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11、ナキア入城
ナキア攻撃
ついに、皇帝からのナキア攻撃の勅命が下り、廉郡王は歓喜の雄たけびをあげた。
生まれて二十三年。とにかく我慢が嫌いである。カンダハルは風光明媚で海の幸も豊富、今は皇帝となった友人が獣人の性奴隷も準備してくれて、生活に不自由はないが、ひたすら退屈で死にそうだった。
「やっとナキアかよ~、なんか美味いもんでも食いたいよな、カンダハルも飽きたし」
暢気なことを言う廉郡王を、レイノークス辺境伯ユリウスが窘める。
「カンダハルとの物流が途絶えて、今のナキアは飢え死に寸前だよ! 美味いものなんて、食えるわけないだろ」
「マジで!……俺の楽しみが一つ減ったじゃねぇか」
「だから遊びに行くわけじゃないんだから!」
戦争に行くってのは、理解しているらしいのだ。……何しろ、ものすごい戦闘狂だから、大っぴらに人殺しができるのが、嬉しくてたまらないようだ。
つくづく、この人が皇帝にならなくてよかったと、ユリウスは思う。
義弟が皇帝として即位したことに対して、ユリウスは複雑な思いはあるが、妹の夫だという点を抜きに考えれば、廉郡王よりも義弟の方がうんとマシだ。
「要するに、材料さえあれば、美味いもんは食えるんだろ?……以前に、ユリウスに連れて行ってもらった時は、飯は美味かったぜ。厨師の腕はいいんだ。料理も洗練されていて、悪くない」
ナキアの地図を覗きこみながら、詒郡王が言う。
「なるほど、じゃあ、食いものを山ほど持っていけばいいんだな」
「まあ、それは一案だね。ナキアが俺たちの支配下に入れば、カンダハルとの物流も再開されて、食い物が山ほど溢れかえるってわかればいいんだよ」
詒郡王がニヤリと笑う。
「民衆なんて単純なものさ。飢える正統の王よりも、飢えない謀反人。イフリート公爵や元老院がどんなご立派な御託を並べようが、民衆は腹の膨れる方を選ぶ」
ユリウスが詒郡王を見て言う。
「まずは月神殿を制圧しろと――」
「月神殿は湖の中にあるんだよ? そこだけ確保なんてできるわけないだろ。月神殿を確保するには、ナキア全体を手中にしないと無理だ。ユエリン――じゃなくて、シウが言うには、元老院やらイフリート家の確保は後回しでいいって意味さ」
ちなみに、本物のユエリン皇子は死んでいて、彼らの知る恭親王は、その双子の弟だったと明らかにされても、彼ら二人は別に何も気にしていないようだった。詒郡王曰く、
「俺は本物のユエリン皇子ってのは知らないし。別にもともとシウって呼んでもいたし。今さらだな」
だし、廉郡王に至っては、
「俺? 俺は、元のユエリンとあいつが別人っての、気づいてたぜ? だって、元のユエリンは右利きで、ものすごい嫌な奴だったしな。馬から落ちたおかげで、いい奴と交代してよかったくらいに思ってたからよ」
などと嘯いた。そういうユリウスは実はショックを受けたクチだった。親友だと思ってたのに、水臭い――。まあ、迂闊に人に話せることじゃあないってのは、ユリウスも理解はする。
(でも、僕に相談もなく勝手に皇帝になるし、ちょっとアデライードを蔑ろにしすぎじゃないのか?)
ユリウスはばさりと自慢の長いダークブロンドを振ってから、思う。
(戦争が終わったら、ちょっとばかしいい酒と肴と、できれば女をご接待してもらおう。そのぐらいの我儘は聞いてもらえるよね?)
まあ、何はともあれ、ナキアを落とさないことには、話は進まない。
ユリウスは詒郡王が眺めるナキアの地図を横目で盗み見る。
異母妹アデライードの即位を、ユリウスは別に求めていたわけじゃない。むしろ、そんな面倒から逃れて、普通の男と幸せになってくれれば、それが一番よかった。でも、アデライードが幸せになるためには、ナキアを手に入れて、イフリート公爵を追い落とす以外に道がないのだ。
ユリウスは考える。――アデライードのナキア支配を確立するために、彼がするべきことは何か。
アデライードに立ちふさがるのは、イフリート公爵の外には、おそらくは元老院と、アルベラ。
(アルベラは今、どこにいるのか――)
生まれて二十三年。とにかく我慢が嫌いである。カンダハルは風光明媚で海の幸も豊富、今は皇帝となった友人が獣人の性奴隷も準備してくれて、生活に不自由はないが、ひたすら退屈で死にそうだった。
「やっとナキアかよ~、なんか美味いもんでも食いたいよな、カンダハルも飽きたし」
暢気なことを言う廉郡王を、レイノークス辺境伯ユリウスが窘める。
「カンダハルとの物流が途絶えて、今のナキアは飢え死に寸前だよ! 美味いものなんて、食えるわけないだろ」
「マジで!……俺の楽しみが一つ減ったじゃねぇか」
「だから遊びに行くわけじゃないんだから!」
戦争に行くってのは、理解しているらしいのだ。……何しろ、ものすごい戦闘狂だから、大っぴらに人殺しができるのが、嬉しくてたまらないようだ。
つくづく、この人が皇帝にならなくてよかったと、ユリウスは思う。
義弟が皇帝として即位したことに対して、ユリウスは複雑な思いはあるが、妹の夫だという点を抜きに考えれば、廉郡王よりも義弟の方がうんとマシだ。
「要するに、材料さえあれば、美味いもんは食えるんだろ?……以前に、ユリウスに連れて行ってもらった時は、飯は美味かったぜ。厨師の腕はいいんだ。料理も洗練されていて、悪くない」
ナキアの地図を覗きこみながら、詒郡王が言う。
「なるほど、じゃあ、食いものを山ほど持っていけばいいんだな」
「まあ、それは一案だね。ナキアが俺たちの支配下に入れば、カンダハルとの物流も再開されて、食い物が山ほど溢れかえるってわかればいいんだよ」
詒郡王がニヤリと笑う。
「民衆なんて単純なものさ。飢える正統の王よりも、飢えない謀反人。イフリート公爵や元老院がどんなご立派な御託を並べようが、民衆は腹の膨れる方を選ぶ」
ユリウスが詒郡王を見て言う。
「まずは月神殿を制圧しろと――」
「月神殿は湖の中にあるんだよ? そこだけ確保なんてできるわけないだろ。月神殿を確保するには、ナキア全体を手中にしないと無理だ。ユエリン――じゃなくて、シウが言うには、元老院やらイフリート家の確保は後回しでいいって意味さ」
ちなみに、本物のユエリン皇子は死んでいて、彼らの知る恭親王は、その双子の弟だったと明らかにされても、彼ら二人は別に何も気にしていないようだった。詒郡王曰く、
「俺は本物のユエリン皇子ってのは知らないし。別にもともとシウって呼んでもいたし。今さらだな」
だし、廉郡王に至っては、
「俺? 俺は、元のユエリンとあいつが別人っての、気づいてたぜ? だって、元のユエリンは右利きで、ものすごい嫌な奴だったしな。馬から落ちたおかげで、いい奴と交代してよかったくらいに思ってたからよ」
などと嘯いた。そういうユリウスは実はショックを受けたクチだった。親友だと思ってたのに、水臭い――。まあ、迂闊に人に話せることじゃあないってのは、ユリウスも理解はする。
(でも、僕に相談もなく勝手に皇帝になるし、ちょっとアデライードを蔑ろにしすぎじゃないのか?)
ユリウスはばさりと自慢の長いダークブロンドを振ってから、思う。
(戦争が終わったら、ちょっとばかしいい酒と肴と、できれば女をご接待してもらおう。そのぐらいの我儘は聞いてもらえるよね?)
まあ、何はともあれ、ナキアを落とさないことには、話は進まない。
ユリウスは詒郡王が眺めるナキアの地図を横目で盗み見る。
異母妹アデライードの即位を、ユリウスは別に求めていたわけじゃない。むしろ、そんな面倒から逃れて、普通の男と幸せになってくれれば、それが一番よかった。でも、アデライードが幸せになるためには、ナキアを手に入れて、イフリート公爵を追い落とす以外に道がないのだ。
ユリウスは考える。――アデライードのナキア支配を確立するために、彼がするべきことは何か。
アデライードに立ちふさがるのは、イフリート公爵の外には、おそらくは元老院と、アルベラ。
(アルベラは今、どこにいるのか――)
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