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10.結い付く誓い
錬金の秘術
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この世界には、魔法とは別に多くの技術が研究されている。
その中でも最も有名であり、しかも一番疑問視されているのがこの……「錬金術」だ。
「錬金術」とはその名の通り、様々な手法で黄金を作り出す術……またはそれを研究する学問だ。そしてその過程で、色んな術や技術、薬などが発見されて来た。
未だに何もない処から黄金を作り出す事や、無価値な物を金に変える術は見つかっていない。その代わり、魔法とはまた一線を画す呪術や薬術が発達し実用化されていた。
でもその「錬金術」からなる種々の技術は、広く伝わる事は無かった。……多分、これからもそう拡散されて行く事は無いだろうなぁ。
なんせこれまでに、余りにも「錬金術擬き」が出回り過ぎていた。その事で莫大な被害を負った貴族や、晴れる事の無い怨みを抱いた一族も少なくない。
そしてその逸話は世に広く伝わり尾鰭が付いて、今ではインチキの代名詞と化しているんだからな。
「……世に様々な錬金術に関する話が出回っておりますが、その島にある村に住まう者達の『錬金術』は偽物ではありません。実際に多くの奇跡を齎した、色々な技術を有した術者たちが暮らしている所なのです」
俺がそう説明をすると、この場の喧騒は更に大きなものになっていた。
如何に俺が「錬金術」について保証した処で、これまでの認識が払拭される訳じゃあ無い。そういった賛否が、混乱の度合いを助長しちまってるんだ。
「……ふむ。アレクよ、聞くが何故その村の所在をお主は存じておる? 何故そこに住む錬金術師共が本物だと言い切れるのだ?」
放っておいたらいつまでも収まらない喧噪を察したのか、クレーメンス伯は少し大きめの声で俺に質問を投げ掛けて来た。
まぁ、当然の疑問と言えばそうだよなぁ。
「……はい。私の生家には多くの書物や道具があり、その中に彼の村の事が記されておりました。そしてそこには『フェーグの村』に住む錬金術師は皆本当の秘術を有しており信頼に値する……と、そう綴られていたのです」
だから俺は、設定上の答えを伯爵へと返したんだ。ハッキリ言ってこの返事は子供だましであり、信じられる要素が1つもない。
例えるなら、「俺がそう言っているので間違いない」という根拠をひけらかす愚者の論理と同じだろうなぁ。
もっとも、本当の事を言いたくないと察して、俺の言葉を信じてくれているマリーシェたちが愚か者かと言えばそんな事はないんだがな。
そして目の前の伯爵もどうやら……そんなお人好しだったみたいだ。
「なるほど……。それならば、お主の口より『フェーグの村』と言う名称が出て来た事にも合点がいくと言うものだ。……どうだ、親衛騎士団長?」
信じられないものを信じる……。今の伯爵は、殆ど俺と言う人物だけを信じて話を進めているみたいだった。
「は……。わたくしは、俄かには……」
「だが、我が親衛騎士団長よ。他に何か良い手はあるまい?」
「……はい」
今のこの状況は、手詰まりだと言って良い。そしてそれを打開出来る可能性を持っているのは、俺の齎す知識と情報だけなんだ。
さしもの親衛騎士団長オネット男爵も、代案もなく騒ぎ立てる様な真似は出来なかったみたいだな。
「それでアレクよ……。その『フェーグの村』に住む錬金術師たちが本物だったとして……だ。その者達に、何を求めようと言うのだ?」
俺の持ち掛けた話に対する審議を打ち切り、伯爵が俺に向けてその話の続きを促して来た。
思い思いに討論していた護衛兵たちだったけど、主が口を開けばそんな身勝手は許されない。この部屋の喧騒は収まり、再び静寂が支配した。
「……エリンの容態がこのまま安定すれば、彼女を目覚めさせる為の手段を探す時間的余裕が生まれます。……ですがここで、大きな問題が発生してしまいます」
伯爵の錬金術師に付いての質問に対して、俺は順を追って説明する事に決めた。
これを聞けば話題をすり替えた様に聞こえるけど、実際は全て繋がっている。それが分かる伯爵だから、俺の言葉を途中で遮るみたいな真似はせずにフンフンと頷いていた。
「それは……眠り続ける人を生き長らえらせる手段が無いという事です。これまでに人が何年も眠り続けて尚、生き永らえた話はありません。それどころか、数か月と持たずに命を失うでしょう」
そう……。問題は、眠ったままでも命を繋ぎ続ける事が出来るかどうかに掛かっているんだ。
眠ったままと言うのは、体力や生命力を最も温存した状態で維持するという事になる。
それでも流石に数か月と言う長さは難しく、数年ともなればもはや夢物語だ。人は、栄養を取らなければ生きてはいけないんだからな。
文献には全身凍らされたまま眠り続け、数百年後に目覚めた魔導王の話なんかもあったけど……それこそ、あくまでもおとぎ話の中だけの出来事だ。さすがの俺も、そんな化け物に未だかつて出会った事なんて無い。
現実問題として、如何に眠り続ける者を生かす為の処置を施すかが大事になって来るんだ。
「そして錬金術の中には、眠った者に栄養を与えその命を引き延ばす手法と薬学が伝わっております。その技術を用いて、まずはエリンの助命を図ります。……ですが」
錬金術師の使う延命術を使えば、眠っているエリンに栄養を与え続ける事も出来るかも知れない。
何せ奴らは、不老不死なんて研究もしてるんだからなぁ。数年命を保たせるなんて、あいつ等にとっては造作もない事なのかも知れない。
でもそれよりも、もっと根本的な問題もあるんだ。
「……ふむ。そうなれば、エリンを治療し続けるのにその者達を召し出さねばならぬという事か。それに、街の外に彼女の為の治療所を作らねばならないだろうな……」
そうだ。エリンを治療し続けるという為だけに、それだけのお金が掛かってしまう。本来ならば、たかがメイドの為にそこまでする伯爵なんていないだろう。
もしも断られたら、俺がその資金を出す事になるだろうなぁ。……いや、それしか方法が無いんだが。
でもそうなれば、今の俺の秘密を隠し通すなんて難しくなる。
それに、何でも俺がやってしまうという事にも問題が生じちまう。
パーティの中にそんな雰囲気が蔓延しちまったら、冒険に対して甘い考えを持ってしまう事も十分に考えられるからな。
必死に足掻いて努力して、そして漸く目的のものを得る事に意義がある筈だ。結果として、簡単かつ安全に目的を達成させれば良いと言う事ばかりじゃあない。
そういう理由からも、出来れば伯爵に援助してもらうという態を保ちたかった。
そして、もっとそれ以前にも解決しなけりゃならない事だってある。
「それに、その『忘れられた島』へと渡る為の魔法陣があるという『ガレ漁村』はこの大陸の東北……『アニレイオ地方』にあるのであろう? なれば、そなた達が赴くにはちと荷が勝ち過ぎるのではないか?」
さすがは伯爵、全くその通りだ。
少なくとも、街と街を繋ぐ街道を馬を乗り潰す気で走らせれば、この大陸の端から端までを恐らくは片道15日……往復で30日もあれば行き来出来る。
城や街、そして街道に一定間隔で設置された女神像が、強力な魔物を遠ざけてくれているからな。
徒歩だったとしても、途中で魔物の集団に襲われてもレベルが25もあれば安全に大陸全土の何処へでも行く事が出来るだろう。
でもその護られた範囲から一歩飛び出すと……途端に魔物の強さが上がる。
その強さの幅は地区によって区々なんだが、場所によってはレベル30、40、50と、到底今の俺たちじゃあ敵いそうに無い魔物が出現する場所もあるんだ。
そしてここ「テルンシア地方」から、目的の「アニレイオ地方」へ最短距離で行く為には、途中で街道の途切れた地区を何度か通過しなきゃいけない。
街道を通っていたって、今の俺たちでは敵わない魔物も出現するかも知れない。如何に馬を走らせているとはいえ、そこを襲う魔物がいないとは断言出来ないしな。
そして、そんな道中の困難さを考えれば、俺たちが「ガレ漁村」へ向かうとしたならとても20日以内に戻っては来れないだろう。
エリンの体力は、このままじゃあ後1カ月も持たないんだ。それを考えれば、とても現実的な日数じゃあ無いよな。
「……良かろう。この街の外への療養所建設と『フェーグの村』への人員派遣は、こちらで手配致そう」
暫く考えて、伯爵はそう決断してくれた。これには俺も、そしてマリーシェ達も、何よりもシャルルーが内心で大喜びした。
まぁこれは、伯爵がただお人好しに俺たちへ協力したり、エリンを助けるって理由だけの決断じゃあないんだろうけどなぁ。
そう考えられる第一の理由は、今回の行動に依る名声の獲得。
自家で働いているメイドの危機に際してこれ程の対応をして見せれば、それこそ彼に対する評価は絶賛されるだろう。……特に庶民からは。
税を徴収するだけだという印象のある貴族と言うのは、一般市民からは良く思われていない。これは、この地方を治めるテルンシア城に座する王でさえも例外じゃあないんだ。
大なり小なり、不満と言うのはあるだろうからなぁ。それは仕方が無い。
でも今回の事で、伯爵はその庶民から一定の支持を得る事が出来るだろう。実際に民の存在をどう考えているのかは分からないが、この益は大きい。
そして第二に、俺から得る事の出来る知識への代償って事かな?
これまでに知り得なかった、「錬金術」と言う新たなる可能性を、俺と言うある程度は信用のおける人物から紹介されたんだ。これは今後、伯爵にとって様々な財産になるだろう。
錬金術の情報を一手に掌握するという事にも、そしてその技術を自らが発信するという点においても……な。
その計算が出来ない伯爵じゃあ無いからな。俺が齎したものに対する報酬としては、まぁ妥当なものだろうか。……いや、過分と言って良いかも知れない。
このままでも、とりあえずはエリンに対する処置は満足のいくものとなった。
特に何もしなくても、数年後には彼女は目を覚ますだろう。だから、俺がこれ以上の話をする必要は無いんだ。
例え俺たちが、エリンをもっと早く目覚めさせる為に動こうと考えていたとしても……な。
その中でも最も有名であり、しかも一番疑問視されているのがこの……「錬金術」だ。
「錬金術」とはその名の通り、様々な手法で黄金を作り出す術……またはそれを研究する学問だ。そしてその過程で、色んな術や技術、薬などが発見されて来た。
未だに何もない処から黄金を作り出す事や、無価値な物を金に変える術は見つかっていない。その代わり、魔法とはまた一線を画す呪術や薬術が発達し実用化されていた。
でもその「錬金術」からなる種々の技術は、広く伝わる事は無かった。……多分、これからもそう拡散されて行く事は無いだろうなぁ。
なんせこれまでに、余りにも「錬金術擬き」が出回り過ぎていた。その事で莫大な被害を負った貴族や、晴れる事の無い怨みを抱いた一族も少なくない。
そしてその逸話は世に広く伝わり尾鰭が付いて、今ではインチキの代名詞と化しているんだからな。
「……世に様々な錬金術に関する話が出回っておりますが、その島にある村に住まう者達の『錬金術』は偽物ではありません。実際に多くの奇跡を齎した、色々な技術を有した術者たちが暮らしている所なのです」
俺がそう説明をすると、この場の喧騒は更に大きなものになっていた。
如何に俺が「錬金術」について保証した処で、これまでの認識が払拭される訳じゃあ無い。そういった賛否が、混乱の度合いを助長しちまってるんだ。
「……ふむ。アレクよ、聞くが何故その村の所在をお主は存じておる? 何故そこに住む錬金術師共が本物だと言い切れるのだ?」
放っておいたらいつまでも収まらない喧噪を察したのか、クレーメンス伯は少し大きめの声で俺に質問を投げ掛けて来た。
まぁ、当然の疑問と言えばそうだよなぁ。
「……はい。私の生家には多くの書物や道具があり、その中に彼の村の事が記されておりました。そしてそこには『フェーグの村』に住む錬金術師は皆本当の秘術を有しており信頼に値する……と、そう綴られていたのです」
だから俺は、設定上の答えを伯爵へと返したんだ。ハッキリ言ってこの返事は子供だましであり、信じられる要素が1つもない。
例えるなら、「俺がそう言っているので間違いない」という根拠をひけらかす愚者の論理と同じだろうなぁ。
もっとも、本当の事を言いたくないと察して、俺の言葉を信じてくれているマリーシェたちが愚か者かと言えばそんな事はないんだがな。
そして目の前の伯爵もどうやら……そんなお人好しだったみたいだ。
「なるほど……。それならば、お主の口より『フェーグの村』と言う名称が出て来た事にも合点がいくと言うものだ。……どうだ、親衛騎士団長?」
信じられないものを信じる……。今の伯爵は、殆ど俺と言う人物だけを信じて話を進めているみたいだった。
「は……。わたくしは、俄かには……」
「だが、我が親衛騎士団長よ。他に何か良い手はあるまい?」
「……はい」
今のこの状況は、手詰まりだと言って良い。そしてそれを打開出来る可能性を持っているのは、俺の齎す知識と情報だけなんだ。
さしもの親衛騎士団長オネット男爵も、代案もなく騒ぎ立てる様な真似は出来なかったみたいだな。
「それでアレクよ……。その『フェーグの村』に住む錬金術師たちが本物だったとして……だ。その者達に、何を求めようと言うのだ?」
俺の持ち掛けた話に対する審議を打ち切り、伯爵が俺に向けてその話の続きを促して来た。
思い思いに討論していた護衛兵たちだったけど、主が口を開けばそんな身勝手は許されない。この部屋の喧騒は収まり、再び静寂が支配した。
「……エリンの容態がこのまま安定すれば、彼女を目覚めさせる為の手段を探す時間的余裕が生まれます。……ですがここで、大きな問題が発生してしまいます」
伯爵の錬金術師に付いての質問に対して、俺は順を追って説明する事に決めた。
これを聞けば話題をすり替えた様に聞こえるけど、実際は全て繋がっている。それが分かる伯爵だから、俺の言葉を途中で遮るみたいな真似はせずにフンフンと頷いていた。
「それは……眠り続ける人を生き長らえらせる手段が無いという事です。これまでに人が何年も眠り続けて尚、生き永らえた話はありません。それどころか、数か月と持たずに命を失うでしょう」
そう……。問題は、眠ったままでも命を繋ぎ続ける事が出来るかどうかに掛かっているんだ。
眠ったままと言うのは、体力や生命力を最も温存した状態で維持するという事になる。
それでも流石に数か月と言う長さは難しく、数年ともなればもはや夢物語だ。人は、栄養を取らなければ生きてはいけないんだからな。
文献には全身凍らされたまま眠り続け、数百年後に目覚めた魔導王の話なんかもあったけど……それこそ、あくまでもおとぎ話の中だけの出来事だ。さすがの俺も、そんな化け物に未だかつて出会った事なんて無い。
現実問題として、如何に眠り続ける者を生かす為の処置を施すかが大事になって来るんだ。
「そして錬金術の中には、眠った者に栄養を与えその命を引き延ばす手法と薬学が伝わっております。その技術を用いて、まずはエリンの助命を図ります。……ですが」
錬金術師の使う延命術を使えば、眠っているエリンに栄養を与え続ける事も出来るかも知れない。
何せ奴らは、不老不死なんて研究もしてるんだからなぁ。数年命を保たせるなんて、あいつ等にとっては造作もない事なのかも知れない。
でもそれよりも、もっと根本的な問題もあるんだ。
「……ふむ。そうなれば、エリンを治療し続けるのにその者達を召し出さねばならぬという事か。それに、街の外に彼女の為の治療所を作らねばならないだろうな……」
そうだ。エリンを治療し続けるという為だけに、それだけのお金が掛かってしまう。本来ならば、たかがメイドの為にそこまでする伯爵なんていないだろう。
もしも断られたら、俺がその資金を出す事になるだろうなぁ。……いや、それしか方法が無いんだが。
でもそうなれば、今の俺の秘密を隠し通すなんて難しくなる。
それに、何でも俺がやってしまうという事にも問題が生じちまう。
パーティの中にそんな雰囲気が蔓延しちまったら、冒険に対して甘い考えを持ってしまう事も十分に考えられるからな。
必死に足掻いて努力して、そして漸く目的のものを得る事に意義がある筈だ。結果として、簡単かつ安全に目的を達成させれば良いと言う事ばかりじゃあない。
そういう理由からも、出来れば伯爵に援助してもらうという態を保ちたかった。
そして、もっとそれ以前にも解決しなけりゃならない事だってある。
「それに、その『忘れられた島』へと渡る為の魔法陣があるという『ガレ漁村』はこの大陸の東北……『アニレイオ地方』にあるのであろう? なれば、そなた達が赴くにはちと荷が勝ち過ぎるのではないか?」
さすがは伯爵、全くその通りだ。
少なくとも、街と街を繋ぐ街道を馬を乗り潰す気で走らせれば、この大陸の端から端までを恐らくは片道15日……往復で30日もあれば行き来出来る。
城や街、そして街道に一定間隔で設置された女神像が、強力な魔物を遠ざけてくれているからな。
徒歩だったとしても、途中で魔物の集団に襲われてもレベルが25もあれば安全に大陸全土の何処へでも行く事が出来るだろう。
でもその護られた範囲から一歩飛び出すと……途端に魔物の強さが上がる。
その強さの幅は地区によって区々なんだが、場所によってはレベル30、40、50と、到底今の俺たちじゃあ敵いそうに無い魔物が出現する場所もあるんだ。
そしてここ「テルンシア地方」から、目的の「アニレイオ地方」へ最短距離で行く為には、途中で街道の途切れた地区を何度か通過しなきゃいけない。
街道を通っていたって、今の俺たちでは敵わない魔物も出現するかも知れない。如何に馬を走らせているとはいえ、そこを襲う魔物がいないとは断言出来ないしな。
そして、そんな道中の困難さを考えれば、俺たちが「ガレ漁村」へ向かうとしたならとても20日以内に戻っては来れないだろう。
エリンの体力は、このままじゃあ後1カ月も持たないんだ。それを考えれば、とても現実的な日数じゃあ無いよな。
「……良かろう。この街の外への療養所建設と『フェーグの村』への人員派遣は、こちらで手配致そう」
暫く考えて、伯爵はそう決断してくれた。これには俺も、そしてマリーシェ達も、何よりもシャルルーが内心で大喜びした。
まぁこれは、伯爵がただお人好しに俺たちへ協力したり、エリンを助けるって理由だけの決断じゃあないんだろうけどなぁ。
そう考えられる第一の理由は、今回の行動に依る名声の獲得。
自家で働いているメイドの危機に際してこれ程の対応をして見せれば、それこそ彼に対する評価は絶賛されるだろう。……特に庶民からは。
税を徴収するだけだという印象のある貴族と言うのは、一般市民からは良く思われていない。これは、この地方を治めるテルンシア城に座する王でさえも例外じゃあないんだ。
大なり小なり、不満と言うのはあるだろうからなぁ。それは仕方が無い。
でも今回の事で、伯爵はその庶民から一定の支持を得る事が出来るだろう。実際に民の存在をどう考えているのかは分からないが、この益は大きい。
そして第二に、俺から得る事の出来る知識への代償って事かな?
これまでに知り得なかった、「錬金術」と言う新たなる可能性を、俺と言うある程度は信用のおける人物から紹介されたんだ。これは今後、伯爵にとって様々な財産になるだろう。
錬金術の情報を一手に掌握するという事にも、そしてその技術を自らが発信するという点においても……な。
その計算が出来ない伯爵じゃあ無いからな。俺が齎したものに対する報酬としては、まぁ妥当なものだろうか。……いや、過分と言って良いかも知れない。
このままでも、とりあえずはエリンに対する処置は満足のいくものとなった。
特に何もしなくても、数年後には彼女は目を覚ますだろう。だから、俺がこれ以上の話をする必要は無いんだ。
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