96 / 160
第4章 沢田くんと夢の遊園地
沢田くんと観覧車
しおりを挟む夕方になってきて肌寒い風が吹くようになる頃、私たちの足は自然とそこに向かっていた。
園の中で一際目立つ、巨大な円を描く観覧車。
最後の乗り物はこれにしようって、初めから決めていたんだよね。
「いこっか、沢田くん」
「うん【これで最後か……(;ω;)楽しかった出来事が走馬灯のように蘇るよ!】」
私も同じ気持ちだよ、沢田くん。これで終わりだなんて、本当に寂しい。
無言で順番を待って、茜色が煌めくワゴンに私たちは乗り込んだ。
【はあ~~。これが観覧車か。意外と早く終わっちゃいそう】
一周約10分だってパンフレットには載っていた。確かに、早く終わっちゃいそう。
終わる前に、沢田くんに今日のお礼を言わなくちゃ。
あと、もう一個だけ、伝えたいことがあるんだけど……。
向かい合って座る沢田くんは落ち着かない様子で外の景色を見ている。
【な、なんか言えよ俺! このままダンマリしたまま一周終える気かっ? バカ!(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・俺の意気地なしっ! 本当は佐藤さんに言いたいことがあるんだろっ? 早く言えーーっ!!】
沢田くんも何か言いたいことがあるらしい……。
何だろう。期待しちゃうな。
とにかく、黙っていたら時間がもったいない。
あと9分。
「あの……」
「あの……」
二人で同時に声をかけてしまった。
「な、何? 沢田くん」
「佐藤さんから……どうぞ【うおおおおお~~~!!((((;゚Д゚)))))))ドキドキしたああああ!!!】」
沢田くんはかしこまって膝に手を乗せている。その膝がちょっとブルブル震えている。
顔はクールでカッコいいのに、やっぱりこのギャップが好きだなと思う。
「今日、すごく楽しかったよ」
「うん【俺も(*´Д`*)】」
沈黙ができてしまった。頭が真っ白になっちゃって、次に続ける言葉が出てこない。すると──。
【佐藤さん、可愛い(*´Д`*) どうしよう、ドキドキが止まらない!! ああああ~貧乏ゆすりも止まらない!! このままじゃ、俺の震えで観覧車が破壊されてしまうかもしれない!! この高さから落ちたら二人とも助からないよっ!! 俺は死んでもいいけど、佐藤さんだけは守らなければ……!! 落ち着け、俺の膝~!!:(;゙゚'ω゚'): そ、そうだ。こういう時は、手のひらに人という文字を3回書いて飲み込むんだ!!】
沢田くんは膝の上の手をさりげなく動かし、文字を書く手の動きを私に見せないように片手で隠しながら文字を書く。
【人……人……入……。あっ!? 三文字目が「入る」って文字になっちゃったかもしれない! だめだ、「入る」じゃ緊張が取れない!! もう一度……! 人、人……あああああ~~手が震えてそもそも字が書けない。゚(゚´Д`゚)゚。】
沢田くんの手が尋常じゃなく震えている。
もう、一生見つめていたいくらい可愛いよ!!
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる