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強者出現
163 姉上はやっぱり姉上 2
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冒険者には階級もなく、魔物を倒してその日暮らしも多い。
そんな彼等でも、魔物の暴走だけは避けようと懸命に戦っている。
「その冒険者の中に、姉上の十倍は強い人ってそんなにもいるの? もちろん、兄上にだってこんな危険な目に合わせることも出来ない。それに対策もちゃんとある」
兄上に貰った剣でもアイツにダメージは通った。
微々たるものだったけど、効果はゼロじゃない。
クリムゾンでも同様であり、その上を遥かに凌駕するドゥームブレイドなら十分効果が期待できる。
そのためにも、魔法の熟練と剣術の両方を鍛え直す必要があった。
具現化の時間。なにより、俺はずっと前からまともに剣を握っていない。
「魔法でのダメージはほぼ意味がない。だから、俺に剣術の訓練をして欲しいんだ」
そう言うと姉上の目つきが変わる。
兄上ほどでもないが、姉上もそれなりの実力者だ。
たまたま、聴いた話程度だけど。
「そういえば、アレスは剣が得意じゃなかったわね。私もそれなりに使える方だけど役に立つ? アトラス兄様に頼んだほうがいいと思うわよ?」
絶対に嫌だ。
剣を教えるというよりも、イジメられるに近い。
兄上に剣を教えてなんて死んでもゴメンだ。強くなりたいのに敢えて死ににいく馬鹿は居ないだろ?
「兄上はどうやってここまで来るのさ。こんな雪まみれの所に?」
「それを言うのなら、アレスはどうやって来たというの?」
「飛んできた」
「あら、嬉しい。私のことが心配で飛んできたということ?」
姉上だったという情報すらなかったのだけどね。
そのポジティブ思考はどっから来るんだよ。話しても分からないだろうから。窓を開けて、そのまま浮かび外へとでた。
「飛んで、そのまんまだけど?」
「はぁ、呆れた……」
その反応はおかしいだろ?
俺以外誰も使えないのだから……レフリアも同じようなこと言ってた?
というか、俺がおかしいのか?
「と、とりあえず。剣だけなら、多分姉上が上だと思うけど……魔法を鍛えつつやりたいから難しいかもね」
「どういうこと?」
「姉さん、壊れてもいい剣はある?」
「壊れても? これでいいかしら?」
漆黒の剣、ドゥームブレイド。勿論このゲームに存在しない魔法であり、全く別のゲームの話。死神さえも殺す剣。
試しに違う魔法でやってみたら出来たから、この剣が具現化出来た時は嬉しかった。
まあ、実際に使ったのは、初めてコアを壊したときだけど、魔力の大半を一瞬で持っていかれてやばかった。
バセルトンにあった上位アンデットのダンジョンでレベルアップしたことで、少しばかりは良くなっている程度でしか無い。
「なんというか、すごく禍々しい武器ね。見ているだけで、震えそうになるぐらいに……」」
「なんで?」
姉さんが持っている剣に軽く当て、そのまま引く、斬るという技術もなくただ動かすだけに過ぎない動作。しかし、抵抗もなく刀身が切り落とされる。
その光景を驚いた表情で姉上は見ていた。落ちた刀身を何度も見ている。
こうなるのを予想していた俺は、アイツでも防ぐことが出来ないと思っていたのだ。
それでもかなりのダメージを与えることはできていた。
もっと上手く扱うことが出来ていたのなら、防ぐことも出来ずに切り落とせていた。
「何なのよこれ……全く抵抗すら感じなかったわよ」
「そういう武器だからね。危ないから消しておく」
「こんなのを使ってて、倒せなかったの?」
「使うことがなかったから、あまり扱い慣れていないんだよ。まずはこれに慣れておかないと、長時間使うのが大変なんだ。それにアイツは動作も鈍いし、剣術とこの剣を上手く使うだけで行けると思う」
長時間使うというのならクリムゾンでもいいけど、一つでも手数は多いに越したことはない。
行く前に武器屋から買えるだけ買ったほうが良いかもしれないな。
魔力糸も練習するべきか、悩みどころだな。
「その剣は、私が持てたりするの?」
「それが出来るんだったら、俺は兄上を飛んで連れてくるよ」
ドゥームブレイドは魔力を常時維持していないと具現化出来ないため、渡すというよりも手が離れるだけで簡単に消えてしまう。
「なるほどね。魔法もいいけど、剣術も合わせれば強くなるということね。明日、アトラス兄様を連れてきなさい」
姉上様、俺の話を聞いてた?
兄上なんて呼んだら俺死んじゃうよ?
そもそも、剣術も必要だけど、こいつを維持する方がもっと重要なんだけど……。
いや、昔から俺の話を聞かない人だったな。
「兄上じゃなくて、姉上に剣を教えてもらいたいんだ……頼むよ、お姉ちゃん」
「アレス……貴方いい度胸をしているわね?」
あ、あれ?
昔はこれで何でも思いどおりに……そ、その殺気は、どうしてなの?
お姉ちゃん……?
そんな彼等でも、魔物の暴走だけは避けようと懸命に戦っている。
「その冒険者の中に、姉上の十倍は強い人ってそんなにもいるの? もちろん、兄上にだってこんな危険な目に合わせることも出来ない。それに対策もちゃんとある」
兄上に貰った剣でもアイツにダメージは通った。
微々たるものだったけど、効果はゼロじゃない。
クリムゾンでも同様であり、その上を遥かに凌駕するドゥームブレイドなら十分効果が期待できる。
そのためにも、魔法の熟練と剣術の両方を鍛え直す必要があった。
具現化の時間。なにより、俺はずっと前からまともに剣を握っていない。
「魔法でのダメージはほぼ意味がない。だから、俺に剣術の訓練をして欲しいんだ」
そう言うと姉上の目つきが変わる。
兄上ほどでもないが、姉上もそれなりの実力者だ。
たまたま、聴いた話程度だけど。
「そういえば、アレスは剣が得意じゃなかったわね。私もそれなりに使える方だけど役に立つ? アトラス兄様に頼んだほうがいいと思うわよ?」
絶対に嫌だ。
剣を教えるというよりも、イジメられるに近い。
兄上に剣を教えてなんて死んでもゴメンだ。強くなりたいのに敢えて死ににいく馬鹿は居ないだろ?
「兄上はどうやってここまで来るのさ。こんな雪まみれの所に?」
「それを言うのなら、アレスはどうやって来たというの?」
「飛んできた」
「あら、嬉しい。私のことが心配で飛んできたということ?」
姉上だったという情報すらなかったのだけどね。
そのポジティブ思考はどっから来るんだよ。話しても分からないだろうから。窓を開けて、そのまま浮かび外へとでた。
「飛んで、そのまんまだけど?」
「はぁ、呆れた……」
その反応はおかしいだろ?
俺以外誰も使えないのだから……レフリアも同じようなこと言ってた?
というか、俺がおかしいのか?
「と、とりあえず。剣だけなら、多分姉上が上だと思うけど……魔法を鍛えつつやりたいから難しいかもね」
「どういうこと?」
「姉さん、壊れてもいい剣はある?」
「壊れても? これでいいかしら?」
漆黒の剣、ドゥームブレイド。勿論このゲームに存在しない魔法であり、全く別のゲームの話。死神さえも殺す剣。
試しに違う魔法でやってみたら出来たから、この剣が具現化出来た時は嬉しかった。
まあ、実際に使ったのは、初めてコアを壊したときだけど、魔力の大半を一瞬で持っていかれてやばかった。
バセルトンにあった上位アンデットのダンジョンでレベルアップしたことで、少しばかりは良くなっている程度でしか無い。
「なんというか、すごく禍々しい武器ね。見ているだけで、震えそうになるぐらいに……」」
「なんで?」
姉さんが持っている剣に軽く当て、そのまま引く、斬るという技術もなくただ動かすだけに過ぎない動作。しかし、抵抗もなく刀身が切り落とされる。
その光景を驚いた表情で姉上は見ていた。落ちた刀身を何度も見ている。
こうなるのを予想していた俺は、アイツでも防ぐことが出来ないと思っていたのだ。
それでもかなりのダメージを与えることはできていた。
もっと上手く扱うことが出来ていたのなら、防ぐことも出来ずに切り落とせていた。
「何なのよこれ……全く抵抗すら感じなかったわよ」
「そういう武器だからね。危ないから消しておく」
「こんなのを使ってて、倒せなかったの?」
「使うことがなかったから、あまり扱い慣れていないんだよ。まずはこれに慣れておかないと、長時間使うのが大変なんだ。それにアイツは動作も鈍いし、剣術とこの剣を上手く使うだけで行けると思う」
長時間使うというのならクリムゾンでもいいけど、一つでも手数は多いに越したことはない。
行く前に武器屋から買えるだけ買ったほうが良いかもしれないな。
魔力糸も練習するべきか、悩みどころだな。
「その剣は、私が持てたりするの?」
「それが出来るんだったら、俺は兄上を飛んで連れてくるよ」
ドゥームブレイドは魔力を常時維持していないと具現化出来ないため、渡すというよりも手が離れるだけで簡単に消えてしまう。
「なるほどね。魔法もいいけど、剣術も合わせれば強くなるということね。明日、アトラス兄様を連れてきなさい」
姉上様、俺の話を聞いてた?
兄上なんて呼んだら俺死んじゃうよ?
そもそも、剣術も必要だけど、こいつを維持する方がもっと重要なんだけど……。
いや、昔から俺の話を聞かない人だったな。
「兄上じゃなくて、姉上に剣を教えてもらいたいんだ……頼むよ、お姉ちゃん」
「アレス……貴方いい度胸をしているわね?」
あ、あれ?
昔はこれで何でも思いどおりに……そ、その殺気は、どうしてなの?
お姉ちゃん……?
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