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五竅
10、始動
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エールライヒを飛ばしてから六日後。
普段は夕食後のボルゴールからの呼び出しが、その夜に限ってはまだ宵の口に天幕に引き込まれ、恭親王はまだ薄明るいうちから野獣のような身体に散々貪られ、今夜彼らが南に渡るのだと、確信した。容赦なく陽の〈気〉を吸い取られ、疲労と倦怠感でぐずぐずになった身体を羊毛の褥の上に横たえてぐったりしていると、些か不似合いなほどの繊細な手つきで貂の毛皮でできた肌掛けを素肌の上に掛けられ、蒼ざめた頬を毛むくじゃらの硬い掌で撫でられる。
「数日、留守にする。いい子にして待っていろ、愛し子よ」
疲労で目を明けていられないほど眠かったが、必死に黒い目を開けて、ボルゴールを見る。蝋燭の光に照らされて、無骨で精悍な顔が、いかにも愛し気に恭親王を見下していた。
「……どこに、いくのさ。あんたがいなくて、僕の貞操は保証されるんだろうね? 特にあの、二部族の長たちは、僕をギラギラした目で見て来るんだよ?」
「あれたちも一緒に行く故、問題はない。この野営地は、女子供と、老人と、わずかな守備兵だけだ。……もっとも、逃げることは叶わんぞ、悪いが、もう一人の皇子には見張りをつける」
恭親王は表情を読ませないために、殊更に両手で両眼をごしごしと擦って、眠そうなフリをする。もう、眠気などすっかり醒めていた。
「……逃げるって、どっちに逃げるのさ」
「それ故、心配はいらぬとは思うがな。念のためだ……数日で帰る。南の土産をたっぷり持ってこよう。綺麗な絹の服がいいか?」
「いらない。僕が着るような上物は、こんな田舎じゃ手に入らないよ」
「ふふふ、減らず口は相変わらずだ」
ボルゴールは口髭に覆われた無骨な唇で恭親王の白い、滑らかな首筋にそっと触れる。チクチクとした口髭の感触に思わず目を瞑り、心を殺した。そうしないと、嫌だと思う気持ちがそのまま〈王気〉に溢れ出てしまう。〈王気〉の視えるボルゴールの機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。今は、まだ。
天幕の外がざわつき始める。
「親方様、そろそろ、刻限です」
外から、ボルゴールの配下が声をかける。
「わかった、すぐ行く」
ようやくボルゴールが身体を起こし、身支度を始めた。恭親王も重い身体を持ち上げ、のろのろと衣服を着ていると、戎服を着る手伝いのために侍童たちが数人、天幕に入ってきた。嫉妬の籠った眼差しで睨まれて、恭親王はウンザリする。
(でも、いい。これも、今夜限り――)
「もう、下がってもいい?」
「出陣を見送ってくれぬのか?」
「すぐに帰ってくるんじゃないの?」
わざと大あくびをしながら面倒くさそうに言うと、ボルゴールはその仕草にも目を細める。
「ふふふ、そなたはやはり手放し難い。一緒に連れて行こうか?」
それは計画が狂うのでやめて欲しかった。
「無理だよ。さっきあんなにヤられて、体中が痛くて馬になんか乗れないって」
恭親王の言葉を聞いて、ボルゴールに鉄の鋲のついた革鎧を着せ掛けてきた侍童たちが、嫉妬心に塗れた目でぎろりと睨みつけてくるのが、心底、鬱陶しい。
「そうか、それは仕方がないな」
あっさり諦めたボルゴールに、恭親王はほっと安堵の吐息を漏らす。
準備のできたボルゴールについて天幕を出ると、外はたくさんの篝火に照らされて昼間のように明るくなっていた。ボルゴールの大天幕の前の広い空間は、軍馬がひしめきあっていた。空に、満月が輝く。
「遅いぞ、ベルンチャの。いつまでそのお気に入りと戯れている。今夜こそ、あの、目障りな砦を落として、南の奴らに吠え面かかかせてやるのだ!」
鷲鼻のヨロ族の族長マルチュロが革の兜の下で嘯く。
「砦には、まだ二人皇子がいるらしい。そいつらは、俺たちがもらう」
マンチュ族のイリブが大きな身体を反らした。ダヤン皇子はともかく、廉郡王を組み敷くのは容易なことではあるまいと恭親王は思ったが、黙っていた。
「ものども、では参るぞ。凍ったベルンは我らが狼神の恩典。南を蹂躙し、その恵みを受け取るのだ!」
オー!と、地響きのような雄たけびが起こり、馬上の男どもが咆哮する。荒々しく、だが整然と野営地を出ていく騎馬の群れを見送りながら、恭親王は時を待った。
彼らが凍ったベルンを渡るのは、夜半過ぎ。夜明け近くには、渡り切ってそのまま砦に奇襲を仕掛けるつもりだ。
六日前、手紙を結び付けて飛ばしたエールライヒは手ぶらで戻ってきた。
あの手紙が、無事に砦に届いたと恭親王は信じていたが、彼らが内容を理解できたかは半々だと思った。手紙が敵の手に落ちる可能性を考えれば、あの形でしか文を綴れなかった。
遠ざかる騎馬の一団を見送りながら、恭親王はこれからの手順を考えた。最悪、砦の者たちが手紙の意図を理解しなかった場合、せめてこの場から逃げ出す算段も含め、恭親王の頭脳は目まぐるしく回転していた。
ボルゴールらの一軍が南へと走り去ると、ゾーイが天幕の陰から走り寄ってきた。手には毛織のマントを持っている。それを恭親王の肩に着せ掛けながら、話しかける。
「お迎えに参りました」
「うん。アイリンは無事?」
「ええ……ですが、見張りが付いています」
「それは仕方がない。その見張りに気づかれないように、注意しろ。あとは、昨夜話した手筈通り動けるな?」
「アートとテムジンはすでに動いています。あとは……」
二人は速足で歩きながらぽそぽそと小声で話した。恭親王は寒空に輝く満月を眺めて、唇の端を持ち上げる。
「そうだ。あの箱、返してくれる?」
ゾーイが懐から茶色い小箱を出した。それをひったくるように取って、素早く懐に仕舞う。
「随分、大切なものなのですね?」
ゾーイの問いかけに、恭親王がまっすぐ前を見ながら言った。
「そうだよ。これのためだけに僕は生きているんだ」
自分の命よりも、尊厳よりも、この指輪のためだけに。
彼は、ベルンの北で朽ち果てるわけにはいかないのだ。
「要は、狼煙を上げるタイミングだ」
デュクトとゲルに向かい、恭親王は言った。
「危険ではないのですか?」
「危険に決まっているだろう」
ゲルの懸念に対し、恭親王はあっさりと言う。
「タイミングが早すぎたら、異常を察知したあいつらが戻ってきてしまう。万事休すだね」
「ベルンまで、おそらくここから一刻というところでしょう。朝方には渡河を終える予定だと思われます」
デュクトの計算に、恭親王が頷く。
「野営地に残る守備兵はどれくらいだ?」
「ゾーイの計算では、ボルゴールの兵二千騎のうち、五十騎ほどを残しているようです」
「……五十騎対、九騎、うち二人は文官で、さらに動けない病人一人付き。砦の兵が来ないと早晩捕まるだろうね」
「……本当に、砦の軍が渡河してくるでしょうか?」
そんなことは恭親王が聞きたい。でも、彼は廉郡王の好戦的な性格に賭けていた。肅郡王の死を知った廉郡王が、黙ってベルンの南で大人しくしているとは思えなかった。そして帝都からの使者はメイガンとジーム。誇り高き貴種の老将軍たちが、皇子を嬲りものにされて辛抱できるはずがない。大河ベルンの北は帝国の版図外だが、侵攻してならないという聖法があるわけじゃない。
「大丈夫さ、彼らは必ず河を渡る。ゾーイとゾラの親父たちだぞ? 大人しく指を咥えて見ているもんか」
恭親王の計画を知ったゾーイもゾラも、ノリノリだった。無謀な計画に眉を顰めたのはゲルただ一人という、血の気の多い恭親王の配下たちは、虜囚生活で抑圧されて気が立っている。むしろ彼らの暴走を抑えるために、恭親王は慎重に慎重に事を進めた。
月を見上げて時間を計っていたデュクトが言った。
「そろそろ、渡河が始まる頃合いかと思います。始めますか?」
「そうだね、どっから行く?」
「まずは隣の、成郡王殿下の確保からでしょう。人質に取られてはたまりません」
「わかった。その前に反対側の天幕から火の手をあげ、残った兵の目をそちらに集めろ」
「手筈はできています……ゾラが、うまくやるでしょう」
恭親王は鳥籠で眠っているエールライヒを起こした。
「エールライヒ、夜に済まないね。ほら、肉をやるから起きてくれ」
眠そうに首を傾げるエールライヒを肩に止まらせ、恭親王は立ちあがる。
周囲に跪く配下を見回し、言った。
「もし、計画が失敗しても、死ぬ気で各自南に走れ。僕のことは気にするな。奴等は僕を殺しはしないから――でも、お前たちは捕まったら終わりだ」
「わかっています。この命は全て殿下の御為に捧ぐべきもの。今更惜しんだりはいたしません」
「無駄に使うなよ。僕のためというならば、必ず生き延びろ」
デュクトが、ゾーイが、じっと恭親王を見つめた。
「始めろ。女子供、老人、一切、容赦するな。この地の異民族など、陰陽の教えに背き、魔物を信奉する汚れた歪みに過ぎぬ。全て、天と陰陽の調和の為だ。命を奪うのに躊躇う必要はない」
恭親王の美しい唇が、残酷に宣言した。
ほんの一月前の、優雅で繊細な佇まいはどこにもなかった。
彼は、自身の手を血で汚すことを決めたのだ。
汚れを知らぬ無垢なる信仰の道を捨て、血塗られた殺戮の道を歩む、決意を定めた。
普段は夕食後のボルゴールからの呼び出しが、その夜に限ってはまだ宵の口に天幕に引き込まれ、恭親王はまだ薄明るいうちから野獣のような身体に散々貪られ、今夜彼らが南に渡るのだと、確信した。容赦なく陽の〈気〉を吸い取られ、疲労と倦怠感でぐずぐずになった身体を羊毛の褥の上に横たえてぐったりしていると、些か不似合いなほどの繊細な手つきで貂の毛皮でできた肌掛けを素肌の上に掛けられ、蒼ざめた頬を毛むくじゃらの硬い掌で撫でられる。
「数日、留守にする。いい子にして待っていろ、愛し子よ」
疲労で目を明けていられないほど眠かったが、必死に黒い目を開けて、ボルゴールを見る。蝋燭の光に照らされて、無骨で精悍な顔が、いかにも愛し気に恭親王を見下していた。
「……どこに、いくのさ。あんたがいなくて、僕の貞操は保証されるんだろうね? 特にあの、二部族の長たちは、僕をギラギラした目で見て来るんだよ?」
「あれたちも一緒に行く故、問題はない。この野営地は、女子供と、老人と、わずかな守備兵だけだ。……もっとも、逃げることは叶わんぞ、悪いが、もう一人の皇子には見張りをつける」
恭親王は表情を読ませないために、殊更に両手で両眼をごしごしと擦って、眠そうなフリをする。もう、眠気などすっかり醒めていた。
「……逃げるって、どっちに逃げるのさ」
「それ故、心配はいらぬとは思うがな。念のためだ……数日で帰る。南の土産をたっぷり持ってこよう。綺麗な絹の服がいいか?」
「いらない。僕が着るような上物は、こんな田舎じゃ手に入らないよ」
「ふふふ、減らず口は相変わらずだ」
ボルゴールは口髭に覆われた無骨な唇で恭親王の白い、滑らかな首筋にそっと触れる。チクチクとした口髭の感触に思わず目を瞑り、心を殺した。そうしないと、嫌だと思う気持ちがそのまま〈王気〉に溢れ出てしまう。〈王気〉の視えるボルゴールの機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。今は、まだ。
天幕の外がざわつき始める。
「親方様、そろそろ、刻限です」
外から、ボルゴールの配下が声をかける。
「わかった、すぐ行く」
ようやくボルゴールが身体を起こし、身支度を始めた。恭親王も重い身体を持ち上げ、のろのろと衣服を着ていると、戎服を着る手伝いのために侍童たちが数人、天幕に入ってきた。嫉妬の籠った眼差しで睨まれて、恭親王はウンザリする。
(でも、いい。これも、今夜限り――)
「もう、下がってもいい?」
「出陣を見送ってくれぬのか?」
「すぐに帰ってくるんじゃないの?」
わざと大あくびをしながら面倒くさそうに言うと、ボルゴールはその仕草にも目を細める。
「ふふふ、そなたはやはり手放し難い。一緒に連れて行こうか?」
それは計画が狂うのでやめて欲しかった。
「無理だよ。さっきあんなにヤられて、体中が痛くて馬になんか乗れないって」
恭親王の言葉を聞いて、ボルゴールに鉄の鋲のついた革鎧を着せ掛けてきた侍童たちが、嫉妬心に塗れた目でぎろりと睨みつけてくるのが、心底、鬱陶しい。
「そうか、それは仕方がないな」
あっさり諦めたボルゴールに、恭親王はほっと安堵の吐息を漏らす。
準備のできたボルゴールについて天幕を出ると、外はたくさんの篝火に照らされて昼間のように明るくなっていた。ボルゴールの大天幕の前の広い空間は、軍馬がひしめきあっていた。空に、満月が輝く。
「遅いぞ、ベルンチャの。いつまでそのお気に入りと戯れている。今夜こそ、あの、目障りな砦を落として、南の奴らに吠え面かかかせてやるのだ!」
鷲鼻のヨロ族の族長マルチュロが革の兜の下で嘯く。
「砦には、まだ二人皇子がいるらしい。そいつらは、俺たちがもらう」
マンチュ族のイリブが大きな身体を反らした。ダヤン皇子はともかく、廉郡王を組み敷くのは容易なことではあるまいと恭親王は思ったが、黙っていた。
「ものども、では参るぞ。凍ったベルンは我らが狼神の恩典。南を蹂躙し、その恵みを受け取るのだ!」
オー!と、地響きのような雄たけびが起こり、馬上の男どもが咆哮する。荒々しく、だが整然と野営地を出ていく騎馬の群れを見送りながら、恭親王は時を待った。
彼らが凍ったベルンを渡るのは、夜半過ぎ。夜明け近くには、渡り切ってそのまま砦に奇襲を仕掛けるつもりだ。
六日前、手紙を結び付けて飛ばしたエールライヒは手ぶらで戻ってきた。
あの手紙が、無事に砦に届いたと恭親王は信じていたが、彼らが内容を理解できたかは半々だと思った。手紙が敵の手に落ちる可能性を考えれば、あの形でしか文を綴れなかった。
遠ざかる騎馬の一団を見送りながら、恭親王はこれからの手順を考えた。最悪、砦の者たちが手紙の意図を理解しなかった場合、せめてこの場から逃げ出す算段も含め、恭親王の頭脳は目まぐるしく回転していた。
ボルゴールらの一軍が南へと走り去ると、ゾーイが天幕の陰から走り寄ってきた。手には毛織のマントを持っている。それを恭親王の肩に着せ掛けながら、話しかける。
「お迎えに参りました」
「うん。アイリンは無事?」
「ええ……ですが、見張りが付いています」
「それは仕方がない。その見張りに気づかれないように、注意しろ。あとは、昨夜話した手筈通り動けるな?」
「アートとテムジンはすでに動いています。あとは……」
二人は速足で歩きながらぽそぽそと小声で話した。恭親王は寒空に輝く満月を眺めて、唇の端を持ち上げる。
「そうだ。あの箱、返してくれる?」
ゾーイが懐から茶色い小箱を出した。それをひったくるように取って、素早く懐に仕舞う。
「随分、大切なものなのですね?」
ゾーイの問いかけに、恭親王がまっすぐ前を見ながら言った。
「そうだよ。これのためだけに僕は生きているんだ」
自分の命よりも、尊厳よりも、この指輪のためだけに。
彼は、ベルンの北で朽ち果てるわけにはいかないのだ。
「要は、狼煙を上げるタイミングだ」
デュクトとゲルに向かい、恭親王は言った。
「危険ではないのですか?」
「危険に決まっているだろう」
ゲルの懸念に対し、恭親王はあっさりと言う。
「タイミングが早すぎたら、異常を察知したあいつらが戻ってきてしまう。万事休すだね」
「ベルンまで、おそらくここから一刻というところでしょう。朝方には渡河を終える予定だと思われます」
デュクトの計算に、恭親王が頷く。
「野営地に残る守備兵はどれくらいだ?」
「ゾーイの計算では、ボルゴールの兵二千騎のうち、五十騎ほどを残しているようです」
「……五十騎対、九騎、うち二人は文官で、さらに動けない病人一人付き。砦の兵が来ないと早晩捕まるだろうね」
「……本当に、砦の軍が渡河してくるでしょうか?」
そんなことは恭親王が聞きたい。でも、彼は廉郡王の好戦的な性格に賭けていた。肅郡王の死を知った廉郡王が、黙ってベルンの南で大人しくしているとは思えなかった。そして帝都からの使者はメイガンとジーム。誇り高き貴種の老将軍たちが、皇子を嬲りものにされて辛抱できるはずがない。大河ベルンの北は帝国の版図外だが、侵攻してならないという聖法があるわけじゃない。
「大丈夫さ、彼らは必ず河を渡る。ゾーイとゾラの親父たちだぞ? 大人しく指を咥えて見ているもんか」
恭親王の計画を知ったゾーイもゾラも、ノリノリだった。無謀な計画に眉を顰めたのはゲルただ一人という、血の気の多い恭親王の配下たちは、虜囚生活で抑圧されて気が立っている。むしろ彼らの暴走を抑えるために、恭親王は慎重に慎重に事を進めた。
月を見上げて時間を計っていたデュクトが言った。
「そろそろ、渡河が始まる頃合いかと思います。始めますか?」
「そうだね、どっから行く?」
「まずは隣の、成郡王殿下の確保からでしょう。人質に取られてはたまりません」
「わかった。その前に反対側の天幕から火の手をあげ、残った兵の目をそちらに集めろ」
「手筈はできています……ゾラが、うまくやるでしょう」
恭親王は鳥籠で眠っているエールライヒを起こした。
「エールライヒ、夜に済まないね。ほら、肉をやるから起きてくれ」
眠そうに首を傾げるエールライヒを肩に止まらせ、恭親王は立ちあがる。
周囲に跪く配下を見回し、言った。
「もし、計画が失敗しても、死ぬ気で各自南に走れ。僕のことは気にするな。奴等は僕を殺しはしないから――でも、お前たちは捕まったら終わりだ」
「わかっています。この命は全て殿下の御為に捧ぐべきもの。今更惜しんだりはいたしません」
「無駄に使うなよ。僕のためというならば、必ず生き延びろ」
デュクトが、ゾーイが、じっと恭親王を見つめた。
「始めろ。女子供、老人、一切、容赦するな。この地の異民族など、陰陽の教えに背き、魔物を信奉する汚れた歪みに過ぎぬ。全て、天と陰陽の調和の為だ。命を奪うのに躊躇う必要はない」
恭親王の美しい唇が、残酷に宣言した。
ほんの一月前の、優雅で繊細な佇まいはどこにもなかった。
彼は、自身の手を血で汚すことを決めたのだ。
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