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15.錯綜
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リリオン先輩の死期から更に数日が経過した。
リリオン先輩は死んだと言う者と、しぶとく生き永らえていると言う者と、学園内は密やかに分かれている。
――リリカは王族の親戚に当たる上、人間族王女の婚約者だろ? 本当に死んでいるならどちらも黙っていないだろ。
――でもここに通う医者は高名だ。死期を間違えるはずがない。
――噂ではマリグノがリリオンにエンバーミング掛けているって聞いたぞ。血抜きして内臓取って、側だけにしてそばに置いてるって。
――俺はリリオンに自分の寿命を渡して延命させえいるって聞いた。
――私はリリオン君の魂を食べて自分の中に閉じ込めたと聞いたわ。
――どれもあり得ないのに、マリグノならあり得そうで怖いな。
そんな噂話の中、また一つ、驚くような噂話が上がった。マリグノ先輩とは無関係で、リリオン先輩とは関係深い生徒の名前が上がったのだ。
――聞いたか? リリカの魔力暴走はノービレさんが原因だって。
突然、アリーナ・ノービレ先輩の名前が上がったのだ。
――ノービレさんはリリカにご執心だったろ? リリカは婚約者だけど一定の距離感を保っていたし、ノービレさんは今年卒業だ。既成事実を作りたいがために、魔法を掛けた薬を盛ったと。その薬を分解する途中で魔力暴走が起きたんだと。リリカは今、魔法の制限を受けているから、上手く分解できなかったんだよ。
信憑性のない噂話だった。だが、一蹴もできなかった。何故なら、ノービレ先輩が何度も学園長や医師との面談を行っていたからだ。場所は学園長室であったり、薬学室であったり、薬草室であったりと。
学園側も人目を気にしてはいたが、学園全体が注目している件だからか完全に隠すことは難しかったのだろう。真実を暴こうとする層や学園の醜聞を騒ぎ立てる層が躍起になっているから。
僕にも「リリオン先輩と仲良くしていたよな? どんな感じだった?」と聞いてくる人は少なくない。
リリオン先輩は声を掛けられれば普通に応対してくれるが、自分から積極的に声を掛ける相手は決まっていた。同寮長のハイリッヒ先輩と、クラスメイトのラウリ・クラージュ先輩、ルディ・マリグノ先輩、そして、僕だ。
ハイリッヒ先輩は分かる。親族であり幼少期から兄弟のように育ってきたから。学年は違うが、よく二人で笑い合っている姿を見た。
クラスメイトのラウリ・クラージュ先輩も分かる。クラージュ先輩は獣人族の高位貴族で、一年時から続くクラスメイトらしい。クラージュ先輩はライオンを祖先に持つ通り、豪快で男らしい。分け隔てなく接してくれる。リリオン先輩とは似たところもないが良い友人関係を保っていると聞く。
マリグノ先輩も分かる。経緯は結局分からないが、とにかく二人は妖しい関係だから。
僕は、僕は何故だろうか。貴重な珊瑚糖を融通してから、色々と物入りの時には声を掛けてもらうようになった。実家の商会を通す時は割安で済むし、僕独自のルートも持っているため結構何でも用意できる。多分、贔屓してくれている、使い勝手が良い、くらいに思ってくれているのだと思う。
この中で僕が唯一話しかけ易いということで、「リリオン先輩とは」と聞かれるのだ。聖人族を真似て曖昧に答えるに留めている。……何となく、リリオン先輩が死ぬとは思えないからだ。
いや、魔力暴走を起こしたなら高確率で魔法使いは死ぬ。一命を取り留めるためには早急に的確な処置をする必要がある。今回はそれが行われなかったはずだ。だから、医師は死期が迫っていると判断した。
それでも、リリオン先輩がそんなことで死ぬとは思えない。
リリオン先輩は死んだと言う者と、しぶとく生き永らえていると言う者と、学園内は密やかに分かれている。
――リリカは王族の親戚に当たる上、人間族王女の婚約者だろ? 本当に死んでいるならどちらも黙っていないだろ。
――でもここに通う医者は高名だ。死期を間違えるはずがない。
――噂ではマリグノがリリオンにエンバーミング掛けているって聞いたぞ。血抜きして内臓取って、側だけにしてそばに置いてるって。
――俺はリリオンに自分の寿命を渡して延命させえいるって聞いた。
――私はリリオン君の魂を食べて自分の中に閉じ込めたと聞いたわ。
――どれもあり得ないのに、マリグノならあり得そうで怖いな。
そんな噂話の中、また一つ、驚くような噂話が上がった。マリグノ先輩とは無関係で、リリオン先輩とは関係深い生徒の名前が上がったのだ。
――聞いたか? リリカの魔力暴走はノービレさんが原因だって。
突然、アリーナ・ノービレ先輩の名前が上がったのだ。
――ノービレさんはリリカにご執心だったろ? リリカは婚約者だけど一定の距離感を保っていたし、ノービレさんは今年卒業だ。既成事実を作りたいがために、魔法を掛けた薬を盛ったと。その薬を分解する途中で魔力暴走が起きたんだと。リリカは今、魔法の制限を受けているから、上手く分解できなかったんだよ。
信憑性のない噂話だった。だが、一蹴もできなかった。何故なら、ノービレ先輩が何度も学園長や医師との面談を行っていたからだ。場所は学園長室であったり、薬学室であったり、薬草室であったりと。
学園側も人目を気にしてはいたが、学園全体が注目している件だからか完全に隠すことは難しかったのだろう。真実を暴こうとする層や学園の醜聞を騒ぎ立てる層が躍起になっているから。
僕にも「リリオン先輩と仲良くしていたよな? どんな感じだった?」と聞いてくる人は少なくない。
リリオン先輩は声を掛けられれば普通に応対してくれるが、自分から積極的に声を掛ける相手は決まっていた。同寮長のハイリッヒ先輩と、クラスメイトのラウリ・クラージュ先輩、ルディ・マリグノ先輩、そして、僕だ。
ハイリッヒ先輩は分かる。親族であり幼少期から兄弟のように育ってきたから。学年は違うが、よく二人で笑い合っている姿を見た。
クラスメイトのラウリ・クラージュ先輩も分かる。クラージュ先輩は獣人族の高位貴族で、一年時から続くクラスメイトらしい。クラージュ先輩はライオンを祖先に持つ通り、豪快で男らしい。分け隔てなく接してくれる。リリオン先輩とは似たところもないが良い友人関係を保っていると聞く。
マリグノ先輩も分かる。経緯は結局分からないが、とにかく二人は妖しい関係だから。
僕は、僕は何故だろうか。貴重な珊瑚糖を融通してから、色々と物入りの時には声を掛けてもらうようになった。実家の商会を通す時は割安で済むし、僕独自のルートも持っているため結構何でも用意できる。多分、贔屓してくれている、使い勝手が良い、くらいに思ってくれているのだと思う。
この中で僕が唯一話しかけ易いということで、「リリオン先輩とは」と聞かれるのだ。聖人族を真似て曖昧に答えるに留めている。……何となく、リリオン先輩が死ぬとは思えないからだ。
いや、魔力暴走を起こしたなら高確率で魔法使いは死ぬ。一命を取り留めるためには早急に的確な処置をする必要がある。今回はそれが行われなかったはずだ。だから、医師は死期が迫っていると判断した。
それでも、リリオン先輩がそんなことで死ぬとは思えない。
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