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奴隷商人編
15 お嬢様は役割を見つける
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屋敷に戻ると、トパーズを呼び出し今日の経緯を伝えたものの今一つ頭に入っていないようだ。
「もう一度言うわね。明日冒険者ギルドに行って、冒険者登録をしなさい。それから一緒に行くバナン達と相談して、受ける依頼を聞いてからそれを受けなさい」
「はぁ……なぜ私なのですか?」
「それはさっき説明したよね? 本当に大丈夫?」
何度も同じことをループさせられていた。
トパーズは、受けたくないのだろうが、俺は何度も頼み込むしか無い。
「トパーズ。お嬢様にはこれが、今必要なことなのです」
「そうは言うけど……私だって暇をしているわけではないのよ?」
ルビーは思い出したかのように、わざとらしく手を叩いた後、人差し指を立てていた。
「そうそう、一つ言うのを忘れていましたが……なんでもこのお願いを聞き入れてくれたのら、お嬢様は週一回添い寝をしてもいいと仰ってました」
「ちょ、まっ、いってな……」
ルビーからの重圧を含めた視線が俺に突き刺さる。
トパーズは今にも飛びつきそうな構えをしている。
「あら? 話がわかるお嬢様って素敵です」
その日の夜。
俺は、トパーズに何度もおもちゃにされた後。
それに見かねたルビーの助けによって事なきを得た……
トパーズは無事に冒険者登録を済ませ、受付の対応も特に問題はなかったらしい。
この数日で少ないのは当たり前だけど、冒険部隊からの収入が確保できるようになった。
そこで得たお金はある程度の金額に達した場合、奴隷達にも分け与えるように指示をした。
給金を与えることで、意識の変化を求めたがこれが今後どうなるか未知の領域だ。
奴隷に給金というものは当然なく、その必要性があるのかというほど。
やはりこの世界の奴隷の姿がおかしい。
それから数日経った朝、事件が起こってしまう。
「お嬢様。おはようございます」
「おはよう……もう朝か、ふぁぁーー」
ルビーが、書類を机の上に置いている。
俺の承認が必要なものだったり、報告書などがここ最近作られるようになっていた。
「昨日の冒険部隊からの報告がありました。薬草の採集は十束のところ集まったのは七十四束。ウェアウルフ討伐は目標三体のところ、討伐は二十です。中々の高評価と思います」
「は? 何考えているの?」
ルビーが読み上げている書類の内容に、髪を乱暴にかきむしっていた。
「お止めください、そのようなことをするものではありません。それに、冒険者としては大変良いことではないですか?」
「そんなに頑張ったら、依頼が無くなってしまうでしょ! 薬草だっていつもどこでも生えている訳じゃないんだから」
俺は着替えもしないまま、広場へ向かい。のんきに素振りをしているバナンに詰め寄った。
「バナン!」
「お、お嬢ですか。びっくりさせないでください」
俺はバナンを正座させ、採集は程々にするようにと。それと討伐もどうしてこうなったのかを一時間ほどじっくりと聞き出した。
少しトラブルはあったものの冒険部隊の方はとりあえず目処はたった。
冒険者をしてと言っても、それなのにブランクは在る。だから、ゆっくりでも良かったのだけど……まあ、やる気があるのはいいことだ。
「頑張ってくれるのはありがたい話だけど……ちょっと聞いてるの?」
「お、お嬢。いや、あの……後ろを見てくれや」
後ろを振り返ると、お怒りのご様子ルビーが立っていた。
布を被せられ、まるで荷物のように運ばれてしまう。その理由は、淑女たるものその様な格好で出歩くものではないと……説教していた側は、説教される側になってしまう。
着替えを済ませ、机の置かれている資料を眺めていた。
残っているのは生産職系予定の奴隷達と子供が六人。
冒険者達とは違いこちらは人数が少ない。
以前は何かしら仕事をしていたとは思われるが、適材適所として現時点で使えるのだろうか?
更に数日が経ち、屋敷に残された資料にも、以前何をしたかも、どんな経緯で奴隷になったのかも書かれてはいない。
成人は、男性が五人、女性が十七人。
あの日から調理場で働き、屋敷や奴隷達が使っている部屋の掃除と現在は使用人に近いことを任せている。
とは言え、掃除とそこまで大きくもないこの屋敷にこの数ははっきり言って不要だ。
男性陣は家事に関してはむしろ触らないほうがいいのではと思うほど。
今の所何も起こってはいないが、何処かで不満が出てもおかしくはない。
「お嬢様。おはようございます」
「ああ、ルビーか。おはよう」
まずは、とりあえず様子を見に行ってからだな。
前職を聞き出し、それから対応していくしか無いだろう。
「ルビー、今日は冒険者以外の奴隷たちを見に行く。朝食が終わり次第、食堂に残るように伝えておいてくれ」
「……かしこまりました」
子供たちは庭で遊ばせるとして、表情からして男達は浮かない顔をしているな。
様子からして俺に怒られるのではないかと思っているのか。
変わって女性達のほうは、姿勢を正し指示を待っている。
このたった数日でこれほどにも差が出るとは予想外だ。
「今日は皆で働く職種について考えようと思う。奴隷になる以前の仕事は何をしていたのかを一人ずつ聞くので、そちらから順番にこっちに来てくれ」
なるほど、男性の四人は子供の頃から奴隷で主に肉体労働をしていたようだ。
持ち主が必要なくなったためか、再度売られたというわけか。
残る一人は何とも……本当に学校の講師をしていたのか?
そんな人物が何で奴隷に落ちたという理由は、大して興味がわかなかった。
女性達の多くは、料理人、裁縫、農家、そして娼婦。
こちらはそれなりに役に立ちそうではあるが……
この世界でなくても、娼婦というのはお金にはなる。
強要させるには俺自身抵抗もあるのでそのまま使用人として使うほかない。
「このまま、使用人として働きたいものは手を上げてもらえる?」
しばらく待ってみたが誰も手を挙げる様子はない。
これはどう判断すればいいのだろうか。
今の環境か好ましくないのか、自分の意見を言うことがだめと思っているのか。
冒険者達とは違い、この人達のできることは限られている。
それでも意見の一つも出ないというのはこの人達は……
「ふぅ。質問を変えるよ。料理を作るのが好きなひとは?」
こちらも誰も手を上げることはなかった。
俺だけではなく、ルビーの方からも小さなため息が漏れていた。
奴隷達の基本的な価値観。それが俺たちとは大きくかけ離れているのだと思う。
「もう一度言うわね。明日冒険者ギルドに行って、冒険者登録をしなさい。それから一緒に行くバナン達と相談して、受ける依頼を聞いてからそれを受けなさい」
「はぁ……なぜ私なのですか?」
「それはさっき説明したよね? 本当に大丈夫?」
何度も同じことをループさせられていた。
トパーズは、受けたくないのだろうが、俺は何度も頼み込むしか無い。
「トパーズ。お嬢様にはこれが、今必要なことなのです」
「そうは言うけど……私だって暇をしているわけではないのよ?」
ルビーは思い出したかのように、わざとらしく手を叩いた後、人差し指を立てていた。
「そうそう、一つ言うのを忘れていましたが……なんでもこのお願いを聞き入れてくれたのら、お嬢様は週一回添い寝をしてもいいと仰ってました」
「ちょ、まっ、いってな……」
ルビーからの重圧を含めた視線が俺に突き刺さる。
トパーズは今にも飛びつきそうな構えをしている。
「あら? 話がわかるお嬢様って素敵です」
その日の夜。
俺は、トパーズに何度もおもちゃにされた後。
それに見かねたルビーの助けによって事なきを得た……
トパーズは無事に冒険者登録を済ませ、受付の対応も特に問題はなかったらしい。
この数日で少ないのは当たり前だけど、冒険部隊からの収入が確保できるようになった。
そこで得たお金はある程度の金額に達した場合、奴隷達にも分け与えるように指示をした。
給金を与えることで、意識の変化を求めたがこれが今後どうなるか未知の領域だ。
奴隷に給金というものは当然なく、その必要性があるのかというほど。
やはりこの世界の奴隷の姿がおかしい。
それから数日経った朝、事件が起こってしまう。
「お嬢様。おはようございます」
「おはよう……もう朝か、ふぁぁーー」
ルビーが、書類を机の上に置いている。
俺の承認が必要なものだったり、報告書などがここ最近作られるようになっていた。
「昨日の冒険部隊からの報告がありました。薬草の採集は十束のところ集まったのは七十四束。ウェアウルフ討伐は目標三体のところ、討伐は二十です。中々の高評価と思います」
「は? 何考えているの?」
ルビーが読み上げている書類の内容に、髪を乱暴にかきむしっていた。
「お止めください、そのようなことをするものではありません。それに、冒険者としては大変良いことではないですか?」
「そんなに頑張ったら、依頼が無くなってしまうでしょ! 薬草だっていつもどこでも生えている訳じゃないんだから」
俺は着替えもしないまま、広場へ向かい。のんきに素振りをしているバナンに詰め寄った。
「バナン!」
「お、お嬢ですか。びっくりさせないでください」
俺はバナンを正座させ、採集は程々にするようにと。それと討伐もどうしてこうなったのかを一時間ほどじっくりと聞き出した。
少しトラブルはあったものの冒険部隊の方はとりあえず目処はたった。
冒険者をしてと言っても、それなのにブランクは在る。だから、ゆっくりでも良かったのだけど……まあ、やる気があるのはいいことだ。
「頑張ってくれるのはありがたい話だけど……ちょっと聞いてるの?」
「お、お嬢。いや、あの……後ろを見てくれや」
後ろを振り返ると、お怒りのご様子ルビーが立っていた。
布を被せられ、まるで荷物のように運ばれてしまう。その理由は、淑女たるものその様な格好で出歩くものではないと……説教していた側は、説教される側になってしまう。
着替えを済ませ、机の置かれている資料を眺めていた。
残っているのは生産職系予定の奴隷達と子供が六人。
冒険者達とは違いこちらは人数が少ない。
以前は何かしら仕事をしていたとは思われるが、適材適所として現時点で使えるのだろうか?
更に数日が経ち、屋敷に残された資料にも、以前何をしたかも、どんな経緯で奴隷になったのかも書かれてはいない。
成人は、男性が五人、女性が十七人。
あの日から調理場で働き、屋敷や奴隷達が使っている部屋の掃除と現在は使用人に近いことを任せている。
とは言え、掃除とそこまで大きくもないこの屋敷にこの数ははっきり言って不要だ。
男性陣は家事に関してはむしろ触らないほうがいいのではと思うほど。
今の所何も起こってはいないが、何処かで不満が出てもおかしくはない。
「お嬢様。おはようございます」
「ああ、ルビーか。おはよう」
まずは、とりあえず様子を見に行ってからだな。
前職を聞き出し、それから対応していくしか無いだろう。
「ルビー、今日は冒険者以外の奴隷たちを見に行く。朝食が終わり次第、食堂に残るように伝えておいてくれ」
「……かしこまりました」
子供たちは庭で遊ばせるとして、表情からして男達は浮かない顔をしているな。
様子からして俺に怒られるのではないかと思っているのか。
変わって女性達のほうは、姿勢を正し指示を待っている。
このたった数日でこれほどにも差が出るとは予想外だ。
「今日は皆で働く職種について考えようと思う。奴隷になる以前の仕事は何をしていたのかを一人ずつ聞くので、そちらから順番にこっちに来てくれ」
なるほど、男性の四人は子供の頃から奴隷で主に肉体労働をしていたようだ。
持ち主が必要なくなったためか、再度売られたというわけか。
残る一人は何とも……本当に学校の講師をしていたのか?
そんな人物が何で奴隷に落ちたという理由は、大して興味がわかなかった。
女性達の多くは、料理人、裁縫、農家、そして娼婦。
こちらはそれなりに役に立ちそうではあるが……
この世界でなくても、娼婦というのはお金にはなる。
強要させるには俺自身抵抗もあるのでそのまま使用人として使うほかない。
「このまま、使用人として働きたいものは手を上げてもらえる?」
しばらく待ってみたが誰も手を挙げる様子はない。
これはどう判断すればいいのだろうか。
今の環境か好ましくないのか、自分の意見を言うことがだめと思っているのか。
冒険者達とは違い、この人達のできることは限られている。
それでも意見の一つも出ないというのはこの人達は……
「ふぅ。質問を変えるよ。料理を作るのが好きなひとは?」
こちらも誰も手を上げることはなかった。
俺だけではなく、ルビーの方からも小さなため息が漏れていた。
奴隷達の基本的な価値観。それが俺たちとは大きくかけ離れているのだと思う。
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