お嬢様として異世界で暮らすことに!?

松原 透

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学園編

71 お嬢様とギルドマスター

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 あの人は、どう見ても……エルフだよね?
 何でエルフが学園の校長を務めているの?

 多分入学式の挨拶をしているはずだけど、横にはアイツがいたし、何より最初の国王陛下による長たらしい話のおかげで、眠気を我慢するのに必死だったから全く覚えていない。まあ、最初の最初だったけど……

「お呼び立てして申し訳ございません。グセナーレ様、そこにお掛けください」

 何を言われるのか緊張していたのだけど、その物腰の低さから意表を突かれてしまう。

「はあ、分かりました」

 学園長の言葉に従い、少し強面の人の前に座る。
 奴隷たちを日頃から見ているためか、怖いという感じはなかった。

 学園長じゃなくてこの人が私に用があるのかしら?
 だとしたら、講師? 剣術もあるし、私のあまりにも悪い成績に特別に用意されたとか?

 私は一応、剣術を選択しているが……一度も授業を受けていない。というのも、ルビーに剣を用意して貰うように言った時に、『お嬢様には、ご不要なものです』とだけ言って、用意どころか授業に出るなとまで言われている。

 そんな事をしていたため、学園長に直々に呼ばれたということかしらね。
 Aクラスというは名ばかりで、学園全てのクラスで成績はぶっちぎりの最下位だしね。

「ロディオン、そんなに威嚇しては話にもならないだろう。さて、どこから話を初めていいものか」

「あの、この御方は私の特別講師か何かですか?」

「「は?」」

 私の言葉に二人は目を丸くして固まっていた。
 しばらく私を眺めると、二人を見合わせ首を傾げていた。

「私が、剣術の授業に出席していないから、その事で呼び出されたのですよね?」

「ぶっはは、俺が講師とは面白い冗談だよ、お嬢さん。俺としてもどう接すればいいか困っていたところなんだか……俺が講師って」

 強面の人は、膝をバンバン叩いて笑っている。
 学園長も困った顔をして、彼の隣へと行き頭を強く叩いていた。
 あの、結構いい音がしたけど大丈夫なのかしら?

「で、では、なぜ私は呼ばれたのでしょうか?」

「グセナーレ様。彼はこの王都にある冒険者ギルドのギルドマスターです」

「冒険者ギルドのギルドマスター? ということは……」

 つまり……バナン達がまた私に黙って余計なことに手を出したということね。
 ギルドマスターが出向くともなれば、問題はかなり深刻よね?
 バナン達が帰ってくるのは明々後日、帰ってきたらみっちりと叱ってあげないといけないわね。

「申し訳ございません。彼らがどの様な事をしでかしたのかは分かりませんが、私に償えることがありましたら、大変心苦しいのですが、金銭でなんとかして頂けないでしょうか?」

 床に両膝を突いて頭を下げた。
 冒険者ギルドの最高権力者が来ているのだから、この程度で済まされないのは重々承知の上。だけど、今活動を止められると、皆の生活が苦しくなる。

 私程度の謝罪でどうにかなるとは思えないが、今はこうして謝罪する他無い。
 こんなでも、彼等の責任はすべて私にある。

「おい、ちょってまて」

「何があったのかは存じておりませんが、私の奴隷の不始末は私の責任。先程も申し上げたようにどうか、金銭にて解決をお願いしたい」

 私は、床に額を擦り付け、何度か床に対して頭を打ち付ける。
 二人は急に慌てだし、私の腕を掴み顔を上げようとしてくる。

「グレナーレ様、どうかソファにお掛け直しください。貴方様は何も悪いことはしていないのですよ」

「部下の責任は上司である私の責任。この程度で気がすまないというのであれば、髪を切り、必要であれば顔に傷もつけましょう」

 淑女と呼ばれる人は誰もが髪を大切にし、背中から腰までと長くしている。
 私の髪も腰まである。こんな事では許されないのかもしれないが、多少の誠意にはなると思った。

「おい、ちょっとどうなっているんだ?」

「それでもまだ足りないでしょうか? それ以上に何がお望みでしょうか?」

「まずにソファに、おかけください」

「あ、え?」

 魔法で私の体は宙に浮き、ゆっくりとソファに降ろされる。

「魔法を使用したことは申し訳ございません。とはいえ、貴方様のお体を触れるのはしのびないのでお許しください」

「ですが!」

「何を勘違いしているのかは存じ上げませんが、まずは彼の話を聞いてください。よろしいですね?」

 話というのは、とある場所で魔物が巣食うダンジョンが発見されたということだった。
 しかも発見したのは、バナン達が率いる部隊だったが、ダンジョンでの探索は私が止めていたた。

 その話を聞いてギルドマスターがバナンに話を持ちかけるものの、私の命令で中には入るつもりはないと一蹴したらしい……
 そして、主である私を調べて、こうして直談判をするために学園へとやって来たのが一連の流れだった。

 ダンジョンの話は、まだ見ていない報告書にあったのかもしれないわね。
 ここに来てからというもの、夜遅くまで起きていられないのでそれなりに書類は溜まっている。

「ダンジョン……実際どういうものかわかりませんが、どの程度の危険性があるのでしょうか? それと、以前はどのように対処をされていたのですか?」

「発見されたのは四日前。今の所内部の状態が全くの手付かず、未開拓のダンジョンだから、行きたがるものは早々現れない。その為どれだけの危険が伴うかも不明な状態だ」

 なるほど、いくら報酬が高くても自分が生きて帰れるかわからない依頼は受けないわよね。
 それで数で圧倒できる私の所へと話が舞い込んだというわけね。

 そのダンジョンというのが取れだけ危険なのかがわからない。
 それを、私が命令をしても良いものなの?

「対処についてだが、それもまちまちだ。腕試しに行ったものがそのまま制圧したり、魔物をおびき寄せて数人で対処したりだな」

「例えばダンジョンを埋めるというのはどうなのでしょう?」

「それは駄目ではないが、奴らは結局どこからか穴を掘ってでも出てくるだろうよ」

 そんな事本当にあるの?
 魔物が懸命に穴を掘っているのを考えると、ちょっと絵面が面白いかも。
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