11 / 15
11.
しおりを挟む会長の面白そうな言い方に、今度は俺が注目される。何か言わなければならないらしい。……何を言えって言うんだよクソッタレが。
俺は帰ったら絶対に瑛命を殴ろうと決めて思うまま口を開いた。どうせ失言だったとしても被害を受けるのは瑛命だ。
「……個人的に、瑛命には上に立つ力量はないと思いますけど」
「どうして? 瑛命君の業績は高いよ。金を稼ぐ才能と人を使う才能、物事を見る目があるから」
「瑛命の行動基準が俺ですから。上に立つことで俺との関係性にメリットがないならまずならないでしょうし。なったとしても俺がデートしたいと本気で強請れば例え会社の命運が掛かった日でも俺を優先しますよ。そんな人間に任せるなんて、俺だったら怖くて無理ですね」
自惚れでもない。高校の時から今まで、ずっと瑛命の中には俺がいた。俺をどうにかするために今の地位と富を得たようなものだ。それに、今の仕事量でさえ「先輩との時間が取れなくてストレスが溜まるな」とぼやいているのに、単純により忙しくなる役職に就きたいと思うわけがない。
「……はは、すごい自信ですね」
彼女――御子柴が引き攣った顔で笑う。
「自信じゃなくて事実です」
「えぇ、依乃利さんの言う通りです。会長には申し訳ないですが、会社よりも依乃利さんとのデートの方が悩むこともなく大切ですし、依乃利さん以外の責任を持ちたくないです。もし今依乃利さんが会社を辞めろと言うなら喜んで辞めますし」
こちらをわざわざ見てくる瑛命に、俺は「辞めるなよ」と言うしかない。
「大手企業で働いている常務してるの、カッコ良いし」
「……本当ですか?」
「うん」
「なら辞めません。常務として頑張ります」
目に見えて上機嫌な瑛命に、会長は大きく溜め息を吐いた。
「そうか。なら、まあ、仕方ないな。そこまで男に入れ込んでいるとは思わなかった」
「ご理解頂けて良かったです」
「御子柴さんには申し訳ないが、やはり縁談は難しいな」
御子柴は切なそうな表情をする。瑛命に本気で惚れていると言うのだろうか。確かに外見は良いし金も持っているし実力もあるが、それら全てをマイナスにするほど頭が狂っている。俺だったら絶対に惚れない。
「……そうですね。依乃利さんはとても美しいので、瑛命さんが惚れてしまうのも仕方ないですね。男なのに男を誘惑出来るなんて羨ましい美貌です」
俺が誑かしたかのような言い方にイラッとする。大人なのだから分かるような敵意を見せるなと思う。彼女を煽ってやりたくなるが、グッと我慢する。
「そうですね。瑛命から愛される理由に、この見た目もあるでしょうから」
「あははは、本当に羨ましい。瑛命さんの愛情に乗っかるだけで良いんですもんね」
「……ははは」
なんで俺が嫌味を言われなければならないんだ。頭のおかしい奴に執着されることがどれだけ大変かも知らないくせに。瑛命を殴るだけじゃ足りない、一週間は禁欲させてやる。
「まぁ、でも、男と結婚するような人間が役職持ちだと会社が損をするって言うなら、瑛命とのお付き合いも考え直した方が良いかもしれませんね」
瑛命と離れるつもりはないが結婚することは考えていなかった。結婚するならするで良いし、しないならしないで良い。どうせ瑛命の強い希望に合わせる。だが、結婚するだけで面倒事に巻き込まれるくらいならしなくて良い。
内心の苛々から八つ当たり気味に答えれば、瑛命は立ち上がって俺の腕を取った。
「会長、退職の方向でお願いします」
30
あなたにおすすめの小説
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
Bランク冒険者の転落
しそみょうが
BL
幼馴染の才能に嫉妬したBランク冒険者の主人公が、出奔した先で騙されて名有りモブ冒険者に隷属させられて性的に可哀想な日々を過ごしていたところに、激重友情で探しに来た粘着幼馴染がモブ✕主人公のあれこれを見て脳が破壊されてメリバ風になるお話です。
◯前半は名有りモブ✕主人公で後半は幼馴染✕主人公
◯お下品ワードがちょいちょい出てきて主人公はずっと性的に可哀想な感じです(・_・;)
◯今のところほとんどのページにちょっとずつ性描写があります
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
りんご成金のご令息
けい
BL
ノアには前世の記憶はあったがあまり役には立っていなかった。そもそもあまりにもあいまい過ぎた。魔力も身体能力も平凡で何か才能があるわけでもない。幸いにも裕福な商家の末っ子に生まれた彼は、真面目に学んで身を立てようとコツコツと勉強する。おかげで王都の学園で教育を受けられるようになったが、在学中に両親と兄が死に、店も乗っ取られ、残された姉と彼女の息子を育てるために学園を出て冒険者として生きていくことになる。
それから二年がたち、冒険者としていろいろあった後、ノアは学園の寮で同室だった同級生、ロイと再会する。彼が手を貸してくれたおかげで、生活に余裕が出て、目標に向けて頑張る時間もとれて、このまま姉と甥っ子と静かに暮らしていければいいと思っていたところ、姉が再婚して家を出て、ノアは一人になってしまう。新しい住処を探そうとするノアに、ロイは同居を持ち掛ける。ロイ×ノア。ふんわりした異世界転生もの。
他サイトにも投稿しています。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!
ひつじのめい
BL
αとΩの同性の両親を持つ相模 楓(さがみ かえで)は母似の容姿の為にΩと思われる事が多々あるが、説明するのが面倒くさいと放置した事でクラスメイトにはΩと認識されていたが楓のバース性はαである。
そんな楓が初恋を拗らせている相手はαの両親を持つ2つ年上の小野寺 翠(おのでら すい)だった。
翠に恋人が出来た時に気持ちも告げずに、接触を一切絶ちながらも、好みのタイプを観察しながら自分磨きに勤しんでいたが、実際は好みのタイプとは正反対の風貌へと自ら進んでいた。
実は翠も幼い頃の女の子の様な可愛い楓に心を惹かれていたのだった。
楓がΩだと信じていた翠は、自分の本当のバース性がβだと気づかれるのを恐れ、楓とは正反対の相手と付き合っていたのだった。
楓がその事を知った時に、翠に対して粘着系の溺愛が始まるとは、この頃の翠は微塵も考えてはいなかった。
※作者の個人的な解釈が含まれています。
※Rシーンがある回はタイトルに☆が付きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる