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2、銀龍の孤独
調べもの
ほんの思いつきで言ってみたことだが、これが存外に悪くないと、恭親王は思う。
何しろ、昼間の政務の間も、書斎の隅で調べものに格闘するアデライードの姿を見ることができるのだ。
すぐに明らかになったことだが、アデライードは文字を「読む」ことには不自由しないが、深く読み込んで考えるとか、そこから新たな問題点を析出するとか、そういったことを全くやったことがなかった。修道院教育の悪弊で、何でも言われたことを素直に、従順に受け入れる癖がついており、書いてある内容を疑うことがない。ある本と別の本で全く逆のことが書いてあったとしても、アデライードはあっさりと「そんなものなのか」と納得してしまう。いやいや、さっきの本はこうで、この本はこうで、矛盾してるでしょ? とマニ僧都に指摘されて、ようやく立ち止まるという有様だ。
「なぜ、この本とさっきの本では書いてあることが違うと思う?」
「……えっと……どちらかが本当で、どちらかが間違い?」
「どちらかが真実であれば、そうでない方は嘘ってことになるね?でも、どっちも嘘かもしれないし、あるいは、見方によってはどちらも真実かもしれない。その判断は各自で、アデライード自身で下さなければならないよ」
「どうやって? どっちも本当らしく思えます」
「まず、矛盾がないかどうか。二つの見解の相違は、いったいどこから来るのか。あるいはその見解の相違がもたらす、その次の段階の相違は何か。総合的に考えて、アデライードが正しいと思う結論を考え、そして検証する。思い込むだけじゃだめだ。ちゃんと証明しないと」
混濁した思考の靄から抜け出たばかりのアデライードには、あまりにも荷の重い課題であった。
そこで、マニ僧都は一緒に考える仲間としてミハルを選んだ。上奏と有職故実を司るクラウス家のミハルは、幼少から資料を探してデータを集める、という訓練をずっと受けてきた。本当は男だけが受ければいいのだが、勝気なミハルは勝手に授業に乱入していたのである。調べものの基礎は獲得している。
ミハルとしても、ここまで設備の整った大きな書庫は初めてである。だが、そもそも本好きのミハルは嬉々として課題に取り組み、のんびりしたアデライードを励まし、時には叱咤しながら、慣れないアデライードを導きつつ、課題を仕上げていく。
恭親王らの執務の邪魔にならないように、北向きの窓の前に小さな卓と椅子を出して、少女が二人、重厚な革表紙の本を覗き込むようにして読み漁っている姿は、何となく微笑ましく、書類の処理に追われて殺伐としていた書斎にほんのり甘い空気を呼び込んだようで、恋人が同室にいて落ち着かな気な恭親王とトルフィンだけでなく、すでに妻子もいて十代の小娘には何の色気も感じないゲルとエンロンもまた、くすぐったく思いながらも仕事に自ずと熱が入るのであった。
アデライードの本人としては渾身の、恭親王から見れば思わず眉尻が下がってしまうような拙いレポートが出来上がったのは、彼女がレポートを書き始めてから四日後。二日後にはもう、東西の貴族や近隣の小領主を集めたお披露目が迫っていた。
(これが男の部下が書いたもんだったら、怒鳴り散らして問答無用に書き直しなのだが……アデライードが書いたと思うと、主語と述語が呼応していない文法間違いすら愛おしい……)
東方から輸入した上質の紙に、硬めのペンを使って横書きに、丁寧に書き込まれた文字を見、その墨の匂いを嗅ぎながら恭親王は思わず頬が緩んでしまう。
「初めてにしては頑張ったじゃないか。……こんな本は私も知らないな。よく見つけたな」
率直に言えば、問題の踏み込みも甘いし、引いている資料もありきたり。中には野史と呼ばれる信頼のおけない資料も含まれているのだが、それでもまともに物を考えたことがない(としか思えない)アデライードが、初めて真剣に資料に基づいて調べ上げたレポートだ。目についた点は褒めてやらねばならない。
「あ、それはミハル様が……」
アデライードは褒められて少し気まずそうに俯く。はっきり言って、ほとんどミハルが書いたみたいなレポートだ。
「ミハルは見かけによらず優秀なのだな。……男に生まれて入れば、有能な官吏になっただろうに」
間違った方向のド根性とどもり癖しかないランパより、よっぽど使い出のある文官になったであろう。恭親王はふと、先日マニ僧都と話した、西の結婚形態のことを思い出した。
有能な、仕事のできる女を妻に迎え、領内の統治を分担する。
女性の能力を活かし、社会で女性が一定の役割を果たす。――東では後宮の女官などとして出仕する貴族女性もいるにはいるが、皇后や妃嬪の家庭教師や話し相手をする程度で、女が法律や経済に関わる仕事をするなんて、考えられないことだ。
(アデライードが女王になった暁には、有能な女性の秘書官が必要になるだろう。本来ならば、西の貴族令嬢が相応しいのだろうが、下手な令嬢を呼び寄せると、私の妻にしろと言い出しかねない。――トルフィンの妻であるミハルならば、このままアデライードの補助をさせても問題はないな)
実際、歴代の女王の夫の結婚について恭親王も調べてみて仰天したのだ。
たいてい自己の領地の統治は別の妻に任せきりにし、女王の女性秘書官はほぼ例外なく執政長官――つまり女王の夫――の妻で、それも一人ではなく複数いる場合が多いときた。もう、それを読んだだけで恭親王は胃のあたりがむかむかしてしまい、とてもじゃないが受け入れられそうもない。
(考え方の違いなのだろうが、なぜそれで平気なのだろうか。嫉妬に狂ったりしないのか。自分が手をつけた女を、アデライードの近くに置いておくとか、無理、絶対無理)
だが、郷に入っては郷に従えという言葉もある。ただでさえ、西の貴族たちにとって恭親王は余所者に過ぎない。彼が東の結婚の風習をあくまで堅持すれば、反発する者も出てくるだろう。それはアデライードの即位の大きな障壁になりかねない。複数の妻を娶れという圧力は、おそらく彼にずっと付きまとうであろう。
(〈聖婚〉の皇子は妻一人を貫いても何の文句も言われていないのに、女王の夫となるといきなりこれだ。……〈聖婚〉の王女と女王とが両立しないというのも、こういう理由もあるのだろうな)
アデライードの調べたレポートを読みながら、恭親王は考えを巡らす。まず、このレポートを叩き台として、もっと正確なものをミハルに提出させよう。ミハルには西の政体についてもっと勉強させる必要がある。それこそアデライードの右腕が務まるくらいまで。あの勝気な女は、ただトルフィンとお姫様ごっこをさせておくには勿体ない。
東の帝国の常識にずっぽり嵌っていた時には考えもつかなかった、女性官僚の登用について、彼は考え始めていたのである。
何しろ、昼間の政務の間も、書斎の隅で調べものに格闘するアデライードの姿を見ることができるのだ。
すぐに明らかになったことだが、アデライードは文字を「読む」ことには不自由しないが、深く読み込んで考えるとか、そこから新たな問題点を析出するとか、そういったことを全くやったことがなかった。修道院教育の悪弊で、何でも言われたことを素直に、従順に受け入れる癖がついており、書いてある内容を疑うことがない。ある本と別の本で全く逆のことが書いてあったとしても、アデライードはあっさりと「そんなものなのか」と納得してしまう。いやいや、さっきの本はこうで、この本はこうで、矛盾してるでしょ? とマニ僧都に指摘されて、ようやく立ち止まるという有様だ。
「なぜ、この本とさっきの本では書いてあることが違うと思う?」
「……えっと……どちらかが本当で、どちらかが間違い?」
「どちらかが真実であれば、そうでない方は嘘ってことになるね?でも、どっちも嘘かもしれないし、あるいは、見方によってはどちらも真実かもしれない。その判断は各自で、アデライード自身で下さなければならないよ」
「どうやって? どっちも本当らしく思えます」
「まず、矛盾がないかどうか。二つの見解の相違は、いったいどこから来るのか。あるいはその見解の相違がもたらす、その次の段階の相違は何か。総合的に考えて、アデライードが正しいと思う結論を考え、そして検証する。思い込むだけじゃだめだ。ちゃんと証明しないと」
混濁した思考の靄から抜け出たばかりのアデライードには、あまりにも荷の重い課題であった。
そこで、マニ僧都は一緒に考える仲間としてミハルを選んだ。上奏と有職故実を司るクラウス家のミハルは、幼少から資料を探してデータを集める、という訓練をずっと受けてきた。本当は男だけが受ければいいのだが、勝気なミハルは勝手に授業に乱入していたのである。調べものの基礎は獲得している。
ミハルとしても、ここまで設備の整った大きな書庫は初めてである。だが、そもそも本好きのミハルは嬉々として課題に取り組み、のんびりしたアデライードを励まし、時には叱咤しながら、慣れないアデライードを導きつつ、課題を仕上げていく。
恭親王らの執務の邪魔にならないように、北向きの窓の前に小さな卓と椅子を出して、少女が二人、重厚な革表紙の本を覗き込むようにして読み漁っている姿は、何となく微笑ましく、書類の処理に追われて殺伐としていた書斎にほんのり甘い空気を呼び込んだようで、恋人が同室にいて落ち着かな気な恭親王とトルフィンだけでなく、すでに妻子もいて十代の小娘には何の色気も感じないゲルとエンロンもまた、くすぐったく思いながらも仕事に自ずと熱が入るのであった。
アデライードの本人としては渾身の、恭親王から見れば思わず眉尻が下がってしまうような拙いレポートが出来上がったのは、彼女がレポートを書き始めてから四日後。二日後にはもう、東西の貴族や近隣の小領主を集めたお披露目が迫っていた。
(これが男の部下が書いたもんだったら、怒鳴り散らして問答無用に書き直しなのだが……アデライードが書いたと思うと、主語と述語が呼応していない文法間違いすら愛おしい……)
東方から輸入した上質の紙に、硬めのペンを使って横書きに、丁寧に書き込まれた文字を見、その墨の匂いを嗅ぎながら恭親王は思わず頬が緩んでしまう。
「初めてにしては頑張ったじゃないか。……こんな本は私も知らないな。よく見つけたな」
率直に言えば、問題の踏み込みも甘いし、引いている資料もありきたり。中には野史と呼ばれる信頼のおけない資料も含まれているのだが、それでもまともに物を考えたことがない(としか思えない)アデライードが、初めて真剣に資料に基づいて調べ上げたレポートだ。目についた点は褒めてやらねばならない。
「あ、それはミハル様が……」
アデライードは褒められて少し気まずそうに俯く。はっきり言って、ほとんどミハルが書いたみたいなレポートだ。
「ミハルは見かけによらず優秀なのだな。……男に生まれて入れば、有能な官吏になっただろうに」
間違った方向のド根性とどもり癖しかないランパより、よっぽど使い出のある文官になったであろう。恭親王はふと、先日マニ僧都と話した、西の結婚形態のことを思い出した。
有能な、仕事のできる女を妻に迎え、領内の統治を分担する。
女性の能力を活かし、社会で女性が一定の役割を果たす。――東では後宮の女官などとして出仕する貴族女性もいるにはいるが、皇后や妃嬪の家庭教師や話し相手をする程度で、女が法律や経済に関わる仕事をするなんて、考えられないことだ。
(アデライードが女王になった暁には、有能な女性の秘書官が必要になるだろう。本来ならば、西の貴族令嬢が相応しいのだろうが、下手な令嬢を呼び寄せると、私の妻にしろと言い出しかねない。――トルフィンの妻であるミハルならば、このままアデライードの補助をさせても問題はないな)
実際、歴代の女王の夫の結婚について恭親王も調べてみて仰天したのだ。
たいてい自己の領地の統治は別の妻に任せきりにし、女王の女性秘書官はほぼ例外なく執政長官――つまり女王の夫――の妻で、それも一人ではなく複数いる場合が多いときた。もう、それを読んだだけで恭親王は胃のあたりがむかむかしてしまい、とてもじゃないが受け入れられそうもない。
(考え方の違いなのだろうが、なぜそれで平気なのだろうか。嫉妬に狂ったりしないのか。自分が手をつけた女を、アデライードの近くに置いておくとか、無理、絶対無理)
だが、郷に入っては郷に従えという言葉もある。ただでさえ、西の貴族たちにとって恭親王は余所者に過ぎない。彼が東の結婚の風習をあくまで堅持すれば、反発する者も出てくるだろう。それはアデライードの即位の大きな障壁になりかねない。複数の妻を娶れという圧力は、おそらく彼にずっと付きまとうであろう。
(〈聖婚〉の皇子は妻一人を貫いても何の文句も言われていないのに、女王の夫となるといきなりこれだ。……〈聖婚〉の王女と女王とが両立しないというのも、こういう理由もあるのだろうな)
アデライードの調べたレポートを読みながら、恭親王は考えを巡らす。まず、このレポートを叩き台として、もっと正確なものをミハルに提出させよう。ミハルには西の政体についてもっと勉強させる必要がある。それこそアデライードの右腕が務まるくらいまで。あの勝気な女は、ただトルフィンとお姫様ごっこをさせておくには勿体ない。
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