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学園編
69 お嬢様は不機嫌
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「では、どちらへ行かれるおつもりですか?」
どう考えても面倒くさい。本当に面倒くさい。
振り返り、この場から逃げ出そうとする前に腕を掴まれる。
空いている手で彼の腕を叩くと、直ぐに手を離してくれるが、後ろへと下がると当然前へと進んでくる。
また振り返ろうにも、掴んでくるよね……走れたとしてもすぐに追いつかれるだろうし。
「分かったわ。降参よ、とりあえず教室にだけ案内して貰えるかしら?」
「はい。では、どうぞ」
手を差し出されたが、私はそれを軽く叩いた。
「小さいのは認めてるけど、子供扱いはしないで」
「そのつもりはなかったのですが。わかりました、こちらですよ」
どうぞと言うのだけど、私が彼の前を歩かせされる。案内するというのに、どういうことなのかしら?
立ち止まっていたことで、さっきまでいた生徒は周りにもいない。適当に歩くと進む方向を指摘される。
つまり、私の監視も含めて前に置いたというわけね。
これだけ広いと言うのに、彼はこの校舎の内部を把握しているの? 私なら後何回迷うことになるだろう……
何度も行き先を指摘されつつ、ようやく目的の場所である教室へとたどり着いた。方向音痴になっているつもりはないのだけど……
異世界と言うべきか、校舎の建物自体がクラスごとに分かれているとは流石に予想外すぎるよ。
「案内して頂きありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
はあ、入学早々変な人に絡まれることになってしまったが……こんなを毎日通うの? 冗談でしょ?
このクラスはやはり他とは違い、建物自体が一回り他のクラスよりも大きい。人が少ないのにだ……どう考えても私には不釣り合いだと思う。
教室へと入り、教壇の前が空いていたので面倒だからその真ん中座った。
救いと言えば、私を攻撃してきたあの男子が居ないことぐらいね。
「また、隣よろしいですか?」
「丁重にお断りします。申し訳ないのだけど、私は貴方とはあまり関わりたくないの」
彼は気がついていないのかもしれないけど、ここのクラスは人数が少ない。
そのため、彼と一緒に入ってきた際に、他の女子たちからは敵意の眼差しを向けられた。
見た目からしてかなりの美男子、ともなればこの反応は当然でしょうね。
女の子の注目を集めるには十分すぎるといっても良い。彼自身が一目も二目も置かれるのも分かる。
そんな彼と遅れてやってきたのだから、ここに居る女子生徒全員と言っていいほどに、私は標的にされた可能性があるわね。
昨日のことも当然知っているだろうから、私に対しての評価は下る一方ね。
私の学園生活……どうなるのかしらね。
「そうですか、わかりました。ですが、困ったことがあればいつでも言ってください」
「はい。そのお心だけ頂戴しておきます」
二度と関わらなくても良い。
後ろの方からは私に対しての内緒話をしているのだろうか?
入学初日で面倒なことになった……所々に、赤い髪に黒い目という単語が出てくる。
私の左右の机には、誰も座っていないのだから、私のことだと思って間違いはない。
「皆席につけ……もうついているか」
この教室にある机は三人が座れる長机この教室には、九個置かれている。
だけど、私が教壇の前の机に座ったのだけど、直後に後ろの机へと移動をしている。
これで、いかに嫌われているのかがよく分かる。恐らくアイツと一緒だったからに違いない。
学園生活がどういったものかは、ここに来る前から期待はしていなかった。今までのような生活をしている方が楽しかったし、皆が色んな話に本とか持ってきてくれる。
各地で起こったトラブルの解決なども、それなりに苦労することもあったが充実した日々だった。
「まあ、いいか。とりあえず自己紹介でもするか? 前のお前から」
担任らしき先生は、私と、後ろを交互に見ている。
その様子からして、気に留めるのを止めたのだろう……
「イクミ・グセナーレです」
席に立つこともなく、そう言って頬杖をつき窓へと視線を送る。
私はこの学園に来てからというもの、生徒たちの陰湿さに嫌気が差している。
陰口を言われようとも、身長が小さいのも分かる。
私が発端のこともあるのだけど、結果こんな下らないことになり、私は元から学園に対しての苛立ちが余計にましていた。
「ええっと、それだけ……か? まあいい。後ろの窓から順番にな」
それから自己紹介は進んでいくが、私は頬杖をついて聞き流していた。
貴族階級がどうだとか、そんなものに興味もない。
私としては、ここに来るという価値が見い出せ無くなっていた。
知識は欲しいけど、こんな扱いをされるとは予想すらしていない。ある程度の嫌がらせならともかく、Aクラスというのが理解できない。
私がここに来たことで奴隷たちにはメリットはなく、むしろ王都に来たと言うだけで負担を増やしただけにしか過ぎない。
いくら、父の命令とは言え、勉学だけならともかく、今では武術や魔法と言ったものに興味を持っていない。
出来ないことをやるつもりはないし、私にはどう足掻いても無意味でしか無い。
講堂ではあれだけの人数が居たにも拘らず、この教室には生徒の数が少ない。
このクラスは私を含めたったの十四人。男子が八人、女子が六人。
なにか特別な生徒だというのかしらね……しかし、昨日といい今日といい、ここに居る生徒の大半は差別意識が強すぎる。
私が名前だけを言ったことで、後ろからは『平民か』という言葉も聞こえている。
「最後に俺だな。トーラス・セドリアティスだ。これから五年間、よろしくな」
この学園は担任が変わるということはないみたいね。
私はこのクラスには馴染めそうにもないし、この学園を早々に立ち去るには、なにかいい方法はないものかしらね。
どう考えても面倒くさい。本当に面倒くさい。
振り返り、この場から逃げ出そうとする前に腕を掴まれる。
空いている手で彼の腕を叩くと、直ぐに手を離してくれるが、後ろへと下がると当然前へと進んでくる。
また振り返ろうにも、掴んでくるよね……走れたとしてもすぐに追いつかれるだろうし。
「分かったわ。降参よ、とりあえず教室にだけ案内して貰えるかしら?」
「はい。では、どうぞ」
手を差し出されたが、私はそれを軽く叩いた。
「小さいのは認めてるけど、子供扱いはしないで」
「そのつもりはなかったのですが。わかりました、こちらですよ」
どうぞと言うのだけど、私が彼の前を歩かせされる。案内するというのに、どういうことなのかしら?
立ち止まっていたことで、さっきまでいた生徒は周りにもいない。適当に歩くと進む方向を指摘される。
つまり、私の監視も含めて前に置いたというわけね。
これだけ広いと言うのに、彼はこの校舎の内部を把握しているの? 私なら後何回迷うことになるだろう……
何度も行き先を指摘されつつ、ようやく目的の場所である教室へとたどり着いた。方向音痴になっているつもりはないのだけど……
異世界と言うべきか、校舎の建物自体がクラスごとに分かれているとは流石に予想外すぎるよ。
「案内して頂きありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
はあ、入学早々変な人に絡まれることになってしまったが……こんなを毎日通うの? 冗談でしょ?
このクラスはやはり他とは違い、建物自体が一回り他のクラスよりも大きい。人が少ないのにだ……どう考えても私には不釣り合いだと思う。
教室へと入り、教壇の前が空いていたので面倒だからその真ん中座った。
救いと言えば、私を攻撃してきたあの男子が居ないことぐらいね。
「また、隣よろしいですか?」
「丁重にお断りします。申し訳ないのだけど、私は貴方とはあまり関わりたくないの」
彼は気がついていないのかもしれないけど、ここのクラスは人数が少ない。
そのため、彼と一緒に入ってきた際に、他の女子たちからは敵意の眼差しを向けられた。
見た目からしてかなりの美男子、ともなればこの反応は当然でしょうね。
女の子の注目を集めるには十分すぎるといっても良い。彼自身が一目も二目も置かれるのも分かる。
そんな彼と遅れてやってきたのだから、ここに居る女子生徒全員と言っていいほどに、私は標的にされた可能性があるわね。
昨日のことも当然知っているだろうから、私に対しての評価は下る一方ね。
私の学園生活……どうなるのかしらね。
「そうですか、わかりました。ですが、困ったことがあればいつでも言ってください」
「はい。そのお心だけ頂戴しておきます」
二度と関わらなくても良い。
後ろの方からは私に対しての内緒話をしているのだろうか?
入学初日で面倒なことになった……所々に、赤い髪に黒い目という単語が出てくる。
私の左右の机には、誰も座っていないのだから、私のことだと思って間違いはない。
「皆席につけ……もうついているか」
この教室にある机は三人が座れる長机この教室には、九個置かれている。
だけど、私が教壇の前の机に座ったのだけど、直後に後ろの机へと移動をしている。
これで、いかに嫌われているのかがよく分かる。恐らくアイツと一緒だったからに違いない。
学園生活がどういったものかは、ここに来る前から期待はしていなかった。今までのような生活をしている方が楽しかったし、皆が色んな話に本とか持ってきてくれる。
各地で起こったトラブルの解決なども、それなりに苦労することもあったが充実した日々だった。
「まあ、いいか。とりあえず自己紹介でもするか? 前のお前から」
担任らしき先生は、私と、後ろを交互に見ている。
その様子からして、気に留めるのを止めたのだろう……
「イクミ・グセナーレです」
席に立つこともなく、そう言って頬杖をつき窓へと視線を送る。
私はこの学園に来てからというもの、生徒たちの陰湿さに嫌気が差している。
陰口を言われようとも、身長が小さいのも分かる。
私が発端のこともあるのだけど、結果こんな下らないことになり、私は元から学園に対しての苛立ちが余計にましていた。
「ええっと、それだけ……か? まあいい。後ろの窓から順番にな」
それから自己紹介は進んでいくが、私は頬杖をついて聞き流していた。
貴族階級がどうだとか、そんなものに興味もない。
私としては、ここに来るという価値が見い出せ無くなっていた。
知識は欲しいけど、こんな扱いをされるとは予想すらしていない。ある程度の嫌がらせならともかく、Aクラスというのが理解できない。
私がここに来たことで奴隷たちにはメリットはなく、むしろ王都に来たと言うだけで負担を増やしただけにしか過ぎない。
いくら、父の命令とは言え、勉学だけならともかく、今では武術や魔法と言ったものに興味を持っていない。
出来ないことをやるつもりはないし、私にはどう足掻いても無意味でしか無い。
講堂ではあれだけの人数が居たにも拘らず、この教室には生徒の数が少ない。
このクラスは私を含めたったの十四人。男子が八人、女子が六人。
なにか特別な生徒だというのかしらね……しかし、昨日といい今日といい、ここに居る生徒の大半は差別意識が強すぎる。
私が名前だけを言ったことで、後ろからは『平民か』という言葉も聞こえている。
「最後に俺だな。トーラス・セドリアティスだ。これから五年間、よろしくな」
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