追放された宮廷錬丹術士、山奥で仙人ライフ始めます 〜薬草を煎じてるだけなのに、王女や弟子が次々やってくる件〜

甘夏蜜柑

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カフェ霧雲堂の“夏限定メニュー”試作会!

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「うー……あつい……」

 霧雲堂の厨房で、カリンがふにゃりと溶けかけていた。
 頬をうちわでぱたぱたと仰ぎながら、氷の入った水差しに視線を送る。

「こんな日は、お茶より氷水のほうが売れそう……」

「いえ、そんな時こそ“冷たい薬草茶”の出番ですよ」

 シュウは冷静な声でそう言いながら、涼しげな表情で新しい茶葉を水に沈めていた。

「本日は“夏限定メニュー”の試作会です。爽快感と飲みやすさ、そして薬効を兼ね備えた一杯を目指しましょう」

「うぅ、ハードル高い……」

「がんばりましょう、カリン様。冷茶のラベル、私が描きますから」

 シャオケイは小さな絵筆を持ちながら、にこりと笑った。

 シュウが用意した候補は三種類。

薄荷白百合茶(ハッカビャクユリチャ)
 → 薄荷草のすっきりした香りに、白百合根のほのかな甘み。清涼感重視。

柑香風霧茶(カンコウフウムチャ)
 → 柑橘の皮と風霧草をブレンドした、香り重視の爽やか茶。

翡翠涼蓮茶(ヒスイリョウレンチャ)
 → 蓮の葉と青茶を合わせた、見た目も美しい淡緑の冷茶。

「見た目がキレイなのが、ヒスイリョウレンチャ……でも香りは、柑香のやつが一番おいしそう!」

 カリンは3種類を交互に試飲しながら、目をキラキラと輝かせていた。

「私は、白百合茶が一番好きです。身体がほっと落ち着く感じがします」

「ふむ……では、それぞれの特長を活かして、用途別に提供してみるのもいいかもしれませんね」

「用途別?」

「はい。例えば、食後には“柑香風霧茶”、暑気払いには“薄荷白百合茶”、午後の休憩には“翡翠涼蓮茶”……など」

「それいい! 選べるって、なんか贅沢!」

 試作会の後半は、お茶に合う“お供”を探すコーナーに。

 焼き菓子、蒸し団子、干し果物、さらには冷たい葛ゼリーなど、カリンとシャオケイが次々に持ち込んできた。

「先生、この“梅の甘露煮”、冷茶に合いませんか?」

「こちらの“金柑飴”、試してみてください!」

「この“蓮根チップス”は? シャオケイと夜中に作りました!」

「……ふたりとも、寝てくださいね……」

 とはいえ、その熱意にはシュウも笑顔を見せた。

「では、それぞれのお茶に一番合う“お供”を決めましょう」

 試飲と試食を繰り返し、胃の限界が近づく頃。

 最終的に選ばれたのは以下の組み合わせだった。

薄荷白百合茶 × 蜂蜜入り蓮根チップス

柑香風霧茶 × 金柑飴と干し杏子

翡翠涼蓮茶 × 梅の甘露煮入り葛ゼリー

「……全部、出すんですか?」

「もちろんです。季節限定メニューですし」

「……先生、たまに容赦ないですよね」

「ええ、ですが美味しいものと健康に妥協はできませんから」

 その日の夕方、三人はメニュー表の下書きを囲みながら、満足げに頷いていた。

「名前もちゃんと漢字にすると、ちょっと高級感あるかも」

「ラベルに小さく“冷”の印を押しましょう。涼しげですし」

「“夏限定”の札も手作りして、木の枝に吊るして……!」

 どんどん膨らんでいく構想に、気づけばあたりは夕暮れ色に染まっていた。

「いい一日でしたね。みなさん、お疲れ様でした」

 シュウの穏やかな声に、二人も「おつかれさまでした!」と元気に返す。

 カフェ霧雲堂、初の夏限定メニューは、こうしてゆるやかに誕生したのだった。
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