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ルイーズ

冷えた心*

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「……ルイーズ……」

 わたしの上に圧し掛かる男が、わたしの名を呼ぶ。さっきからずっと、男はわたしの中を穿ち、わたしをゆすり続けている。熱い息が、耳もとにかかる。

「ああ……ルイーズ……い……」
 
 暗闇を恐れる男のために、枕元のランプはともしたまま。ぼんやり照らされた寝台の上で、男はわたしの両脚を広げ、わたしの恥ずかしい場所を見下ろすようにして犯し続けている。両膝はそれぞれ、男の腕にひっかけられ、その腕がわたしの二の腕をがっちり掴んでいるので、わたしは逃げることもできない。
 
 ギシッ……とベッドを軋ませて、男がわたしの奥をさらに抉る。最も深い場所を突かれて、わたしは思わず声を漏らした。

「あ……っ」

 グリグリといたぶるように奥を刺激されて、わたしはこれ以上声をあげるまいと唇を噛み、快感をそらそうと首を振った。

「うう……く……」
「ルイーズ……奥がいいんだね。……今、すごく、締まった……ほら……」
「う……んんん……」

 ずくずくと男が見せつけるように奥を突きあげるたびに、つながっている場所がぐちゅぐちゅといやらしい音をたてる。男がわたしの中を出入りする、その刺激にわたしの内部が勝手に蠢き、男を締め付けてしまう。つながった部分から沸き起こる快感が、わたしの身体を灼いていく。熱い――。

 いやなのに。こんな男、絶対に許さないと思っているのに。 

「はあ……ルイーズ……悦い……」

 男がわたしを突き上げながら、快感に眉を顰め、天を仰いで喉仏をさらす。鍛えた無駄のない裸の胸がわたしの上で揺れる。彼が荒い息を吐きながら、端整な顔でわたしを見下ろす。黒髪がばさりと額に落ちかかり、汗のしずくが頬をながれ、顎にわだかまり、わたしの裸の胸の上に落ちた。

「ひっ……ああっ……あっ……あっ……」

 その冷たさに思わず身を捩り、声をあげてしまう。一度口を開けば、意思によらない声を、もう止めることはできなかった。

「ああ、気持ちいいんだ……もっと声、聞かせて……ホラ……」
「んっ……あっああっ……やっ……あああっ……ああっ……」

 男の動きが激しさを増し、わたしのあらゆる感じる場所を暴き立てていく。支配されたくない。感じたくない。もう、こんな男のこと、切り捨ててしまいたいのに。
 
 なのに、わたしのからだは今夜もあっけなく陥落し、もう何度も、快楽の淵に引きずり込まれ、蹂躙されていく。ベッドが軋み、水音が響く。でも、一番聞きたくないのは、はしたない自分の声で、わたしは悔しさでぎゅっと目を閉じ、顔を背けた。

「あっ……ああっ……あっ……あっ……」
「はあっ、はっ、……ルイーズ……」

 耳元に熱い息遣いを感じて、わたしは薄く目を開ける。男の顔がわたしの顔の間近に降りて、荒い呼吸を繰り返す。完璧に美しい右側。凛々しい眉を顰め、彼も快感を堪えている。右目がランプの光に煌めく。一方の左目は――虚ろな闇。

 完璧な美貌と、醜悪な傷。……彼は美しい半面を悪魔に差し出して、ようやく命を拾ったのだ。
 こうして見上げると、その醜い半面すら美しいと思ってしまうわたしは――

 彼の唇がわたしの唇を塞ぐ。ぬるついた舌がわたしの咥内を蹂躙する。わたしを犯す動きは止むことはなく、腰から湧き上がる快感が、だんだん切羽詰まったものになってくる。ああ、また――

「ルイーズ、名を呼んで。……僕の……名前を……」

 男がわたしを穿ちながら、荒い息の合間に懇願するが、わたしは首を振った。
 誰が。お前の名前なんか――

「はっ……あああっ……やあっそれ……」

 男がわたしの両膝を裏をそれぞれ握り、膝をおしひろげて胸につくまで折り曲げる。つながっている場所が、わたしの面前にさらされる。濡れそぼり、いやらしく蜜を零すその場所を、男の禍々しい剛直が出入りする。見せつけられ、わたしは恥ずかしさに目をつむる。

「ちゃんと、見て。今、君は犯されてる。……僕に。僕のが君の恥ずかしい場所を出入りしている。見て……」
「や、いやっ……あっ……ああっ……」
「愛してるよ、ルイーズ……君は?」
「いや、いやよ、あなたなんか、だいっきらい……ああっやあっ……」

 ありったけの憎しみを込めて睨んでやるのに、男はわたしの答えを予測していたのか、形のよい唇を綻ばせる。

「ああ、そうだ、君は僕が大嫌いだ。……なのに、大嫌いな男に抱かれて、さっきからすごく感じてる。……ほら、こんなに濡れて、ぐっずぐず。僕が大嫌いなのに、僕のコレは大好きなんだ。昼間の貞淑さが嘘みたいに、いやらしく乱れて……」
「うっ……ちがっ……やあっ……ちがう、のぉ!」
「何が違うの、ホラ、どんどん溢れてくるよ……君のいやらしい蜜が、お腹の方まで流れていっちゃう」

 男が陰茎を出し入れするたびに、わたしの中から愛液が溢れ、泡立ち、お腹の方へも伝って流れ落ちてくる。その様子を男が意地の悪い言葉で揶揄すれば、悔しさと恥ずかしさでわたしの中がさらに疼く。言葉で嬲られるたびに、いっそうきつく彼を締め付ける。そうなればさらに、わたしを蹂躙する彼の存在を感じ取ってしまう。突かれるたびに快感が増幅され、もう、限界に近い。ぐちゅぐちゅという水音、ベッドの軋む音、それから彼の荒い息遣い。自分の意志では止められない、甲高いわたしの喘ぎ声が、それに絡まる。
 
「ああっ……あああっ……ああっ……もうっ……ああ、ああっ」
「ルイーズ……気持ちいいんだね。……イきたい?」
 
 わたしの中を穿ちながら男が尋ねる。片方しかない瞳が、ランプの光に煌めき、形のいい唇が弧を描く。――もう、勝利を確信しいてる顔。いや、誰が、こんな男に――

「イきたい?」

 もう一度尋ねられ、わたしは男の片目を睨みながら、首を振った。

「強情だね……もっともっと責めて欲しいって顔してる。淫乱なルイーズは」
「ちがっ……誰がそんな……」

 男は喉の奥で嗤って、抽挿のスピードを速めた。激しい動きに奥が何度も突き上げられ、わたしの背筋を快感が走り、目の奥に白い火花が散る。

「やあっ、あっ、あっ、ああっ、ああっだめっあああっ」

 枕の上でわたしは必死に首を振るけれど、そんなことをしても無駄で、快感はどんどん膨らんでいく。男はわたしの膝から手を離し、両手で乳房をわしづかみにすると、指の間から突き出た尖った乳首をぎゅっと挟み込む。

「ああっあああっ……だめ、だめぇ……」
 
 ぐりぐりと刺激されて快感に身悶える。もうイく――だがその瞬間、男はぴたりと動きを止めた。


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