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強者出現

165 危険な特訓 2

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「ひどい……」

「それはどっちがなの?」

「俺ですね。美人のお姉ちゃんは何も悪くないです」

 そう言うと、今度は嬉しそうに頭を撫でてくる。
 なるほど、この手はまだ使えるんだな。

 魔法を使えばどうとでもなるが、剣のみだと姉上に勝てる気がしない。
 まあ、それもそのはずなんだけどな……明日は確実に両腕の大木と自慢のワンパックが悲鳴を上げるだろう。
 剣術の訓練、魔法の練習と、姉さんと訓練を開始して一週間の時間が過ぎた。
 そこまで剣術は上達はしなかったが、筋肉痛も収まり体の方も調子が戻っている。
 夕食の制限がなくて助かった。こんな事をしていたら確実に痩せていたぞ。

「ドゥームブレイド」

「何回見ても禍々しいわね」

 禍々しい? 失礼なかっこよくないか? 漆黒の剣だぞ?
 このロマンが分からないとは、男が女の子の何かに付けて可愛いというのが分からないと一緒か。
 左手にも魔力を込めて、更に剣をもう一つ追加する。想像以上に魔力消費の負担がきつい。
 二刀流なんて絶対に戦えない。

「維持するだけで精一杯だな。ふぅぅ」

 振り回すどころか、気を抜くだけで具現化が消えそうだ。
 けどこれぐらいの時間だと、奴を倒すのは不可能に近い。
 こんな物、本当に慣れるなんて可能なのか?
 それとも、剣で魔物を倒さないと熟練値は上がらないという仕様なのか?

「だはっ。もう無理」

「はいはい、お疲れさま。少し休憩にしましょう」

 仮定が正しいのなら別のダンジョンに行って、実践を積んでから挑んだほうがいいのかもしれないな。
 休憩用に用意されたお茶を飲んでいると、あのメイドさんは何処かで見たような?

「姉上、さっきのメイドってさ、ダンジョンで付き添っていた人?」

「リッツだよ、もしかして分からなかったの?」

「そんなわけ……ないだろ。ちゃんとお礼も言えてなかったからさ」

 姉上は、俺の顔を覗き込み「ふーん」と、言って疑いの目をしていた。
 当てずっぽうだったけど、何も言わないよりはマシだったと思う……多分。

「倒れていた子よ、私を庇ってね。あの時は救ってくれて有難うね」

「元気そうで良かったよ。雰囲気はぜんぜん違うから、分からなかったよ」

「なぁに? 夜伽に欲しいの?」

 ほんと何言っているんだよ。飲んでいた紅茶で噎せてしまう。
 弟を前にそんな事を進めないで欲しいし、そういう事をするつもりはない。
 そんな俺を見て何を嬉しそうに笑っているんだか……。
 今はアイツとの対決が優先だ。

 ドゥームブレイドの運用実験をするために、別のダンジョンへ行き、できるだけ剣で魔物たちを討伐して回った。
 効率だけで考えると、討伐の数は少なかったが、剣の扱いは以前と比べて良くなった気がしていた。
 それでも、姉上にまだ勝てないけど。魔法がないとこんなにも不便だと思わなかった。

 俺が初めて敗北したあの日から三週間近く経とうとしていた。

「さてと、準備は万端。アイツがまだいればの話だけどな」

「あのダンジョンは六階層は確認しているわ。もしその魔物を倒して、可能であれば、攻略もお願い。でもこれだけは約束して。必ず帰ってきなさい、アレス」
 
 そう言って姉上は俺を優しく抱きしめてくれた。
 この前もそうだったけど、昔からこうしてくれたっけ。
 アイツが危険なのは分かったが、本番を前に自分の力量が図れてよかったとは思う。

「ああ。危なくなったらまた逃げてくる」

「ええ」

 さて、リベンジと行こうか!
 ダンジョンへ入ると、魔物たちの数はあの頃よりも確実に増えている。
 今は立ち入りを禁止しているので、冒険者も入ってはいない。
 ロンダリアのように、ただ立ち入り禁止にしているわけでなく、冒険者達に通告を出している。
 こいつらならいつも通りに倒していくか……。

「ここにはいないか。四階層にいたよな。はいはい邪魔」

 魔物が変わっていないということは、アイツはまだここにいる。
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