくりとミェルさんの後に着いて行く。
……そして私たちは花畑の中心、花魔女の邸宅の玄関へと辿り着いた。
真白に塗られた小さめの家は、ミェルさんの家とはまた違った美しさを感じさせる。
「お~い、プレジール!!居るか~!!」
ミェルさんが叫ぶが一切の返事は無い。チャイムやベルみたいなのもないので、こうやって呼ぶしかないみたいだけど……
「なんだい留守か?居ないなら居ないと言え~!!プレジール~!!」
――不意に、一層強い花の香りがふわりと私の鼻に届く。
「騒がしいわね……」
私のほぼ真後ろから、甘い女性の声が溶けるように耳に届けられた。
「わっ……!?」
「うるさいのは嫌いだって……私何度も言ったわよね」
咄嗟にミェルさんの方へ飛び退き、私の背後に居た人物の全体像が目に映る。
私よりも小柄……140cmくらいだろうか?その華奢な身体に不釣り合いなほど長い金髪が足元まで伸び、線の細さを強調している。
黒いローブのミェルさんとは対照的な純白のドレスのようなワンピースに身を包んだその人は、一国のお姫様のような神秘さと可憐さを纏っていた。
「なんだ、ちゃんと居るじゃないか。久しぶりだねプレジール」
「人の話を聞きなさいまったく……。ええそうね……直接会うのは10年振りくらいかしら……」
気だるげな口調で挨拶を交わした花魔女は、次いで私の方に透き通った桃色の瞳を向ける。伏し目がちだったその眼は、私から何かを感じ取ったのかその瞳孔を開いてまじまじと観察してくる。
「ねぇ……ミェル、この子が居るってことは……完成したのね……?」
「ああ!!まだ不完全な所ではあるがね、私は転移魔術を実用段階まで引き上げたんだよ」
グイッとミェルさんに肩に手を置かれて引っ張られる。彼女は大切な宝物を友達に見せる小学生のように自慢げに、私の肩をポンポンと叩く。
「この子は烏丸月音、私が転移魔術で異世界から引き寄せた少女だ」
「初めまして、烏丸月音と申します。よろしくお願いします」
物みたいに扱われて不服だったが、それはそれ。ミェルさんへの説教はとりあえず後回しで、深々と一礼した。
「ご丁寧にどうも。私はプレジール・フルール……ひとまずようこそ、この世界へ」
甘ったるく脳に染み込むような声で返したプレジールさん。
初対面の印象はミェルさんより良い。けど、忘れてははならないのはこの人もまた魔女だということ。
「まぁ、とりあえず……立ち話も疲れるし入んなさい……」
玄関を開いたプレジールさんに促され、ミェルさんが家へと入っていく。
私もその後に続――
「…………だめ」
プレジールさんに手で遮られると同時に、強烈な花の香りが鼻腔を突き刺す。
「……!!おいプレジール、何を……!」
意識が遠のいていく。力が抜ける。籠ったようなミェルさんの声が段々と聞こえなくなっていく。
そこで私の意識は、暗闇へと落ちた。
絵画のような世界が眼前に広がっていた。
色とりどりの鮮やかな花々が溢れんばかりに咲き乱れ、地平線の向こうまで続いている。紫、白、黄色、ピンク色とファンシーな色彩に染まった空間は、さっきまで森だったはずなのに、此処だけ切り取られた別世界になっているかのような。
――そんな楽園の中心に、真っ白な家が鎮座している。
「すごい…………森の中にこんなお花畑が……ちゃんと家もある」
「いつ見ても凄まじいねぇ、花を折らないように着いておいで。花畑荒らすとうるさいから」
花を傷つけないよう慎重に、ゆっくりとミェルさんの後に着いて行く。
……そして私たちは花畑の中心、花魔女の邸宅の玄関へと辿り着いた。
真白に塗られた小さめの家は、ミェルさんの家とはまた違った美しさを感じさせる。
「お~い、プレジール!!居るか~!!」
ミェルさんが叫ぶが一切の返事は無い。チャイムやベルみたいなのもないので、こうやって呼ぶしかないみたいだけど……
「なんだい留守か?居ないなら居ないと言え~!!プレジール~!!」
――不意に、一層強い花の香りがふわりと私の鼻に届く。
「騒がしいわね……」
私のほぼ真後ろから、甘い女性の声が溶けるように耳に届けられた。
「わっ……!?」
「うるさいのは嫌いだって……私何度も言ったわよね」
咄嗟にミェルさんの方へ飛び退き、私の背後に居た人物の全体像が目に映る。
私よりも小柄……140cmくらいだろうか?その華奢な身体に不釣り合いなほど長い金髪が足元まで伸び、線の細さを強調している。
黒いローブのミェルさんとは対照的な純白のドレスのようなワンピースに身を包んだその人は、一国のお姫様のような神秘さと可憐さを纏っていた。
「なんだ、ちゃんと居るじゃないか。久しぶりだねプレジール」
「人の話を聞きなさいまったく……。ええそうね……直接会うのは10年振りくらいかしら……」
気だるげな口調で挨拶を交わした花魔女は、次いで私の方に透き通った桃色の瞳を向ける。伏し目がちだったその眼は、私から何かを感じ取ったのかその瞳孔を開いてまじまじと観察してくる。
「ねぇ……ミェル、この子が居るってことは……完成したのね……?」
「ああ!!まだ不完全な所ではあるがね、私は転移魔術を実用段階まで引き上げたんだよ」
グイッとミェルさんに肩に手を置かれて引っ張られる。彼女は大切な宝物を友達に見せる小学生のように自慢げに、私の肩をポンポンと叩く。
「この子は烏丸月音、私が転移魔術で異世界から引き寄せた少女だ」
「初めまして、烏丸月音と申します。よろしくお願いします」
物みたいに扱われて不服だったが、それはそれ。ミェルさんへの説教はとりあえず後回しで、深々と一礼した。
「ご丁寧にどうも。私はプレジール・フルール……ひとまずようこそ、この世界へ」
甘ったるく脳に染み込むような声で返したプレジールさん。
初対面の印象はミェルさんより良い。けど、忘れてははならないのはこの人もまた魔女だということ。
「まぁ、とりあえず……立ち話も疲れるし入んなさい……」
玄関を開いたプレジールさんに促され、ミェルさんが家へと入っていく。
私もその後に続――
「…………だめ」
プレジールさんに手で遮られると同時に、強烈な花の香りが鼻腔を突き刺す。
「……!!おいプレジール、何を……!」
意識が遠のいていく。力が抜ける。籠ったようなミェルさんの声が段々と聞こえなくなっていく。
そこで私の意識は、暗闇へと落ちた。
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