遠い記憶、遠い未来。

haco.

文字の大きさ
上 下
16 / 121

タイムリミット

しおりを挟む
ラボで試験管を手にして研究に没頭していると、シュウ先輩がノックして入ってきた。

どこか焦って入ってくる顔をしながら
「どう?研究は。死体の解剖医から連絡入ってるよ」

また川に生き物の変死体があがったらしい。
最近、動物の突然変異で方向を失った魚が変死体で見つかったり、植物の異常気象による咲くはずの花が芽が生まれた時点から枯れ始めたり各地で起きている。

星全体の生態系が狂い始めてるのだ。

今の仕事はそんな生態系を調べること。
枯れ果てた植物のカスを顕微鏡で覗き込み細かく分析をしていた。

そんな時、ショウ先輩が急ぎ足で駆け寄ってきた

「セイカくん!レンさんという方から連絡入ってるよ!」

「旦那さんかい?」

その問に聞かず、ラボのドアを開けて待合室の電話に手をかけた。

「どーしたの?」

「緊急事態だ!」

いきなり言われて「ん?どういうこと?」

「ここでは話せない!今から自宅に向かう!早くきてくれ!」

その時だった。

天井の吊り下がりの電球が揺れ始め、部屋全体が揺れ始めてた。
地鳴りがユックリと響き始め、それはもっと激しく鳴り始めた。

周りの研究者たちと他のスタッフもパニックになっている。

「早く!」と言ってレンは切った。

言われる通り、周りを見る暇もなく必要な物だけを手にして
ビルから急いで出た。
よく見ると、外の世界は地獄絵図だった。

高層ビルがユックリと倒れ、横に隣接するビルにぶつかっている。

街のあらゆる場所で火事も発生していて、
人々の泣き叫ぶ声が聞こえている。

揺れる地からひび割れが動き。割れた間から
火の光が溢れている。

それはこの世の終わりが近いのかもしれない。

急ぎ足でレンの待つ部屋へと急いだ。

崩されてないか不安に感じながらも走っていると
自分たちの住む建物まで見えてきた。

見上げてみると特に損傷してるところはなく
レンが部屋で待っていた。

「なにがあったの?」

「荷物を入れながら聞いてくれ!」
「この星はあと1時間ほどで消滅する!聞いてしまったんだ!あの宇宙船になぜこだわるのか、気になってこそっと上層部のやつらだけ逃げようとしてたんだ。この星から。」

「どういうこと?」

「君の研究はすべて予知されてる前兆だった。突然変異変死体、すべての動物はしっていたんだよ。動物は予知する力があるからね」

「そして今日、上層部のやつらがあの宇宙船に乗るところを見てた。研究してるやつが持っていた、この星のエネルギー源のグラフを持っていたのを勝手に拝借したよ。そしたら、星の心臓部である火の海マグマが上昇してるんだ!つまり破裂する。」

「だからタイムリミットか来てるってこと?」

「そう!だからオレとセイカだけでもこの星から出るんだ!迷ってる暇はないんだ」

また地鳴りがなるたびに地面が揺れている。

「でもどこへいくの?」

「宇宙船港だよ。自分の持ち場だ!」

ドアを急ぎよく開けながら
外へ出た。

先程と変わらない町並みを通り抜け、レンの仕事先まで来た。
初めてみた。
港内もかなり崩れた建物がある。崩れた道をコケないように走りながらレンの言われるがまま進むと小型の円盤宇宙船にまで辿りいた。
レンは宇宙船の足場にある柱のスイッチを押した。
さすが操作になれてるだけあり、円盤の下部から口が開き
中に入れるようになっている。
「さあ!早く!」


早く走ったせいで息が上がっていた。

「はあはあ!他の人たちは!乗せないの!」

「そんな暇はない!」
「早く乗るんだ!」

勢いよく乗り込むと口が塞がっていく。

中に入ると意外と広い。
すでに非常食と他の完備も揃っている。
奥にはいるとバスルームとリビングが並び、さらに奥の部屋に行くと操作室がある。
レンは馴れてる手つきで操作をしはじめた。

操作室の窓ガラスから見る外の景色を見ると私たちのほかに空に向かっている宇宙船がいた。
空に浮かぶ宇宙船を目で追いながら
「あいつらだよ。姑息なマネしやがって!」

宇宙船のボディ部分に「NOA」と書いてある。
自分たちよりかなり大きい。
おそらく1万人相当入れる大きさだ。


その瞬間。その宇宙船は瞬時に消えた。

レンも追いかけるようにボタンを押して
私たちの宇宙船はスピードを上げて、雲をかき分けながら、大気圏内に突入した。
さらに上に。上に。

星と宇宙の間で私たちは目を閉じた。


目を開けると目の前の景色は真っ暗だった。
見たことのない景色が。でもなぜか知っているような気がした。
その景色を。この宇宙を。どこか遠い懐かしさを

後ろの方から軋む音が聞こえる。

バキバキ。。。! 

ドォーーーーーーーーーーーォーーーーーーーーーーーーン!!


宇宙船の後ろから聞こえる音に太陽のように散りゆく星の姿がかすかに見えた。

お父さん。。お母さん。。リン。。ラン。。

頭の回想がよぎった。
あの頃の思い出が、お父さんお母さんがいてリンとランもいた。
でももう、いない。

星と共に消えたから。



しおりを挟む

処理中です...