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第1章 沢田くんと恋の予感
沢田くんとお礼の品
しおりを挟む【バカなこと考えている場合じゃない】
散々おもしろ脳内劇場を繰り広げた挙句、沢田くんは急に我に返った。
【佐藤さんに、謝らなくちゃ】
チラッと右隣を見てみると、真剣な横顔の沢田くんがいた。ずっと真面目に授業を聞いていたとしか思えない、澄んだ眼差しにキュンとしてしまう……。
謝るのは私の方だ。
ごめんね、沢田くん。
私みたいな名前も顔も普通の女の子が沢田くんと釣り合うわけないのに、勝手に好きになろうとして。
頭、冷やさなくちゃ。
私は沢田くんの声を聞かないように、右側だけ頬杖をつくフリをして耳を塞いだ。
♢
「あ……【あの、佐藤さんっ】」
沢田くんの声が聞こえてきたのは、授業が終わった時のことだった。
ドキッとして振り向くと、ちょっとコワイ顔をした沢田くん。
【あっ、こっち向いた。ヤバい! キンチョーして顔がこわばっちゃうよー。゚(゚´ω`゚)゚。ごめんね、ごめんね、佐藤さんっ_( _´ω`)_ペショ】
ちくしょう。クッソ可愛いな!!
私はニヤニヤしそうになるのを必死で堪える。
「何? 沢田くん」
「これ……【もらって】」
「え?」
沢田くんはコワイ顔をしたまま、私に何かを差し出した。
それは、私が半分こにして沢田くんにあげた消しゴムに、ノートを切り取って作ったのだろうか、フニャフニャの手足がついたマスコットだった。
その手足が、土下座の形に折りたたまれている。
【土下座おじさんを譲ってくれたお礼……伝わるかなあ】
お礼なんだ、これ。言われなかったら分からなかったかも。
でも、素直に嬉しい。
「あ、くれるの? ありがとう! わあ、土下座おじさんそっくりだね! 可愛い~!」
私は大喜びでそれを受け取った。
「ありがとうね、沢田くん! すっごく嬉しい!」
「いや……【佐藤さん、すっごく喜んでる……。良かった、機嫌直ったみたい】」
沢田くんのほっとした心の声が聞こえて、私もほっとする。
【ありがとう、土下座おじさん】
【良かったな、沢田空】
【おじさんのおかげだよ!】
あっまた脳内劇場が始まった。
【やっぱり男は黙って土下座だね、土下座おじさん。佐藤さん、おじさんのこと可愛いって。おじさんの可愛さに嫉妬】
【はっはっは。おじさんが可愛いからって佐藤さんへのプレゼントにおじさんの顔描いちゃダメだろ。まったく、困ったやつだな沢田空よ】
えっ? おじさんの顔?
私はもらった土下座消しゴムを裏返してみた。するとそこには、ゴ◯ゴ13のデュー◯東郷みたいに劇画チックな渋い顔をしたおじさんが土下座という行為に反する不敵な笑みを浮かべていた。
なんだこのアンチテーゼは。
っていうか、沢田くん無駄に絵が上手いんだけど、マジで何者なの──⁉︎
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