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3.誤りのスキル
ファタリテート
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基本的に街中では、神の齎す奇跡「レベル」の効果は発揮されない。
つまりどれだけレベルの高い者も、街中では一般人と変わらない強さしかないと言う事だ。
そして、レベルの付与によって身に付けた魔法や特殊攻撃なども、当然使う事は出来ない。
これには色んな説があるものの、恐らくは冒険なんてしない一般の人達と共存する為の手段なんだろうな。
人のものとは思えない様な力を持つ者がデカい面してそこら中を闊歩していれば、そんな力と無縁な人々は怖くてオチオチ街を歩く事も出来ないだろう。
それでも、冒険の末にレベルとは関係なく得た筋力や瞬発力、経験から身に付けた体捌きなんかはそのまま反映されるんだけどな。
―――ただし、能力に関してはその限りじゃあない。
魔法や特殊攻撃と違って、スキル単体で敵を攻撃する様な効果を持つものは無い。少なくとも、俺が知っている限りではそんなものはなかった。
あくまでも冒険を補助する様なもの……敵の気配を察知したり、ダンジョン内の宝箱数を感知したり、そこで得た武器防具や道具を鑑定したり……が殆どである。
そして俺の今持っているスキルも、間違いなく戦闘用では無い。
スキルが街中でも使える理由は、その殆どが一般人を巻き込む危険なものでは無いと言う事からなんだろうと俺は考えている。
精神を集中させた俺の脳裏に、今使う事の出来るスキルの一覧が浮かび上がった。
……と言っても、今使えるのはたった一つだけなんだけどな。
様々なジョブを習得し、あれだけ多く覚えていたスキルがたった一つとなってしまった事に、俺は少なくない虚脱感を覚えてしまった。
それと同時に、本当にレベル5に戻されてしまったんだと再確認もさせられて、心の中で苦笑してしまったんだ。
―――「ファタリテート」。
俺の脳裏には、リスタートする直前フィーナから与えられたスキル名が浮かび上がっていた。
「……ん? ファタリテート……? そんなスキル名だったっけ?」
なんせあの時は究極の二択を迫られてたり、俺の気持ちが整理つかないとかで余りはっきりと覚えてないんだよな……。
でも、当のフィーナも名称は良く覚えてなかったみたいだし、俺としては効果さえ間違いなければ問題ない。
何より、メンバーを集める時に使ってしまえば後はもう必要ないスキルなんだ。名称なんてどうでも良かった。
……全く、本当に使えないスキルだよな―――……。
俺は、脳裏に浮かんでいるスキル名「ファタリテート」に意識を集中して、その発動を促した。
その瞬間、周囲の景色がモノクロと化して、何もかもが一切の動きを止めてしまったんだ!
……いや、停まったのは周囲だけじゃない。
俺自身も意識が働いている以外、一切の行動が出来ないでいたのだ。
―――なんだ……? これ……?
発動と同時に時間が止まった様になるスキルなんて、俺は今までに経験したこともないし聞いた事も無かった。
勿論、俺の知るスキルが全て……って訳じゃない。
世の中には、俺の知らないスキルなんてゴマンと存在する。
俺が今使ってるスキルも、初めて知ったし初めて使うものなんだからな。
でも俺さえ止まった世界で、一体これからどうしろっていうんだ……。
―――……ん? ……あれ?
とりあえず周囲に意識を巡らせて、俺は不思議な事に気付いた。
俺と下働き風の女の子だけ、色が変わっていない……モノクロになっていないんだ。
白と黒以外の色がない世界では、実際の世界では地味だと思われる色であっても鮮やかな発色となって、とても存在感を醸し出していた。
兎も角俺は、その少女に意識を集中した。
すると、まるで俺の意識体だけが身体から抜け出した様に、みるみる彼女との距離を縮める事が出来たんだ!
……いや。
……近づいたと言うよりも、彼女が俺の視界の中で拡大されてゆくと言った方が適切か?
この世界に在って色鮮やかな彼女が近づくと、またも不思議な現象を目の当たりにした。
彼女の頭上に、何やら文字が浮かび上がっていたんだ。
―――表層障壁「Clear」。
―――深層障壁「Clear」。
―――心理的プロテクト「Without」。
―――開錠……確認。
読めない文字を目の当たりにして、これは何を意味しているのか俺は暫し考えてみた。
表層障壁と深層障壁と言う言葉は、初めて見る文字であっても読めない訳じゃあない。
そしてその文字から、何となく意味は分かった。
文字の中に「障壁」とあるんだ。
恐らくは、何かしらの事象から彼女の何かを護っているんだろう。
だが、その後に続く「Clear」の意味が分からない。
……って言うか、読めない。
ただ、文字の色は緑色。これは、何となく「問題ない」と言われていると感じられた。
もっとも、その後の「心理的プロテクト」と言う文言が記憶に思い当たる事は無く、勿論「Without」と言う文字は読めなかった。
はっきり言って、何を指しているのか見当も付かない。
ただし、幸いと言って良いのだろう。
最後の文字は読めたし……意味も分かったのだ。
何かしらに鍵が掛けられており、様々な条件を満たしていたお蔭でその開錠に成功した……そう捉えても、恐らくは間違っていないだろうな。
そして「確認」と言う文字が明滅している。
多分この文字に意識を集中すれば、彼女の冒険者として成長した姿が確認出来る筈……だな。
俺が「確認」に意識を集中すると、何か仕掛けが働いた様な音が鳴った。
―――な……なんだっ、これっ!?
その次の瞬間俺の視界は歪み、まるで何処かへと吸い込まれる様に周囲の景色がぼけだした!
そして場面は変わり……。
俺の目の前に、一人の女性が血まみれで倒れているシーンが映し出された!
白い空間に、頭部から赤い血を流して倒れている女性。
その血はどんどんと広がりを見せているが、女性はピクリとも動かない。
俺が一見しただけでも、女性は既に死んでいると思わされた。
―――……この女性は……あの少女なのか?
一目見れば、倒れているのが女性だとすぐに分かった。
スカートをはいているし、長く伸びているブラウンの髪は女性を連想させる。
うつ伏せで倒れているから本当のところは分からないけれど、間違いなく性別は女性だと思った。
そして、彼女の着ているブラウスとスカート……。
白いブラウスに、茶色い麻のスカート。
さっきまで見ていたんだから、それを違う物と間違う筈もない。
そう……。
今俺が見ている女性は、俺がスキルのテストに選んだ目の前を通った少女だったんだ。
そう認識した次の瞬間、俺は強制的にその世界から引き戻された。
戻ったのはあの白い世界からだけでなく、白黒の世界も元通りとなっており、人々は活気の中で忙しなく動き出していた。
俺がスキルで見た少女も、何事も無かった様に俺から徐々に遠ざかってゆく。
―――さっきのは……?
俺は、彼女がもし冒険者として成長したならば……と言う世界を覗き見た筈だ。
でも実際に見えたのは、彼女が頭から血を流して死んでいるシーンだった。
―――あれは……一体?
人混みの中に紛れて行く少女の背中を見つめながら、俺はさっきの光景を必死に思い返していた。
その時、再び周囲の景色が白黒に変わった。
「あ―――っ! スキル使っちゃったんだ―――っ!」
呆然としていた俺の背後から、何処かで聞いた大声が聞こえたんだ。
つまりどれだけレベルの高い者も、街中では一般人と変わらない強さしかないと言う事だ。
そして、レベルの付与によって身に付けた魔法や特殊攻撃なども、当然使う事は出来ない。
これには色んな説があるものの、恐らくは冒険なんてしない一般の人達と共存する為の手段なんだろうな。
人のものとは思えない様な力を持つ者がデカい面してそこら中を闊歩していれば、そんな力と無縁な人々は怖くてオチオチ街を歩く事も出来ないだろう。
それでも、冒険の末にレベルとは関係なく得た筋力や瞬発力、経験から身に付けた体捌きなんかはそのまま反映されるんだけどな。
―――ただし、能力に関してはその限りじゃあない。
魔法や特殊攻撃と違って、スキル単体で敵を攻撃する様な効果を持つものは無い。少なくとも、俺が知っている限りではそんなものはなかった。
あくまでも冒険を補助する様なもの……敵の気配を察知したり、ダンジョン内の宝箱数を感知したり、そこで得た武器防具や道具を鑑定したり……が殆どである。
そして俺の今持っているスキルも、間違いなく戦闘用では無い。
スキルが街中でも使える理由は、その殆どが一般人を巻き込む危険なものでは無いと言う事からなんだろうと俺は考えている。
精神を集中させた俺の脳裏に、今使う事の出来るスキルの一覧が浮かび上がった。
……と言っても、今使えるのはたった一つだけなんだけどな。
様々なジョブを習得し、あれだけ多く覚えていたスキルがたった一つとなってしまった事に、俺は少なくない虚脱感を覚えてしまった。
それと同時に、本当にレベル5に戻されてしまったんだと再確認もさせられて、心の中で苦笑してしまったんだ。
―――「ファタリテート」。
俺の脳裏には、リスタートする直前フィーナから与えられたスキル名が浮かび上がっていた。
「……ん? ファタリテート……? そんなスキル名だったっけ?」
なんせあの時は究極の二択を迫られてたり、俺の気持ちが整理つかないとかで余りはっきりと覚えてないんだよな……。
でも、当のフィーナも名称は良く覚えてなかったみたいだし、俺としては効果さえ間違いなければ問題ない。
何より、メンバーを集める時に使ってしまえば後はもう必要ないスキルなんだ。名称なんてどうでも良かった。
……全く、本当に使えないスキルだよな―――……。
俺は、脳裏に浮かんでいるスキル名「ファタリテート」に意識を集中して、その発動を促した。
その瞬間、周囲の景色がモノクロと化して、何もかもが一切の動きを止めてしまったんだ!
……いや、停まったのは周囲だけじゃない。
俺自身も意識が働いている以外、一切の行動が出来ないでいたのだ。
―――なんだ……? これ……?
発動と同時に時間が止まった様になるスキルなんて、俺は今までに経験したこともないし聞いた事も無かった。
勿論、俺の知るスキルが全て……って訳じゃない。
世の中には、俺の知らないスキルなんてゴマンと存在する。
俺が今使ってるスキルも、初めて知ったし初めて使うものなんだからな。
でも俺さえ止まった世界で、一体これからどうしろっていうんだ……。
―――……ん? ……あれ?
とりあえず周囲に意識を巡らせて、俺は不思議な事に気付いた。
俺と下働き風の女の子だけ、色が変わっていない……モノクロになっていないんだ。
白と黒以外の色がない世界では、実際の世界では地味だと思われる色であっても鮮やかな発色となって、とても存在感を醸し出していた。
兎も角俺は、その少女に意識を集中した。
すると、まるで俺の意識体だけが身体から抜け出した様に、みるみる彼女との距離を縮める事が出来たんだ!
……いや。
……近づいたと言うよりも、彼女が俺の視界の中で拡大されてゆくと言った方が適切か?
この世界に在って色鮮やかな彼女が近づくと、またも不思議な現象を目の当たりにした。
彼女の頭上に、何やら文字が浮かび上がっていたんだ。
―――表層障壁「Clear」。
―――深層障壁「Clear」。
―――心理的プロテクト「Without」。
―――開錠……確認。
読めない文字を目の当たりにして、これは何を意味しているのか俺は暫し考えてみた。
表層障壁と深層障壁と言う言葉は、初めて見る文字であっても読めない訳じゃあない。
そしてその文字から、何となく意味は分かった。
文字の中に「障壁」とあるんだ。
恐らくは、何かしらの事象から彼女の何かを護っているんだろう。
だが、その後に続く「Clear」の意味が分からない。
……って言うか、読めない。
ただ、文字の色は緑色。これは、何となく「問題ない」と言われていると感じられた。
もっとも、その後の「心理的プロテクト」と言う文言が記憶に思い当たる事は無く、勿論「Without」と言う文字は読めなかった。
はっきり言って、何を指しているのか見当も付かない。
ただし、幸いと言って良いのだろう。
最後の文字は読めたし……意味も分かったのだ。
何かしらに鍵が掛けられており、様々な条件を満たしていたお蔭でその開錠に成功した……そう捉えても、恐らくは間違っていないだろうな。
そして「確認」と言う文字が明滅している。
多分この文字に意識を集中すれば、彼女の冒険者として成長した姿が確認出来る筈……だな。
俺が「確認」に意識を集中すると、何か仕掛けが働いた様な音が鳴った。
―――な……なんだっ、これっ!?
その次の瞬間俺の視界は歪み、まるで何処かへと吸い込まれる様に周囲の景色がぼけだした!
そして場面は変わり……。
俺の目の前に、一人の女性が血まみれで倒れているシーンが映し出された!
白い空間に、頭部から赤い血を流して倒れている女性。
その血はどんどんと広がりを見せているが、女性はピクリとも動かない。
俺が一見しただけでも、女性は既に死んでいると思わされた。
―――……この女性は……あの少女なのか?
一目見れば、倒れているのが女性だとすぐに分かった。
スカートをはいているし、長く伸びているブラウンの髪は女性を連想させる。
うつ伏せで倒れているから本当のところは分からないけれど、間違いなく性別は女性だと思った。
そして、彼女の着ているブラウスとスカート……。
白いブラウスに、茶色い麻のスカート。
さっきまで見ていたんだから、それを違う物と間違う筈もない。
そう……。
今俺が見ている女性は、俺がスキルのテストに選んだ目の前を通った少女だったんだ。
そう認識した次の瞬間、俺は強制的にその世界から引き戻された。
戻ったのはあの白い世界からだけでなく、白黒の世界も元通りとなっており、人々は活気の中で忙しなく動き出していた。
俺がスキルで見た少女も、何事も無かった様に俺から徐々に遠ざかってゆく。
―――さっきのは……?
俺は、彼女がもし冒険者として成長したならば……と言う世界を覗き見た筈だ。
でも実際に見えたのは、彼女が頭から血を流して死んでいるシーンだった。
―――あれは……一体?
人混みの中に紛れて行く少女の背中を見つめながら、俺はさっきの光景を必死に思い返していた。
その時、再び周囲の景色が白黒に変わった。
「あ―――っ! スキル使っちゃったんだ―――っ!」
呆然としていた俺の背後から、何処かで聞いた大声が聞こえたんだ。
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