世界の果てを越えてみた

ゆづ

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第5章

ソーディアにいた頃

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「死ね! 雷槍サンダースピアー!」

 研究員らが叫ぶと雷の矢が集まって巨大な槍になり、セイシロウに襲いかかった。
 ズバアン!と 大木が真っ二つに割れるような音がして、セイシロウが弾け飛ぶ。

「きゃああっ! 大丈夫⁉︎」
「セイシロウ!」

 さすがに心配したコージーとアズがセイシロウの飛ばされた方向を見てみると、彼は剣を盾にして片膝をついていた。

「あっぶねー。一本に集まることもできるのか」
「良かった、防いでた」
 コージーはホッとしながらスープを飲み干した。
「どうしよう、多勢に無勢じゃない?」
 アズも最後の麺をすする。
「お前ら、もっと真剣に心配しろ!」

 二人に一喝すると、セイシロウは剣を正面で構え、目を閉じた。

「何やってるのよ、目を閉じたらどこから攻撃が来るか分からないじゃない!」
「しっ、静かに! セイシロウは気配斬りの達人なんだ。ああして空気の流れや音を感じて技を避けるから大丈夫」
「でも」

 一斉に別々の魔法をかけられたらそれを全て避け切れるのか。
 そんなアズの心配は的中した。
 地上に降り立った研究員らは扇状に広がり、その陣形から炎や雷、氷、風、あらゆる属性の魔法攻撃をセイシロウに向けて一斉に放ったのだ。
 

 ──ソーディアにいた頃。
 セイシロウは人と斬り合う修行をするよりも、自然が残っている場所に赴き、あらゆる物質や現象を斬るという修行をするのが好きだった。

 炎を風圧で割き、風はなで斬り、氷を砕き、雷は散らす。

 自然は常に変化した動きで、セイシロウの予測しない角度からやってきた。
 それらを相手にしてきたセイシロウにとって、人の意思が加わった偽物の自然現象などただの物質による攻撃と何ら変わりがなかった。

 正面から炎の雨が来る。
 右からは氷の矢、左からは雷撃が。

 分かっていれば何も怖くない。


 セイシロウは息を吸い込みながら上段に剣を構えた。
 

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