紡ぐ赤い糸

クッキーバニラ

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呼び出しの電話(奏side)

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俺の名前は三河 奏

診断の結果アルファだと分かり、更にその中でも優秀の分類に入っているようで昔から周りにちやほやされた

親は俺が頼めば可能な限りで叶えてくれたし、友人も尽きず、先生からも期待されてきた


そんな俺にはオメガの幼なじみがいる

名前は西条 紡

いつから一緒なのかは覚えていない。気づいたら一緒にいて、いないと違和感を感じる程だった

紡は物静かで人と関わる事が苦手なくせに、頑固で負けず嫌いで煽れば大抵のってくる

時にはテストの点数で、時にはゲームで、時には料理で、様々なジャンルで勝負をした。...ただ運動に関してはあいつが苦手な為に勝負をしていないが


まぁそんなこんなで近くにいれば何だか紡から甘い香りがしてくる事は知っていたし、あいつがオメガだと教えてくれた時には納得した

そしてその時には既に紡に友情とは違う意味での好意を持っていた俺は心の中で大きくガッツポーズをした

自分はアルファで紡はオメガ

これなら番として紡と一緒に...!!


...そう思ってた


だけどあいつは俺に対してまっっっっっっっったくと言っていい程恋愛感情を持っていなかった

一度好きだと伝えた事もあったが、俺も好きだぞ?と当たり前のように返してきて喜べばいいのか悲しめばいいのかが分からなくなった


そこで俺は紡への思いは封印する事にした


もし俺の想いを伝えたとして紡が離れるのは嫌だし、無理矢理番にする方法もあったが、紡の嫌がる事はしたくない

それに俺は確かに紡と一緒になれたら最高だが、最終的に紡が幸せだと思えればそれで充分だ

例え別の奴と結ばれようが、俺と紡の距離が離れてしまおうが、あいつが笑えればそれでいい。ただし、紡の相手となるやつは見定めさせてもらう


まぁそんな感じで今まで過ごし、既に20も後半

紡がずっと独り身の為もしかしたらという僅かな希望を信じて俺も特定の相手を作ったことはない

まぁありえないとは知ってるがどうしても諦めきれなくてズルズルとここまで引きずってきた

学生の頃は紡への想いを紛らわそうと何度か付き合ったし体も重ねた。しかし何をしても紡の顔がチラついてしまい結局すぐに別れた

大体職業も紡がデザイナーになりたいのを知っていたから俺もアパレル系の仕事に就こうと思う辺り手遅れだと思う

結果、今でもあいつと一緒にいる事が出来るし、部下のみんなも良い奴だから、俺的には幸せであるから良かったが


ダラダラとここまで話したが、ここからが本題


今俺は、とあるファッションショーのお疲れ様パーティにお呼ばれして紡と共に参加した

紡を連れてきたのは、あいつのデザインを使ったからなのと、うちのデザイナーに紡さんと行った方がいいと言われたからである

余談だが、何故かうちのデザイナーに俺が紡に惚れてる事を知られてた。そんなに分かりやすいのか...


それで紡と参加して、会長の話に乾杯、挨拶回りと、一通りのイベントが終わると紡がトイレに行くと出ていった


問題なのは、紡が会場を出てから既に数十分は経っているのだ

もしかしたら迷子になっているかもと思ったが、流石に10分以上迷ったらあいつはバックを持ってトイレに向かったからスマホもあるし、それで連絡がくるはず

じゃあなにかアクシデントが?とも思ったが、トイレから戻るのが遅くて連絡をするのも面倒臭いと思われないかと心配になる


さてどうしようと頭を悩ませた結果、ここまで遅いのは何か理由があるはず!と思い、会場から一旦出て電話をかけた


数コールが鳴ったあと、電話が繋がり話しかけようとした時、紡とは違う低い男性の声が聞こえてきた


「...誰だ」

「勝手に出てしまいすみません。今トイレにいるんですけどどうやら持ち主の方が忘れてしまったらしくて...」


あいつが忘れるのって珍しいなと思いながらもさき程つい咄嗟にやってしまった事を謝罪した


「わざわざありがとうございます。申し訳ないのですが、今会場の入り口にいて、届けて頂いても大丈夫ですか?」

「分かりました。今から向かいます」
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