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10.交わり
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服の盛り上がりから、胸元と下半身の中心に蛸足が這っていることが分かる。あの大きな吸盤で、華奢な体を好きに吸っているのだと思った。
心臓がドキドキする。
だが、ふとリリオン先輩には婚約者がいたはずだと思い出した。
どの種族でも、王侯貴族は学生時代から婚約者がいることが多い。我が海人族の貴族は大抵十歳頃に婚約者が決まる。
聖人族も例外ではない。リリオン先輩は高位貴族であり、この学園に通う三年生、人間族の第二王女がリリオン先輩の婚約者だ。美しく愛らしい女子生徒で、よく二人がデートしている姿を見たし、以前南東海の珊瑚糖を融通してからは事あるごとに王女への贈り物の相談を受けた。
仲睦まじく、お互い想い合っているのだと思っていた。
「リリカ、もっと舌を出して」
「ん」
「僕の唾飲み込んで、いつもみたいに」
なのに、僕の目の前では婚約者がいるリリオン先輩が他の男と睦み合っている。不誠実な彼に、王女への同情が募り掛ける。……だが、それを邪魔するかのように「あっ」と確かな喘ぎ声が聞こえ、思考は霧散する。
リリオン先輩が体をビクつかせる。小さな喘ぎを繰り返す。何をされ、どうしたのか、上手く想像できてしまう。
「リリカ、僕の精が欲しい? それともしばらく淫紋の効果を確かめる?」
「っそうだね。せっかくだし効果を実感しようかな」
「明日のお昼には効果が出ると思うから。必要だったら連絡して。頑張って解除しても良いけど」
「本当に他の男の精じゃダメか、確かめてもいい?」
リリオン先輩が言い終わると同時に、マリグノ先輩は彼の小さな両頬を鷲掴む。
「いいね、試してみなよ。その相手がどうなってもいいなら」
声音と表情が全く合っていない。声音は楽しそうなのに、その表情はとても怖い。
「ルディ・マリグノ、賭けに他人の未来を持ち出すほど無意味なことはないよ」
うっとりと、美しく微笑むリリオン先輩に、僕はぎこちない動きでその場を後にした。これ以上この場にいたら、二人の会話を聞いていたら、自分はおかしな方向へ行ってしまう恐怖があった。自分はどうなってもいいから、リリオン先輩に精を注ぎたいと、志願したくなりそうだった。
僕は実家の商会を継いで、より大きく、各国に必要不可欠な商会へと成長させることが目標なのだ。今でも海中では一番大きいが、海中だけで終わらせるつもりはない。……小さい頃からの目標だったのに、目標も未来も捨てさせてしまうリリオン先輩の存在が怖かった。
僕はジャン先輩が寝ていることを確認してから、そっとベッドに入る。耳の奥で響く心臓の音は、なかなか静まることはなかった。
心臓がドキドキする。
だが、ふとリリオン先輩には婚約者がいたはずだと思い出した。
どの種族でも、王侯貴族は学生時代から婚約者がいることが多い。我が海人族の貴族は大抵十歳頃に婚約者が決まる。
聖人族も例外ではない。リリオン先輩は高位貴族であり、この学園に通う三年生、人間族の第二王女がリリオン先輩の婚約者だ。美しく愛らしい女子生徒で、よく二人がデートしている姿を見たし、以前南東海の珊瑚糖を融通してからは事あるごとに王女への贈り物の相談を受けた。
仲睦まじく、お互い想い合っているのだと思っていた。
「リリカ、もっと舌を出して」
「ん」
「僕の唾飲み込んで、いつもみたいに」
なのに、僕の目の前では婚約者がいるリリオン先輩が他の男と睦み合っている。不誠実な彼に、王女への同情が募り掛ける。……だが、それを邪魔するかのように「あっ」と確かな喘ぎ声が聞こえ、思考は霧散する。
リリオン先輩が体をビクつかせる。小さな喘ぎを繰り返す。何をされ、どうしたのか、上手く想像できてしまう。
「リリカ、僕の精が欲しい? それともしばらく淫紋の効果を確かめる?」
「っそうだね。せっかくだし効果を実感しようかな」
「明日のお昼には効果が出ると思うから。必要だったら連絡して。頑張って解除しても良いけど」
「本当に他の男の精じゃダメか、確かめてもいい?」
リリオン先輩が言い終わると同時に、マリグノ先輩は彼の小さな両頬を鷲掴む。
「いいね、試してみなよ。その相手がどうなってもいいなら」
声音と表情が全く合っていない。声音は楽しそうなのに、その表情はとても怖い。
「ルディ・マリグノ、賭けに他人の未来を持ち出すほど無意味なことはないよ」
うっとりと、美しく微笑むリリオン先輩に、僕はぎこちない動きでその場を後にした。これ以上この場にいたら、二人の会話を聞いていたら、自分はおかしな方向へ行ってしまう恐怖があった。自分はどうなってもいいから、リリオン先輩に精を注ぎたいと、志願したくなりそうだった。
僕は実家の商会を継いで、より大きく、各国に必要不可欠な商会へと成長させることが目標なのだ。今でも海中では一番大きいが、海中だけで終わらせるつもりはない。……小さい頃からの目標だったのに、目標も未来も捨てさせてしまうリリオン先輩の存在が怖かった。
僕はジャン先輩が寝ていることを確認してから、そっとベッドに入る。耳の奥で響く心臓の音は、なかなか静まることはなかった。
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