公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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強者討伐 失われた武器

291 違和感 1

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 俺は寝ていた所を、ガドール公爵のでかい声で目が覚める。

「なんだと!? 貴様のような奴が神殿に仕える大司祭だと!?」

 一体何の話をしているんだ?
 そんな声を出すのなら、せめて部屋の外でやってくれよ。
 体を起こすと、むさ苦しい分厚い胸板を顔に押し付けられる。

「アレス! よくぞ生きて戻ってきた」

 筋肉の抱擁を、誰もが心地よいと思えるはずもないだろう。

「やめ……苦しい」

「父上。お止めください、アレス殿は大怪我をしていたのですよ」

 ヘルディによって引き剥がされたところで、ブワッと流れる涙が俺の頭上でなかったことが何よりの救いだな。
 体や腕の様子からして、思惑通りバセルトン公爵家は俺の怪我に対処してくれたようだな。
 とはいえ、無くなったモノはさすがに戻りはしないか。

 左手首は包帯が巻かれていて、動かすと鈍い痛みとともに無いことに違和感を覚えてしまう。
 そんな事はどうでもいいと言わんばかりに、俺の腹は空腹に対して猛抗議をしている。

「ヘルディ。悪いが何か食べれる物を用意できないか? 煩くてかなわん」

「はっ、仰せのままに」

 姿勢を正し、右手を胸に当て頭を下げる。
 何とも仰々しいが、それについては何も言わないことにした。部屋から出ていくのだが「うぉぉおお」と、叫びながら廊下を走っていた。
 何でそうなるんだ……さっきまでの冷静さは、何処に行ったんだ?

 それと、何時もなら堂々と構えているおっさんが何で泣きじゃくっているんだよ。
 あんなのに抱きつかれている、執事が可哀想だったが俺に来ないためにも犠牲になってもらうとしよう。



 どうやら俺は、二日ほど目が覚めなかったらしい。
 起きた時に居た司祭達の力によって、ある程度の怪我は回復しているものの、目が何で覚めないのかと騒いでいた所、俺は目が覚めた。
 なんかこう、もっと違う場面で目を覚ましたかったな。ここに居ない三人にそんな事を期待するほうがどうかしている。

「ところでアレス。お前に一体何があったというのだ? その腕は、ただ事ではあるまい」

 ようやく落ち着いたのか、普段の様子を見せている。
 俺にとってはそんな事は最早どうでもいいことだった。
 今は話をする時間でも、場所ですら無い。

 目の前に置かれた料理を前に、周囲の雑音などどうでもいい。
 収納から、二本の棒切れを取り出す。

「アレス殿? それは一体?」

 ヘルディの問いかけに答えることもなく、俺は箸を使って料理を口に運んでいく。
 あれもこれも、美味い。
 ここにある料理の数々は俺のために用意してくれている。

 左手が使えないことで、フォークだけでも食べられるようにしてくれている。ならば、ここは話をするよりも食べるというのが先決であり、何よりも重要なことだ。

「父上。アレス殿が落ち着くまで、今は待つしか無いでしょう」

「そのようだな」

 俺は食べるだけ食べて一人だけ満足していた。ガドール公爵に案内され、別の部屋にあるソファーに腰を下ろすが、自然と横になってしまう。
 それからは、数分も経たずして満腹による満足のせいか睡魔に襲われる。

「父上。アレス殿が目覚めるまで、今は待つしか無いでしょう」

「そ、そのようだな」

 俺が目が覚める頃には、辺りは暗くなっていた。
 ソファーで寝ていた気がしていたのだが……ベッドの上で目が覚める。
 一体誰がと考えるものの、ここでなら俺ぐらい余裕で持つことができる人物がいる。

「目が覚めたか?」

 運んだ張本人らしき人物から声をかけられる。

「ああ……申し訳なかった。その、何の話もせずに眠ってしまい」

 ガドール公爵の目からは、微かな殺気のようなものを感じ取り俺は頭を下げるしか無かった。
 ここが実家であったのなら、拷問のような仕打ちが待っていたのは確実だろう。

「なに、気にするようなことは何もない。お前はよくやっている、そうやすやすと頭を下げるな」

 持っていた斧を壁に立て掛けるが、なぜ完全武装を何故しているのかが理解できていない。
 以前なら、もっとゆるい格好をしていたのに、鎧をまとい索敵を展開すると、この部屋を取り囲むように兵士が配置している。

 別の何かがあるというわけでは無さそうだけど……なぜこんな事になっているんだ?
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